終着。出発。
男達が店から出て行って、
ご主人は床に落ちた蓋を、ぼくときぬごし兄さんの桶に戻した後、しばらくして何処かへ行ってしまった。
ー無音ー
もめんは固まったまま動かなくなっていた。
いつも2人きりの時は、きぬごし兄さんと桶から顔を出しては取り止めのない話をして過ごしている。
だけど、、、
もめんの頭の中に、男達の言葉が何度も聞こえる。もし本当なら、、、
きぬごし兄さんは、もう。
「おいもめん、テリブルモーメント中失礼」
兄さんの!きぬごし兄さんの声だ!!
頭のすぐ上から聞こえる。
どうやらもめんの入っている桶の蓋の上にいるらしい。
きぬごし兄さんは大丈夫なのか。
早く顔を見たい気持ちを伝えると、一笑に付された。
「そのまま聞いてくれ。。。
俺を一度手に取った人は、キレイな女の人だった。
目が青くて。きぬごしの俺より白い肌をしていた。
その人の言葉は、最高にクールだった。
俺はいつか、アメリカって街に行くんだ。
ご主人がその街から来たお客さんだって言ってるのを聞いた。
俺より白いヒトだ。きっとすぐ見つけてみせるさ」
兄さんはゆっくりと、いつもの話を今日もしてくれた。
日常に戻っていくようでもめんの緊張も解けてきた。
「だけど、アメリカって街にいくのは。。
叶いそうにない。」
清廉潔白!きぬごしに勝る色艶なし!
そう言う兄さんが逞しくて、誇らしかった。
けど、今もめんに届く言葉はどんどん弱く、ゆっくりになってくる。
「もめん、もう無理そうだ。
フェードアウト。しちまいそうだ。
最後に2つ、兄から弟へ。。。
ひとつめは。しばらくこの中に。いろ。
夕方の。鐘が。鳴る。まで。。
ふたつめは。。もめん。
お前の。。夢を。。叶えろ。。。」
。。。。。。。
ー無音ー
次筆に続く