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異世界に近隣住民女子代表が迷い込む  作者: おぽんち
第一章-この異世界を知る-
8/16

8話「敵か味方か」

大浴場から出た3人はそれぞれの部屋に戻り身体を休め始めていた


大会が始まるまでのこの数日間


ブルーピゴミンやレッドピゴミンは簡単には死なない身体をしているので一人で探索や調査を出来るが女子代表はそれが出来ない


故に部屋で待機していることしか出来ないのだ


テレビなどは無くベッドにシャワーボックスそして小さな冷蔵庫の中に幾つか飲み物が入っているだけだ


ただ寝るためだけの部屋といったところか


「ひーまー」


女子代表は一人ベッドに寝転がりながら転げ回る


「スマホもパソコンもテレビも何もないー」


異世界にはそういった機械はあまり無いのだろうか


朝からいろいろな事があったがまだ日は高い


丁度お昼くらいだろうか


朝食を食べたのが随分と遅くまだお腹が減った感覚は無い


しかし何故だろうまだ昼時のはずだが妙に薄暗い


太陽の日差しが何かに遮られているような暗さ


不自然なまでに暗いのだ


女子代表はそのことに気付きベッドから立ち上がると窓際へ行く


「そう言えば一人で逃げてるときも変に暗かった気がする」


独り言をつぶやきながらカーテンを開け空を見上げる


するとそこには現実ではありえない異常な光景が広がっていた


「あ、これ知ってる、あの映画の奴だ」


上空に島が浮いているのだ


どういった原理なのかは到底理解出来ないだろう


ただ巨大過ぎる島が浮いていた


その島が太陽の光を遮っているのだ


「空に島浮いてるとかやばすぎるっしょ・・・ファンタジー感増しすぎ・・・」


「そうだな、現実とは程遠いだろう」


突然背後から声を掛けられる


「神出鬼没ぅ!?」


既に聞き慣れてしまったその声の主はバルド


一体どうやって入ってきてどうやって消えているのか


この異世界でそれを考えるだけ無駄かも知れない


「あれは地上に住む者たちがユグドラシルと呼ぶ浮遊大陸だ」


「ユグドラシル?」


「そうだ、神々が住む大陸と言われている」


「か、神々!一気にファンタジーの規模広がりすぎじゃない!?」


驚きオーバーなリアクションをする女子代表をベッドに座りながら見ているバルド


すると軽くベッドを叩く


立っていないで座ったらどうだ?と言っているようだ


女子代表はそれに釣られ窓際からベッドへと戻り腰を下ろす


「そう、神々の住まう大陸だ」


「あの大陸には地上の者は誰一人立ち入る事が出来ないらしい」


「空飛んで行けないの?」


女子代表は首を傾げながら当たり前の疑問をぶつける


「あぁ、誰しもが考える事だろう」


「だがあの大陸には入れない」


「見えない障壁のようなもので覆われているんだ」


「障壁?」


聞き慣れない言葉に再び首を傾げる女子代表


「そうだな・・・私の身体に触れようとしてみるといい」


女子代表はバルドの言葉通りその身体に触れようとする


しかしあと数センチのところで手に何かが当たった


「な、なにこれ!?」


「これが障壁だ」


見えない何かに遮られバルドの身体に触れる事が出来ない


叩いて見ても軽く殴ってみてもまるでバルドに手が届く気配はない


「この障壁が大陸全体を包んでいるんだ、そして障壁を破ることも出来ない」


「障壁には様々な種類がある」


「私が今作った障壁はこの世界の住人で魔力を使えるものなら誰でも作り出せる簡単な障壁だ」


「しかし簡単が故に」


バルドがそう言うと先程まで透明だった障壁が薄っすらと青く光る


「簡単に破ることも出来る」


そう言いバルドはその障壁に触れるとまるでシャボン玉を割るかのように破って見せた


「えぇー!?」


「魔力を持つものならば簡単に破る事が出来る」


「だが簡単に破られてしまってはこの世界では何の役にも立たないだろう?」


「だから更に強固な障壁を魔力によって作り出すんだ」


「個々の魔力総量によってその強度は変わってくる」


「な、なるほど?」


