107.第七王子は空を攻略する
『ふが……無能王子、コミックス2巻、発売中……! むにゃ……』
俺の膝の上でろりえもんのやつが眠っている。
まーた意味のわからん寝言言ってやがるな。
『有償特典がこれがまたすごいえっちなんです……むにゃ』
「ひげぷっつん」
『ふぎゃぁあああああああああああああああああ!』
ロウリィの猫ひげを抜いてやると、天井付近までぶっ飛んだ。
ぽん……!
「なにすんすかこの無能王子!!!!!!」
銀髪に猫耳の美少女、ロウリィが切れ散らかしてくる。
「俺が仕事してんのに、一人のんきに寝てるのが悪い」
「仕事って……あんたはんこ押してるだけじゃないっすか」
「それでもこの書類の量みてみろ? こんな重労働を強いられているっつーのに、のんきにねやがってよぉ」
「なんすか、じゃあわたしなにしてりゃよかったんすか?」
「俺のそばにいてくれよ」
「の、のあしゃま……」
ロウリィが顔を赤らめてる。
人に見られてないと課題って進まないよな。
ほら、母親に見られてないと宿題が進まないてきな。
「ノア様……んー……♡」
あ? なんだこいつ。
タコみたいな口しやがって。
「ノア様失礼します!」
「ぎやぁあああああああああああああ! リスタぁあああああああああああああ!」
全ての元凶、歩く厄災、メイドのリスタが婚約者のサラ、悪魔ナベリウスとともにやってきた!
「ろりえもーん! あの怖い悪魔をどうにかしてよぉう!」
「あくま……? ナベちゃんのことっすか? 怖く無いっすよ」
「そっちじゃねえよぉ。そこの金髪メイド悪魔だよおぅ」
「あー、無理っすね」
「ふぇえーん……」
あの悪魔のせいで今、俺は世界征服を完了し、神に祭り上げている……!
まじでこいつ元凶過ぎる……。
「ノア様、今日は大事なお話があります」
「なんだよぉう、サラぁ……」
俺はロウリィの後ろから尋ねる。
サラは深刻ぶったかおで報告してきた。
「実は空の上に……国を見つけたのです」
「あ? 空のうえに、国だぁ……?」
「ええ、先日リスタさんが空の上で見つかったとご報告させてもらいましたよね?」
そうだっけか?
「ノア様、先週のことっすよ。一週間で忘れるとかやばいっす。若年性健忘症っすか?」
「しっぽむぎゅー」
「ふんぎゃぁああああああああああああああああああああ!」
ロリエモンのやつが地面を転がる。
猫になって、俺の顔に飛びついてきた。
ツメでバリバリしてきやがったので、首根っこを掴んでやる。
『尻尾握んなや! 神経とおってんすよ!?』
「はいはい。んで、空の上に国があって、なんだってんだ?」
『無視するにゃ! あ、あ、またたび、またたびふにゃーん♡』
うるさかったので、魔法でマタタビを作り、地面に転がす。
ロウリィは地面でのたうち回っていた。愚かな猫めふはは。
サラは俺に言う。
「空の国スカイ・フォシア……そこは、神竜族の暮らす国だったのですわ」
「神竜族……神竜族……どっかできいたな……」
あ、そうだ。
俺が剣聖やってた時代に、あったことあるな。
「たしか古竜を超える、すげえドラゴン……だっけか?」
『古竜って一番強いんじゃないんすか?』
「一般的にはな。だが神竜族はそれを超越する、なにせ神の力をあいつらは持ってんだからよ。どっちかって言うと魔神に近い……っていうか、ロウリィ」
『なんすか?』
「おまえ禁書庫の魔神なんだから、俺よりそういうの詳しいはずじゃ?」
『う、うるさいっすよ! わたしだって知らないことくらいあるっす!』
まあ禁書庫の番人ってだけだからな。
別にそいつに知識があるってわけじゃあない。
「たしか神竜族って人間と関わり持たないやつらだったような気すんだけど」
大昔に人間界に降りてきた神竜族と戦ったことがあるけど、それきりだ。
古竜みたいにあちこち見かけるようなやつらじゃない。
「リスタさんは神竜族にとらわれていたのですわ」
「はぁ……? なんでだよ」
するとリスタが、珍しく怯えた表情で言う。
「わたしにもわからないんです。気づいたら、空の上にいて……ドラゴンたちにとらわれてたのです」
「ふーん……」
『ふーんって、おかしいじゃないっすか。いきなり空の上にいただなんて』
「まー、あるんじゃね? リスタだし」
『リスタだからなんでもありみたいな風潮やめましょっすよ。まあわからんでもないっすけど』
どうやらリスタのやつがスカイ・フォシアに立ち入ってしまい、捕まっていたと。
ん?
