お茶会 2
ちょっと長めかもしれません。
「貴方が言っている‘‘あの方‘‘というのは、王宮騎士団の第一部隊副隊長のテオドール=ヴェスタン様よ。昨日は、怪我をなさった隊長のベルナール様に代わり、陛下の護衛をなさっていたそうよ。」
「本当ですか?!ゴ、ゴホンッ。なんでお母様、そのことを!?!マリーにしか、行っていないはz、もしかして、マリー言ったわね?!もう!」
少し後ろで控えていたマリーをジト目で見るが、素知らぬ顔でそらされてしまった。
バレていることは、隠しようがないので、素直に聞こうとするが、なんだか恥ずかしくなってしまって少し俯く。
しかし、気になっていた男の名前がテオドール=ヴェスタンだとわかり、知らないうちに頬が緩む。
「まあまあ、あまり、マリーを怒らないであげて。聞き出したのは私なんだから。ただ、本当にあのヴェスタン卿なの?陛下の後ろに立っていた方であっている?貴方の記憶に間違いはない?」
今さっき、シャルロットに恋を気付かせはずのアリスが執拗に尋ねてくる。
「あの、、?お母様、何をおっしゃっているのですか?」
「シャルは、ヴェスタン卿の何をみて一目惚れしたのかしら?たくましいお身体?それとも、、、」
アリスは、言い淀む。
「それとも、なんですか?」
「あのお顔、、、?でも、そんなわけないわよね??」
アリスがそういうのと同時に、シャルロットがテオドールの顔を思い出して赤面する。
アリスは、心底驚いたというような顔をした。
「そうなのね、貴方はヴェスタン卿のお顔に。それはまたなんとも、、、シャル、貴方は彼の顔をどう思う?」
「彼の顔?とても、凛々しくて素敵なお顔だと思いますわ///淑女らしくないですわね、恥ずかしい//」
そう言って、恥ずかしそうにクネクネしだしたシャルロットに、アリスはどこか納得したような諦めたような表情を浮かべる。
「貴方の気持ちはわかったわ。けれどね、あの方のお顔は、その、なんというか、えっと、」
言葉をどんどん濁していくアリスに急かすような視線を向ける。
「やあね、怒らないでちょうだい。そうね、はっきり言ってしまうと、ブサイクなのよ。世間の方から見ると。ひどい時は、目を合わせるだけで気を失ってしまう方もいるらしいの。そのせいで、26歳になったらしいのだけど、ご結婚はされていないそうよ。恋人もいらっしゃらないようね。」
このルベルトワ王国は、だいたい男女ともに20歳を過ぎる頃には、婚約者がいたり、結婚していたりする。26歳というのは、結婚適齢期を過ぎているといえる。
「ブサイク、?でも、私は全くそんなこと思いませんでした。どういうことですか???」
シャルロットには、いい意味で目を引くような容姿を持っているテオドールが、他の人からしたら悪い意味だということに驚きを隠せない。
(あら、、?私には好ましく見えるということは、私は何かおかしいのかしら?いえ、でも、ヴェスタン卿が素敵なことには変わらないわ。でも、何がおかしいのかしら?)
シャルロットは、何か人と違うのではないかと思ったが、世間知らずの彼女には何が違うのか分からなかった。
「シャル、トリスタン様やシリル、シモンの顔についてどう思う?見た目の話だけで、どう思うか言ってみなさい。」
「お父様とお兄様たちのお顔?そうですね、、なんというかあっさりで印象にあまり残らないような、、、?あと、全体的に線が細いと思いますわ。」
生まれてきた時から、そばにいる家族の顔について考えることなどなかったが、改めて思い出してみると、テオドールとは何もかもが正反対の顔立ちといえる。
トリスタンもシリルもシモンも、とてもよく似ていて双子の二人は、アリスが言うにトリスタンの若い頃の生き写しだそうだ。
「そうなの。つまり、かっこいいとは思わないのね?貴方は、知らないかもしれないけれど、シリルとシモンは、社交界では知らないものはいないと言うくらいにはモテているのよ?あの二人は、まだ結婚には興味がなさそうだけれど。あの子たちとまともに話せる女性は、家族とここの使用人くらいなものだわ。それくらい、モテているのよ、顔でね。だから、シャル、貴方が好ましいと思う容姿は、世間では真逆ということになるわ。」
全く知らなかったことを言われて、驚く。
確かにテオドールは、目鼻立ちがくっきりしていて、彫りが深い。反対にトリスタンや双子たちは、目鼻立ちがぼんやりと、彫りが浅く、よく言えばあっさり、悪く言えば冴えない顔をしていた。
家族として、トリスタンや双子たちと一緒にいる分には、そんな噂は入ってこなかった。
だが、よくよく思い返してみると、新しい使用人や新しい講師の先生方がトリスタンや双子たちに会うと、女性男性問わずに動きが止まって、なぜか見惚れるように固まっていたのを思い出した。
(なるほど、、、そういうことならヴェスタン卿が陛下の後ろに隠れるように立っていた説明がつくわ。あの時は、見惚れることで頭がいっぱいで気づかなかったけれど、よく考えて見たら、騎士なのにあんなに下がっている必要はないものね。もしかして、自分の顔をみて不快に思われないように気を使って、、?なんて、他人思いの素敵な方なの、、)
まだ話したことすらないテオドールの印象が、シャルロットの中で上がっていく。
「一人の世界に入り始めているところ悪いけれど、貴方は、悪い意味でヴェスタン卿のお顔を覚えているわけではないのよね?まあ、もうわかりきっていることだと思うけれど、、ふふ。」
「ヴェスタン卿のお顔を悪い意味で覚えているなんて、そんなことありえませんわ!」
最後、少し悔い気味になってしまったが気にしない。
「わかったわ、うふふっ。貴方がそんなに興奮するのはめずらしいわね。もう一度、聞くわよ。貴方は、ヴェスタン卿と結婚したいと思う?」
話したことがないテオドールと結婚したいかと問われて、普通は、「はい、したいです。」と答えるのは難しいことだけれど、シャルロットには、テオドールが自分以外の女性と一緒にいるところを想像すらしたくないと思い、意を決して話す。
「はい、結婚したい、と思います。けれど!けれど!やはり、結婚には相互の気持ちが大事なのであって、ヴェスタン卿が嫌と言ったら私は大人しく引き下がります!!!爵位にものを言わせたくないんです!彼には、ちゃんと私をす、す、す、好きになってほしいのです、、、、、、、」
急に恥ずかしくなり、どんどん頭が下に向かっていく。
(あ、穴があったら入りたいわっ!!す、す、好きになってほしいだなんて、おこがましいッ!!!)
一人でまくしたて、一人で赤くなっているシャルロットを見て、アリスは心底嬉しそうに話す。
「そうね、自分が惚れた殿方は自分で掴むのよ。大丈夫、貴方はどこに出しても恥ずかしくない立派な淑女よ。多少強引だって、構わないわ。でも、本当に困ったら私やこの家を頼るのよ。トリスタン様やシリルたちには、精一杯頼ってあげなさい。きっと、協力してくれるわ、ふふふ。さて、そろそろ日が沈むわ、少し冷えるからもう部屋に戻りなさい。」
アリスが、笑顔でカップに入っていた紅茶を飲み干し、退室を促す。
シャルロットは、何かを考えながら温室を後にした。
やっとこさ、美醜逆転っぽいのが出てきましたね!普通、こういう逆転モノって最初にそういう設定出すモノだと思うのですが、何も考えずに書いてたらこんな感じになりました。(=゜ω゜)ノ
お読みいただき、ありがとうございました。