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異世界に近隣住民女子代表が迷い込む  作者: おぽんち
第二章-私を知る-
16/16

16話「それぞれの思惑」

コロシアム会場にて・・・


数日前までは賑わっていた会場


しかしほぼ全てと言っていい程出場者達は消えていた


だがそんな中残ったわずか数人


一回戦で破壊王悪鬼を一瞬で倒してしまったフードM


惰性の限りを尽くしていた神龍王妃ヴァイス


そしてその相方と思われる邪神龍王妃シュヴァルツ


近頃全ての国を脅かしているペット殺しの霊恋娘


盗賊を統べる者盗賊キング


今わかっている出場者はこの5人


そして詳細の分からない出場者が数人


魔王ガラドリオスルルディスタ


百鬼夜行乃桜鬼雷華


DTK


この3人の詳細は今のところ何も分かっていない


命知らずかあの天使達より更に上の存在か


残されたバーニングレッドピゴミンとハイドロブルーピゴミンはそれぞれの出場者の様子を見ながら女子代表の帰りを待っていた


「心配だ・・・やはり俺たちも探しに行くしか!」


「待つんだレッドピゴミン!イエローピゴミンの言った通り我々はここで待機していた方がいい」


「だが・・・!」


二人の筋肉ダルマは互いに焦っていた


再び女子代表を手放してしまい更には剣すら持っていない状況だ


この世界では今死んでもおかしくはない


気が気でない状況だ


ロビーで二人が話していると背後から声をかけられた


「あ?なんだ?ガキは一緒じゃねえのか?」


盗賊キング


女子代表達を最初に追い回したウェアウルフの男だ


「貴様か、女子代表は今は不在だ」


警戒しながらブルーピゴミンが盗賊キングの前に立つ


「襲いやしねえ、安心しな」


「あんな化物同士の戦いを見て逃げずに残ってることは褒めてやるぜ」


「貴様こそ何故逃げない?」


ブルーピゴミンは盗賊キングに疑問を投げかける


「あ?そんなの俺がキングだからに決まってんだろ?」


「なんだと?」


突然意味の分からない事を言う盗賊キングに首を傾げるブルーピゴミン


「俺は盗賊を統べるキングだ、そのキングがおめおめと逃げ出したら仲間に示しがつかねえ」


「何よりもこの戦いに死んでも勝たなきゃ俺たちはずっと野蛮な盗賊のままだからな」


「金さえあればよええ仲間も平和に生きる事が出来んだ」


「最初からもっと賢い生き方があったと思うんだがな」


ブルーピゴミンは盗賊キングにそんな言葉を投げかける


「ヘルじゃそんなこと言ってられねえぜ」


そう言いながら盗賊キングは近くにあった椅子に腰を掛ける


「ヘルは弱肉強食の世界だ、弱けりゃ食われるだけだからな」


「よええ奴を集めて俺達は隠れるように生きてた」


「そんな時このヴァルキリーの結界が消えたと来たもんだ」


「もちろん邪魔な結界が無けりゃヴァルキリーに逃げてくるに決まってるだろ?」


「そんでもってこの戦いで一発稼いで仲間の為に村の1個でも作ってやろうってことよ」


盗賊キングの夢を聞きレッドピゴミンが駆け寄る


「俺は感動した!ただ乱暴な奴だと思っていたが仲間思いの良い奴なんだな!!!」


「俺はキングだから民の事を思うのは当然ってもんよ」


「是非戦いに勝利することを願うぜ!」


レッドピゴミンは盗賊キングに親指を立てる


「敵に応援されるってのも妙なもんだぜ」


盗賊キングもレッドピゴミンに釣られ親指を立てる


「一ついいか?」


そんな二人の間にブルーピゴミンが割って入った


「応えたくなければそれでいいが他の出場者について知っていることを教えてはくれないか?」


その言葉を聞き盗賊キングの口元が釣り上がった


