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9話


 いつも通りに、アタシは学校に登校していた。

 ただ、いつもと違うのは天ちゃんがいないこと。

 アタシはいつも天ちゃんと登下校をともにする、していた。だけど、イジメを見せないために一緒に学校に行く機会が減っていった。そして昨日、天ちゃんはイジメを受けた。アタシのせいで、アタシが虐められていることを黙認してしまったから。

 アタシは天ちゃんに何も言える資格はないし、何も言ってはいけない。天ちゃんから声をかけてくれない限り、アタシは天ちゃんと話すのは難しい。

 

 

 ……それはそれとして、気になるのは昨日の電話……。優華ちゃんは、アタシがイジメを誰にも知られたくないということを知っていた……のか? 言った記憶は無い。……もし…………もしも、彼女がそれを推測して知っているとしたらキレ者を超越した……それほどのキレ者。心を読めるとかそんなことはないのに、彼女は知っていた。そんなことがあり得るのか? そう考えたしまう。

 

 そんなこんなを考えてしまいながらも学校の門――正門だけど、そこを通る。

 

 そこには生徒や先生が挨拶運動をしていて、当然アタシは笑顔で挨拶をした……わけではない。

 アタシは学校に来る時間帯がかなり早い。挨拶運動と称して先生たちが挨拶をする時間帯は八時から八時二十分。今は八時よりも少し――五分程度早い。だからあまり人がいない。こんなに早い理由は天ちゃんが早起きで、すぐに学校に行き、アタシと戯れ言の限りを尽くすからだ。……今日はいないけど、習慣というものは離れなくて、つい早く来てしまった。

 

 学校の玄関を通って、教室に向かうけど……正直なんにも予定がなく、何をしようか迷う――、

 

 「あはっ! 嫌だよ!」

 

 

 ……教室から、声が聞こえたので中に入らない。

 明美ちゃんの声? 相手は誰だ?

 そう思って、教室の中を軽く覗く。

 教室の中いたのは二人――明美ちゃんと、……学級委員長――幾間くん……か。

 

 「なぜだ?」

 

 「だって今メチャクチャ楽しいんだよ! どんどんどんどん広がってく展開。止められないし私は止まらない。さっさと昨日のヤツもぶっ倒してぇわぁ」

 

 「――? 何を言ってるか分からないけどもう一度言う! 千秋さんを虐めるのは止めろ!」

 

 ……何もしないでって言ったのに。あれだけこの(虐め)に関わりをもつなって、冷酷に伝えたのに…………!

 幾間(いくま)くんは大バカだ。

 アタシが言ったことと真逆のことをした。助けるなって言ったのに助けてる。どんなに危険か分からないのに彼はアタシを助けようとしていた。

 

 「やだよぉ、そのために私なんか呼んで説教たれてんのー? バッカじゃねーの?」

 

 呼んだ……というのは何かで連絡した? 何で? 連絡網で連絡した……?

 

 「バカじゃない。これは大事な話だ」

 

 「本当にそうか? 大事なのか? アイツが虐められているか虐められていないかなんてのは、本人もバレなきゃ気にしない。すでにアンタ以外にもバレてる気もするけどねー」

 

 …………明美ちゃんには、アタシの考えがバレてたか。

 虐められている虐められていないは些細なこと。合っている――バレなければ、という条件だけど……。

 でも、その許容量は限界に近づいてきていた。

 これ以上広まると噂になる。

 そうすれば噂はネズミ算で増える。

 増えれば疑いをもつ人間がでる。

 そしてその人間が問いかける。『なんで千秋が虐められているのか?』と、そう質問される。

 そんなやつ……偽善者だ。虐められている人に話しかけて、自分は優しいと思ってる。根本的に助けることはしないのに……。

 例外として神田先生は、多分根本的に助けようとしている。でも、当然のように協力しようとしてくる。そうすれば、イジメは解決しても、事実が流れる。それ(イジメ)は、明るい性格の人が体験することか? 問われればそんなわけがないと、ほとんどの人が答える。

 イジメとは、強者の愉悦の糧として弱者たちを貪る行為。悦楽に、快楽に浸って行いながらも、強者としての強さを保つ。弱者は従うだけ。

 明るい性格=弱者か?

