4話「奇襲と疑惑」
「流石に中央都市までは遠いな」
ブルーピゴミンが遥か前方を見ながら呟いた
「そうだな、まだ影すら見えん」
レッドピゴミンはシニユクサダメ号に指示を出しながら応える
二人の間にはシニユクサダメ号の腕が落ちぬようしっかりと支えている女子代表
「だいぶ疲れているのであろうな、頬を突付いても全く反応しない」
二人の間で幸せそうな顔をし眠る女子代表
「敵影らしきものも見えぬな、完全に諦めたと見ていいだろう」
「人まずは安心だな」
まだ周りは暗く夜は続きそうに見えた
「シニユクサダメ号、走りっぱなしで大丈夫か?」
「ギオオ」
レッドピゴミンの問いかけに小さな鳴き声で反応するシニユクサダメ号
「そうか、休みたくなったら言うのだぞ?無理はさせられんからな!」
「ギオオ!」
荒野を走る1匹と4人
だが彼らはまだ気付いていない
忍び寄る死の影に・・・
そしてその影は突然彼らを襲う事となる
突然イエローピゴミンがシニユクサダメ号の上に立ち上がり叫ぶ
「ピッゴォ!!!」
「どうした!?イナズマイエローピゴミン!?」
唐突の声にレッドピゴミンが振り返る
「ピッゴォ!!!」
有無を言わず女子代表の持つ剣をイエローピゴミンが奪い取り天に掲げる
「上か!?」
ブルーピゴミンが上空を見上げる
その直後だった
4人と1匹のほぼ真上で大きな爆発が起きた
「これは・・・狙撃か!?」
イエローピゴミンの掲げた剣の障壁により無傷ではあるが突然の狙撃に3人は周りを見渡す
「敵影は見えないな・・・」
「いったい何処から撃ってきやがったんだ!?」
「んおあ・・・?ここどこ?」
「寝ている場合ではないぞ!ボス!」
「あれ?んん?それ定着する感じ?」
「寝ぼけている場合ではない!敵襲だ!」
「え?あれ?敵襲何?」
完全に寝起きで頭の回らない女子代表
「とにかくこのまま突っ切るぞ!!!」
そう言いレッドピゴミンがシニユクサダメ号を再び走らせる
だがそれを許さないと言わんばかりにシニユクサダメ号の目の前を的確に狙い上空より爆撃が降り注ぐ
「超遠距離砲撃か!!!」
「なんて厄介な攻撃を・・・!」
「うわ、めっちゃ特撮みたいに爆発してるやん」
「まだ寝ぼけているのか!?」
イエローピゴミンは剣を掲げ続け爆撃からシニユクサダメ号事皆を守る
「私の指示通りにシニユクサダメ号を動かせ!」
「おうよ兄弟!!!」
ブルーピゴミンが叫び上空を見上げる
「ホークアイ!!!」
「うわ、鷹の目とかすごい」
「左に避けろ!目の前に降ってくるぞ!」
「任せろ!」
「ギオオオオオオ!!!」
ブルーピゴミンの指示通りシニユクサダメ号は左へと回避しながら走る
すると先程までいた所に巨大な穴が開いた
「凄まじい威力の砲撃だ、当たればひとたまりもないな・・・」
「左右を狙って来るぞ!このまま前進し続けろ!!!」
「おうよ!どうやら敵は俺らがまぐれで避けたか試してる見てえだな!」
「私達の力を見せつけてやるぞ!!!」
そう喋っているうちに左右の地面を抉る無数の砲弾が降り注いでくる
「めっちゃ揺れるんですけど!これ生きて帰れるの!?」
「この砲撃がいつまで続くかわからん!とにかく避けて逃げるしかない!!!」
「正面と右を吹き飛ばすつもりだ!また左に避けろ!!!」
「おう!!!」
そう言い左へと再び回避するシニユクサダメ号
「待て!止まれ!」
「どうした!?」
ブルーピゴミンの指示通りシニユクサダメ号がその場で地面をえぐりながら急停止する
その直後シニユクサダメ号全体を包むように地面が吹き飛んだ
「野郎やってくれるぜ!」
「これ以上剣の障壁を使い続ければいずれこちらが保たなくなる、どうにか打開することが出来ればいいのだが・・・」
軽く手で合図を出すと再びシニユクサダメ号は歩き出す
「打開する必要は無い」
突如上空から聞こえる声
「何!?」
上空から突如降ってきた者
着地と同時に地面を大きく震わせた
「何者だ!!!」
「大人しく投降するのならば命までは取らない」
「むしろ命を奪いたくないのだ」
土煙が晴れたその中心にいる者
左右に付いた赤いツインテールが特徴的な機人
身体はほぼ機械で出来ているのか体長は女性型とは思えない程大きく2メートル近くはあるであろう巨体