バルドの説明を首を傾げながら聞く女子代表


「そしてあのユグドラシルを覆う障壁の魔力は膨大過ぎる」


「いいや魔力ではないか」


「神々の使う特別な力によって作られた障壁だから魔力なんかでは突破出来ないんだ」


「とりあえず神様強すぎて地上の人たちじゃどうしようも出来ないってこと?」


「そうだね、地上の者達が一度は行ってみたい場所ナンバーワンと言っているよ」


「私はあまり興味無いけどね」


「そうなんだ?」


「あぁ」


そう言うとバルドは立ち上がり窓際へ行く


そして空を見上げつぶやく


「一体どんな者が住んでいるのかわからないがきっととてもつまらない場所だよ」


「んん?」


バルドの言っていることがよくわからず首を傾げる女子代表


「まあ私はもっとつまらない場所を知っているけどね」


そう言いバルドは振り向くと消えた


「あぁ!?き、消えた!?」


「何か意味深な事言って消えた!?」


突然消えたバルドに驚きベッドから立ち上がる女子代表


「毎回なんなのよぉ!?」


そう騒いでいると扉が叩かれた


「ボス、騒がしいがどうかしたか?」


扉の向こうからブルーピゴミンの声が聞こえた


騒がしくしすぎたのだろう


「な、なんでもない!」


「ならいいのだが」


女子代表は慌ててブルーピゴミンへ返事をすると扉を開ける


「大丈夫か?」


「だ、大丈夫だから!うん!」


そう言いブルーピゴミンの手を掴む


「ほら!もうちょっと探検しよ!」


「あぁ、付き合おう」


ブルーピゴミンは女子代表に手を引かれ部屋を出る


その直後だった


「あぁ!?てめえはあの時のがきんちょじゃねえか!!!」


「ひえぇ!?」


突然叫ばれ飛び上がる女子代表


そして飛び上がる女子代表と声の主の間に割って入るブルーピゴミン


「まさか本当にいるとは思ってもいなかったぜぇ」


それは森で女子代表を散々追い回したウェアウルフの盗賊キングだった


「あ、あのダサい名前の!」


「こら、あまり刺激するような事を言うな」


「だ、ダサいとは言ってくれるじゃねえか・・・」


「あまり騒ぎを起こしたくはないのだが?」


女子代表を背に隠しブルーピゴミンは盗賊キングに話しかける


「あぁ、安心しろ、てめえらをぶっ飛ばすのは大会が始まってから正々堂々と殺ってやる」


「ならばいい」


ブルーピゴミンの背後を覗き込むと盗賊キングは言う


「安心しなぁがきんちょ、てめえは傷付けずそのまま売ってやるからよ」


「ひ、ひえぇ・・・」


「じゃあながきんちょと青いの、大会を楽しみにしてるぜ」


そう言うと盗賊キングはどこかへ歩いて行く


「厄介なのに見つかったな」


「う、うん」


盗賊キングが見えなくなったのを確認すると女子代表は探索を開始した


また何が出てくるかわからないと若干警戒しながら施設内を歩き回る女子代表


周りを見回しながら歩いているとふと女子代表の視線が止まった


「どうした?」


突然立ち止まった女子代表に声を掛けるブルーピゴミン


「あれ人?」


そうブルーピゴミンに問う女子代表


「どれどれ」


女子代表の見ている方へ視線を向けるとそこには女子代表と同じくらいの身長に同じボリュームのあるツインテールそして髪の色は白銀の女の子が歩いていた


その女の子はこちらの視線に気付くと柔らかく微笑み手を降った


女子代表は呆然としながら手を振り返す


すると女の子はいつの間にか目の前にいた


「ぎ、ぎゃー!?」


数十メートルはあったであろう距離


その距離を瞬きが終わるより速く移動してきた


もはやワープと言っていいだろう


そして顔が近い


「へぇ~へぇ~これが今噂の人間ですのね?」


女の子の瞳は赤く薄っすらとハートが浮かんでいる


「ま、魔人・・・?」


「その通りですわ、(わたくし)魔人ですの」


「ご挨拶しておきますわ、私は霊恋娘(たまこっこ)と申しますの」


「貴方のお名前は?」


「わ、私は・・・」


口を開いた直後ブルーピゴミンが二人の間に割って入った


「私はハイドロブルーピゴミンそしてこの御方は近隣住民女子代表だ」


「不思議な名前ですのね?」


「あ、はい・・・」