「青いのは気に食わねえが赤いのは気に入った、それに免じて答えてやる」


「感謝するぜ!!!」


「俺も詳しくはあまり知らねえが誰について知りてえんだ?」


「まだ一回も戦っていない魔王と百鬼夜行とDTKという奴だな」


ブルーピゴミンは話を聞くために盗賊キングの前にある椅子に座る


「おいおい?俺もまだ戦ってねえぜ?」


「キングとは既に戦ったからな!」


レッドピゴミンがそんなことを言いながら近くにあった椅子を引っ張ってくると同じく盗賊キングの前に座る


「ガッハッハッ!そうだったな!まあその3人について知ってることを教えてやるぜ」


「まずは魔王からだ」


魔王ガラドリオスルルディスタ


彼女はフィースの半分を支配する二代目魔王


魔王と名乗るだけありその名の通りデタラメな力を使うという


とにかく攻撃の全てが派手でデカイ


数十メートルはある剣振るう姿を見たという者がいるらしい


近接から遠距離まで幅広く魔法や物理攻撃を使いどんな戦術も駆使するという


「流石は魔王を名乗るだけあり全てにおいて万能か」


「当たったら諦めるやつが多いだろうな、無駄死にはしたくねえからな」


「次は魔王とドンパチやりあってる百鬼夜行だ」


百鬼夜行乃桜鬼雷華


彼女はフィースのもう半分を支配する百鬼王と呼ばれる百鬼夜行軍の頂点に君臨する鬼である


だが彼女は鬼にして暗殺者でもあり隠密行動に非常に優れている


カメレオ種と同様その姿を消し忍び寄り暗殺することを得意とする


しかしそれだけではない


鬼族は基本力こそ正義という種族


その腕を振るえば大地は割れ全てを吹き飛ばし破壊し尽くす


彼女もそれは同じだ


突如現れては嵐のように敵陣を荒らし回り気付けば消えている


神出鬼没の暗殺者それが桜鬼雷華だ


「魔王もやべえが百鬼王もどっちもやべえのは確かだな」


「聞くだけで勝算が見えなくなるな」


「最後のDTKだが俺も詳しくはよくわからねえ」


「ふむ?」


「一つ分かるのは死ぬほど硬えってことくらいだな」


「そうなのか?」


「あぁ、魔法少女って分かるか?」


「魔法少女?」


どういう意味で言われたのか分からず首を傾げるブルーピゴミン


「勇者ランク1の化物中の化物だ、戦ってまず勝てる奴はいねえ」


「あいつが魔力を解放するだけで敵が吹っ飛んで壊滅する」


「世の中には化物が多いのだな」


「あぁ、その魔法少女にぶん殴られても生きてるのがDTKだ」


「殴られただけで死ぬのか?」


「おめえあいつのパンチがどれだけつええか知らねえからそんなこと言えんだ」


盗賊キングが怯えたような表情でそういう


「どれくらい強いんだ・・・?」


ブルーピゴミンが唾を飲み込み聞く


「DTKがぶん殴られたのがフィースの一番南だ」


「んでDTKが吹っ飛ばされた位置がヴァルキリー南の結界前だ」


「国一つ跨いで海を渡り結界にぶつかってようやく止まったのか」


「その直線状にあったもんは全部吹き飛ばされちまったらしいな」


「本気出したらそれ以上にやべえんだからな」


「そしてそのパンチを受けても生きてるDTKも只者じゃねえのは確かだ」


「要するに残っている奴らは皆化物ということだな」


「間違っちゃいねえな」


「情報提供に感謝する」


そう言うとブルーピゴミンは立ち上がる


「良いってもんよ、お互いいつ死ぬかわからねえ身なんだからな」


「そうだな・・・次は戦いでない場所で出会う事を願っている」


そう言うとブルーピゴミンはロビーから去っていく


レッドピゴミンは一度振り向くと盗賊キングに叫んだ


「気合だ!ガッツだ!勇気があればなんだって出来る!!!」


「ハハッ!そいつは心強いな!」