そして全身を覆う分厚い装甲
「私はリリエル隊前衛隊隊長リリエル・チェレアリアだ」
「エビルマリアが世話になったようだな」
「あいつの仲間か!!!」
シニユクサダメ号から飛び降りたレッドピゴミンがチェレアリアの前に立ちはだかる
「そうだ、不法入国者が逃走していると聞いて捕まえに来たのだが・・・」
「そう構えないでくれ、出来るならば戦いたくはない」
「あれほどのドンパチ歓迎してくれた奴の言うセリフとは思えねえな!」
「その事に関しては悪いと思っている、エビルマリアと言い我が隊隊長と言い敵と判断すればこの有様だ」
やれやれと首を横に振りながら言うチェレアリア
「さて、どんな事情があって逃げているのかは知らないが大人しくついてくるのならば話は聞こう」
「そして場合によっては助けになってやれるかもしれない」
「それって結構良い事なんじゃない?」
女子代表がレッドピゴミンの後ろから顔を出した
「その娘がエビルマリアの言っていた人間か、なるほど・・・確かに人間だな」
「その誘いは魅力的だが信用ならねえな」
「え?ダメなん?」
「そうだな、我々があの砲撃を避ける事が出来なければ確実に全員バラバラにされていたであろう」
シニユクサダメ号から降りてきたブルーピゴミンが言う
「なにそれこわい」
「確実に殺しに来ておいて大人しく投降すれば助けてやるとはとても信じられん」
「確かにやりすぎたとは思っているがな・・・」
チェレアリアと話していると遥か前方から尋常ではない速度で接近する何かが見えた
「随分と速いな」
チェレアリアが後ろを振り返るとそれは既に目の前まで接近していた
「話し合うだけ無駄ね」
チェレアリアの目の前で凄まじい土煙を上げ急停止したそれは言う
「だからとっとと蜂の巣にするべきだったのよ」
「平和的解決を少しはするべきだと思うのだがな・・・」
「なになに?なんかまた増えたの?」
レッドピゴミンの背後から顔を出している女子代表が言う
「あなた達に名乗る名は無いわ、今すぐ蜂の巣にしてあげるから」
そう言うと腕に付いたガトリングガンのようなものをこちらに向ける
「待たんか、まだ話し合いの途中だ」
レッドピゴミンのその者の間に入り止めるチェレアリア
「どいて、話し合うだけ無駄よ、相手に既に信用されていないのだから、それにこっちも信用する気は無いもの」
「さて・・・またややこしくなるような事をしてすまないが・・・」
「投降する気は無いか?」
「出会ってそうそう銃口を向けられてはやはり信用出来ん、いつ殺されるかわかったものではないな」
ブルーピゴミンが女子代表を守るように立ち言い放つ
「実に残念だ・・・これより対象の殲滅を開始する」
「待ってました」
そう言い機人の二人が構える
「シニユクサダメ号!!!」
レッドピゴミンが叫ぶとシニユクサダメ号がチェレアリア目掛け突進をする
「正面からとは面白い!!!受けて立つ!!!
シニユクサダメ号の巨体から繰り出される突進を正面から受け止めるチェレアリア
「うわ、すごい怪獣バトルみたい」
「呑気な事を言ってる場合ではない!!!」
「全員蜂の巣にしてあげる」
そう言い両腕に付いたガトリングガンを構える機人
「そうね、名乗る名は無いと言ったけれど死にゆくあなた達に特別に教えてあげるわ
「私はリリエル隊機動制圧隊隊長レイガリア」
「私の速度と弾幕からは誰も逃げられない」
レッドピゴミンが一歩前に出ると言い放つ
「貴様の弾幕この俺が受けて立つ!!!」
「生身の人間如きが生意気言ってるんじゃ無いわよ・・・」
そして両腕のガトリングガンがこれでもかと言わんばかりに一斉に放たれる
「ふんふんふんふんふんふんふんふん!!!」
「う、うわ!キモい!」
その銃弾一つ一つをレッドピゴミンが凄まじい腕の速度で掴み止めていく
「な、馬鹿な!?どういうことなの!?」
それでも撃つのをやめないレイガリア
「ふははははは!!!どうした下手な鉄砲数撃っても当たらんぞ!?」
「ふんふんふんふんふんふんふんふん!!!」
レイガリアの激しい銃撃をレッドピゴミンが耐え続ける
「な、弾が・・・!両腕で2000発以上あるのに・・・!」
「それで終わりか!!!」
「な!なによ!?これで終わりだと思ってるの!?」
