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異世界に近隣住民女子代表が迷い込む  作者: おぽんち
第二章-私を知る-
15/16

15話「私はなに?」

深い闇に包まれた森


肌を撫でる冷たい空気


もう温かい食事も安らぎを与えてくれる布団も無い


再び女子代表はこの世界に降り立ったその日に返ってきた


「うそやん・・・」


腰の鞘にはあるはずの剣は無い


金色の剣があれば生きて森を抜けるくらいならば簡単に出来ただろう


だが今はその唯一の救いは無い


そして都合良くピゴミン達が助けてくれることも無いだろう


「最初と違って靴履いてる分ましかな・・・」


などと絶望的状況に現実逃避しそうになりながら森の中を歩く


木々を掻き分けながらひたすら出口を探す


だが暗闇の森は嘲笑うかのように女子代表の体力を奪い身体を傷付ける


ひたすら進める場所を進み出口を探すが一向に出口は見えない


何故私がこんな目に合うのか


ただつまらない現実を生きていただけなのに


異世界に来てまで絶望的なのは変わらない


ただちょっと最初に運良く拾えてもらっただけだったのだろう


どれだけ歩こうが時間が経とうが誰も助けてくれない


ひたすら歩き続け出口の無い森を彷徨い絶望に染まる女子代表はいつの間にかその足を止めていた


気付けば一本の木の根元で座り込んでいた


「このまま死ぬのかな・・・」


今の私ならば生きるためにどんな事でもするだろう


助けてくれる人さえいればどんな要求さえ応じてしまうだろう


こんなにも孤独が辛いとは思わなかった


森からは木々の揺れる音しか聞こえない


野生の動物の反応すら見えない


「なにか・・・おかしい・・・」


そう


この森からは木々以外に生きる反応が何も無い


何もいなさすぎるのだ


女子代表は立ち上がると近くにあった石をひっくり返してみる


そこには女子代表が考えていた通り何もいない


虫一匹すらいないのだ


異世界とはいえ虫一匹もいないのはおかしい


この森は普通ではない


女子代表は思考を巡らせる


だが結局のところこの普通でない森を脱出する術は持ち合わせていない


その事に気付いたところで何の意味もないのだ


自分は魔法もゼータが言っていた神力ももう持っていない


人間とはなんて無力なのだろうか


再び絶望に染まり脱力する


いつまで経っても明るくならない森に体力を蝕まれていく


喉は枯れ空腹に襲われる


女子代表は汚れることを気にせずついには土の上に横になってしまう


疲労から徐々に意識が薄れていく


このまま眠ってしまえばきっと楽になるのだろう


知らぬ間に死に全てから解放されるのだろう


もう現実でも異世界でも辛い思いをしなくてすむのだろう


そう思うと死んでしまうのも悪くないように思えてきさえする


この感覚を私は知っている


徐々に意識が薄れ死が迫るこの感覚を私は知っている


何故だろう、ひどく懐かしく感じる


何故死を懐かしく感じるのか


そう思った直後


鋭い頭痛に襲われた


その痛みに意識が一瞬で覚醒し目を開く


現実は更に私を苦しめたいのだろうか?


