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100/122

100.第七王子は神の使徒と戦う

【★お知らせ】


無能王子、書籍版が発売中です!


挿絵(By みてみん)


ぜひお手にとってくださると嬉しいです!


【特設サイト】

https://dengekibunko.jp/product/322110000027.html



 第七王子ノア・カーター。


 彼が地上の国々をまとめあげ、大ダーク帝国を設立してから、早数ヶ月。


 地上から、更に上空に行った異界……。


 そこには、天界てんかいと呼ばれる、神々のおわす異世界があった。


『みな、よく集まった』


 白い円形のホール。


 その中央には、ひげを生やした男が立っている。


 彼は【主神】と呼ばれるもの。


 主神はこの世界の創造主たる男であった。


 主神は自らの魂を分けて作った、残りの神々を見渡す。


『一つ、みなに知らせねばならぬことがある。今地上では……神の威光が、著しくそがれておる』


 主神が手をたたくと、地上の様子が映し出される。


 かつて世界には神をもしたシンボルがいくつもあり、神を信仰する教会がいくつも存在した。


『だが今はどうだろう。コレを見よ!』


 地上の様子が映し出される、光球。


 そこに映っているのは、1人の男の姿だ。


 黒髪に、やる気のなさそうな顔、そして赤いマント。


『こやつの名は、ノア・カーター。帝王にして、自らを神と名乗る不届き者だ』


 ……実際には、ノアは自分を神と名乗ったことはない。


 しかしカーター領……もとい、王都カーターに住まうもの達はみな、ノアを神だとあがめている。


 さらに大ダーク帝国の国民達もまた、ノアを唯一絶対の神だとあがめている。


『かつて我々を敬う心は、この侵略者によって奪われてしまったのだ! ゆゆしき事態だ!』


 そうだそうだ、と神々から不満の声が上がる。


『我々神は、地上には基本的に不干渉を貫いてきた。あまりにその力が強大すぎるゆえ、影響を与えすぎてしまうからな。手を出さないと。……しかし』


 主神の表情に怒りがにじむ。


『ノア・カーター。こやつは、駄目だ。許せぬ。神無き世界で、神の名を偽り、人々を惑わす……罪人だ……!』


 然り、と神々がうなずく。


 この場にノアが居れば、全力で否定しただろう。


 ノアは一度たりとも神の名を偽ったことも、人々を惑わしたこともない。


 むしろ周りが勝手にノアを神と呼び、ノアを困惑させているだけ……。


 ようするに、ノアの周りの人々が、頭オカシイのである。


『よって天界はこのノア・カーターを重罪人とし、裁きを下すことを決めた。しかし一方的な虐殺は神のするところではない。……そこで、使徒を送ることにした』


 スーツを着込んだ、9人の天使達が出現する。


「お呼びでしょうか、我が創造主よ」


 天使達の中央に立つ男が、頭を垂れながら言う。


「熾天使よ。地上へゆき、ノアに罰を与えるのだ。それで改心するのならゆるそう。だが……そう出ない場合は、神の鉄槌を下す」


「はは……! 承知いたしました!」


 熾天使をはじめとした、9人の天使は、その場から居なくなる。


 地上へに居る、ノアの元へ。


『さて、会議はこれにて終了だが、何かあるか?』


 すっ……と手を上げる女が、ひとり。


『幸運の女神リスタルテよ。どうかしたか?』


 主神の見つめる先にいたのは、金髪の美しい女神だ。


 周囲にいる神々がほぉ……と息をつくほどに美しい。


 彼女はリスタルテ。


『ノア・カーターに使者を送る、ということはつまり、ノアに反撃されてもやむなし、ということですよね?』


 ざわ……ざわ……と神々がざわつく。


『撃って良いのは、撃たれて良い覚悟のあるものだけであると言います』


『はっ……! リスタルテ。貴様はよもや、神々が人間ごときに負けるとでも思ってるのか?』


