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8話


 優華を見送ったあと、アタシは自分の部屋に戻って少し考える。

 

 彼女は――松木優華は運動神経抜群で、頭もキレる。果たしてその浅はかな結論でいいのか? 怪しいと思えることはない。ないと思いたいけど、やっぱり気がかりなのは質問の中にどんな真実が隠されていたか、だ。

 

 質問は

 ・何年何組?

 ・学校には何時に着く?

 ・学校はいつも何時に帰る?

 ・どの校門を通る?

 ・いつもの顔の向きは上?下?

 ・明美に虐められている期間

 ・明美にどのくらいの頻度で会うか?

 ・明美の登校と下校時間は?

 ・学校の屋上に入ったことがあるか?

 ・相手(明美)の普段持ち歩いている武器は?

 

 これらだ。ひとつずつ見ておこうか。

 

 

 ・何年何組か?

 これはアタシがどこの組か知りたいんだろう。多分何年という部分は関係ない。

 それも踏まえて結論を出すなら、授業中に何かをするのかもしれない。……でもそれは齟齬が起きるはずだ。授業中にどうやってイジメに終止符が打てるのか……、だから多分これは余分な、余計な質問。

 

 

 次、

 ・学校には何時に着く?

 ・学校はいつも何時に帰る?

 これはアタシが学校に何時から何時までいるかを聞いたんだろう。これがイジメ解決に一役買いそうな気はする。

 多分……、学校にいる間にイジメを解決する算段をつけるはずだ。そのためには、確かに必要だ。

 

 

 ・どの校門を通る?

 アタシは正門を通っている。

 イジメ解決に結びつけるなら登下校のどちらかにアタシと明美ちゃんと話し合うようにするのかもしれない。

 でも、あまり応用が効かない。だからこれもどうでもいい質問の可能性がある。

 

 

 ・いつもの顔の向きは上?下?

 明るいのがアタシの性分だから、当然『上』と答えたけど、これは……意味不明だと言ってもいい。

 イジメを解決するために、顔の向きはいつも(比較的にらしいけど)どちらを向いているかというその質問に深い意味は……ないと思いたい。

 意味不明すぎるから気になるけど、どうにも捉えにくい質問だから、ひとまずは考えない。

 

 

 ・明美に虐められている期間

 これは、入学当初からなので、一ヶ月と少しと答えた。これは明らかにダウトなはず。

 聞いたことは飽くまで期間で、つまり過去どのくらい虐められたかで、イジメの解決の仕方は変わらない。だから、どうでもいい質問の類いだろう。

 

 

 ・明美にどのくらいの頻度で会うか?

 これも

 恐らく過去のことなので本来関係ないけど、強いて言うのであれば、その頻度が多ければ多いほどイレギュラーが発生するから事前に知りたかった……多分そのはず。だから、どうでもいいとは言い切れないけど、イジメの解決方法を知れるものではない。

 

 

 ・明美の登校と下校時間は?

 これもアタシと同じように、明美ちゃんが何時から何時まで学校にいるのかという、そんな意味だろう。

 だけど、これについてアタシは上手く話せなかった。というのも、明美は授業に出ることがあまりない。ましてやいつ学校に来るかなんてマチマチだ。だから、どうしても曖昧になってしまった。

 

 

 ・学校の屋上に入ったことがあるか?

 結論から言えば、ない。というかそもそも特別なことがない限り入れない。でも確か、結構どうでもいい理由で鍵を渡してくれるということをどこかで聞いた。

 でもアタシの学校の屋上に続くドアが厄介だ。

 あのドア、工事の人が間違ってしまったのか分からないけど、普通のドアノブではない。ドア鍵が逆向き――つまり、鍵を閉めて、再び鍵を使ってドアを開けれるのは屋上側からのみという……不親切極まりない構造になっていた。しかも校舎内からは開けられない構造。

 イジメの件とぶつけるなら、それによって屋上での優華ちゃんが無双して明美ちゃんたちをやっつける可能性がある。いや、さすがにそれは考えすぎな気もするけど。

 

 

 ・相手(明美)の普段持ち歩いている武器は?

 これは特にないかと言われれば違う。結構適当なのだ。いろんなものを普段持ち歩いている。

 ただ言えるのは服に隠せる程度のものなら持ち歩くことは多々ある。

 虐められたときに持っていたのはエアガンが多い。他にもあるけど、だいたいはこんな感じ。

 

 ……武器ではないけど、明美ちゃんたちは手錠やボイスレコーダーを持ってきたことがあった。手錠などを使ってアタシに拷問を仕掛け、ボイスレコーダーでアタシの悲痛さを上げた声を録音するという……普通の女子中学生ならしないことを彼女はする。まぁ、多分今後はないけど……。

 

 

 

 一通り、考えた、考えてみた。

 そして、アタシは肝心なことを優華ちゃんに言うのを忘れていた。

 それは……、アタシが虐められていることを誰にも知られないようにすること。正確には、すでに虐められている人を抜いて、も付け加えなければいけないけど。

 

 アタシはすぐに行動に移す。

 ラインから優華ちゃんに電話をかける。

 そして、

 

 「もしもし、どうかした?」

 

 優華ちゃんの声が聞こえた。

 

 「うん、実は今さら言うのはおかしいんだけど……、アタシが虐められていることは誰にも知られずに解決してくれないかな?」

 

 「――? 知ってるわよ」

 

 「あれ? もしかして話したっけ? ごめんね遅くに電話して」

 

 「大丈夫よ。また何か言いたいことあったら電話していいから」

 

 「分かった! ありがとう! じゃあねー!」

 

 電話を切る。

 

 ………………、電話の件――イジメを誰にも知られたくないと話した覚えはない。

 ……それなのに……彼女はそれを覚えていた?

 記憶力は悪い方ではない。だから、覚えているはずだ。普通なら。

 でも、アタシは話した記憶がない。特に、これほど重要なことならば、アタシは記憶できていたはずだ。

 …………考えすぎ……か?

 分からない。分からないけど、知っているなら問題はない。

 時計の針はすでにてっぺんを回っている。これ以上考えても明日に支障が出るだけだ。なら、寝ようか。

 今日は、いや時間的には昨日だけど、あまりに疲れた一日だった。

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