痛む頭を抑えながらゆっくりと身体を起こす


すると首元で何かが動くのを感じた


先程まで無かった感覚だ


首元に触れると金属のような感触


何があったのかわけもわからず慌ててその物体を手にとって見てみる


それは首元からぶら下がるネックレス


こんなものを身に着けていた覚えはない


そしてネックレスの先には手のひらサイズの三つ葉の綺麗な宝石のようなものがついている


「なんだろうこれ・・・てかでかい・・・」


だがそのネックレスはひどく懐かしく感じる


まるで昔から


ずっと昔から肌身離さず身につけていたような気さえする


そのネックレスを見ていると更に頭痛の痛みが増してくる


何かわからない


だがこのネックレスが私にとってとても大切な宝物だったという事が脳裏に過ぎった


「誰か・・・助けて・・・」


絶望と混乱に苦しみ女子代表の口から出た言葉はその一言だった


その直後


「今度は私が貴方を救う時、こんなになるまで見つけてあげれなくてごめんね、お姫様」


目の前には和服の少女


女子代表はその少女に手を伸ばすがついに意識が途切れてしまう


「もう大丈夫、私達が貴方を守る番だ」


その少女は女子代表を抱きかかえると暗い森の奥へと消えていった




・・・・




「何故逃した」


「そ、それは・・・」


「私達だけでは次元に干渉出来なかったんだ!」


部屋で正座をしているレッドピゴミンとブルーピゴミン


目の前には腕を組んで立つイエローピゴミン


「私達は彼女を守り続ける事が仕事のはずだ」


「相手は神力を使う天使だ、ブルーピゴミンの言う通り次元を切り裂き入る事は出来ない・・・」


「まあ起きてしまったことは仕方ないか・・・」


イエローピゴミンはため息を尽きながら言葉を続ける


「私がいなかったのも私の責任だ、剣を持っていない女子代表を探し出すのは骨が折れるな」


「俺が!俺達が探しに行く!」


「いや、私一人で問題はない」


「し、しかしだな・・・」


ブルーピゴミンとレッドピゴミンが立ち上がりイエローピゴミンに言い寄る


「私一人で平気だ、お前らはいつ女子代表が返ってきてもいいように準備をしておけ」


「どこに飛ばされたかわからない以上ここに戻ってくることもありえる」


「それに最終手段も用意してある」


そう言うとイエローピゴミンはその場から消えた


「くそ!俺らがついていながら・・・!」


「この場を離れすぎない程度に私達も捜索するぞ」


「あぁ・・・」





・・・・




「くそ・・・無茶をしすぎたか・・・」


大破した巨大な門の下で座り込むバルド


「こんなことをしている場合では無いのだがな・・・」


地獄の門と呼ばれるその門はところどころ崩れ落ちている


「どいつもこいつも邪魔ばかりして腹立たしい・・・!」


「旧神共には逃げられるわ最悪な展開だな・・・天使共を甘く見過ぎたか・・・」


「まあ先に見つけてしまえばいいだけだ・・・彼女は誰にも渡さない・・・」


バルドがゆっくりと立ち上がると背後にあった地獄の門が霧となり消えていく


ボロボロになった身体を引きずりながらバルドは深い闇に消えていった




・・・・




ヴァルキリー中心街のとある路地裏にて・・・



「あーどうするんっすか全員満身創痍じゃないっすか」


「あんたらが変な事するわ貯蔵の神力全部使うわ挙句返り討ちにあってボロボロにされるわで私が迷惑してるんだけど!?」


「まあまあれんぽっぽもそう怒らないで・・・」


「はぁ~・・・」


天界より現れた天使3人はバルドとの戦闘で全員ボロボロにされていた


ゼータとオメガを起動するのが精一杯だ


