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18/122

18.第七王子は美容と健康に良い品を作る(偶発的)



 ある日のこと。

 領主の館にて。


 元ゴブリン商人のサブリーナ・エチゴーヤ(男の娘)がやってきた。


「ノア様。実は折り入ってご相談があるのです」


「んだよぉー……もう勘弁してくれよぉー……」


 瘴気が治ったことで一気にカーター領の領土が広がった。


 それによりさらに必要となる諸々が増えて、仕事が倍増した次第だ。


「実は先日わたしにくださった、化粧水なのですが、量産できないかと思いまして」


『化粧水……? ああ、ノア様がお土産に持たせたやつっすね。それでゴブリンみたいな見た目が治ったやつ』


「あんなの量産してどうするんだよ?」


「実は全国の女性のお客様から注文が殺到しているのですよ」


 サブリーナ曰く。

 元々サブリーナは酷い外見をしていた。

 それが治ったことで、顧客からどうやったのか聞かれまくったらしい。


 化粧水のことをぽろっともらしたら、是非自分も欲しい! と注文が殺到しているのだと。


『サブリーナちゃんが綺麗になったことが、なによりの宣伝になってるんすね』


「奥様方はどうして化粧水なんてほしがるんだ?」


『女はいつだって美しく見えたいものっすよノア様。サブリーナちゃんのあのでこぼこな肌が綺麗に治った化粧水とくれば、若い肌を手に入れたい奥様達がほしがるのは当然っすね』

 

 何はともあれ、俺が適当に作った化粧水をみんなほしがっているそうだ。


 ふむ……なるほど……よし、これを利用しよう。


「仕方ないな……三日くれ。お前にやった化粧水より、さらに質の良いものを作ってやろう」


「本当ですかっ? ありがとうございます! お客様、とても喜ぶと思いますー!」


『うう……眩しいっす……純粋に顧客の要望に応えようとする、善良なる商人のカガミっすね……んで、ノア様、その心は?』


『ぜんぜん効かない化粧水をただ同然で作って売りまくって、クレーム来まくって俺の評判を下げるために決まってるでしょ!』


『清々しいほどのブレなさ加減っすね……ま、今回も失敗するでしょーけど』


 かくして、俺は新たなる無能ムーヴのため、新作の化粧水を作ることにしたのだった。


    ★


 俺は屋敷近くの森へとやってきた。


 白猫のロウリィが肩に乗っている。


「さて作りますかね」


『化粧品って……普通こう、研究所みたいなとこで作るんじゃねーんすか?』


「バッカ。今から作るのは効果のないテキトーな化粧水なんだから、いいんだよ、テキトーで」


『テキトーな化粧水って……どうするんすか? 材料もないのに』


「あん? あるじゃねえか。そこら中に」


 俺は亜空間に手を突っ込んで、中から瓶を取り出す。


 ポーション瓶。これに化粧水を入れる。


『瓶があっても中身ないんじゃ意味なくねーっすか?』


「これから作るよ……っと」


 俺は片手を空中にかかげる。

 すると、俺の手のひらの上に小さな水球ができる。


『水魔法っすか?』

「そう。大気中の水分を集めて水を作り出す。今日日子供でもできる初級魔法【水球アクア・ボール】」


『水の球なんて作ってなにするんすか?』

「瓶にいれまーす。はい完成でーす」


『いや……さすがに、ちょっと……』

「んだよ文句あるの?」


『大ありっすよ! これだって水つっこんでるだけじゃん! インチキじゃん!』


「ふはは! 言ったろうロウリィ、俺は評判を落としたいんだよ。化粧水と偽ってただの水を売る! 全国からクレーム来まくり! あの悪徳領主をクビにしろ! ってな具合に事が進むに違いない!」


