104.第七王子は目を覚ます
俺の名前はノア・カーター。
かつてはゲータ・ニィガ王国の第七王子だったが、無能がたたって辺境へ左遷された!
無能と称される俺の正体は、なんと二度転生した賢者&剣聖。
今世では楽に行きたいと思っていたので、馬鹿のふりをしていたのだ!
辺境……もとい、悪魔の地カーター領で俺は偶然にも、悪魔……もとい、領民リスタに力を見られてしまう。
それがきっかけとなり、俺の実力がもう、そりゃあ見事なまでにバレてしまった!
俺は無能であることを証明するために、あえて無能の振りをするという、無能ムーヴを繰り返しまくる。
だがそのことごとくが上手くいってしまうせいで、領民どもからの信頼がガンガン上がっていく。
なんやかんやあって、カーター領は帝国と合併して大ダーク帝国へと進化。そして気づけば俺はノア神、という神にまでランクアップ!
そのせいで神の連中からも狙われるようになってしまった……!
ああもう! どうしてこうなったぁ……!!!!!
★
「ハッ……! 目ざめた! 目ざめたぞろりえもん!」
帝都カーター。帝城の寝室にて。
俺は体を起こして叫ぶ。
腹の上に乗っていた白猫……ロウリィがころん、とベッドから落ちる。
『八ヶ月の長い更新さぼりからっすか?』
「そんな寝てないわい!」
八ヶ月も寝てたら餓死してるやろうが!
くぁ……とあくびをするこの白い猫、魔神ロウリィという。
俺の相棒的猫だ。
『正直もうちょっとさぼりすぎっすよ。寝てる間にコミカライズはじめってるし、コミックス1巻、原作2巻だって発売してるじゃねーっすか』
「おまえ、どこ向いて誰に向けてしゃべってんの?」
一つも理解できないんだけど。
「それよりろりえもん! 聞いて聞いて! とても凄いこと思いついちゃったの!」
『はいはいさノさノ』
「まだなにもしてないでしょぉおおおおおおおおおが!」
さノというのは、【さすがですノア様】の略、【さすノア】が、さらに短くなった形だ。
『どーせまたさノするに決まってますっすよ』
「なんだよさノするって。動詞じゃねえだろさノはよぉ……ったく」
俺があぐらを搔いて、無知なる猫に説明する。
「ロウリィ君。俺、ようやく自分の間違いに気づいたよ」
『100話以上かけて? ようやく?』
「ああ……俺は無能の振りをするから、裏目に出てしまって、結果さノされるんだろ?」
『自分も使ってんじゃんさノって……まあそうっすね』
ならば!
「良いことをすれば、裏目に出て、失敗するんじゃねえか!?」
『…………』
「ひげぷっつん」
『ふんぎゃぁああああああああああああああああああああああ!!!!』
白猫ロウリィの髭を1本抜いてやった。すると天井付近まですっ飛ぶロウリィ。
『なにすんじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』
俺の顔めがけて、ばりばりばり、とひっかき攻撃をしてくるロウリィ。
だが甘いな。俺は自動で結界を展開していた。
「おまえが俺の話聞かないからでしょ?」
『だからって猫の髭ぬくなや! 聞いたことないの、猫の髭はレーダーなんす! 敏感なんすよ!?』
「ひげぷっつん」
『あんぎゃぁああああああああああああああああああああああああ!!!』
逆側の髭もぬいてやった。左右対称の方がいいかなって。
しかしロウリィ、おまえ女子が出しちゃいけない声だしてるぞ……?