 違う。強者でもなければ弱者でもない。競争や優劣をあまり気にせずも強者にも弱者にも当てはまらないはずだ。

 優劣を決めるのは……嫌いだ。優秀者になれば劣等者に疎まれ嫌われ妬まれて、劣等者になれば優秀者に滑稽に、そして荒唐な人間と勝手に認知される。子供であるほどそれは表にでて、大人であるほど裏に出る。

 だから、普通に、一般人として、アタシはいたかった。普通に友達ができ、普通に勉強ができて、普通にスポーツができて、普通というものにまみれた方が楽で、楽しく人生を享受できる。

 それにトゲが刺されたのは、完全に明美ちゃんがいけないけど……。

 

 「虐められている虐められていないが関係ないはおかしいだろ……」

 

 「いや、アイツはホントにそう思ってるさ。現に虐められている理由さえ知らずに、勝手に虐められてきているんだからなぁ!」

 

 そう言えば、確かに知らない。

 アタシはなんで、イジメにあっている? 原因は?

 

 「……お前が千秋さんを虐める理由はなんだ?」

 

 「まぁ結論的に言えば誰でも虐められれば良かったんだ」

 

 「は?」

 

 …………。

 

 「けど、強いて話すなら、アイツの髪の色が気に喰わないから……、というかそれを理由にした方が事は大きくならないから。だからアイツを狙う」

 

 …………。

 アタシの髪は生まれもった茶髪だ。お母さんの地毛が茶色で、お母さんの遺伝性が高いのか知らないけど、アタシも茶髪になった。

 でも確かに、それに関して言えばクラスから浮いていた。小学校のときはそれを良しとしない生徒はいなかったけど、今は、中学校になったから、変わってしまったのかもしれない。

 

 「彼女の髪は地毛だ」

 

 「そんなの知ってるつーの」

 

 もっとも、明美ちゃんの場合はそのことに妬んでいるわけもなく、虐めている理由をソレにすればバレてしまった後が楽……という意味合いだけど。

 

 「……結局は、なんで虐めるんだ……?」

 

 「虐める行為に快感が、快楽が生じれば、もう止められないでしょ? だからー、私はアイツを虐める。それ以上もそれ以下もない」

 

 「…………」

 

 「もしもこれ以上、説教たれるなら、それを理由にしてお前も虐めてもいいのよ。虐められたくないなら、下らない説教は止めてくれない?」

 

 今の明美ちゃんの言っていることに嘘はほとんどないはずだ。

 彼女は知っていた。嘘というものは取り扱うことが難しいことを、もちろんアタシも知っていた。

 嘘に慣れていなければ軽い嘘は使えても、重い嘘は扱えない。表情や態度に出やすくなるからだ。中学校入りたて程度の年なら余計に……。アタシも嘘は上手くはない。だから、それが表情に出る。なるべく自覚しないようにするように努力はしているけど、まだ重い嘘を扱うことは不十分だ――アタシも、明美ちゃんも。

 

 それはともかく、幾間(いくま)くんは、これ以上アタシのイジメには関わらないほうがいい。

 

 「虐めても構わない。お前が千秋を虐めなければ……それで」

 

 「アンタの鳴き声がオモシロイなら千秋は虐めねーよ。あはっ♪ 滾るわ。なんたって私は激情を見たいから。アンタがそれを見せてくれるなら私はアイツを虐めないようにするわ」

 

 「……それでいい。内容はなんだ――」

 

 「ちょっと何勝手に話を進めてるのかな?」

 

 「――!?」

 

 アタシは教室に入っていた。そして、思わず言及した。

 なんとなく、無意識に。

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