9話「捨てられた者、忘れられた者、理解されない者」
「この世界を知りたい」
女子代表は言った
「ど、どうしたんだボス!?」
余りにも真剣な眼差しでブルーピゴミンとレッドピゴミンを見ていた
「あ、頭でも打ったか?」
「打ってないし色々調べてみたい」
女子代表は椅子に腰を下ろすと言葉を続ける
「どうせ外に行っても厄介事しか巻き込まれないでしょ?」
「んでこの部屋にいれば二人ともすぐに駆けつけられるし外にいるよりは安全でしょ?」
「でもやること無いじゃん?だったら本でも読んでこの世界の事少しでも知っておこうと思って」
その様子にレッドピゴミンは膝から崩れ落ち腕で目元を隠しながら叫ぶ
「ぼ、ボス・・・!そんなご立派になられて我々は・・・!」
そんな様子のレッドピゴミンにため息混じりに言う
「いや、人のことなんだと思ってたのよ」
「考えなし?」
「張り倒すよ!?」
そんなやり取りをしているとブルーピゴミンが割って入ってきた
「まあともかくボスの言ってることは最もだ」
「私が参考になりそうな書物を選び持ってこよう」
「うん、ありがと」
「なら俺はボスの護衛をしていよう!!!」
「頼むぞ」
ブルーピゴミンはレッドピゴミンに女子代表を任せると部屋を出ていった
「とりあえず何かあったら呼ぶから部屋でゆっくりしてればいいんじゃん?」
「そうだな!何かあったらすぐに呼んでくれ!!!」
レッドピゴミンもそう言うと部屋を勢い良く出ていく
「あれ毎回元気過ぎてめっちゃ疲れるんだけど・・・」
女子代表はベッドに腰を下ろすと大の字に寝転がる
「何だかんだ慣れてきてるのが怖い気がするなぁ」
そんなことをつぶやきながら今までの事を思い返す
獣人や機人
魔人や魔族
それぞれに違いがあるのはわかるが正直な所外見だけでは全く判断出来ない
少しでも情報を取り入れ相手がどんな者かを知っておく必要がありそうだ
まだ出会ったことのない未知の種族もたくさんいるだろう
この世界の歴史を知り様々なことに対応出来るようにならねばこの先生きていくのは大変だろう
そんなことを考えていると扉を叩く音が聞こえた
「私だ、入れてくれ」
「あ、もう持ってきたの?」
女子代表はベッドから起き上がると扉を開ける
すると台車に大量の書物を載せたブルーピゴミンがいた
「こ、これなら大会まで色々調べ事できそうだね」
「多かったか?」
「多分・・・」
女子代表は顔を引きつらせながら頷く
「安心しろ、私も調べたい事があるので私の分も混じっている」
「そ、そう?」
「ところで疑問なんだがこちらの世界の書物を持ってきても字が読めないのでは無いか?」
「あ、それなんだけどこれ使おうと思ってる」
そう言うと女子代表は腰に付いた鞘から剣を取り出す
「どういうことだ?」
「この剣って可能な範囲なら何でも叶えてくれるんでしょ?なら字が読めるようにしてみようと思う」
「なるほどな、流石はボスだ」
「私も頭は回るんだからね」
そう言い女子代表は剣にお願いをする
「この世界の文字が読めるようになるメガネください!」
「メガネである必要はあるのか?」
ブルーピゴミンの突っ込みを無視し剣のスイッチを押すとメガネが出てきた
女子代表はそのメガネを装着すると山積みの書物の中から適当に一冊取りパラパラとめくる
「すごいよこれ、日本語に全部翻訳されてる」
女子代表はメガネを付けたり外したりしながら確認する
「大成功だな、これで心置きなくこの世界を知れるだろう」
そう言いブルーピゴミンも書物を手に取ると読み始める
この世界にはフィース、マーシア、ファントム、ヘル、ヴァルキリーの5つの国
そして天に浮かぶユグドラシルの6つの国が存在する
更に空想か現実か定かではないが地獄と天界と言う場所も存在するという
北の魔術国家ファントム