『うう……パワハラっす。労基署にうったえてやるっす!』
「はいはい。で、だ。俺は良いことをしてみようとおもう!」
へー、とまったく興味なさそうにするロウリィ。
『なんか同じようなことまえにもしなかったすか?』
「あんときは俺は神じゃなかったろ? 神になったら、何か変わってるかなって!」
『神になろうがノア様が馬鹿なのは変わらないでしょ……』
「じゃかーしー! とにかく! 今日の俺は、良いことをする神……そう! 善神ノアとなるのだ!」
『馬鹿の神の間違いじゃ……』
「ひげぷっつん」
『ふんぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!』
★
帝都カーターの外へとやってきた。
小さな村だが、しかし結構きれいで、立派な家が建ち並んでる。
「なんて街?」
『サラディアスっすよ』
「はぁ……? なんでサラの名前ついてんだよ?」
ちょうどそのときだ。
「ノア様ぁ♡ おひさしぶりですわ」
「うげええ! さ、サラ……」
こいつは俺の婚約者の女。
サラディアス=フォン=グラハム。
元は王国貴族だったのだが、俺が追放されたのがきっかけとなって、なぜだか知らないが着いてきたのである。
青い髪に白いドレスを着た、物腰柔らかい女だ。
まあ邪教徒の一人なんだけども。
「おまえ……なんでこの街、サラディアスって名前なん?」
「前に会議の時に、街の名前をどうしようとなりまして、そのときに、我ら【使徒】の名前をつけようって決まりましたの♡」
「はぁ……使徒? なにそれ」
初めて聞く単語だ。
「ノア様の親衛隊の、部隊長たちのことですわ」
「ああ!? 親衛隊だぁ……!?」
「ええ♡ 部隊長にはわたくしや騎士団長、宮廷魔道士長など、そうそうたるメンツが名を連ねておりますの!」
戦慄する俺とロウリィ。
『やべえやつの集まりじゃねーっすか』
「ちなみにロウリィ様も部隊長ですわ」
『自分了承してねーっすよ!? 何勝手にいれてんすかぁ……!』
イカレタめんつが、勝手に街の名前をつけたってことか……。
サラやリスタの名前が街の名前になるなんてなぁ……。いかれてやがるぜ。
サラは俺に地図を渡す。
「これは?」
「大ダーク帝国の最新版の地図ですわ」
「おまえこんなの作ったの……暇ねえ」
広げると、帝国の概要が乗っている。
たしかに、サラやリスタの名前がついた街がある。
「ん? この【ノアツー】てやつ、うちに居たか? 【ノアサマスキー】とか」
ぽっ、とサラが顔を赤くする。
「それは……わたくしとノア様の、子供の名前ですわ♡」
「は……? こ、子供ぉ! おまえ懐妊したのか?!」
「いえ、将来子供が出来たときの、名前ですわ!」
『子供がかわいそうっすよ! こんなトンチキな名前つけられたら泣いちゃうっす!!!』
ロウリィの言うとおりだ。
「名前は別のにしろ。あと子供ができてもいねえのに勝手に名前つけるな」
「はい……」
しゅん、とサラが肩をすぼめる。
ったく、邪教徒はほっとくと直ぐ暴走するな……!
「ところで、この村で何か困りごとはないか?」
「困りごと……ですの?」
「ああ。善神たる俺が、問題を解決してやろうって思ってなぁ」
くくく、良いことをすれば悪いことになる。だって悪いことしようとして良いことになってしまうんだもん!
「まぁ……! ノア様……ようやく意識を持ってくださったのですね!」
きらっきらに目を輝かせるサラ。
「意識……?」
「わかりました、村人達に聞いてきます!」
だっ! とサラが走ってさっていった。
くくく、いいぞ。これで良いことをすれば、必ず悪い方へ転がっていくだろう!
くはっはははは!
★
「さノです! ノア様!」
「ふぎゃぁああああああああああああああああああああ! 出たぁあああああああああああああああああ!」
後日俺の部屋に来たのは、金髪の悪魔……!
メイド服に身を包んだ悪魔!
「リスタ……!」
『完全にリアクションが、化け物に遭遇したときのそれっすね』
ニコニコと笑っているが、俺は知ってる。
こいつが悪魔だってことを!
「さすがですノア様。聞きました……神としての意識を、ようやく持ってくれたと!」
「ねえよ!」
『いやでも自分で善神って、神をなのってましたよ?』
「……あ!!!!!」
しまった! 確かに今まで、俺自分が神なんて言ってなかった……!
「ちくしょう! まさか善神って言葉に、神が使われてるとは!」
『ノア様って賢者だったんすよね? 馬鹿者の間違いじゃないっすか?』
なに馬鹿者って!?
「ノア様……聞きました。サラディアスの街で困っている人たちに、魔法を使って助けてあげたと……」
キラキラした目を俺に向けるリスタ。
ああもういやぁ……この目、いやぁ……。
「神としての意識をようやく持ってくださったノア様が、神としてのふさわしい振る舞いをしてくださった! このことは【伝道師】たちを使って、世界中に発信しました!」
「ちょっと待て! 伝道師ってなに!?」
「ノア様の偉業をたたえるために、わたしが組織したチームのことです!」
「今すぐ解散しろぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
いつの間にそんなおぞましい組織が!?
「神としての自覚を持ってくださったことで、より一層この帝国の結束は強くなるでしょう!」
ああなぜこうなる!? どうしてこうおなる!?
『そりゃ良いことすれば、良い結果がうまれるでしょ? 良いことしてるんだから』
「なんでだよ! 悪いことしたら良い結果になるんだから、逆のことすりゃ悪い結果になるんじゃないわけ!?」
『その理論がすでに馬鹿者なんだよなぁ……』
ああもぉおおおおおお!
「どうしてこうなったぁああああああああああああああああああああ!!」