レンポールは頭を抱えながらこれからの方針を考え始める


「とにかく神力よ、神力を手に入れられるならどんな手でも使っていいわ」


「わー極悪っぽい!」


まるで天使とは思えないその言葉に嬉しそうにオメガが反応する


「そんなんだから地上に堕ちるんっすよ」


「あんたがあんなのぶっ刺したからでしょ!?」


ゼータに怒鳴りながらレンポールは再び頭を抱える


「ったくあの子がいればしばらくは平気だと思ったのにどいつもこいつも邪魔ばかりして!」


「ヘルが来たのは予想外っすねー向こうも満身創痍だと思ったんすけど」


「死を覚悟で来る執念!まさに地獄!」


オメガが一人謎のポーズで言い放つ


しかし二人はオメガを軽くスルーしながら話し合いを続ける


「まあスローア機は全機凍結して自分らのバッテリーにするっすよ」


「戦闘もこれ以上は無理ね、今度こそ下手に戦えばあの世行きよ」


あまりの深刻さにゼータも思考を巡らせながらため息を吐く


「はぁ~確かにヘルに対してカッとなって突っ込んだのは悪いと思ってるっすよ」


「そう思ってるならなんか奇跡的な出来事でも持ってきなさい」


「無茶っすよー」


そして再び二人はため息を吐く


「あ!誰か来るよ!」


突然オメガが立ち上がり指を差す


「誰っすか」


レンポールを守るようにゼータが立ち上がる


「天使三人随分と惨めなものだな」


黒く長い髪に紅く燃えるような瞳の少女


「危険な香りしかしないんすけど・・・」


「あぁ、今のお前らならば私一人で消滅させることも容易いだろう」


「自己紹介が遅れたな」


少女はそう言うと指を鳴らす


すると地面から黒い液体が湧き上がり椅子の形になる


その椅子に座りふんぞり返ると口を開いた


「私は黒の主神ミーリアス、ユグドラシルの白の主神とは真逆の存在、邪神と呼ばれる者だ」


「とんでもない奴が来たわね」


レンポールは視線でオメガに指示を出す


いつでも逃げることが出来るようにと


「まあそう身構えるな天使共、私はお前らを倒しに来たのではない」


「どういうことっすか」


「私以外の神々があのガキを見つける前に私の元へと届けて欲しいのだ」


レンポール達は顔を見合わせ首を傾げる


「あのガキってなんすか?」


「お前らが電池にしようとしていたあの胸がやたらデカイ金髪の女だ」


「女子代表っすね」


「あぁ、そうだ、そいつを私の元へ連れてこい」


「ただでってわけじゃねーっすよね?」


ミーリアスは立ち上がるとゆっくりと近づいてくる


「あぁ、もちろんだ、私の神力を少しだけ分けてやろう、そうすれば動きやすくなるだろう?」


「怪しいわね」


レンポールが呟いた


「そうだろうな?私は邪神だ、そんな私の誘いはお前らからしてみれば怪しい以外にないだろう」


「目的を教えなさい、じゃなきゃ協力出来ないわ」


レンポールの言葉を聞きミーリアスの口角が釣り上がる


「ククク・・・面白いことを言うな?立場がわかっているのか?」


そう言うとミーリアスの手から黒い液体が溢れ出し一本の剣に変わる


「れんぽっぽちょっと刺激するようなことは・・・」


「というのは冗談だ」


ミーリアスはそう言うと持っていた剣を手放し地面に落とす


剣は液状に戻り地面の中へと消えていく


「お前らを消しに来たわけではないからな、いいだろう教えてやる」


「奴は大事な鍵となっている」


「私から見てもお前らから見てもバルドと呼ばれていた奴からも」


「そしてあいつを守っていた三匹から見てもな」


「更に言えばユグドラシルの神々から見ても奴はとても大事な鍵だ」


「出来ることならば誰にも奪われる事無く手元においておきたいものだが・・・」


