106.第七王子は失せ人を探す
ある日の大ダーク帝国。
帝都カーターにて。
『むにゃむにゃ……2ヶ月はさぼりすぎっすよ、ノア様ぁ……』
白猫ロウリィの、ノミ取りをしている俺。
猫のやつは、気持ちよさそうにうとうとしている。
「二ヶ月? なにいってんの?」
『気づけばもう5月っす。原作最終3巻がとっくに発売してるっすよ。それに、来週にはコミックス2巻が発売しちゃいますよ』
「ていや」
『ふんぎゃあああああああああああああああああああああああ!』
俺はロウリィの毛を数本、むしってやった。
『なにすんじゃー!!!!!』
「おお、ロウリィ起きたか」
『おきたか、じゃねえ! ああ毛が! わたしの毛が! ハゲになったらどうするんすか!?』
「全身毛だるまなんだから、いいだろ、数本くらい」
『よくねーっすよ! あんた最低! 女子の髪の毛引き抜くなんて最低!』
「ふはっはっは! 心地よいわ!」
『くそっ、この人嫌われたいんだった』
その通り。
俺は、人から嫌われ、失望されたいのだ……!
なーんかなすこと全部、SS(さすがですノア様×2)されるんだよなぁ。
「んで、結局二ヶ月ってなんだったの? 原作最終巻とか、コミックス2巻とか」
『ノア様何言ってるすんか? 寝ぼけてるんすか? ああ、年中か』
「脱毛~」
『ふんぎゃあああああああああああああああああああああああ!』
とまあ愛猫とたわむれている、そのときだった。
コンコン……。
『客っすかね』
「んだよ……ったく、入れ」
「失礼しますわ、ノア様」
「サラ……」
俺の婚約者、サラディアス=フォン=グラハム。
元公爵令嬢で、国家運営はこいつに丸投げしてる。
サラのやつ、なんか浮かない顔をしてやがった。
「ノア様、実はご報告とご相談があります……」
「はぁ……んだよ」
「実は……リスタさんが、どこにもいないのです」
「はぁ? リスタが、いないだって……?」
するとサラの足下から、ずぉ……と黒い犬が姿を現す。
こいつはナベリウス。
悪魔であり、まあ今は俺の舎弟だ。
ナベリウスは人間の姿になって言う。
「ノア様のメイド、リスタのやつが、ここ半月くらい姿を見せていないのだ」
「俺のメイドとかいうなよ……」
別にあいつは俺のじゃねえ。
むしろ加害者だぞあいつ……。
「で、姿がないってまじなのか、ナベ。捜し物得意なおまえが探しても?」
「ああ。オレ様の分身を使って、帝国中を捜査したのだが、リスタはどこにもいなかった」
「ふーん……じゃあマジで地上にないんだな」
へーって感じ。
いや、むしろラッキーかもしれん。
あのトラブルマシーン狂信者がいなくなって、せいせいするっつーかさ。
ぽん、とロウリィも人間になって尋ねる。
「リスタを見かけた人はいないんすか、サラさん?」
「ええ、それが不思議なことに、誰も。彼女の出身であるアインの村にも訪れてないようです」
「家出……っすかね? でも帝国中どこにもいないっていうし……ノア様どうするの?」
どうするもこうするも……。
「わかった、この俺に任せておけ!」
「ノア様っ! 素敵っ!」
だきぃ、とサラがくっついてくる。
ふふふ……。
その様子を見て、アニマルズがため息をつく。
「「 」」
「え、なんだって?」
「「 」」
「だからなに!?」
するとナベリウスが言う。
「さすノア、の省略だ」
「SSじゃなかったの!?(さすがですノア様×2)」
「もうSSもいうのもめんどうなので」
「だからってセリフまで省略するやつがどこにいるよ!? 略しすぎて消滅してるじゃねえかよ!」
サラを引き剥がす。
「俺に任せとけ」
「はい! では、失礼します」
彼女は頭を下げていった。
ロウリィが肩をすくめながら言う。
「どうせ なんでしょ?」
「あ、ほらまた略した!!!! 略すなや!」
「はいはい 」
「だから言って!? ねーえー、SSとかMでもいいからさぁ」
「ほしがりっすねえ」
まあいつものMなわけだ。
無能ムーヴの略な。
「んで、どーすんすか?」
「ふふん、リスタ探す振りして、見付かりませんでしたー! をやるのだっ!」
「で、見つけると」
「見つけないから!」
ふぅ……とアニマルズがため息をつく。
「ノア様って結果的に見れば、こまってる民の問題を、次から次へと解決してく、すげえ主なんすよねえ」
「最初から変なムーヴせずそうすればいいものを」
「そうしたら俺の評判あがって、さらに面倒ごとにまきこまれるでしょーーが!」
「「時既に遅しなんだよなぁ」」
まあ何はともあれ。
今回はいなくなったリスタのやつをつかって、無能ムーヴだ!