このファントムと東の魔族の国ヘルは非常に仲が悪く闇よりも深い溝が出来ている
魔人と魔族は古くより対立しあい隣国ということもあり多くの戦争を続けてきたという
魔人は魔族だからと言い魔族を殺し家畜にし奴隷として扱い
魔族もそれと同様の事をしてきた
捕虜を捕まえては互いに残虐な仕打ちを繰り返し互いの溝は深まるばかりだ
魔人は魔族を食らう文化がありそして魔族にはその逆、魔人を食らう文化がある
互いに形は問わず人の形をしていようが獣の形をしていようが食べてしまうらしい
嘗ての戦争では互いが互いの士気を下げるために捕虜を捕まえては敵に見えるような場所で捕虜を生きたまま食らう残虐な行為を行った事もあるという
互いが互いの種族を滅ぼす為に女子供問わず殺し回り更に互いの溝は深まる
今では互いにだいぶ大人しくはなったが互いの種族が出逢えば大体喧嘩や争いが始まるという
それほどまでに仲が悪く修復はおそらく不可能と言われている
そしてそんな二つの国を深淵より恨む国があった
半人国フィース
この国の者は魔人や魔族が互いの雌を犯し生まれたハーフの種族が集まる国だ
半人はファントムでもヘルでも忌み子として嫌われ蔑まされてきた
半人というだけでどの国でも受け入れてもらう事はなく奴隷や家畜にされ虐待の限りを尽くされてきた
そんな半人達もいつまでも奴隷として扱われているわけは無かった
ある日一人の男が反逆した
その者は魔族だった
だがしかし半人達を苦しめる同胞たちが許せなかった
自らが作り出した半人達を子供たちを相手の血が混ざっているからと奴隷とし家畜とする
その所業に怒り狂い半人達を集めヘルに反逆したのだ
魔族と魔人を恨む半人達の団結力は凄まじく半人という特別な力もあった
様々な種族の血が混ざり進化した半人達は強大な力を持つものも多く存在した
そしてその強固な団結力でヘルから半人を引き連れ亡命
更には亡命中に北へ向かいファントムに侵入
そこでもその団結力を使い蔑まされてきた半人達を集め脱出
そして激戦区であったヴァルキリーを抜け南のフィースへと向かった
そこを拠点とし半人国フィースが生まれたのだ
だがそこには先住民となる他の種族がいた
鬼族と言われる運命だろうかまた別の所から来た半人達がいたのだ
互いに忌み嫌われる存在としてわかりあいたかったがヘルから来たものは侵略者
鬼族は戦闘を好む種族でもあり戦争は免れなかった
だがしかし半人達の団結力は凄まじく鬼族をも追いやる
そして互いの王となる者が話し合いフィース綺麗に半分に分けそこが互いの領地となった
それが今のフィースだ
だがそんなフィースでも仲間を思う心は次第に薄れていった
ハーフには欠点があった
それぞれの弱い部分持って生まれてしまった者たちだ
そんな者達は戦う力も無く力に酔った強者に踏みにじられる生活を送るようになった
王はそれを許さなかったが弱者全てを守ることは出来なかった
それは鬼族の中でも起きていた
そして互いの王は話し合いフィース北の孤島へと戦う力の無い者たちを移住させた
だがこの選択は後に間違いだと気付くことになる
西の機械帝国マーシア
己の科学力の為ならば他の種族を滅ぼしてまでも力を手に入れる強欲な者達だ
彼らがこうなってしまった理由
彼らは元々純粋なる人間だった
その人間が魔人や魔族から身を守るために作り出したのが機兵だ
科学を身に着け様々な研究を繰り返し生み出された対抗策
その力は強大だった
マーシアを守り他国へと侵略するほどに
だが機兵には欠点があった
それはコストの高さだ
一体一体のコストが重すぎるのだ
マーシアの改築や研究をしているうちにすぐにマーシアの資源は底を付きてしまった
資源不足をなんとかするためにマーシアが出た行動
それは魔族や魔人の核となる魔力の研究
そのために大量の魔人や魔族が必要だった