全てを諦めた表情をしている女子代表


「安心してくださいな、私は大会以外で他の方を攻撃することはほぼ無いので」


「ほ、ほぼ?」


「例外は誰にだってあるものでしょう?」


そう言い柔らかく微笑む恋娘


だが最初の微笑みとは違いなぜだろうか薄っすら狂気を感じるような気がする


「は、はい、安心しておきます」


女子代表は頭を縦に勢い良く振り頷く


「面白い方ですのね?気に入りましたわ」


一体何を気に入られたのかわからないが何故だろうか歪んだ何かを感じる


「それでは私はこれで・・・またお会い出来ることを願っていますわ」


そう言い恋娘は去っていく


恋娘が見えなくなったのを確認すると女子代表はブルーピゴミンに喋りかけた


「あの人安全なの?」


「わからないが簡単に信用しないほうがいいだろうな」


「そ、そう」


それから更に探索を続けたがやはり周りの者からは奇妙な目で見られている


「なんか居心地悪い気がする・・・」


「だろうな、私たちは見た目も種族もここではかなり珍しいだろう」


「珍しいのあんただけでしょ・・・」


「人間も十分珍しい」


周りを見渡すとやはり誰かしらが二人を見ている


そして視線を合わせるとすぐに逸らしてしまう


女子代表は視線を気にしながらも周りを見渡していると異様な光景が目に入った


それはすぐブルーピゴミンの真後ろにいた


いや、奇妙な視線を私たちに向けていたのはこれのせいかもしれない


「・・・?」


女子代表はそれに釘付けになりその場で固まってしまう


そしてブルーピゴミンが口を開いた


「気付いてはいたが言い出すのに困っていてな」


「先程からずっとついてきている」


そしてブルーピゴミンは振り返る


ブルーピゴミンの真後ろには奇妙な者が立っていた


水色のツーサイドアップの髪型に開放的過ぎる服の女の子


もはや隠す場所を隠せていない


しかしその者は決して人間出はない


赤く先の分かれた角が2本


その身体を隠してしまうほど大きな翼


そして腰からは長いヒレのような尾が生えている


腰から生えた尾はその女の子の足の間を抜け丁度胸の当たりまで伸びている


その尾でギリギリ隠せていると言った所だ


そして胸が大きい、今まで会った人物の中で一番と言ってもいいのではないだろうか


元は綺麗なドレスだったのだろうが何者かにより切り裂かれ開放的になっているようだ


「うー?」


その女の子は首を傾げてこちらを見ている


「ど、どうするの!?」


「と言われてもな」


特に害を与えてくるような事はない


ただついてくるだけだ


「ふう・・・」


ブルーピゴミンはため息を吐くと女の子に喋りかけた


「君は一体何が目的なんだ?」


「んんー?」


しかし首を傾げ唸るだけで他の反応は返ってこない


「どうする?」


ブルーピゴミンは振り向くと女子代表に言う


「って言われてもぉ」


確かにお互いに困るだろう


目の前の相手は言葉が通じないのだろうか


意を決して女子代表が前に出て女の子に話しかける


「ど、どうしたの?迷子?」


「それは無いんじゃないか?」


「ちょっと静かにして」


「あ、あぁ」


ブルーピゴミンの突っ込みを黙らせ女子代表は再び話しかける


「一緒に誰かいなかった?迷子?」


すると女の子は口を開く


「まいご?あー・・・んー・・・」


やはり言葉が通じないのだろうか女子代表は更に女の子に問いかける


「迷子わかる?」


「ヴォルガーナ!いない!」


すると女の子は突然そう言った


「ヴォ、ヴォルガーナ?」


「人の名前だろう」


ブルーピゴミンはそう言うと女の子に声を掛ける


「ヴォルガーナがいないのか?」


「ヴォルガーナいなくなった!」


「そうか、居場所はわかるか?」


「あー・・・んー・・・」


恐らく知能が低いか言語能力が低いのか


いくつか言葉に反応するがわからない言葉が多いようだ


「ヴォルガーナどこ?」


「ボスの言った通り迷子だなこれは」


「でしょ!?言った通りでしょ!?」


「しかし随分とでかい迷子だな」


ブルーピゴミンの言った通り女子代表より少し背は大きく小さな子供とは言えない年齢だろう