「あれ、じゃあどうして前回帰ってこれたんだ?」
「オレ様が影に紛れて牢屋の中に入り、連れて帰ってきたのだ」
ナベリウス……余計なことしやがって……!
そのまま置いてきてよかったものを……。
『のあっちってたまに悪魔より悪魔っすよね』
「うっさいよ! で、リスタが帰ってきて何が問題なんだ?」
するとサラが言う。
「リスタさんが牢屋から抜け出したことで、やつらは怒っているのです。人間が空の領域を侵した……と」
「はーん、なるほど……。まあやつらの領地に土足で踏み入ったようなもんだもんな」
サラはテーブルの上に、でかい鱗を置く。
『竜の鱗っすか?』
「はい。神竜族たちが、鱗を相手に送る。これは宣戦布告の合図なのですわ」
勝手に国に入って、リスタを盗んで帰ってきたから……か。
なるほどな。
「ノア様、いかがいたしましょう」
「ふぅむ……」
このままだと神竜族との戦争は不可避か。
くくく……。
「俺に任せておけ!」
「ノア様! では……」
「ああ、俺が直接出向いて、交渉してこよう。争いをやめるようにと」
「ノア様……!!!! さすがです!」
ふふふ……くくく……!
くわーはっはっは!
馬鹿め! まんまとだまされやがって!
『『…………』』
「省略すらしなくなった!? アニマルズ、ほらここで、ほらツッコミほら!」
『『…………』』
「むごんやめて!」
そうだよ無能ムーブだよ!
ようは、今一発触発状態なんだ。
ここで俺が敵地に乗り込んで、相手を怒らせれば、戦争を引き起こした馬鹿な帝王ってことで、無能判定されるって寸法だ!
『ナベたん最近あっちーっすね。冷たいもんたべいく?』
「いいな。最近そーめんってやつが流行ってるらしいからな」
もはや無視!?
ちくしょう……!
「この俺に任せておけ国民ども! このノア・カーターがたちどころに解決して見せよう!」
★
てことで、やってきましたスカイ・フォシア。
ロウリィの尻を蹴っ飛ばして竜にして、その背中に乗って上空へとやってきたのだ。
まあ魔法で飛ぶくらいわけないけど、だるいしよ。
『ノア様空気すごい薄いっすけど平気なんすか?』
白竜ロウリィが尋ねてくる。
「ぜんぜんへーき」
『そういやあんた人間じゃなかったすね……』
「いや人間だから……さて、くく。この帝王に逆らおうという愚かなやつらは、いったいどこにいるのかなぁ?」
『ノア様、また闇漏れてるっす』
おっといけない。
昔厨二病患者だったときのくせで、定期的に闇がもれてしまうのだ。
俺はロウリィの背中に乗って空の上を進んでいく。
分厚い雲が眼下に広がり、白い海のように見える。
『ノア様、おかしくないっすか?』
「あ? 何がだよ」
『いや……なんか天気悪くないっすか?』
「天気だぁ……?」
ふむ……なるほど。
たしかに少々吹雪いているな。
「だが雪くらいなんだ。地上でもふるだろ」
『そりゃ地上はね。ここは空のうえっすよ? なんで上空なのに雪が降るんすか?』
「? ??」
『馬鹿なんすね……あたっ』
馬鹿にした下僕の頭をコツンと叩く。
「さぁすすめ、いざすすめロウリィ。竜のいる場所に」
『どこにいるんすかね?』
「わかるだろ、気配で」
俺は上空を指さす。
【ひときわデカい入道雲】がそこにはあった。
『あの雲っすか?』
「そう。きっとあそこに、神竜族の長的なサムシングがいるんだぜえ。なら、やることはひとつだろう。ロウリィ、とまれ」
ロウリィが空中でとどまる。
『なにすんすか?』
「決まってるだろ……宣戦布告だぁ……! あの雲の向こうには、きっと神竜族の親玉的なやつがいる! そこに向かって今から、この俺が魔法をぶっぱしてやるぜ!」
『はいはいさ』
「さ!?」
『どうせ失敗するし、さっさとしたら?』
適当にあしらいやがって……!
