105.無能王子は国民のやる気を引き出す(圧制)
『おせええええええええええええええええええええよ!!!!』
ある日のこと。
大ダーク帝国、帝都カーターにて。
白猫のロウリィが、突如として叫びだしたのだ。
「あん? 何がおせえんだよ? ろりえもん」
『更新が遅いんすよ!!!! 何が定期更新っすか! もう前回から3か月っすよ! さーんーかーげーつ!』
しゃー! とロウリィがしっぽを立てて叫ぶ。
ははん?
「そうかロウリィ。さては発情期だな? 猫だもんなしょうがない」
『しゃー!』
発情期じゃあしょうがねえな。
俺はロウリィの額に……。
「でこ、ぴん」
どがん!
『ふんぎゃぁああああああああああああああああああ!』
くるくるすっとんでいって、壁に激突。
大きな音を立てて、本棚を崩す。
「なにするんすか!?」
がば、と本の山を崩して出てきたのは、白髪の猫耳少女、ロウリィ。
「おまえが遅いとか更新とか、わけわかんねーことのたまってたから、眼ぇさましてやろうとおもってな」
「はえ? 遅い? 更新? なんのことっすか」
「まあ気にすんな」
発情期じゃあしょうがねえしな。
さて。
「ろりえもん」
「なんだいノアッチ太くん?」
場所は、帝都カーターにあるお城だ。
執務室には俺とロウリィの二人きり。
「この国……いつ潰れるのかな?」
「晴れ晴れとした顔で滅亡願ってんじゃねーっすよ」
だってさ、だってさぁ……!!!!!
「俺、楽隠居したいのに! なーんか世界統一国家の、トップになってんだもぉおん!」
そう、かつてこの世界にはたくさんの国があった。
しかーし、今はこの大ダーク帝国が、すべてを飲み込み、世界の国は1つにまとまってるのである!
「なんでこんなことになったのかなぁ?」
「馬鹿殿さまのせいっすね」
「なにぃ! 馬鹿殿だとぉ!」
「さすがに言いすぎたっすかね?」
「そいつが犯人か! 連れてこいロウリィ!」
「ああ、良かった馬鹿殿さまで」
そいつが犯人だ!
馬鹿殿とやらを連れてこいや!
「まー、でもいいんじゃないっすか? 世界は一つにまとまって、今ちょー平和なんすから」
「そうなん?」
ロウリィはうなずいて、指を立てて言う。
「前は国家間で小さな小競り合いとか、種族の違いによる戦争とか、けっこーあったんすよ。でも今はそれがない」
「なんで?」
「みんなノア教の信者っすからね」
ノア教……つまり俺を神としてあがめてるため、世界はまとまってるわけだ。
ちくしょう! なんてこった!
「平和が一番っすよ」
「ばっかやろう! そのせいで俺にかかる負担が大きくなるじゃあないか!」
「面倒仕事全部、サラさんとナベたんとサブリーナちゃんくんに任せてるくせに……」
まあ確かに、細かい部分はサラとか、頭のいい奴に、仕事は丸投げしてる。
しかーし! 承認決定権は全部俺にあるのである!
「世界中の決め事のハンコを俺がおさないといけない。めんどっちい」
「それくらいやれよっすよ……」
「いやじゃー! 俺は働かずにぐーたらしたいんじゃー!」
すべての面倒事を放り投げて、逃げたとしても、無駄だ。
今この世界は大ダーク帝国で統一されてしまってる。
逃げ場は……ない!
「くっそ、どうすれば俺は楽になれるんだ……」
「呼吸を1時間くらい止めればいいんじゃないっすかね?」
「ばっかやろう!」
「ああ、さすがに死ねは失礼だったすね」
「1時間くらい余裕で止められるわ!」
「どうして馬鹿に無駄な力って備わってるんすかね……」
とーにーかーく!
俺は楽隠居したいの!