「探検ついでに迷子の連れを探しに行くとするか」


「放ってはおけないしね・・・」


「んんー?」


二人で話していると再び首を傾げる女の子


「恐らくこの角と翼、そして尾から見るに・・・」


「見るに?」


「龍人だな」


「りゅ、龍!?」


ブルーピゴミンの言葉に飛び上がる女子代表


「りゅー?」


やはり首を傾げる女の子


「聞いたことがある、龍の3つの特徴を身体に宿した人型の者が存在するとな」


「角と翼と尾、この3つのうちのどれかを持った人型は龍人と言う種族だ」


「そしてこれだけ立派な角と翼と尾を持っているのだ、もしかしたら龍姫かも知れないな」


「りゅ、龍姫?」


聞き慣れない言葉に首を傾げる女子代表


「あぁ、龍を統べる龍王と契約を結んだ人間がなると言われている者だ」


「龍王に選ばれし人間が契約を結ぶことにより龍姫という者に生まれ変わるという」


「そしてその龍姫は龍王の絶大なる力を使えるようになるらしい」


「どこでそんなの調べたの!?」


「この施設に図書館があってな」


「ま、真面目~」


ブルーピゴミンの説明に思わず関心してしまう女子代表


「りゅうきーりゅうきー」


そして会話に出てきた言葉を適当に復唱する女の子


「相手も探している頃だろう、これだけ目立つ姿をしていれば簡単に見つけてくれるだろう」


「そうだといいけど・・・」


そんな会話をすると女子代表は聞き慣れた音を耳にする


施設の天井部分に幾つか設置してあるスピーカーからチャイムが聞こえた


「あぁ!これ迷子センターで流れる音だ!」


女子代表が反応した直後スピーカーから声が聞こえた


『水龍姫アクオリオルス様、直ちに迷子センターにまでお越しください、炎龍姫ヴォルガーナ様がお待ちになっております、繰り返します・・・』


「さて、これで居場所はわかったな」


放送を聞きブルーピゴミンが女子代表に言う


「そ、そうだね、本当に龍姫って奴だったね・・・」


などと話していると突如スピーカーにノイズが走る


『あ、お、おやめください!お客様!のあああ!?』


「な、何?」


放送していたものが何者かに襲撃されたのだろうか


一瞬の静寂が訪れた直後スピーカーから別の声が聞こえた


『アクオどこ!?どこいるの!?心配してんだからね!?早くこっち来なさいよ!?わかった!?』


マイクに向かって怒鳴っているのだろう凄まじい音量でその声は響き渡った


「ヴォルヴォルー!」


ヴォルガーナと呼ばれる女の声が聴こえるスピーカーに向かって手を振るアクオリオルスと呼ばれる女の子


「そこにいないから!ほら!こっち来て!」


「んんー?」


女子代表はアクオリオルスの手を掴むと歩き始める


「それで?迷子センターってどこ?」


女子代表はブルーピゴミンに聞くと既に場所を特定したのか指示を出し始める


「そこの階段から1階まで降りよう、そこからこの施設の入り口まで行くぞ」


「迷子センターらしい場所にちゃんとある!」


二人はアクオリオルスを連れ施設入り口付近にある迷子センターへ向かう


アクオリオルスはそんな二人を疑う事もせず首を傾げながらついてくる


そしてブルーピゴミンの指示に従い歩くこと数分


「思いっきり迷子センターって書いてある!」


迷子センターと表札の付いた入り口が見えてきた


その入口の目の前には燃えるような赤い髪


そして美しく曲がった2本の角


背には巨大な翼


誰もが見てわかるだろうお嬢様と言った服装の女が腕を組みながら立っている


あの放送を聞いていた者ならばこの者が叫んでいた主であるということを理解してしまうだろう


心配から苛立ちを感じているのか明らかに機嫌が悪そうだ


アクオリオルスはその女に気付くと手を振り始める


「ヴォルオー!」


「ヴォルオ・・・?」


謎の言葉に首を傾げながら女子代表はアクオリオルスを連れその女の子の方へ向かう


向こうも気付いたのか一瞬驚いた様子を見せたかと思うとこちらに歩いてくる


そして・・・


「貴方達は何者かしら?」


その女はそう言うと頭の角が薄っすらと光り輝く