「まあ見てろ! あそこには絶対、かならず、100%、神竜族のえらいやつがいる! そこをかるーくつついてやれば、神竜族達をおこらせれば、地上に降りてきて戦争になる、はず……!」
俺は指先に火をともす。
「かるくね、かるーく、ね?」
ぴっ……! と俺は指を向ける。
すると指先から、小さな火の玉が飛んでいく。
そして……。
ちゅどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
『な、なにやってんすか!? 死ぬっすよあれじゃ!』
「え、大丈夫っしょ。だって神竜族だぜ? あの程度のとろ火じゃ死なないってば」
『死ぬわ! 見てないのあの大爆発を!』
「大丈夫だって。昔戦ったことあるけどさ、あのくらいの魔法じゃ神竜族の体を傷つけることはできなかったぜ? あいつら、特殊な鱗を持ってて、魔法を完全無効にすんだよ」
『はあ……魔法無効の鱗……』
「ああ。くく……神竜族ども、今頃驚いて、そして怒ってるころだろうなぁ」
くははは! 勝ったなこりゃあ!
「さぁかかってこい! どうした、怖じ気づいたのか? んんぅ~?」
『ノア様って定期的に闇に染まらないと死ぬ病気なんすかね』
「うっさいわ! ほらこい、かかってこいよ神竜族ども! おらおらぁ……!」
しーん……。
「あ、あれ……? ど、どうした……? なんでこないんだ」
そのときだった。
『あのぉお……』
「あ? ……って、神竜族!」
だいたい2メートルくらいのドラゴンだ。
だがフォルムはどっちかっつーと人間に近い。
二足歩行する竜っていえばいいのかな。
フォルムは洗練されており、そして不思議な色をした鱗を身にまとっている。
「神竜族じゃねえか」
『あ、こいつらが神竜族なんすね』
「ああ……で、なに? おまえあれだろ、下っ端だろ? オーラでわかるわ」
下っ端で雑魚の兵士だろう。
「まさか神竜族の王なわけないだろうしな」
『ノア様ってフラグ踏まないと死ぬ病気以下略』
そのときだ。
『ありがとうござます、人間様……!』
「ふぁ!?」
え、ええ……?
なに、いきなり竜が空中で土下座してきた!?
『わたくしめは神竜族の王、神竜王エルロンと申す者』
「は? お、王!? おまえが!? そんな弱っちそうなのに!」
『あんた基準でものいうなよ。普通に強者のオーラでてるっすよ?』
いやいや、おかしい!
「だって昔戦ったときは、もっとすごいオーラをまとってたぞ!?」
『あ、ひさしぶりっすねそれ』
「なんだよ久しぶりって!」
『昔と今とじゃちがうのってやつ。今の方が弱体化してるんじゃね? 平和な世の中なんだし』
なんてこった……!
じゃあ、この弱そうな竜が、神竜王!?
「じゃあじゃあ、あの大きな雲のなかにいた、比較的強めの気配を漂わせていたのは……?」
『あれは我ら神竜族を苦しめていた、悪しき神の住処だったのです』
「神ぃいいいいいいいいいいいいいい!?」
え、なに……?
じゃあおれ……。
「神竜族を苦しめていた悪い神を、懲らしめたってこと……!?」
『そっすね。さすが神(笑)』
「神って言うなぁ……!」
すると神竜王エルロンが、涙を流しながら頭を下げる。
「やつのせいで、我らの国は困っていたのです。死の灰がふりそそぎ、神竜族たちは滅亡間際……そこにあらわれたのは、救いの神……そう、あなたです!」
まじかよぉおおおおお!
なんで戦争するつもりが! 救いの神になってんだよぉおおおおおおおおお!
『ノア様、どんまい★』
「いやぁああああああああん! どうしてこうなるのぉおおおおおん!」
【★新作の短編、投稿しました!】
タイトルは――
『最強【結界師】の気ままな新婚旅行〜弱すぎる味方に最強結界を施してたのに、自分が強くなったと勘違いした勇者に追放された。効果が永続じゃないと気づいても遅い、俺を溺愛してくれる幼馴染と旅してる』
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