「ならばこちらも攻めさせてもらうぞ!!!」
そう言いレッドピゴミンが走り出す
「チッ!」
「剣を掲げろ!!!」
そして叫ぶレッドピゴミン
「え!?はい!」
突然の声に驚き剣を掲げ光らせる
「ピゴホース!!!!!」
そう叫ぶとブルーピゴミン、レッドピゴミン、イエローピゴミンが集まり始める
「な、何をする気!?リロードが・・・」
そしてリロードが終わる頃にその異形は目の前に立っていた
「な・・・これは・・・」
「あ、運動会の騎馬戦の馬の部分だ」
女子代表の的確な一言が目の前にあった
3人が騎馬を組んでいたのだ
「さあ乗れ!!!」
「え!?乗るの!?」
「そのための騎馬だ!!!」
「じゃ、じゃあ・・・・よいしょっと・・・」
言われた通りにピゴホースと呼ばれる騎馬に乗る女子代表
「やっとリロードが終わった・・・今度こそ蜂の巣に・・・!!!」
「じゃ!帰るわ!」
そう一言レッドピゴミンが叫ぶとシニユクサダメ号も真っ青な速度で走り始めるピゴホース
「な!逃げやがるの!?」
「チェレアリアは何を!?」
そう言いチェレアリアの方を見るとシニユクサダメ号が死に物狂いでチェレアリアに巻き付いている
「くそ!見ての通り戦闘中だ!とっとと追わんか!」
「言われなくても追うわよ!!!」
そう言いピゴホースを追い始めるレイガリア
・・・・
「すまない・・・シニユクサダメ号・・・」
「ぬおああああ!?これめっちゃ速い空気抵抗やばい!シニユクサダメ号の10倍くらい速いかも!?」
「それでシニユクサダメ号がどうしたのおおお!?」
「恐らくシニユクサダメ号は生きては戻ってこれないだろう・・・」
「え!?」
ブルーピゴミンも悔しそうに口を開く
「チェレアリアと言ったあの機人のパワーとシニユクサダメ号のパワーでは時間の問題だ」
「圧倒的なまでの差があったのは見てわかる、時期にバラされるはずだ」
「そ、そんな・・・」
「俺たちはあいつの死を無駄にしてはならない!!!」
「そのためにも私達は生き残るぞ!!!」
「う、うん・・・」
「ピッゴォ!」
そして更に速度を上げるピゴホース
だが敵は圧倒的速度を誇る機人
「にーがーさーなーいー!!!」
「もう追い付いてきたか!!!」
後方から確実に距離を詰めてくるレイガリア
「速度で私が!!!負けるはずがない!!!」
そう叫ぶと再び両手のガトリングガンを構え乱射してくる
「ボス!そのわがままボディな尻を浮かせ!!!」
「はぁ!?なに!?」
言われるがまま立ち上がると椅子となっていた腕が無くなった
正確にはその腕を後ろに伸ばし乱射される銃弾を全て手で掴んでいるのだ
「ふふん!私も同じことが出来る!!!」
ブルーピゴミンとレッドピゴミン二人してだ
「「ふんふんふんふんふんふんふんふん!!!」」
「うるさいしキモい!」
「ま、また私の弾幕を・・・!」
全て使い切ってしまったのか乱射される銃撃が止んだ
「もうこうなったら!!!」
更に速度を上げ距離を詰めてくるレイガリア
「あいつあのまま突っ込んでくる気だぞ!!!」
腰当たりから2本のナイフを両手に持ちそのまま突っ込み振り下ろすレイガリア
「「ぬぅん!!!」」
レッドピゴミンとブルーピゴミンがそれを手首を掴み受け止める
「かかったわね!!!」
そう叫ぶとレイガリアの腰の左右についた謎のハッチが開く
「ミサイルポッドか!!!こんな目の前で撃ったらお前ごと吹き飛ぶぞ!?」
「私には予備のボディがいくつもあるから少しくらい壊れたって平気なのよ!!!」
「ピッゴォ!!!」
黙っていたイエローピゴミンが突如叫ぶ
「あ、きっとこう!」
女子代表が何かを悟り剣を掲げる
「「モードピゴサス!!!」」
レッドピゴミンとブルーピゴミンが叫ぶと二人の背から片翼の翼が生えた
「な!?」
「さあ空まで連れてってやるよ!!!」
そして5人の身体が宙に浮いた
「な!?空飛んで!?」
翼を羽ばたかせ上空へと飛び上がるピゴミン達
「うわ!空飛んでる!すげえ!」
もはや追われている事など忘れはしゃぐ女子代表
突然宙に浮いた事に驚きを隠せないレイガリア
「さあどんどん高度は高くなるぜ?」
「くっ・・・!この!!!」
足をバタつかせるレイガリア
レッドピゴミンが振り向き言う
「お前、身体の換えがあるんだったよな?」