「こちらに敵意は無い、気付けば後ろからついてきていたこの娘を迷子センターに届けに来ただけだ」


ブルーピゴミンは女子代表と女の間に割って入りそう言う


女は黙ってブルーピゴミンの頭の天辺からつま先まで見ると口を開く


「そう、確かに敵意は無さそうね、こんな場所でこんな親切をする者がいるとは驚きだわ」


薄っすらと光り輝いていた角からは光は消えていた


そして再び女は口を開く


「貴方達には感謝するわ、うちの馬鹿な娘を届けてくれてありがとう」


そう言い頭を下げる女


「んんー?」


アクオリオルスは状況がわかってないのか身体を傾ける勢いで首を傾げている


「んんー?じゃないでしょ!?どれだけ心配したと思ってるの!?」


そのの反応に怒りが爆発したのか女はアクオリオルスの両頬を摘むとぐにぐにと引っ張る


「ふぉええええ!」


涙目になりながら唸るアクオリオルス


そんな様子を呆然と眺める女子代表とブルーピゴミン


「っと・・・失礼」


一頻り頬を引っ張り回した女はこちらの様子に気付いたのか再び頭を下げる


「い、いえいえ、ところで貴方は?」


女子代表は手を軽く振るとその女に問う


「自己紹介もしてなかったわね、私は炎龍姫ヴォルガーナ、そしてこっちは水龍姫アクオリオルスよ」


「ヴォルガーナさんですね」


「ええ、よろしく」


そう言い手を差し出してくるヴォルガーナ


その手を握り軽く握手をする女子代表


「ところで他にも私の仲間を見なかったかしら?」


「仲間?」


ヴォルガーナの質問に首を傾げる女子代表


「ええ、風龍姫と土龍姫・・・って言ってもあれね、私達と同じように龍の角と翼と尻尾のある種族ね」


「他には見てないですねー」


「そう・・・とにかく連れてきてくれてありがとう、もし他にもこんな娘を見つけたらヴォルガーナが呼んでいたって言ってもらえないかしら?」


「あ、はい、わかりました」


「それじゃあ私達は他を探してみるからまた機会があればお会いしましょう」


「ばいばーい」


そう言い頭を下げるヴォルガーナと手を振るアクオリオルス


女子代表はそんな二人に手を振る


「さて、私達も戻るとするか」


黙っていたブルーピゴミンがそう言う


「うん、外歩くとやっぱ色々巻き込まれる気がする」


「だろうな」


女子代表達はヴォルガーナ達が歩いていった方向とは逆の方向へ歩き始める


そして視界に入る異質な何か


「なにあれ・・・」


「わからん」


二人は顔を見合わせ首を傾げる


視線の先にはゴミ箱に頭から突っ込み下半身だけがゴミ箱から出ている状態の人らしきものがいる


アクオリオルスと同じようにその腰からは先端に大きな輪が付いた尾が生えている


そしてゴミ箱からは半端に鋭い刃のような翼がはみ出ている


少しもがいたのかゴミ箱は傷だらけになっている


「あ、あれ触れない方がいい奴?」


「わからん」


死んでいるように思えたがその尻尾がたまに動き壁や地面にぶつかり鈍い音を鳴らす


「あれ不機嫌な猫の尻尾みたい」


近くを通る者は触れないように避けて通り過ぎていく


女子代表は好奇心に抗えずゆっくりと近づいていく


そんな女子代表にピッタリと張り付き護衛体勢に入るブルーピゴミン


「えい」


女子代表は尻尾の先端部分の輪を掴む


すると突然触れられた事に驚いたのか一瞬ビクリと震えると尻尾が持ち上げられる


女子代表は尻尾を掴んだまま宙に浮いてしまう


「す、すごいパワー!」


その勢いに女子代表は手を離してしまい宙に放り出される


ブルーピゴミンは慌ててそんな女子代表を受け止める


「ぶっ飛ばされた・・・」


「いきなり掴めば誰でも驚く」


「そ、そうだね」


ゴミ箱に頭から突っ込んでいる者はバタバタと暴れ始める


尻尾の輪が壁や地面にぶつかりゴミ箱から半端に出た翼がゴミ箱を更に傷だらけにしていく


「ひ、ひええ・・・」


そんな様子を遠目に見ている女子代表


そしてついに耐えきれなくなったのかゴミ箱が壊れ上半身が出てきた


捻れた黄色い角に鋭い刃のような巨大な翼


そして赤く長い尾の先端には巨大な輪が付いている


ヴォルガーナ達と同じ龍姫だろうか


白く美しい髪が印象的だ


