100.第七王子は神の使徒と戦う
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第七王子ノア・カーター。
彼が地上の国々をまとめあげ、大ダーク帝国を設立してから、早数ヶ月。
地上から、更に上空に行った異界……。
そこには、天界と呼ばれる、神々のおわす異世界があった。
『みな、よく集まった』
白い円形のホール。
その中央には、ひげを生やした男が立っている。
彼は【主神】と呼ばれるもの。
主神はこの世界の創造主たる男であった。
主神は自らの魂を分けて作った、残りの神々を見渡す。
『一つ、みなに知らせねばならぬことがある。今地上では……神の威光が、著しくそがれておる』
主神が手をたたくと、地上の様子が映し出される。
かつて世界には神をもしたシンボルがいくつもあり、神を信仰する教会がいくつも存在した。
『だが今はどうだろう。コレを見よ!』
地上の様子が映し出される、光球。
そこに映っているのは、1人の男の姿だ。
黒髪に、やる気のなさそうな顔、そして赤いマント。
『こやつの名は、ノア・カーター。帝王にして、自らを神と名乗る不届き者だ』
……実際には、ノアは自分を神と名乗ったことはない。
しかしカーター領……もとい、王都カーターに住まうもの達はみな、ノアを神だとあがめている。
さらに大ダーク帝国の国民達もまた、ノアを唯一絶対の神だとあがめている。
『かつて我々を敬う心は、この侵略者によって奪われてしまったのだ! ゆゆしき事態だ!』
そうだそうだ、と神々から不満の声が上がる。
『我々神は、地上には基本的に不干渉を貫いてきた。あまりにその力が強大すぎるゆえ、影響を与えすぎてしまうからな。手を出さないと。……しかし』
主神の表情に怒りがにじむ。
『ノア・カーター。こやつは、駄目だ。許せぬ。神無き世界で、神の名を偽り、人々を惑わす……罪人だ……!』
然り、と神々がうなずく。
この場にノアが居れば、全力で否定しただろう。
ノアは一度たりとも神の名を偽ったことも、人々を惑わしたこともない。
むしろ周りが勝手にノアを神と呼び、ノアを困惑させているだけ……。
ようするに、ノアの周りの人々が、頭オカシイのである。
『よって天界はこのノア・カーターを重罪人とし、裁きを下すことを決めた。しかし一方的な虐殺は神のするところではない。……そこで、使徒を送ることにした』
スーツを着込んだ、9人の天使達が出現する。
「お呼びでしょうか、我が創造主よ」
天使達の中央に立つ男が、頭を垂れながら言う。
「熾天使よ。地上へゆき、ノアに罰を与えるのだ。それで改心するのならゆるそう。だが……そう出ない場合は、神の鉄槌を下す」
「はは……! 承知いたしました!」
熾天使をはじめとした、9人の天使は、その場から居なくなる。
地上へに居る、ノアの元へ。
『さて、会議はこれにて終了だが、何かあるか?』
すっ……と手を上げる女が、ひとり。
『幸運の女神リスタルテよ。どうかしたか?』
主神の見つめる先にいたのは、金髪の美しい女神だ。
周囲にいる神々がほぉ……と息をつくほどに美しい。
彼女はリスタルテ。
『ノア・カーターに使者を送る、ということはつまり、ノアに反撃されてもやむなし、ということですよね?』
ざわ……ざわ……と神々がざわつく。
『撃って良いのは、撃たれて良い覚悟のあるものだけであると言います』
『はっ……! リスタルテ。貴様はよもや、神々が人間ごときに負けるとでも思ってるのか?』
『さぁ……どうでしょう。ただノアはあまりに多くの魔を討ち滅ぼしてきました。手を出せば、痛い返り討ちにあうのでは?』
はんっ、と主神は小馬鹿にしたふうに笑う。
『ありえん。神々が負ける確率など、万に一つも。そもそも天使にすら……』
と、そのときだった。
『伝令! 主神様! 伝令でございますぅううううううううううう!』
ばんっ! と位の低い天使が会議室に入ってくる。
『なんだ、騒々しい』
主神に向かって、男が報告する。
『熾天使さまたちが、殺されました! 犯人は、ノア・カーター!』
★
はぁ~~~~~~~~~だっるぅうううううううううううううううい…………。
俺、ノア・カーター。
大ダーク帝国なんてアホな名前の国で、帝王をやっている。
「ろりえもーん……だるいよー……」
帝都カーターの、帝城にて。
「何がだるいんすか、帝王の仕事、全部ナベちゃんに任せてるくせに」
俺は帝王の寝室にて、人間姿のロウリィと一緒に、だらだらしていた。
「ナベはほら、好きで働いてるから」
「ノア様があまりに仕事しなさすぎるから、ナベちゃんが仕方なくやってんすよ」
やれやれ、とロウリィが溜息をつく。
現在、俺はベッドの上でゴロゴロしてる。
ロウリィのむっちり太ももに頭を乗っけてる。
「ろりえもん、なんかさー。最近停滞してるよなー」
「停滞?」
「そ。だぁれも、反逆起こさないの。なんかもう平和すぎてさぁ~」
帝王になって、圧政を強いれば、どっかで反乱軍とかが発生してくるって期待してたのに。
「そりゃ無理でしょ。この国のみんな、ノア様狂信者っすもん」
「でもさぁ~。それにしてもさぁ? こんなクズが王様になってりゃ、一人くらい不満を抱くやつがいてもおかしくない?」
「自分で言うんすね、まあ否定しないっすけど」
俺はろりえもんの尻尾を、ふぎゅっ、とつかむ。
「ふんぎゃぁあああああああああああああああああああ!」
ロウリィがびょんっ、と飛び跳ねる。
「なにすんすか!」
「くずって言うなし」
「自分で言ったんじゃん!」
「自分で言う分にはいいけど、誰かに言われたらいやでしょーが!」
「わがまますぎる……!」
ちくしょう、こんだけ頑張ってるのに、俺はまだ帝王の座を退けないじゃん!
