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6話


 「なんだぁてめぇ……!?」

 

 明美ちゃんは思わず声に出した。

 アタシも意味合い的にはそんなことを感じていた。なぜなら、颯爽(さっそう)と現れた彼女はこのイジメになんら関与していない。

 それなのに、みずから突っかかってきた。

 (やぶ)から蛇。

 馬鹿げたことをする人間にしか見えなかった。

 

 「…………」

 

 彼女の姿は制服姿だ。学校指定のカバンを背負いながらパルクール――この場合は空き地裏から、華麗に登場した。

 アタシでも分かる。この人もまた異質な人。……なのに、どこか安心感があった。

 

 「あんたら何やってんの? イジメ? 私の眼前でそんなことやってるの?」

 

 なぜ、今日はイジメを受けていることがこんなにバレるのかというアタシの心は今、手放しておく。

 今は、天ちゃんを無事に助ければ問題ない。でも、明美ちゃんは何をするのかまったく分からない……。

 

 「ああ、イジメだよ! これ見れば分かるでしょ? だからさぁ、邪魔するの止めてくんね?」

 

 「――断るわ!」

 

 ……かっこいい。

 

 思わず、そんな言葉が出てもおかしくなかった。

 出なかったのは、あまりにもカッコいいからだと思う。

 

 「なら、ぶっ殺す!

 けど……」

 

 明美は悩んでいた。

 恐らく、本気ではやれないと、怪我を作ると面倒なことが明美にはあるんだろう。だから、アタシも酷すぎるイジメは受けないけど……。

 

 「いいわよ。全身全霊で。本気で、来い。イジメは……叩きのめす……!」

 

 勇猛か蛮勇か。恐らく前者、勇猛果敢だろう。

 さっきのパルクール、あれは常人――ましてや普通の女子中学生ができる芸当じゃない。

 多分、スポーツかなんかしていた――それも生半可なものではなく、全力でしていた。じゃないとあれほどのパルクールはできない。

 

 「はっ! 来いよ! 単身で、しかも武器も持たずどこまでやれるのかな!?」

 

 明美はポケットにしまったはずの、エアガンを取り出して彼女に向けて放つ。だが、

 

 「あ゛?」

 

 五発は打ったのに一つも当たらなかった。

 それほど彼女が不規則かつ異常な速さで明美に近づいていた。

 どれほど身軽でも、エアガンの攻撃は、BB弾は避けられない。それがたとえ、ウサイン・ボルトだろうが見てからでは…………。

 なら、考えられることは……まさか……! 見てからではなく、先読みして避けたのか……!? そんな芸当ができるのか!? 中学生、ましてやアタシと同じ女子が!?

 

 「死ねっ!」

 

 明美はエアガンを手放し、スタンガンで応戦する。

 完全に電源が入っていて、バチバチと音を上げながら彼女にそれが向かって――、

 

 「ぐっ……! いてぇよ!」

 

 「……えっ?」

 

 アタシは思わず声が溢れた。

 

 あまりにも早業過ぎた。

 彼女はスタンガンの先にあるもの――つまりは明美の腕をもって、一瞬で柔道でありそうな固め技を決めた。

 明美が声を上げていた。それはギブ的な意味合いはない。明美に負けはない。永遠とマウントを取りたく、永遠とイジメに執着する、社会からは外れすぎた人間だから。

 

 「お前ら! コイツを早くやれっ!」

 

 明美は取り巻き二人に応援を頼んでいるが、

 

 「……はっ?」

 

 その二人は裏切って逃げていた。

 

 「裏切んのかよアイツら! 絶対裏切り許さない!」

 

 逃げた取り巻きたちは恐らく、彼女のあまりの強さに逃げたのだろう。

 アタシももし、取り巻きだったら同じく逃げている気がするけど……。

 

 「もう、イジメはしないか?」

 

 彼女は明美ちゃんに問い詰めていた。

 その瞳は相手を殺そうとしているような瞳で、まるで何かに取りつかれているように狂っても見える。

 

 「……わかった。……しない」

 

 「ならいいわ。今後イジメなんてしないでね」

 

 「へっ?」

 

 彼女は、あまりにも人を信じ過ぎていないだろうか? それを問いただしてもいいぐらい、彼女は素直過ぎた。明美ちゃんという人間を嘘を吐かない人間として信用しすぎている。

 

 「……じゃあ私は帰るから。でーもー……、今度は……、いえ、何でもないわね。また学校でね、千秋」

 

 「うん」

 

 明美ちゃんは帰る。

 多分、普通に自宅に帰るのだろう。

 

 「貴方、怪我ない?」

 

 アタシを気にかけてくれたみたいで、彼女は素朴にそう聞いてきた。

 

 「大丈夫だよ!」

 

 笑顔で答える。

 笑顔で答えるのはいいけど、普通にお礼はした方がいいよね……?

 そしてそれと同時にあることを思い付く。

 それによってアタシは、

 

 「良かったら、ウチに来ない?」

 

 そう言った。

 

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