『さぁ……どうでしょう。ただノアはあまりに多くの魔を討ち滅ぼしてきました。手を出せば、痛い返り討ちにあうのでは?』


 はんっ、と主神は小馬鹿にしたふうに笑う。

『ありえん。神々が負ける確率など、万に一つも。そもそも天使にすら……』


 と、そのときだった。


『伝令! 主神様! 伝令でございますぅううううううううううう!』


 ばんっ! と位の低い天使が会議室に入ってくる。


『なんだ、騒々しい』


 主神に向かって、男が報告する。


『熾天使さまたちが、殺されました! 犯人は、ノア・カーター!』


    ★


 はぁ~~~~~~~~~だっるぅうううううううううううううううい…………。


 俺、ノア・カーター。


 大ダーク帝国なんてアホな名前の国で、帝王をやっている。


「ろりえもーん……だるいよー……」


 帝都カーターの、帝城にて。


「何がだるいんすか、帝王の仕事、全部ナベちゃんに任せてるくせに」


 俺は帝王の寝室にて、人間姿のロウリィと一緒に、だらだらしていた。


「ナベはほら、好きで働いてるから」


「ノア様があまりに仕事しなさすぎるから、ナベちゃんが仕方なくやってんすよ」


 やれやれ、とロウリィが溜息をつく。


 現在、俺はベッドの上でゴロゴロしてる。

 ロウリィのむっちり太ももに頭を乗っけてる。


「ろりえもん、なんかさー。最近停滞してるよなー」


「停滞?」


「そ。だぁれも、反逆起こさないの。なんかもう平和すぎてさぁ~」


 帝王になって、圧政を強いれば、どっかで反乱軍とかが発生してくるって期待してたのに。


「そりゃ無理でしょ。この国のみんな、ノア様狂信者っすもん」


「でもさぁ~。それにしてもさぁ? こんなクズが王様になってりゃ、一人くらい不満を抱くやつがいてもおかしくない?」


「自分で言うんすね、まあ否定しないっすけど」


 俺はろりえもんの尻尾を、ふぎゅっ、とつかむ。


「ふんぎゃぁあああああああああああああああああああ!」


 ロウリィがびょんっ、と飛び跳ねる。


「なにすんすか!」

「くずって言うなし」


「自分で言ったんじゃん!」

「自分で言う分にはいいけど、誰かに言われたらいやでしょーが!」


「わがまますぎる……!」


 ちくしょう、こんだけ頑張ってるのに、俺はまだ帝王の座を退けないじゃん!


「もっと悪事を働くべきか……」


「無駄っすよ。もう100話っすよ? いい加減悪事が裏目にでること学習しようよ」


 なんだ100話って……?


「つーか、こんだけ騒ぎを起こしてたら、そろそろ上が動くと思うんすよね」


「上?」


「そ。神」


 神。神ねえ……。


 ナベのやつが言っていた。

 この世界には神という上位存在がいるらしい。


「でも俺見たことないんだけどね」

「神は滅多なこと起こさないと現れないらしいっすよ。わたしも知識として知ってるだけですけど」


「なんだ、おまえも見たことないのか」

「っすね。基本ひきこもりですし、自分」


 しかし神か……。


「いるのかねぇ」

「いるんじゃないっすか?」


「ふーむ……神……神か。神に殺される、ってんなら、かっこつくかな」


「待て待て待て待て」


 ロウリィがガシッ、と肩をつかむ。


「ま、まさか……神を使って無能ムーヴかますつもりっすか?」


「え、そうだけど?」


「やめとけっすよ! あんた! それ絶対ろくなことにならないから!」


 ロウリィが必死になって止める。


「いやに止めるなおまえ」


「いやあんた! もう100話! 今までど~~~~~~~~~~んだけ失敗という名の成功を収めてきたと思ってんの!? これ、相手が神でやってみ? 神が滅びるっすよ!?」


「おおげさだなぁ、ロウリィくんは」


 神が滅びるわけねーっての。


「くくく……いかにノア・カーターであろうと、所詮は人間むしけら! 神にかなうはずがないのだぁ……!」


「だからそれ! 敵のセリフ!」


 よぉうし、方針が決まったぞぉ!


