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小さな国のお話  作者: 夢良
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練習試合 2


まず、行われるのは、開会式。

第一、第二部隊の隊長らが簡単な挨拶と開始の宣言をする。

練習試合で戦うのは、隊長以外の騎士たちだ。

なので、彼らは、審判役として練習試合を見守る。

そして、最後まで戦い抜いた者が所属している隊の隊長と一戦を交えることが出来る。

けれどそれは、おまけのようなものなので負けても勝っても、何かが変わるということは無い。と言うよりも、隊長に勝てる優勝者は、いないそうだ。


そんなことを、シリルに説明してもらっているシャルロットは、全く聞いていなかった。

列の中にいるであろうテオドールを探していたのだ。

副隊長であるテオドールは、きっと前の方にいるだろうと予想して、きょろきょろと見回してみるが、一向に見つからない。

必ず、いるはずだと全体を見てみると、なんと彼は、1番後ろに隠れるように立っていた。

副隊長であるはずのテオドールが、なぜ一番後ろに並んでいるのか理解できなくて、シリルを見る。


「お兄様、なぜ、ヴェスタン卿は、あんなに後ろにいるのですか?彼は、副隊長でいらっしゃるのですよね?どうして?」


なんだか、テオドールが馬鹿にされているような気がして語尾が強くなる。


「まあまあ、落ち着いて。誰もあの人のことはバカにしないよ。いや、出来ない、かな。表立ってはね。あの人が後ろにいるのは、優しさだよ。」


シリルの言っていることがよく分からない。




「優しさ?何がですか?」


「ヴェスタン卿のあの顔は、万人受けするものでは無い。今は、だいぶ落ち着いてきた方だけど。少し前までは、観客が顔を見るだけで、気分が悪くなったり、倒れたりする人までいたんだ。そのせいで、騎士たちの救護スペースには騎士以外の人達が来て、いつも大変そうだったよ。あの人は、優しいからさ。自分から目立たないように後ろに並ぶと言ったんだ。」


「そんな、、、」


その話を聞いて、なぜだか悲しくなる。

今まで、外に出てこなかったシャルロットには、テオドールが目の当たりにしてきた光景を予想することすら出来なかった。

というより、自分には耐えられそうになくて、考えることが憚られた。


「そんな悲しい顔をしないで。あの人は、あの人なりに楽しそうに生きてる。シャルは、それを否定するの?俺には、そっちの方が悲しいと思うな。」


シリルの言ったことにハッと気付かされる。

まだ、まともに会った事すらないのに、テオドールの人生を勝手に想像するのは、とても失礼な事だと思った。


「そうですね。会ったことすらない小娘が、人の人生を考えるものではありませんよね。それより、ヴェスタン卿は、いつ頃お出になるのですか?」


なんだか、重い空気になってしまったので、無理やりに話題を変える。


「うーん。まあ、最後の方じゃないかな?基本的に、階級関係なくトーナメントは組まれてると思うけど、副隊長だからね。初めから出てくることはないと思うよ。それに、前回は、優勝したからね。中盤もしくは終盤あたりからしか出てこないと思うな。簡単に言えば、優勝候補ってやつだね。」


今、シリルの口から驚くことがサラッと言われた。


「え、優勝?」


「そうだよ。あれ?知らなかったの?まあ、仕方がないか。ヴェスタン卿は、まだ若いけど剣術の腕はかなりあるよ。多分、そろそろ団長を倒しちゃうんじゃない?」


まだ、20代半ばで副団長というのは、剣術に優れているのだろう。

けれど、団長と互角、もしくは同等以上とは思ってもみなかった。


「そ、そうなんですか?」


「うん。ていうか、優勝候補というより、もう既に優勝が決まってると言っても過言ではないかな。ヴェスタン卿は、強さだけでのし上がってきた人だからね。あの人に勝てるやつがいるなら、この国は危ないかもね。」


このルベルトワ王国を揺るがすほどの力を持っているとは、想像すらしていなかった。

ふと、デビュタントの時に一目見たときのテオドールを思い出す。

あの逞しい体に抱きしめられたいという欲望が顔を出す。


(ハッ!何を考えているの!私!だ、抱きしめられたいだなんて、何てはしたない!)


自分が考えていたことが恥ずかしくて、クネクネし始める。


ゴーンゴーン


シャルロットが、恥ずかしさに頬を染めていると、鐘がなる。

これが鳴ると、20分ほどの休憩がとられる。

開始から、思ったよりも時間が経っていたようだ。

ふと、隣を見ると、先ほどまでいたシリルがいなくなっていた。

立ち上がる気配など全くなかったが、休憩時間であるため気にせずに、会場に目を戻す。


5分ほどすると、シリルが戻ってきた。

シャルロットがシリルを見ると、何だかシリルらしくない顔で立っていた。


「お兄様、、?そのお顔はなんですか?」


シリルは、無言でニヤニヤしている。

なぜだかシャルロットは、とてもいたたまれないような気持ちになる。


「シャル。さっき俺、ヴェスタン卿とのこと、協力するって言ったでしょ?」


「ええ」


なんで急にそんな話題になったのかわからなくて、驚く。


「そ、こ、で!!シャルロットにサプライズ!」


そう言って、王族専用席の扉を開ける。

扉の向こうには、一人の男が立っていた。



ついに!!!!です!!!!!


お読みいただき、ありがとうございました。

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