「ということで、久々に……」
「さ」
「さ!? なにそれ」
「なんかもうさノって言うのもめんどくて」
「ノくらい言えや! あとまださノすんじゃねえ!」
さノとは、さすがですノアさまの意味。
なんかやらかすと、だいたいさノされてしまうんだよな。
「今日の作戦は、やばいぞ」
「あんたの作戦がやばくないとき一度もないんすけど……」
「サラたちを呼べ! ろりえもん!」
ややあって。
「ノアさまどうなされたのですか?」
青髪の婚約者サラディアスことサラを筆頭に、腹心の悪魔ナベリウス、そして商人のサブリーナ・エチゴーヤを呼ぶ。
「またバカやるんだろ」
「しゃらっぷナベリウス!」
ふぅ、とナベの野郎が肩をすくめる。
くくく、聞いて驚けよ。
「帝王として命じる! 国民の税を……2倍、いや、3倍に引き上げろ!」
「な!? 何言ってるんすか! 3倍って!」
驚くロウリィ。
くくく、これも俺の無能ムーヴよ!
税率を3倍に引き上げると、さすがに帝国民たちも、怒るだろう。
そうすれば不満が噴出し、俺に反乱を起こすって寸法だ!
しゃしゃしゃ! どうだ!
「わかりましたわ!」
あ、あれぇ……? あっさりと認めてる?
「帝国民に今すぐ、伝えてきます!」
サブリーナとサラのやつが、うなずくと、部屋を出ていってしまった。
あ、あれなんかあっさり……?
「く、くくく! まあいい。これで強権発動からの、国民の怒り爆発! 反乱を起こしてノア政権は失墜!」
「「はいはい、SS」」
ペットどもがあきれたように言う。
「なんだよSSって?」
「さノ×2っす」
「もはやアルファベット!?」
省略しすぎだろ!
ナベがあきれたように言う。
「いちおう聞いとくけど、3倍に税を増やしたのってどういう意図なのだ?」
「m」
「あ、もういい。わかった」
「アルファベットしか言ってないでしょ!?」
「どうせ無能ムーヴだろ。はいはいSS」
ちくしょう、馬鹿にしやがってアニマルどもめ!
ま、まあいい……さすがに3倍の税をもとめれば、帝国のなかで嫌がるやつが出てくるだろう!
勝ったな! がはは!
☆
「「「SS!!!!!」」」
「おまえらもかぁああああああああああああああ!?」
サラとサブリーナのやつが、笑顔でやってくる。
「ノア様、さすがでございます!」
「いやだからなに!?」
「外をご覧ください!」
外だぁ……?
俺は窓を開けて……。
「なんじゃありゃぁあああああ!?」
帝城の庭には、莫大な量の金貨が収められていた!!!!
どうなってるのぉ!?
「帝国民たちが、喜んで、5倍の税を払いました!」
「5ぉ!? なんでぇ!?」
三倍でもおかしいのに、なんで五倍を!? しかも自ら進んで!?
「やはりノア様は深い考えの持ち主です。この国の問題を、解決してくださるのですから」
大商人にして、今は宰相の、サブリーナ・エチゴーヤちゃんくんが言う。
も、問題?
「現在、この国は停滞した空気がただよっていたのです」
「停滞?」
「世界が統一されたことで、競争意識というものが消えていたのです」
競争意識!?
「あー、たしかにみんなノア教信者になったっすからね。争いみたいなの起きないっす」
「でもそこに、ノア様が金を多く納めろ、と命令した。一見すると無理難題ですが、課題を与えられたことでみんなにやる気を出させ、結果、世界経済が超活性されたのです!」
と、サラ。
な、なんてこった!
そんな問題があったとは!!!!!!
「やはり、ノア様は素晴らしい眼力のもちぬしです。あえて高いハードルを出させれば、国民たちが自ら進んで、ハードルを飛び越えてくれると信じて、無理難題を押し付けたのですわ!」
単に嫌がらせだったんだけどぉ!?
「くそぉおおおお! どうしてこうなるんだよぉおおおおお!」
☆
《ロウリィSide》
ノアが頭を抱えてる横で、ふと、ロウリィは気づいた。
「あれ? 一番の狂信者はどこいったんすかね?」
言うまでもなく、リスタのことだ。
黒犬ナベリウスに尋ねるも、カノジョも首をかしげる。
「そういえば、最近リスタを見かけないな」
「ねー。どうしちゃったんすかね」
【★新作の短編、投稿しました!】
タイトルは――
『迷宮の聖女は魔物達から溺愛されてる~追放された私、奈落の森に捨てられるも、神に祈りを捧げていたら、いつの間にかそこが聖域化していた「国が亡びるからと王子が君を連れ戻しに来たけど撃退しといた」』
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