盗賊キングは陽気にレッドピゴミンに手を振る


それを見たレッドピゴミンも手を振りながらロビーを去っていく


「なんでも出来ればいいんだがな・・・」


そう言うと盗賊キングも立ち上がりロビーを去っていく



それから数時間後・・・・


バニー・ラ・ビットのアナウンスによりロビーに集められた残った出場者達


「えーっと残った出場者の皆さん本日より再びコロシアムを再開したいと思います」


「前回対戦相手の発表をしましたがー・・・減ってはいないみたいですね」


ロビーを見渡すと残された出場者達が静かにバニーの話を聞いている


「では最初は神龍王妃ヴァイスさんと邪神龍王妃シュヴァルツさんです」


「その次の戦いはガラドリオスルルディスタさんと盗賊キングさんの戦いと言う流れになります」


「再び会場が破壊されない限りはこの4名の戦いが今日のスケジュールとなります」


「では1時間後にコロシアムが開始されますのでそれまでに4名の方は準備をお願いします」


そう言うとバニーはその場から逃げるように去っていった


「チッ・・・」


盗賊キングが舌打ちをするとロビーから消えていった


「盗賊キングは魔王と戦うことになったか」


「どうなるのだろうな?」


レッドピゴミンとブルーピゴミンが小声で話し合う


そしてその魔王と思われる赤いツインテールに二本の黒い角が額から生えている少女を見る


「むっ?なんだ貴様ら?」


こちらの視線に気付いたのか魔王が近づいてくる


「ほおー?貴様ら知っているぞ?噂になっている人間共だな?」


「この会場で知らない奴はもういないんじゃないか?」


「確かにそうだ」


珍しい物を見るかのように魔王がレッドピゴミンとブルーピゴミンの回りをゆっくり周りながら観察する


「確かに人間のように見えるがどこかで感じたことのある気配も感じる?何者だ貴様ら?」


「ただの人間と言っておこう」


ブルーピゴミンはそう答える


「まあ見知らぬ相手に自らの正体を明かす程馬鹿な者もいないか」


「そこのフードを被った女も正体は・・・まあわからないということにしておこう」


噂をされていることに気付いたフードMがこちらに近づいてきた


そして信じがたい行動に出た


「ふおおお!?」


突然魔王の頬を両手で引っ張り始めた


「なっ!?」


突然の行動にブルーピゴミンとレッドピゴミンはただ見ることしか出来なかった


「ふぁたしがぬぁにふぉしたぁ!?」


ただ無言でしばらく頬を引っ張り続けるフードM


魔王がフードMの両手を掴もうとした直後に手を離すとその場を去っていく


「まったく!なんて凶暴な奴だ!」


頬を膨らませながら魔王もその場を去っていく


「あ!」


去り際に何かを思い出したかのように立ち止まる魔王


「貴様ら!我と当たった時は覚えておけ!人間だからと言って容赦はせぬぞ!」


そう言うとロビーを去っていった


「騒がしい奴らだ」


いつから近くにいたのか


「むっ!?」


レッドピゴミンが警戒し咄嗟に距離を取る


そこには黒いツインテールに仮面


そして全身が機械のような者が立っている


「男か・・・?」


ブルーピゴミンが首を傾げる


首を傾げた最大の理由


それは股間部分に明らかに不自然な棒があるのだ


「さあな、どちらだろうな?」


その声もモザイクをかけられたような雑音の混じった声


女とも男とも取れる声をしている


「アンドロイド・・・では無さそうだな」


「パワードスーツだ、機械の鎧と言えばいいか?」


「なるほど、中身は生身なわけだな?」


「どうだろうな?」


仮面の者は曖昧な答えばかりで正体はわからない


「お前がDTKか?」


「私を知っているのか?」