「恐らくあのバルドというやつは全てを知っているのだろうな、死に物狂いで探し回っている」


「他の奴らはまだ気付いていないかもしれんが・・・」


「ただの人間があれほど強大な力の持ち主から引っ張りだこになるなど何かが無い限りありえん」


「私は何の鍵かは知らないがその真相を明かすために奴が欲しい」


「近くで見たときは無数の封印が施されていたからな、きっと何か素晴らしい事が隠されているはずだ」


「奴の記憶そのものにな」


ミーリアスは喋り終えると3人を見る


天使たちは顔を見合わせどうするか考えているようだ


「ただ知りたいだけっすか?」


「そうだ、知識の探求だ、私が生まれるよりも前の知識が眠っていると信じている」


「はぁ~なんだかわからねーっすけど自分はいいっすよ」


「わかったわ、でもあの子を連れてきた時は私達にもあの子の秘密を教えなさい」


「いいだろう、私は知りたいだけだからな、知ったあとはお前らが好きにするがいい」


「交渉成立っすね」


ミーリアスはその言葉を聞くと手を天使たちに向けて出す


ゼータはその手を握ろうと手を出すが軽く振り払われる


「えぇー!?握手じゃないんっすか!?」


「アホか、お前らのコアをとっとと出せ、充電が必要なのだろう」


「それを先に言うっすよ!!!」


ゼータは顔を赤くしながら腰からコアを露出させる


「充電するならとっととしてくださいっす!」


「あぁ、言われずともしてやる、まあ純粋な神力とは違い少し濁っているが気にするな」


「はぁ!?」


ゼータが反応した瞬間には既に遅くミーリアスは熱で真っ赤になったコアを手で掴み神力を流し始める


「うぉえ!?なんすかこれ!ゲロっすゲロ!ゲロみたいな味がするっすよ!不純物っす!やばいっすよこれ!?」


「ゲロだの不純物だの失礼な奴だな、補給してやってるのだからありがたく思え」


騒いでいたゼータだがいつの間にか口から泡を出しその場に倒れ込む


「まあ少し刺激が強すぎたか、だがすぐに起きるだろう」


補給を終えたミーリアスがレンポールを見る


レンポールは黙ってオメガを盾にするように隠れる


「次はお前だ」


「えー!?ゲロなんて身体に入れたくないー!」


オメガは凄まじい勢いで後ろに下がっていく


レンポールはオメガに押され一緒に後ろに下がっていく


そして壁に当たり背中と壁でレンポールを潰してしまう


潰されたレンポールが一瞬潰れた蛙のような声を出すと怒りに任せ強制的にオメガのコアを露出させる


「あー!ゲロゲロゲロ・・・」


コアを露出させた直後オメガが驚きの声を上げるがミーリアスにコアを捕まれ泡を吹き気絶する


ゼータと同じくその場に崩れ落ち痙攣している


「さて、最後はお前だが」


「わ、私も?機械じゃないよ?」


「お前は本当にヤバイ時に分けてやる」


ミーリアスの言葉に首を傾げるレンポール


「私は邪神だ、お前らと違い憎しみや恐怖から神力を作っている、故に信仰から神力を作っているお前らには真逆の神力だ」


「使えなくは無いが身体に影響が出ては困る」


「なるほどね・・・」


「まあ私に出来ることはお前を【信じて】待つことくらいか」


「納得したわ、邪神の癖に変わり者ね」


「そんなことはない」


ミーリアスはそう言うと地面に現れた黒い液体に飛ぶ込み消えていく


「確かに神力が少しずつ回復してるわね・・・」


レンポールはひっくり返ったゼータとオメガを引きずりながら路地裏の闇へと消えていった



・・・・



「んあ・・・」


気が付けばまた見知らぬ場所


身体の至る所が痛い


だが誰かが手当をしてくれたのだろう


絆創膏や包帯が身体に巻いてある


ホテルの一室だろうか?