そして資源が底をつきかけている所に半人国フィースの孤島の存在を知る
その孤島はマーシアにとって戦う力の無い者が集まっている絶好の狩場となった
機兵に半人を拐わせては解体して魔力を隅々まで研究した
そしてマーシアは魔力を使う力を手に入れた
フィースが気付いた頃には孤島の人口は半分以上減っていた
そんな中突如激戦区となっていたヴァルキリーに突然救世主なる者が降臨する
その者の力は凄まじくたった一人で激戦区のヴァルキリーを支配してしまう程だった
まさに神と呼ばれるに相応しい存在だった
全ての種族を退けた救世主はヴァルキリーに結界を張った
そして戦えない弱者となる種族をそこに集めたのだ
フィースの孤島の者達もそこへ移住させられ近年まで戦えない者達はヴァルキリーへと移住を繰り返している
この5つの国全体の出来事を軽くまとめるとこんなところだろうか
「どの国にもやっぱ争いってあるんだなぁ」
「だろうな、この世界は互いに互いを憎んでいるだろう」
書物から目を離さずブルーピゴミンは応える
女子代表は山積みの書物から更に書物を取ると読み始める
白き龍と黒き龍の伝説
遥か昔数千年前ヘルには2匹の神龍と呼ばれる存在がいた
白き龍は人間達と
そして黒き龍は魔族達と共存していた
その2匹は互いに互いを傷付けさせぬよう守護神として崇められていた
そんな2匹の龍は互いに心底信頼しあい互いを好いていた
だがそんな2匹に悲劇が訪れた
互いが互いを愛し過ぎて信仰者達に崇められているのがどうしても気に食わなかった
お互いは守護神としての立場があり互いに会う機会が少ない
だが信仰者達は毎日のように会う事が出来る
人々や魔族達にも愛を注いでいた二人は互いに心に不安や憎しみが染み出した
こんなにも想っているのに黒龍は魔族に愛され崇められて私を見てくれない
こんなにも愛しているのに白龍は人間に崇められ信仰され私の愛に気付いてくれない
そして互いの龍が対面する年に一度の例祭
互いの龍を祀る神殿で行われるヘルの最重要行事だ
だがそこで悲劇は訪れた
互いに心にわだかまりがある中の対面
白龍の些細な一言が黒龍の心を刺激してしまった
そこからは互いが好きなはずなのに
好き過ぎるが故にわかってもらえないと思い込んでしまい神龍同士の壮絶な争いが始まる
魔族と人間を巻き込み互いの神龍は暴れ傷付け合い守っていたはずの民の命さえ奪い争い続ける
そして戦いが続き1年が経とうとした時だった
戦いが続く中それでも人々や魔族はこの時期に行われる例祭の準備を始めたのだ
そんな様子を見た二匹の神龍は我に返り互いの犯した過ちに気付く
だがわかってくれない互いを許せない
白龍は黒龍の謝罪が無い限りは二度と外界には出ないとヘルの中央に神域となる塔を作りその頂上に引きこもってしまう
そんな様子を見た黒龍は神域の塔の地下に白龍が封印を解くまで二度と外界には出ないと自らを封印してしまう
そして二匹の神龍の戦いは幕を閉じた
これが神龍王妃ヴァイスと邪神龍王妃シュヴァルツの伝説である
「お互い好きなのにすれ違いとかあるあるだよねー」
「ってこれめっちゃ近くにいる気がするんだけど!?」
「こ、ここここ、こんな書物に伝説とか言って書かれるようなのが同じ階の部屋に泊まってるんだけど!?」
「神龍と言われるくらいだから生きていても不思議ではないだろう」
冷静に書物から目を離さずにブルーピゴミンは言う
「はぁ・・・まあいいや・・・」
女子代表はため息を吐きながら次の書物に手を伸ばす
「うわ、なにこれすごいボロボロだよ」
「ん?古い書物程重要な事が書いてあると思って持ってきたんだ、破かないようにな」
「う、うん」
女子代表はゆっくりとページをめくっていく
捨てられし者
弱き事は罪なのだろうか?
弱き者は強き者に踏みにじられるだけなのだろうか?