「ということはそうなんだな?噂で聞いただけだ」


「そうか」


「ガルルルルル・・・」


「ぬおあ!?」


突然何者かに腰を捕まれ変な声を出すレッドピゴミン


そのレッドピゴミンを盾にするかのように恋娘が唸り声を出しながらDTKを睨みつけている


「あぁ、私の愛しき姫君よ、そんな声を出してはいけないよ」


そう言いDTKが一歩前に出る


レッドピゴミンを盾にしながら恋娘が一歩後ろへと下がった直後


DTKが消えた


「盾なんて用意しても無駄なのはわかっているだろう?」


「なっ!?消えた!?」


ブルーピゴミンが周囲を見渡すとレッドピゴミンの後ろにいたはずの恋娘をお姫様抱っこしているDTKの姿があった


「はっ!?」


突然の出来事に恋娘も目をパチクリさせている


そして我に返るとDTKの顔面を勢い良く殴る


DTKはまともにくらい真っ直ぐ吹き飛ばされ壁を突き抜けて行った


「だ、誰が姫君よ!!!」


綺麗に着地した恋娘がそう言うと穴の空いた壁に向かって叫ぶとロビーを走って出ていった


「なんなんだ・・・?」


穴の空いた壁を見ていると瓦礫の中からDTKが出てきた


「フフフッ・・・お茶女な姫君だ・・・」


そう言うとその場から文字通り消えた


「転移か?それとも速すぎるのか・・・?」


「わからん、だがやばい奴ってことだけはわかったな」


「あぁ・・・」


DTKが消えた場所を唖然と眺める事しか出来ず呆然としている二人


だが突然その二人を強烈な殺気が襲う


「ぬぅ!?」


レッドピゴミンが振り返り咄嗟に飛んできた何かを掴む


気付かなければ背骨に直撃していたであろうその一撃


「何者だ!!!」


「やはり人間ではないな・・・私の拳を止める事が出来るのであるならな」


レッドピゴミンが掴んだ物


それは殺気を放った本人の拳


レッドピゴミンは拳を離すと後ろに飛びその者と距離を取る


「悪いことをしたな、どうしても気になってしまったのだ」


「なんだと?」


「人間であるかどうかをな」


金髪のポニーテールに額から赤い角の生えた女


「自己紹介がまだだったな、私は桜鬼雷華、皆は百鬼王と呼ぶがな」


「百鬼王・・・」


「そう身構える事はない、試すような事をして悪かったとは思っている」


「不意を突かなければ本気が見れないだろう?」


「あの場で受け止めていなければ死んでいたぞ!」


「安心してくれ、反応出来ずとも寸止めしていた、まあ信じるか信じないかは君たち次第だが・・・」


そう言うと百鬼王は背を向け軽く手を振る


「君たちとは是非戦ってみたい、次はコロシアム会場で会おう」


百鬼王はそのまま手を振りながらロビーを去っていった


「危険な奴らが多いのはよくわかったな・・・」


「あぁ・・・」


「はぁ・・・そしてこいつはどうするべきだ?」


出場者が皆いなくなるこの時を待っていたのだろうか


気付けばブルーピゴミンの肩に両手の爪を引っ掛けている神龍王妃ヴァイス


それを無視して一人だけ部屋へ戻ろうとする邪神龍王妃シュヴァルツ


「まあ部屋に連れて行くしかないか・・・」


レッドピゴミンは尻尾の輪が引っ掛からぬように持ち無言でただ引きずられるヴァイスを二人で運び始める


「二人はこれから戦うようだが・・・」


先を歩くシュヴァルツに置いてかれぬように早足で追いかける二人


「仲間同士ではないのか?」


「んん?」


ヴァイスは後ろで首を傾げる


「敵同士になることは想定済みだ」


前を歩いていたシュヴァルツがヴァイスの代わりに答えた


「そうか、ならばいいが・・・」


「人間如き・・・ではないな、神の模造品如きに心配されるようなことではない」