『で、でも……販売元のサブリーナちゃんにも迷惑かけちまうんじゃねーっすか?』


「そこはちゃんと、カーター領印の化粧水って事ででかでかと宣伝してもらうよ。迷惑掛かるのは俺だけ、サブリーナは被害者、ってやればさらに評判も落ちるだろ?」


『なるほど……さすがノア様。最低さ加減にかけては右にでるものいないっすね』


「うっせえ! さてじゃ作りますか……そうだな、軽く10万本くらいでいっかな」


 俺は土魔法で入れ物を作り、水魔法で中身を作って、化粧水を作る。


 次から次へと高速で、偽化粧水が完成していく。


 そして亜空間に収納されていく。


『あのー……ノア様。あんた……やべーことやってるって自覚あります?』


「くくく……もちろん。悪事とはなんと楽しい事よ……」


『いやあのね……そうじゃなくて……はぁもういいや。ノア様がんばれー』


「ああ、頑張るさ。俺の評判を落とすために。目指せ追放! ふはははは!」


『はーぁ……この人、すげーことやってるって自覚ないんだから……』


    ★


 後日、俺の部屋にて。


「さすがですノア様ッ! やはりあなた様は素晴らしいお方ですー!」


「ど、どうしたサブリーナ……急におしかけてきて……」


 元ゴブリン商人サブリーナが笑顔でかけつけてきた。


 嫌な予感がしてならない……。


「ノア様がお作りになった化粧品、全国で超ヒットしております!」


「はぁ!? ひ、ヒットだぁ~?」


「はいっ! 全国の奥様がたから、嬉しい悲鳴が届いております!」


 サブリーナが持ってきた手紙を俺に渡す。

 どうやらカーター印の化粧品を使った奥様からの感想のお手紙だそうだ。


『肌が30年くらい若返ったわ! これを作ったかたは天才ね!』


『にきびだけじゃなくて、火傷も綺麗さっぱり治るなんて! 素晴らしいわ!』


『化粧水間違って飲んじゃったんだけど、その日から毎日超元気! 肩こり腰痛そのほか全部治ったわ! すごすぎるわ!』


 ……おいどうなってるだよ!?

 ただの水だぞ!?


『ノア様ー。言うの忘れたっすけどね。あんたが作った水、ノア様の魔力で作られたもんだったじゃないっすか?』


『ああ、それがどうした?』


『ノア様の魔力によって作られたあの水にも、あなたの魔力が付与されてたんす。だから正確にはただの水じゃなくて、魔法水。だから美容にも健康にもよかったんすよ』


『つ、つまり何か……? 俺、ただの水を作ったつもりが、すごい魔法の水を作ってたってこと?』


『そーゆーことっすよ。はいはいさすノアさすノア』


 なんてこった……。

 俺が適当に作った物ですら、ここではすごい扱いされちまうのかよ!


「やはりノア様はすごいです! 瓶も化粧品もお一人で、魔法で作ってしまったなんてすごい!」


「い、いや別にすごくないだろ……?」


「ご謙遜なさらず! だって10万本分の化粧水を作るなんて、並の魔力量ではできませんよ! 桁外れの魔力量があったからこそできる芸当……すごいです!」


「え、ええー……普通じゃね?」


「しかも亜空間収納なんて、この世界では誰もできない、失われたいにしえの魔法ですよ! そんな凄い魔法を身につけてるなんて! すごい、さすがノア様ですー!」


 ……なんてこった。

 評判を下げるつもりで、適当にやった行為が裏目に出て……俺が凄い魔法使いだってバレちまったじゃねーか!


「い、いやね……ほんと大したことないんだってば俺って……」


「これだけのすごいことができるのにとても謙虚だなんて! 才能、能力、人格……全てに優れる最高の領主さまですね、ノア様って!」


 ああもうなにをしても肯定されてしまうぅうう!

 どうしてこうなったんだぁあああ!

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― 新着の感想 ―
[一言] さすノア笑いました。 本当に何か呪いなのでは藁
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★ ポイントシステム、累計式でないのが残念です。
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