「ロウリィ、俺、神を利用して無能ムーヴする!」


「やめて! ほんとやめて! 神が滅んだらこの世界まじで終わるっすよ!?」


「ふははは! 人間ごときが、神にたてついてどうこうなるわけがなかろうが! ふはははははは!」


「ノア様はほんとどこサイドの人間なんすかぁ!?」


 と、そのときである。


「ノア様!」


「おお、サラじゃないか。どうした?」


 青髪の婚約者、サラディアス=フォン=グラハムが入ってくる。


「天使ですわ! 天使が現れましたの!」


「ほぉ……天使、ねえ……」


 天使……神の使いか!


 くく……ついに来たぞ、神が!


「って、なんで天使が?」

「ノア様がウザいんじゃないっすか? ふぎゃー!」


 ロウリィの尻尾をちょうちょう結びしておいた。


「とって! これとってぇ……! サラさまぁ~……」

「はいはい、ロウリィ様、こちらにお尻を向けてください」


 サラのやつがロウリィの尻尾をほどく。


「天使の主張はこうでした。【地上の人々をかどわかす悪神あくしんノア・カーター。出頭を命じる】と」


「ふ、ふーん……悪神あくしん、かぁ……な、なかなか、かっこいいネーミングじゃなーい?」


「ノア様それ敵。敵の名前。もーほんと、厨二病はなおらんすね」


 やかましい。


「くくく……神がついにこの俺の存在を認めたと言うことか……って、ん? ちょっと待て、サラ」


「はい!」


「今君、天使の主張はこう【でした】って言ったな?」


「いいましたわ!」


「天使はどうなった?」


「倒しました!」


「「なにぃいいいいいいいいいい!?」」 


 俺、そしてロウリィ、驚愕する。


 一方でサラが、キラキラした目を向けてくる。


「さノですわ!」


「ば、バカを言うな! 天使だぞ! なぜ天使が、人間ごときに倒されるのだっ!」


「ノア様、それ多分相手のセリフだから」


 サラが胸を張って報告する。


「帝都カーターの上空に現れた天使……9体。ノア様のお作りになった【魔力結界】によって、全滅しました!」


 魔力結界とは、魔力を感知すると展開される結界のこと。


 以前ロウリィのやつが結界を壊してしまった。


 飼い主として、結界を張り直していたのだが……。


「ありえん! たかが人間の結界ごときに、天使がやられるなど!」


「でも魔神を傷つけられる結界なら、天使くらいなら余裕で倒せるんじゃね?」


 た、確かにそうかも……。


 一方でサラが深く感心したようにうなずく。


「さノですわ。天使がいずれ攻めてくると、予期していたからこそ、ノア様が御自ら結界を張ったのですね……! さノ! さノですわ!」


 あー……まただ。


 まーーーーーーーた、なんか上手いことことが進んでしまってるぅ!


「どうしてこうなった……! だが……く、くく、くははははははは!」


「おお、ノア様がへこたれてないっす。いつもならここで締めに入るのに」


 いや、これでいい。

 むしろこれがいいんだ。


「天使を蹴散らしたことで、神の怒りに触れただろう……! さすればこの悪神を倒しに、やつらは動くに決まっている……!」


「まあでしょうね」


 にやり、と俺は笑う。


「かかってくるが良い、神々め。このノア・カーターが、直々に相手してやるぅ……!」


 神が自ら出向いてくるのならちょうどいい。

 そこでやられれば、神にたてついた反逆者扱いされて、見事! 


 左遷、完了!


「いやノア様、そんなにやめたいなら自分で引退するっていったほうが……」


「ほら、神の反逆者って、なんかかっこいいじゃん?」


「ああこの厨二病がぁ……! もうっ! 知らないっすからね!」


「ふんっ! 思い知らせてやろうではないか。神にケンカを売ったやつが、どうなるかをなぁ……!」


「だからそれ、敵のセリフだから……!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 100話!おめでとうございます! ノアッチ相変わらず敵サイドのセリフをwww ノアッチが敵のセリフ言いまくりも、敵とセリフがまるかぶりのシンクロしすぎ!も大好きです! そしてちゃんとさノ!…
[良い点] 100話おめでとうございます! (*´꒳`ノノ゛パチパチ (`・∀・)ノイェ-イ! 神キタ━(゜∀゜)━! いつも面白いお話有難うございます! 蝶々結びのくだり良きです! (๑•̀ㅂ…
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