シュヴァルツの言葉にレッドピゴミンとブルーピゴミンが立ち止まった


「どういうことだ?」


「そのままの意味だ、模造品だろう?」


「何故・・・分かる?」


「逆に何故分からないと思った?」


シュヴァルツの問いに何も答える事が出来ない二人


シュヴァルツが振り返ると言う


「私達は神龍だ、神力を感じ取れない訳がないだろう?貴様らもわかっていたはずだ」


「あの人間の女の前では黙っておいてやったがな」


「まあ安心しろ、模造品達」




「私達もまたユグドラシルの主神に造られた龍なのだからな」





・・・・



「い、移動が速すぎるっすよ!!!」


「次元裂いて転移なんて卑怯じゃないっすか!」


「次元の裂け目を特定して移動してもトラップだったり最悪なんですけど!」


口元のマイクに怒鳴り散らすゼータ


『あーあー聞こえてる?次の場所を特定したから転移して』


「人の話聞いてるっすか!?」


『ちょっとやそっとじゃ壊れないんだから早くして、もっと距離を離されるわよ」


「ブラック企業も真っ青っすよ!」


などと文句を言いながら転移をするゼータ


「はっ!?」


「なんで!!!溶岩の中に!!!転移されるんっすか!?」


『あ!それデコイだったわ!こっちが多分正解!』


「いつかぶっ殺してやるから覚悟しとけっすよ!!!」


ひたすら転移を繰り返すゼータ


追う者は女子代表と仮面の侍


仮面の侍は旧神ではあるが神力を一切使わない


故に場所を特定するのは極めて困難だった


神力の痕跡を辿れるのであればゼータ単体で難なく追いつく事が出来たであろう


だが痕跡は次元の裂け目のみ


この広い世界の中からその裂け目となる歪みを特定し追いかけるのは神力を持ってしても困難だ


オメガ無数に散らばる裂け目を特定しレンポールがその裂け目の詳細な位置をゼータへと伝える


そしてゼータが現場へと転移を繰り返すが時間がかかりすぎ逃げられる一方だった


『敵も厄介なものね、もうちょっと特定が早ければ良いのだけれど』


「ポンコツオメガにもっと早くするよう言っておくっすよ!」


溶岩の中から再び正解と思われる場所へと転移するゼータ


そしてその先は・・・


「森・・・っすか?」


周囲を見渡すと閉まりかけている次元の裂け目


それを見た直後ゼータは瞬時に裂け目の中へと腕を突っ込む


「次元の裂け目を見つけたっすよ!この穴さえ広げられればぁー!?」


次元の裂け目の向こう側


恐らくは女子代表と仮面の侍がいる場所でゼータの腕を何かが襲った


腕の感覚が無くなり次元の裂け目から腕を引き抜く


だがそこにあるはずのゼータの腕は無く綺麗に切断されていた


「あぁー!?腕!腕切られたっすよ!真っ二つに!綺麗に!」


『なんで腕だけ突っ込んだのよ!ちゃんと体ごと突っ込みなさいよ!』


「んな無茶言わないで欲しいっすよ!あんな小さな穴にどうやって頭から突っ込めってあぁー!?」


「穴が!閉じたっすよ!」


『このポンコツ何してんのよ!せっかく追いつけそうだったのに!』


「はっ!?ちょっと黙って!今腕の位置特定してすぐ追いかけるから!」


切断された自分の腕の位置を特定するとゼータは転移する


「これで追いついたっすよ!!!」


だが転移した先に二人の姿は無い


再び周囲を見渡すゼータ


これほどの速度で転移したのならばどこかに開いたばかりの次元の裂け目があるはず


そう願い見渡す


「あったっすよ・・・」


まだ人が入れるほど大きな次元の裂け目


ゼータは落ちている腕を拾い上げ次元の裂け目へと飛び込む


「ははっ・・・冗談きついっすよ」


その先には更に開いたばかりの次元の裂け目


だがその数が多すぎた


そこら中に裂け目があるのだ


