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小さな国のお話  作者: 夢良
11/14

練習試合 3

とうとうです!


そこに立っていたのは、茶色の髪に、深く吸い込まれるような緑の瞳、隊服の上からでもわかる筋骨隆々な体。

シャルロットは息を呑む。

デビュタントの日、一度、いや一瞬しか目にすることが出来なかったが、直ぐに誰だかわかる。

そう、シャルロットが思いを寄せているテオドール=ヴェスタンだ。


(・・・・・・・・・え?)


突然のテオドールの登場に頭が追いつかない。

シャルロットは、無意識にテオドールをガン見していた。

数分たった頃、空気になっていたシリルが口を開く。


「ごほん!シャル、こちらテオドール=ヴェスタン。第一騎士団の副隊長だよ。」


紹介されたテオドールは、軽く敬礼する。


「シャル、ご挨拶は?」


そこで、状況を理解し始めたシャルロットは、慌てて自己紹介をする。


「も、申し訳ありません!は、初めまして!レイヴァロワ侯爵が娘、シャルロット=レイヴァロワです。以後お見知りおきを。」


慌てて立ち上がり、デビュタントのために練習しておいたカーテシーをする。


(私ったら、恥ずかしい!もう成人なのに、挨拶すらまともに出来ないなんて、、)


シャルロットの顔がほんのりピンクに色づく。


「ルベルトワ王国第一騎士団副隊長、テオドール=ヴェスタンであります。名高きレイヴァロワ侯爵の麗しき宝石にお会い出来たこと、心より嬉しく思います。」


少しだけ腰を折り、テオドールが騎士らしく挨拶をする。

麗しき宝石という聞いたことの無い名に、社交界デビューして間もないシャルロットは、お世辞とわかっていても恥ずかしくて、顔が赤くなるのを抑えられない。

恥ずかしくて、少し俯く。


そんなシャルロットを見て、テオドールが悲しそうな瞳をするのも、もちろん気がつけなかった。



「ヴェスタン卿!今日の調子はどう?勝てそう?」


突然、シリルがテオドールに話しかける。


「はっ。調子は普段とさほど変わりません。勝てるかどうかは、戦ってみないことには難しいかと。」


深くて、痺れるような低い声に、(かっこいいな)とつい思ってしまう。


「あっ!ヴェスタン卿、聞きたいことがあるんだけど。優勝を捧げようと思っている人はいるのかな?」


急にシリルが爆弾発言をする。

そんなことを聞いて、もしテオドールがいると答えてしまったのなら、もうシャルロットは、話しかけることが出来なくなってしまう。


数秒経ってから、テオドールが口を開く。


「特にそのような方はいません。優勝を捧げると言っても、私のような人間には、一生縁のないことです。」


テオドールは、少し自嘲気味に話す。

シャルロットには、縁のないということがどういう事なのかよく分からなかったが、なぜだか胸が締め付けられるのと同時に、今テオドールが想いを寄せている人は、いないということに、すこし喜んでいる自分がいた。


そこでふと、なにかがおかしいことに気づく。

テオドールが、ひたすらにこちらを見ようとしない。

彼が挨拶をしたとき、本来ならば目が合うはずだが、シャルロットの少し上の方を見ていた。


(どうして、私を見てくれないの?お兄様とは、普通に会話しているのに。やっぱり、私のことがお気に召さなかったのかしら、、、、)


シャルロットはそう決めつけ、1人で落ち込む。

ここで、気の強い令嬢なら怒っていたことだろう。どうして目が合わないのか。

けれど、シャルロットにそれを聞く勇気はなかった。

目も合わせる価値がないと、遠回しでも言われたくないからだ。


「、、、ル?、シャル??どうしたの?具合でも悪い?」


1人でシュンとしているシャルロットは、シリルに話しかけられていることに気が付かなかった。


「ッ!申し訳ありません、、私は大丈夫ですわ。」


「そう?きついときは必ず言うんだよ。いいね?」


「分かっていますわ。お兄様。それよりも、」


自分が嫌われているかもしれないという恐怖に陥る前に、テオドールに言いたいことがある。

これだけは言うぞと、覚悟を決めてテオドールをまっすぐと見る。

やっぱり目の前にいるテオドールは、とてもかっこよくて自然と頬が赤くなってしまう。

けれど、先程の想い人はいない発言に、シャルロットは、ドクドクとうるさい心臓に鞭を打って、声を出す。


「ふ、副隊長様!!!あの、もし宜しければ、その、」


なかなか次の言葉を発することが出来ないシャルロットに、空気以上に薄くなっていたマリーがシャルロットにしか聞こえない程の小さな声で、(お嬢様ッ!頑張れッ!)と背中を押す。


(シャルロット!頑張るのよ!さあ!口を開けて!)


「こ、今回の優勝、是非、私に、ささ捧げてはくださいませんか!??!」




お読みいただき、ありがとうございました。

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