私は許さない
弱き者として蔑まされることを
人間として家畜のように扱われる事を
私は絶対に許さない
私はこの手で全てを超える
全ての強者を踏みにじって見せる
絶対的な力を手に入れてみせる
その力の代償に全てを捨てろというならば全てを捨てよう
力だ
私には絶対的な力が必要だ
これは絶対的な力のみを求め破壊の限りを尽くした人間の書いた文だ
この者は嘗て世界を滅ぼすとまで言われていた
名をグレプトリアルと言う
人の身でありながらその手は全てを破壊するほどの力を秘めていた
この大地を二つに割るというのならば出来たであろう
あの力を間近で見たもので生きているのは私だけかもしれない
強者を討つためだけに手に入れた力
その力は強大過ぎるが故に全てから見放されてしまった
力を求めるただそれだけを想い力を手に入れた者
強大過ぎるが故に討つ事叶わず封印を施し地獄へと葬られた
願わくはこの世界から捨てられし愚かなる者が再び蘇らない事を願うばかりだ
彼女が復活を果たした時再びこの世は破滅へと導かれるだろう
「なにこれすごい物騒な本!」
「架空の話かもしれないな、現実世界にも神話などあっただろう?」
「な、なるほど、随分古そうだしそういった小説とかそういうノリかもね」
ブルーピゴミンは本を閉じると女子代表に視線を向ける
「私もその手の本を読み終えたところだ」
「そうなの?」
「あぁ、刀を振るう事のみに一生を捧げた女の話だ」
「へぇ~なんかかっこいいかも」
「この世界が滅ぶまでにここまで刀に命を賭けたのはこの女だけだろうな」
「そ、そんななの?」
「刀を振るい岩や鋼を斬るなどは聞いたことあるが次元を斬るのはこいつだけだろう」
「次元斬!!!」
「あぁ、まあ架空の人物だろうがな、刀に命を賭けすぎて刀になってしまい封印されいつしか忘れ去られてしまったらしい」
「人が刀になっちゃうとか異世界凄すぎ・・・」
「だな」
「もう一つ、良い話を教えてやろう」
「何奴!?」
突然聞こえた見知らぬ声にブルーピゴミンが立ち上がり女子代表を守るように声の主を見る
「あ、バルドだ」
「ば、バルド?こいつはボスの知り合いか?」
いつの間にか現れベッドに腰を下ろしていたバルドが口を開く
「出会ったのは初めてだな、まあ警戒しないでくれ」
「うん、バルドは色々助けてくれてる良い人だよ」
「そうか、ボスが言うのならば信じよう」
ブルーピゴミンはそう言うと座っていた椅子へと戻っていく
「この世界には理解されない可哀想な奴がいてな」
「理解されない可哀想な奴?」
「あぁ、彼女は優しすぎたんだ」
嘗てこの世界には全ての種族の敵と言われる存在がいた
魔族や魔人人間全てから敵として認識され死闘を繰り返していた種族
それは外神種
いつからいたのかそしてどこから来たのかは全くもって不明
ただ種族を問わず襲い滅亡へと導いていった世界の敵だった
そんな外神種をたった一人で止めた者がいた
外神種には4つの種類がいた
外神種の頭脳と呼ばれるニャルロド
外神種の馬と呼ばれるクルフド
外神種の翼と言われるアザード
そして最後の外神種の暴食クトロード
見た目は悍ましく触手や複数の目そして牙などに覆われた身の毛もよだつ種族だ
この4つの種族は傷付ける事は出来ず討つ事は出来なかった
だが唯一の弱点があった
それは他の種族へと寄生しなければ力を発揮出来ないということだった
外神種は寄生型の種族で一度寄生すると暴れまわり宿主が討たれるまで暴虐は続いた
そしてそんな外神種にたった一人で立ち向かいそして見事その暴虐を止めた者
その者はまず外神の頭脳と呼ばれるニャルロドに交渉を持ちかけた
自らが一生外神種の宿主となろうと言った
衣服を全て脱ぎ去り己に敵意が無い事を証明しニャルロドに全てを捧げた
「私は貴方達も人々も傷付けたく無い、どうか貴方達と私達で共存出来る道を探したい」
彼女の言葉にニャルロドは共感した
そう、外神は寄生主がいなければ生きていけない
故に寄生する
生きていくためだけに寄生するが人々は皆それを侵略と言い討ちに来た
こんなことをする人間はこの者が初めてだった
そして抵抗することもなくその者はニャルロドに寄生された
ニャルロドは頭に寄生する種族で寄生主の考えを読み取る事が出来る
そして寄生して本当に平和の共存を望む事、一生の宿主になることを決意していることを知る
頭脳と呼ばれるニャルロドとその者は考えた
他の外神も平和的解決が出来ないかと
そして思い付いたのだ
全ての外神をその身に寄生させると
だが他の外神はニャルロド程知能は発達しておらずニャルロドと他の外神との壮絶な戦いは続いた
そして見事宿主を討ち寄生を成功させると頭脳であるニャルロドは他の外神にその意志を伝える
他の外神も同じく自らが生きられるのであれば戦わなくて良いのだ
外神の馬と呼ばれていたクルフドは腰から下の下半身を丸々飲み込むように寄生する