★
場所は帝都カーター、その会議室。
大きなテーブルのうえには、この大ダーク帝国の地図(まあ世界地図)がおいてある。
サラが代表して説明する。
「現在、大ダーク帝国は、世界征服を成し遂げております。リスタさんを探す範囲は、文字通り世界中となります。すでにナベさんや、国民総出で地上を探したところです」
ふむ……ふっ。
「わかったぞ」
「わかった……!? まさか……」
「ああ、リスタの居る場所が」
「なんと! ど、どこにリスタさんがいらっしゃるんですか!?」
俺は創造魔法でナイフを作り出す。
それを……かっこよく、しゅばっ! と投げる。
ナイフを地図に投げて、かっこよく居場所を指し示す演出だ。
だが……。
すぽん……。
「あ」
『ナイフ、天井につきささってるっすね……』
や、やべえ……ナイフ、すっぽぬけちまった……は、はずうい……。
「なるほどお……! そういうことですね!?」
「え?」
サラが目をキラキラさせる。
え、ど、どういうこと……?
だ、だがこっちから聞くのは……かっこわるい!
「そ、そういうことだ!」
「なるほど! そういうことですね!」
「ああ、そういうことだ」
どういうことだってばよ!?
ナベのやつがあきれたようにため息をつく。
『で、サラ。どこにリスタがいると、ノア様は言ってるのだ?』
ナベたん! ないすぅ! 俺の代わりに聞いてくれたよ!
するとサラのやつが自信満々に、まるで神の言葉を代弁する、聖職者のように言う。
「ノア様はおっしゃったのです。リスタ様は……天にいると!」
おお……! と集まった領民どもが感心する。
て、天に……いるだって……?
いやどうしてそうなるんだ!?
『ノア様がナイフを天井につきさしたから、そうなったんじゃねーすか?』
なるほどそういうことか!
別にただすっぽ抜けただけなんだが……。
「盲点でしたわ。地上にいないなら、天にいる。確かに! ありえそうですわ! さすがですノア様!」
「ふ……」
なんだか新鮮だぜ、さすノアを略さないやつ。
しかしくくく……馬鹿め。いるわけないだろ、リスタが天に。
「さがせ、帝国民たちよ。リスタは必ず天にいる! 絶対! 100%! この、大ダーク帝国の帝王ノアが保証しよう! 失敗した暁には、全責任を俺に押しつけてもらっても構わない!」
「ノア様ぁあああああああああああ!」
サラたち、帝国民は大号泣。
くははは! ばかめえ!
俺は失敗したいんだよーん!
「さあ、探すのだ! 我が愛しき帝国の民たちよ!」
「「「はい!」」」
集まった帝国民たちが出て行く。
残されたのは俺とアニマルズ。
「くははあ! 馬鹿なやつらめえ! まんまと嘘にひっかかりやがってなぁ……!」
『ノア様、また敵側のセリフになってますよ』
『知謀を駆使する敵の幹部キャラのセリフだな』
うるさいよ!
「ま、今回こそ俺の失敗は保証されたわけだ。天にって、範囲広すぎだろ。だいいち、空にいるやつをどうやってさがすのだね? んんぅ?」
『ま、なんとかするんじゃねーっすかね』
『どうせまた だよ』
『ああ、 っすね』
だからSSでもさすノアでもいいから、略さず言って!
「今回こそノア様大勝利だ! がっはっはっは!」
★
「ただいま帰りました、ノア様♡」
「ふんぎゃぁあああああああ! リスタああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
半月後、帝城の謁見の間にて、リスタが笑顔で帰ってきやがったぁあ!
「いぎゃああああああああ! おたすけぇええええええ! 命だけはご勘弁をぉおおおおおおおお!」
『ノア様が完全に、化け物に遭遇した一般人のリアクションしてるっす』
『まあある意味バケモンだからなあいつ……』
アニマルズのやつらは、なに平然としてるの!?
え、なんで!?
なんでいなくなったリスタが帰ってきたの!?
「さすがですノア様! リスタ様は、天にいらっしゃいました」
「はああ!? サラ、今なんて!?」
サラ曰く……。
どうやらリスタは、本当に空の上にいたそうだ。
「ノア様、スカイ・フォシワってご存じですか?」
「あ? 知らん」
「空に浮かぶ島ですわ」
「空の島だぁ……?」
その空の島、スカイ・フォシワってとこにこいつがいやがったのか!?
「で、でもどうやって探したんだ?」
「帝国の技術者を集めて、皆さんで作ったのです、【飛行機】を!」
「ひ、ひこうき……?」
こくんとうなずいてサラが説明した。
魔道具のひとつであり、空を飛ぶための大きな船だそうだ。
「そんなもん……作れたのか……」
「今までは無理でした。しかしリスタさんを探すという強い信念、そして! ノア様の言葉が、職人の魂に火をつけたのですわ!」
俺の言葉……?
リスタが涙を流しながら言う。
「ノア様……愛すべき臣下をなんとしても、見つけ出すのだと、皆さんに言ってくださったとうかがいました……」
「それを聞いた民達は奮起し、結果、飛行機という凄い魔道具を作った……つまり、ノア様のお言葉が、技術を進歩させたのですわ!」
なんだってぇえええええええええええええええええええええええええ!?
「お見事ですわ、ノア様。国の危機までも利用して、技術力革新を起こしてしまうなんて!」
「すごいですノア様! そして……ありがとうございます!」
ああああああああああああああああああああああああああああ!
もぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
「どうしてこうなるんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
☆
『リスタ空の上にいたんすね……』
『しかし、なぜ空の上に? そもそも、どうやって……?』
『そこっすよね。リスタって魔法使えたっけ、ナベたん?』
『いや……それに、スカイ・フォシワは地上から何千メートルも離れた場所にある。飛行機を使わず、どうやってそこへいったんだ……?』
『わかんねーっす……』