その龍姫と思われる女はゆっくりとこちらを見る


「なに?」


「してるんです・・・?」


青い瞳が女子代表を捉えるとそう口にする


そして疑問に疑問で返してしまう女子代表


「出れた」


ゴミ箱にハマっていたらしい


翼などが上手く引っかかり出れなかったのだろう


「あ、貴方は・・・?」


そんな女に再び疑問をぶつける女子代表


「私は神龍王妃ヴァイス」


「な、何か知らないけど強そう!」


「強い」


「らしいよ!?」


女子代表は慌てた様子でブルーピゴミンに言う


「強いのは良いが何をしていたんだ?」


「シュヴァルツに置いて行かれた」


「シュヴァルツ?」


「邪神龍王妃シュヴァルツ」


「また強そうな名前出てきた!」


「そのシュヴァルツとやらに置いて行かれたわけだな」


ブルーピゴミンの問にヴァイスは頷く


「どこに行ったかはわかるか?」


「部屋、440番」


「私達の部屋と同じ階層ですぐ近くだな」


「私は隣の441番」


「ならばそこまで送ろう」


その言葉を聞きいつまでもひっくり返っていたヴァイスはゆっくりと身体だけを起こす


そして両手をこちらに差し出す


おそらく立たせろと言っているのだろう


ブルーピゴミンはゆっくりと近寄るとその両手を掴もうとする


しかし手を叩かれ弾かれてしまう


「違う、背」


「背?」


ヴァイスの言葉に首を傾げながらブルーピゴミンはヴァイスに背を向ける


するとヴァイスの両腕に付いた篭手のような部分から鉤爪のようなフックが伸びブルーピゴミンの両肩に丁度ひっかかる


伸びたフックはゆっくりと縮み丁度ブルーピゴミンの背にぶら下がっているようになるヴァイス


「出発」


「あ、あぁ」


戸惑いながらもブルーピゴミンは歩き始める


ズリズリと引きずられるヴァイス


「こ、これは置いていかれるのもうなずける・・・」


女子代表はその異常な光景を目にしてそうつぶやく


「てか尻尾邪魔すぎでしょこれ」


引きずられているヴァイスの尾についた輪が地面を削っている


階段を登ると尻尾が段差にぶつかり鈍い音を鳴らす


そして扉を潜ると尻尾がでかすぎて引っかかる


ブルーピゴミンはそれに気付かず歩いていると尻尾が真っ直ぐに伸びる


翼が非常に不機嫌そうに羽ばたく


女子代表は慌てて尻尾を掴み縦にする


「あ、あのままだったら尻尾引っこ抜けてたんじゃ・・・」


引っかかった事が嫌だったのか尻尾が明らかに不機嫌そうに振られ壁や地面を削る


「歩く災害レベルじゃん・・・」


そして目的地の441号室前に付いた


「ついたぞ」


「中入る」


どうやら部屋の中にまで連れて行かなければいけないようだ


「鍵はどこだ?」


部屋に入るには鍵が必要だ


おそらくヴァイスが持っているはずだが・・・


「シュヴァルツが持ってる」


「まずはシュヴァルツとやらに会わねばならんようだな」


そう言い隣の部屋に向かおうとすると丁度扉が開いた


「ん?なんだお前らは」


黒き2本の角


そして同じく黒い翼に長く先端の尖った尾の女の子


どうやらこの者がシュヴァルツだろう


「なんだ、やっとここまで来たのか」


背中にへばりついているヴァイスを見てその女の子は言う


「君がシュヴァルツで間違い無いか?」


「あぁ、私がシュヴァルツだ、そして礼を言っておこう」


「その惰性に満ちた愚か者をここまで運んでくれてありがとう」


「置いてくのが悪い~」


ヴァイスはそう言うとブルーピゴミンの肩からフックを外すと地面に再び寝転がる


シュヴァルツはそんな様子のヴァイスを見るとため息を吐きながら尻尾の輪を掴む


「ではまた機会があれば会おう、感謝するぞ人間共」


そしてそのままヴァイスを引きずり部屋へと戻っていく


ヴァイスは引きずられながらこちらに軽く手を降っていた


「ドラゴンってみんなあんな感じなの・・・?」


「さあな、世の中は広いと言うことだ」





二人は互いに顔を見合わせため息を吐くと自分達の部屋へと戻っていった




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