「もっと悪事を働くべきか……」
「無駄っすよ。もう100話っすよ? いい加減悪事が裏目にでること学習しようよ」
なんだ100話って……?
「つーか、こんだけ騒ぎを起こしてたら、そろそろ上が動くと思うんすよね」
「上?」
「そ。神」
神。神ねえ……。
ナベのやつが言っていた。
この世界には神という上位存在がいるらしい。
「でも俺見たことないんだけどね」
「神は滅多なこと起こさないと現れないらしいっすよ。わたしも知識として知ってるだけですけど」
「なんだ、おまえも見たことないのか」
「っすね。基本ひきこもりですし、自分」
しかし神か……。
「いるのかねぇ」
「いるんじゃないっすか?」
「ふーむ……神……神か。神に殺される、ってんなら、かっこつくかな」
「待て待て待て待て」
ロウリィがガシッ、と肩をつかむ。
「ま、まさか……神を使って無能ムーヴかますつもりっすか?」
「え、そうだけど?」
「やめとけっすよ! あんた! それ絶対ろくなことにならないから!」
ロウリィが必死になって止める。
「いやに止めるなおまえ」
「いやあんた! もう100話! 今までど~~~~~~~~~~んだけ失敗という名の成功を収めてきたと思ってんの!? これ、相手が神でやってみ? 神が滅びるっすよ!?」
「おおげさだなぁ、ロウリィくんは」
神が滅びるわけねーっての。
「くくく……いかにノア・カーターであろうと、所詮は人間! 神にかなうはずがないのだぁ……!」
「だからそれ! 敵のセリフ!」
よぉうし、方針が決まったぞぉ!
「ロウリィ、俺、神を利用して無能ムーヴする!」
「やめて! ほんとやめて! 神が滅んだらこの世界まじで終わるっすよ!?」
「ふははは! 人間ごときが、神にたてついてどうこうなるわけがなかろうが! ふはははははは!」
「ノア様はほんとどこサイドの人間なんすかぁ!?」
と、そのときである。
「ノア様!」
「おお、サラじゃないか。どうした?」
青髪の婚約者、サラディアス=フォン=グラハムが入ってくる。
「天使ですわ! 天使が現れましたの!」
「ほぉ……天使、ねえ……」
天使……神の使いか!
くく……ついに来たぞ、神が!
「って、なんで天使が?」
「ノア様がウザいんじゃないっすか? ふぎゃー!」
ロウリィの尻尾をちょうちょう結びしておいた。
「とって! これとってぇ……! サラさまぁ~……」
「はいはい、ロウリィ様、こちらにお尻を向けてください」
サラのやつがロウリィの尻尾をほどく。
「天使の主張はこうでした。【地上の人々をかどわかす悪神ノア・カーター。出頭を命じる】と」
「ふ、ふーん……悪神、かぁ……な、なかなか、かっこいいネーミングじゃなーい?」
「ノア様それ敵。敵の名前。もーほんと、厨二病はなおらんすね」
やかましい。
「くくく……神がついにこの俺の存在を認めたと言うことか……って、ん? ちょっと待て、サラ」
「はい!」
「今君、天使の主張はこう【でした】って言ったな?」
「いいましたわ!」
「天使はどうなった?」
「倒しました!」
「「なにぃいいいいいいいいいい!?」」
俺、そしてロウリィ、驚愕する。
一方でサラが、キラキラした目を向けてくる。
「さノですわ!」
「ば、バカを言うな! 天使だぞ! なぜ天使が、人間ごときに倒されるのだっ!」
「ノア様、それ多分相手のセリフだから」
サラが胸を張って報告する。
「帝都カーターの上空に現れた天使……9体。ノア様のお作りになった【魔力結界】によって、全滅しました!」
魔力結界とは、魔力を感知すると展開される結界のこと。
以前ロウリィのやつが結界を壊してしまった。
飼い主として、結界を張り直していたのだが……。
「ありえん! たかが人間の結界ごときに、天使がやられるなど!」
「でも魔神を傷つけられる結界なら、天使くらいなら余裕で倒せるんじゃね?」
た、確かにそうかも……。
一方でサラが深く感心したようにうなずく。
「さノですわ。天使がいずれ攻めてくると、予期していたからこそ、ノア様が御自ら結界を張ったのですね……! さノ! さノですわ!」
あー……まただ。
まーーーーーーーた、なんか上手いことことが進んでしまってるぅ!
「どうしてこうなった……! だが……く、くく、くははははははは!」
「おお、ノア様がへこたれてないっす。いつもならここで締めに入るのに」
いや、これでいい。
むしろこれがいいんだ。
「天使を蹴散らしたことで、神の怒りに触れただろう……! さすればこの悪神を倒しに、やつらは動くに決まっている……!」
「まあでしょうね」
にやり、と俺は笑う。
「かかってくるが良い、神々め。このノア・カーターが、直々に相手してやるぅ……!」
神が自ら出向いてくるのならちょうどいい。
そこでやられれば、神にたてついた反逆者扱いされて、見事!
左遷、完了!
「いやノア様、そんなにやめたいなら自分で引退するっていったほうが……」
「ほら、神の反逆者って、なんかかっこいいじゃん?」
「ああこの厨二病がぁ……! もうっ! 知らないっすからね!」
「ふんっ! 思い知らせてやろうではないか。神にケンカを売ったやつが、どうなるかをなぁ……!」
「だからそれ、敵のセリフだから……!」




