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恋文

作者:緒形誠志
〈幸子さん。突然のお便り、失礼します〉

 あー、これじゃ平凡だなあ。
 そもそも宮前さんとはためぐちだもんな。これじゃ形式ばっててかたいや。

〈こんにちは、宮ちゃん。そろそろストーブのほしくなる季節で〉

 なんだか時候のあいさつみたいだ。これもボツ。それに宮ちゃんなんてなれなれしいぞ。
 だいたい手紙なんて書かないもんなあ。メールか電話で用が足りるもんなあ。うまくいかないのも無理はない。
 でも、宮前さんに気持ち伝えたいもんなあ。
 あの、笑顔と声とやさしさに夢中だもん。
 あんな人あんまりいないよ。十六年間生きてきて、まさに頂点だよ、あんな女の子。

〈えー、あなたはすばらしい女の子でして、僕は掃除機に吸い込まれるゴミのようにあなたに吸い寄せられ〉

 だめだだめだ、ゴミなんて言葉ラブレターに出てこないと思うぞ、ふつう。
 肩の力を抜いて、リラックスして、ありのままを告げればいいんだ。よし、深呼吸深呼吸。

〈僕の気持ちを聞いてください〉

 手紙なのに聞いてくださいって変かな。まあいいや。

〈とにかく、僕はあなたを愛してしまったのです。あなたと仲よくなりたい。できれば恋人に。そして、海へ行きましょう。江ノ島なんかがいい。堤防で肩を寄せ合い夕陽を見つめる二人。そう、僕はあなたの瞳を探り、そっと顔を近づけ、口づけを〉

 だめだだめだ。エロくなってしまった。第一、僕は彼女をそんな対象としてみたことはないぞ。僕のはプラトニックだ。健全なお付き合いをしたいだけだ。
 気を取り直して。

〈宮前さんはとても明るいですね。その明るさは輝きで、多くの男子生徒が好意を寄せていると思います。僕もそのうちの一人、ただほかの連中と僕のちがう点は、こうして想いを伝えるべく勇気を出して告白するという点で、そこがその他大勢とちがうわけで、まことに見上げたものであり男らしく、僕と付き合わないと損をする〉

 なに書いているんだ。これじゃただのいやな奴だ。自画自賛はいちばん嫌われるんだ、もっと謙虚で控えめにしなければびっくりされてしまう。
 ああ、もう午前一時か。うまく書けない。うまく書かなきゃ宮前さんの気持ちを揺すぶることはできない。
 ああ神様、どうして僕にきらめくような文才を与えてくれなかったのか。
 ふられるかなあ、いまどき手紙なんか。でも、メアドも電話番号も知らないし、面と向かって告白なんて考えただけで足が震えちゃうよ。
 なんべんも考えたじゃないか、手紙がいちばんって。だからその、うまく書こうとしているんだけど、うーん、うまく書けない、難しい。正直な気持ちを飾らず文字にすればいいだけなのに、そんな簡単なことが僕にはできない。
 好きなのか?本当に。
 あたりまえ!
 好きも好き、心底、誰がなんと言おうと世界を敵に回しても僕は宮前さんが好き。
 なんとかしなきゃ、自分で道を切り拓かなければ、誰も助けてはくれない。
 ああ、朝五時起きなんだよなあ、早く寝ないとなあ。部活の朝練あるんだよ。
 うまく書けない。うまく書けない。うまく書けないよぉ。
 でも、僕が宮前さんを誰よりも好きなのは、神様に誓って本当なんだ。

         *

 ゆうべの十ニ時から一時半までの僕の心のうつろいを文章にしてみました。
 これをもって書けなかったラブレターの代わりとさせていただきます。
 宮前幸子さん、こんな僕じゃだめですか?
              C組 山本孝文

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