だがゼータは諦めずそこら中に散らばる裂け目の中に片っ端から頭を突っ込み目的の二人がいないかを探し始める


しかし何度も頭を突っ込むが見つからない


徐々に周りの裂け目は小さくなっていく


「どれっすか・・・どれが正解・・・ん・・・?」


ゼータは無数に散らばる裂け目を凝視する


一つだけ他より小さな裂け目がある


今まさに突っ込めば間に合うほどのサイズだ


「あれが正解っすね・・・」


そして迷うこと無くゼータはその裂け目へと飛び込んだ



「見つけたっすよ・・・」


「その執念は尊敬に値するよ」


今まさに次元を裂き移動しようとしている仮面の侍と女子代表へと追いついたゼータ


「さあ、諦めて女子代表を渡してもらうっすよ、あと腕の仇を取らせてもらうっす」


「私はここまでのようだ、でも大丈夫、安心して逃げて・・・すぐに追いつくから」


仮面の侍はそう言うと次元の裂け目へと女子代表を突き飛ばした


「え?ぬおああああああああああ!?」


裂け目の奥から虚しく響く女子代表の叫び声


「ここから先は誰も通さないよ」


仮面の侍は腰に刺さる刀へと手を掛ける


「旧神がどれほど強いかは知らないっすけど・・・本気で殺すっすよ」


「殺せたらいいね」



・・・・



「ってめっちゃ上空じゃないですかああああ!!!」


裂け目の先は遥か上空


「寒いし落ちてるしこれ絶対死ぬ奴!もうちょっと移動先考えて欲しいんだけどぉ!?」


真下は青い海が広がっている


もし仮に海に落ちて生きていたとしても溺れて死んでいくのが目に見える


そもそもこの高さから海に落ちたら水面に叩きつけられて死ぬであろうという高さから落下し続けている


「紐無しバンジー!!!」


正気ではいられなくなりそんなことを叫びながら手をバタつかせて飛ぼうと試みる女子代表


だが落ちる速度は変わらない


「人間は鳥にはなれないんじゃないかな」


耳元で聞き慣れた声が聞こえた


最初に出会った時とは違い見ただけで分かるボロボロの格好


「やっと見つけた」


優しく女子代表をお姫様抱っこするその者


「ば、バルド・・・」


「もう二度と手放しはしない・・・」


「た、助かった・・・?」


「あぁ、もう大丈夫だ、もう怖い思いをしなくても・・・いや・・・これが最後か・・・」


バルドは女子代表を抱きかかえたまま銃を引き抜くと真下へと向け乱射する


「え!?え!?」


女子代表は釣られて真下を見る


そこには見るもおぞましき何かがいる


無数の目に無数の触手


「いらっしゃーい♪」


可愛らしい声で誘うが見た目は今まで見た中で一番恐ろしい謎の生物


「狙っていたか・・・悲恋華め・・・!!!」


バルドの銃撃を物ともせず無数の触手が二人を襲う


触手がバルドを吹き飛ばし女子代表が再び空中を舞う


「ふぉああああ!?」


「え?」


女子代表が次に見た光景は巨大な口のようなもの


鋭い牙が大量に生えた噛まれたら穴だらけになりそうな口


そしてその口の中には牙と同じように大量の目があった


見るだけで本能が恐怖するようなその口の中に女子代表は吸い込まれるように入っていった


「チッ!!!」


バルドは両手の銃をその化物に乱射するが弾丸は弾かれ再び触手がバルドを襲う


「ここまで弱っていなければこいつ一人倒すことなど造作も無いが・・・!!!」


「それじゃあヘルちゃんまたねー」


触手で遥か上空までバルドを吹き飛ばしその化物は海の底へと潜り消えていった




「くそ!!!旧神共め・・・!!!」



バルドは唇を噛み締め海へと飛び込んで行った・・・






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