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もめん と きぬごし  作者: くま
2/4

突然

ちゃぷん・・・

冷たい水のたっぷり入った桶。

ここがもめんの部屋。


これからお日様が地面に落ちそうになる時間まで、お昼寝したり、考え事をしてのんびり過ごす。


だけど今日は、いつもと違っていた。


お店の主人は店を開こうとせず、奥の和室に座りこんでテレビを見ている。

のれんも片付けられたままだ。


ガラガラガラッ!


扉が勢いよく開いて2人の男が入ってくる。

店主にも聞こえていたはずだが、見向きもしない。

すると男の内の1人が店主に話しかける。


「なんや、えらいしみったれた店やなぁ。

もう10時や言うんに、のれんも出さんと」


なんだか不快な話し方に、もめんは硬くなった。

すると男が近づいてきて、もめんの入った桶の蓋を開けた。


「あぁん?豆腐が一丁。

おいおいご主人、豆腐屋の豆腐が一丁ってなんやねん笑」


時を同じくして、もめんの後ろ手からも男の声。


「おおい!こっちも一丁しかないで。

これは、きぬごし豆腐やなぁ」


「じゃあこっちはもめん豆腐ってか?

おいご主人よぉ、豆腐が二丁しかない豆腐屋なんて聞いたことないでぇ笑」


「ぶぁっはっは!ほんまや!

こらもう物置やないかぁ笑」


耳を塞ぎたくなるような棘のある声。

久しぶりの来客だが、どうやら豆腐を買いに来たわけではなさそうだ。

すると奥から主人がのっそり顔を出した。


『おら、権利者だ。

これで、今後一切関わらないんだろう』


もめんの入っていた桶の蓋を床に落として、男は権利書を受け取る。

「あぁ。じゃあな、ご主人」


権利書を受け取ったのと、時を同じくして、後ろでも蓋の落ちる音。

そして、何かを水から持ち上げる。音。


「ご主人が利口で何より。

うーん。俺はもう少し歯ごたえのあるきぬごし豆腐がすきだなぁ」


「うへぇっ、食うなよ。

何日前にて作ったやつかわからんやろ笑」


そうして、2人の男は去って行った。


次筆に続く

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