「は・・・?それが・・・まさか・・・!?」
「お空の旅を楽しんで来な」
そう言い掴んでいた手首を放す二人のピゴミン
「クソ!!!覚えてなさいよぉー!!!」
散り際に腰に付いたミサイルポッドからミサイルを発射するが標準がズレ全く別の方へ飛んでいく
「これでしばらくは安全だろう、このまま一気に街に向かうぞ!」
「おうよ!!!」
「あ、もう座ってもいいぞ」
「あ、ありがと」
ブルーピゴミンに言われ腰を下ろす女子代表
「やっぱり女子高生の尻は最高だな!!!」
突然レッドピゴミンがそんなことを叫ぶ
女子代表は振り向くこともせず剣を振り上げる
「ま、待て!悪かった!今刺されてはピゴサスが墜落する危険があるんだぞ!?」
「兄弟、口に出していい言葉と悪い言葉があるのを覚えておくのだ」
「余りにも嬉しすぎて・・・!!!」
再び女子代表が剣を振り上げる
「ま、待て!わかった!付くまで黙るから!お願いだ!」
「チッ・・・」
「女子高生の舌打ちは怖いな・・・」
ブルーピゴミンが震えながら小声で呟いた
・・・・
「随分とコテンパンにやられたようだな」
地面に半分埋まったレイガリアを見下ろすチェレアリア
「そういうあなたも腕一本無いじゃない」
「あぁ、油断していたよ」
チェレアリアはそう言いながらレイガリアの腕を掴むと地面から引き抜く
「両足は使い物にならなくなっているな」
「自慢の足が台無しよ・・・」
「埋まるほどの高さから落ちてよく爆発しなかったな」
「周りを見ればわかるでしょ」
そう言われ周りを見渡すと幾つか地面にクレーターが開いている
「なるほど、落ちている最中に全ての武装を破棄したか」
「爆弾抱えて落ちるわけにはいかないでしょ」
「さて、撤退するとしよう」
「あなたの速度じゃ日が暮れるわ」
「もう迎えの輸送機を手牌している」
レイガリアを背負いチェレアリアは歩き出す
「あいつらは一体何者だ?」
「知らないわ、新種の魔人かなにかじゃないの?」
「我々機人ですら魔力を持っている、魔人なら魔力を感知出来るはずだ」
「そうねぇ・・・」
・・・・
上空を優雅に飛ぶピゴサス
「これめっちゃ寒いんだけど・・・」
「もう街は見えている、もう少しの辛抱だ」
そう言い地上を見下ろすと中央都市と思われる街が見えていた
「なるべく早くして・・・」
「もっとスピードを出すぞ!!!」
「あ、待って、余計寒くなるから今のままでいい・・・」
そんな下らない会話をしながら女子代表は再び考え始める
ピゴミン達は拒絶したけれど先程の機人達は助けになるかもしれないと言っていた
確かに罠の可能性も無くはない
だが二人の機人にはエビルマリア同様勇者の証となるブレスレットがしっかりと付いていた
この世界の安全を守るのが勇者組織の役割だ
確かに村人達はそう言っていた
そして今私達は不法入国者として追われている
訳を話せば助けになってくれるのではないだろうか?
今命の恩人となるこの訳の分からない生物に全て頼っている
だが本当にそれは信用出来るのだろうか?
何も知らない私が異世界に迷い込み正体も分からない何者かを頼りに必死に生きている
これは果たして安全と言えるのだろうか?
勇者の助けを断り必死に逃げ惑っている
森で襲ってきたウェアウルフは言っていた
人間は高く売れると・・・
この3人も私を売る目的で必死に守っているのではないだろうか?
訳も分からず向かっている先は中央都市
一番賑わっているであろう場所だ
ならばそこで売られるのは当然のことでは無いだろうか?
疑問は次第に恐怖へと変わっていく
この3人は自らの正体を一度も語っていない
それが一体どういうことなのか今の私には分からない
ただ最悪の場合も十分にありえるという可能性もあるのだ
「これもしかして結構ヤバイ・・・?」
「どうした?ボス?」
「あ、いや、なんでもない・・・」
街へと降りていくピゴサス
女子代表の不安と焦りは徐々に膨らんでいく
この世界で一体何を信じれば良いのだろうか?
この得体の知れない3人なのか?
それとも先程の勇者と名乗る機人達なのか?
「さあ付いたぞ!ここが中央都市だ!」
「ここがヴァルキリー中央都市・・・」
女子代表の目の前には巨大な門がそびえ立っていた