そしてその体はタコのようで無数の触手で凄まじい機動力を誇る
故に馬と呼ばれているのだ
そして翼と呼ばれるアザードは背に寄生する
その呼び名通り背に寄生し翼と宿主の頭部付近に巨大なリボンのような身体を寄生させる
ニャルロドにも半分寄生する形となった
その頭部のリボンのような本体からは大量の触手があり強大な武器となる
そして最後の暴食と言われるクトロードは口に寄生した
ガマ口の財布のような巨大な口に無数の雑に生えた牙
そして口内には無数の目と触手が存在している
クトロードに捕食されたものは全て細かく口内で分解され無味無臭の液体となり宿主の体内に送り込まれる
どんな物質も液状に分解してしまうためにどんなものでも食べることが出来た
そして全ての外神が一つとなり究極にして最強の外神が生まれた
共存の外神クルニャアトと呼ばれるようになる
4匹の外神は宿主であるクルニャアトを非常に丁寧に扱った
クトロードは人間に必要な栄養素を持つ物を全ての物質から摂取した
毒物などもクトロード口内で排除され液状になりクルニャアトの口へと運ばれる
足となったクルフドはクルニャアトの足腰が弱ってしまわぬようクルフド体内で足腰を揉み解し適度な運動量を与える
翼となるアザードはその強固となる翼でクルニャアトを守り無数の触手で襲い来る敵を排除した
そして頭脳となるニャルロドは他の3匹の外神との会話をサポートしクルニャアトと互いの考えを交えこれからの方針を決める司令塔となった
クルニャアト達にとっては理想の共存となったが他の者からしてみれば1匹でも厄介な外神が一つになりより悍ましい凶悪な存在になったようにしか見えなかった
外神を敵と思う者達からの攻撃は日に日に激しくなりクルニャアト達は応戦する
クルニャアトは戦いたくないと言うが他の種族は怯え震え聞く耳を持たない
そしてついにクルニャアト達は全ての種族が一斉に攻撃を仕掛け瀕死まで追いやられる
4匹の外神は日々続く攻撃に疲労し動けなくなってしまう
クルニャアトに寄生する力さえも失い倒れていった
クルニャアトはそんな外神を見ると他の者達からは信じられない行動に出た
寄生を全て解かれたクルニャアトは人の身で外神達を守るように全種族の前に立ちはだかった
「私は力が無くともどんなに弱くてもこの4人を見捨てない、どんなことがあろうとも私はこの4人を守って見せる、だから私は絶対にここを退かない!!!」
そんな彼女の言葉を聞き怒り狂った全種族は一斉に攻撃を開始する
そしてそんな様子を見ていた瀕死の4人は怒りの化身と化した
4匹は互いに連結し1匹の外神となりクルニャアトだけを守るように他の種族の者を踏み荒らした
最後の力を使い死を覚悟で戦ったのだろう
その恐ろしき光景に皆死に逃げていった
そして外神とクルニャアトだけとなった時外神は倒れた
クルニャアト駆けつけ涙を流す
何故そんなになってまで戦ってしまったのだと情けない自分を許してほしいと
その涙
その信じる心が奇跡を起こした
人の信じる心は古くより奇跡を起こすと言われていた
その時が今だった
クルニャアトの想う力により外神は再び立ち上がった
本能が儘にクルニャアトに再び寄生したのだ
乱雑な寄生の仕方だったがクルニャアトはそれを抵抗もなく受け入れた
クルニャアトから生を貪るかのように絡みつく外神
だがそれが心地よくすら感じた
こうして外神と人間の間に愛が生まれた
再び活動を開始したクルニャアト達はこのままでは同じ過ちを繰り返すだけだと思い自らの封印を選んだ
外神とクルニャアトは人知れず誰も知らない場所で自らを封印して眠りについたと言う
「これが共存の旧神クルニャアトだ」
「なんかあれだね、美女と野獣的なあれ」
「だな」
「まあそんなところだろう」
バルドは話の途中共存の外神クルニャアトと言ったが今は旧神と言ったその事を疑問に思った女子代表は首を傾げた
「外神じゃないの?」
「あぁ、彼女は旧世界の者だ」
「旧世界?」
「そうだ、ユグドラシルが出来る前のヘルもファントムもまだ正確に出来てない曖昧な時代だ」
「すごい昔って事ね」
「まあそんなものだな」
バルドはそう言うと立ち上がると窓際に歩いて行く
そして振り向くと言った
「ちなみに刀の奴も力を求めた者も旧神と呼ばれる存在だ」
「え?」
その言葉に首を傾げた直後にバルドは消えてしまった
「神出鬼没な奴だな」
「うん、あってる、いつもこんな感じ・・・」
「しかしこの異世界は随分と物騒な者がいるようだな」
「で、でも封印とかされてるんでしょ?」
女子代表は震えながら言う
「封印が解けたら大変なことになるだろうな」
「こ、怖いこと言わないでよ!」
「既に解けた封印も同じ階層にいるしな」
「そ、そういえばそうだったー!!!」
女子代表は頭を抱えながら膝から崩れ落ち叫んだ