私以外には誰もいない


かつてバルドに助けられた時のように机にはゼリー飲料のようなものが幾つか置いてあった


ゼリー飲料を開けると感謝をしながら飲む


マスカットの味が口の中に広がり生きている事を実感する


近隣住民女子代表はまだ生きているということを


「ゼリー飲料がこんなに美味しいとは思わなかった・・・」


「それは良かったよ、こんなものしか用意出来なかったけどね」


「んぶお!?」


突然声をかけられゼリー飲料を吹き出しかける女子代表


「あぁ、脅かしてしまってごめんね」


いつの間にいたのか和服の少女が立っている


腰には刀のようなものがぶら下がっている


そしてその顔には仮面があり表情が読み取れない


「さ、侍?」


「そう、侍だよ、刀を愛し続けて数千年のね」


「めっちゃ長寿!」


「寝ている間に軽い手当てと水分補給だけさせておいたよ、それだけでは足りないだろうから何か作ろう」


「あ、ありがとうございます」


侍はそう言うと立ち上がり部屋を出ようとする


「あー!でも待って!」


出ようとしたところを女子代表が止める


「あの、えっと・・・助けてくれてありがとうございます、あと・・・どなたですか?」


「そうか、そんな気はしていたけれど・・・仕方ない事だね・・・」


「私は・・・侍さんでいいよ」


「は、はい・・・」


「大丈夫、ちゃんと私の名前を教える時が来る、そしてこの仮面も外す時が来る」


「今は怪しい人だけど君を守りたい、この気持ちに偽りは無いよ」


そういい侍は部屋を出て行く


「だ・・・だれ・・・?」


一方的に語られ女子代表は頭にはてなが飛び交う


助けてくれた事は嬉しいが何か凶悪なストーカーに捕まったような感覚もある


「で、でも生きてるんだし・・・悪い人じゃないよね・・・?」


今までの出来事を軽く思い出しながら記憶の整理をし始める女子代表


「なんか忘れてることとかは無いよね・・・森で倒れてあの人が助けてくれた」


「あの森変な感じだったなぁ・・・」


そんなことをぼやいているとドアを軽くノックする音と共に侍が入ってくる


「和食しか作れないけれど大丈夫だったかな?」


「何の魚かわからないけど干物に味噌汁にご飯!日本最高!」


女子代表は出てきた料理に感激し思わず叫ぶ


「喜んでくれてよかった、どうぞ召し上がれ」


「いただきます!」


女子代表は目の前の和食に完全に釘付けだ


先程まで考えていた事など忘れ食事を口に運ぶ


見た目、香り、そして味、全てが完璧だった


日本人でもこの味を出すのは相当の手慣れじゃなければ無理だろう


「日本食最高!」


女子代表はもはや目の前の食事を食べることしか考えていない


「喜んでもらえて私も嬉しいよ」


そんな女子代表を侍は優しく微笑みながら見ている


気付けば最後の一口を食べ終えていた


「ごちそうさまでした・・・」


「おそまつさまでした」


そう言うと侍は食器を片付けると立ち上がる


「食器を下げてくるよゆっくり休んでいて」


「あ、はい」


女子代表はが頷くのを見ると侍は部屋から出て行った


「あぁ~鯵の干物に味噌汁に白いご飯、高級なものよりこういう食事の方がやっぱ似合う気がするなぁ」


「やっぱ日本食最高だね」


「え?」


女子代表はそんな独り言をつぶやきながらフッと気づいた


ここは異世界


何故日本食が出て来る?


そして考えれば考えるほどおかしな点が浮かび始めた


この異世界で言葉が最初から通じる事


この異世界で自動販売機があること


そして今日本食が出てくること


気付いてしまった代表的な事はこの3個


細かいことを気にすれば更に増えるだろう


「ここ・・・異世界だよね?」


「不思議だろう?なんで今の君が知っている現実にあったものがここにもあるのか」


「ぬおあー!」


再び突然声をかけられ飛び上がる女子代表


「ノックはしたんだけどね?考え事をしていたみたいで気付かなかったみたいだね」


「は、はは・・・」


女子代表は聞かれていた事に若干青ざめながら愛想笑いをする


「ここは確かに異世界だよ、でも不思議と君の知ってる現実に似た何かがいくつもある」


「何故か知りたいかい?」


「し、知ってもいいなら・・・」


女子代表は侍に若干怯えながら答える


「怯えるような事はしないさ、この世界はユグドラシルの神々が作ったんだ」


「崩壊した旧世界の代わりにね」


「旧世界?」


「そう、旧世界さ、そこはこの世界とは違い君の知らない言葉や文化が多く存在していた」


「でもあることがあって崩壊してしまったんだ」


「その崩壊してしまった世界で生き残った者達のために神々がこの新しい世界を作ったのさ」


「そしてこの世界は君のいた現実の情報をいくつか使って作られてる」


「一つは言葉だね」


「みんな君の知っている言葉を話すだろう?これが共通語なんだよ、この世界ではね」


「う?うーん?」


突然壮大なスケールの話に首を傾げる女子代表


「まあ深く考えないほうがいいさ、言葉が伝わるならそれでいい、美味しいご飯が食べられるならそれでいいじゃないか」


「ま、まあ確かに・・・」


「神様達はなんでも出来るからね、異世界を渡る事なんて簡単なことだろうさ」


「いろんな異世界を見てきて君のいた現実が良かったからベースにして作ったんじゃないかな?」


「なるほど・・・」


侍の言葉を聞きなんとか納得する女子代表


「さて、やっぱり長居は無用だね、そろそろここを出よう」


「え?あ、どこへ行くの?」


「安全な場所に逃げるんだ」


「ここって安全じゃないの・・・?」


「あぁ、君を狙ってる危ない奴らがいつ来るかわからないからね」


そう言うと侍は立ち上がると刀へと手をかけた


「さあ、この中に入って、怖いかもしれないけど大丈夫」


「んえ?」


突然よくわからないことを言い出す侍


侍は軽く微笑むと指を差す


指を指した方向には切り裂かれた空間が出来ている


「な、何も無い所になんかよくわからないけど異世界に通じそうなゲートみたいなのあるー!」


「さあ行こう」


そう言い侍は女子代表の手を掴みその中へ飛び込む


「えぇー!?マジぃ!?」


虚しく響く女子代表の叫び


その声すらも切り裂かれた空間の中へ消えていった


二人が消え去ったあと切り裂かれた空間は元の何も無い空間へと戻っていく


その直後部屋の壁を突き破り何かが入ってきた


「チッ・・・感づかれてたか・・・」


黒いローブの地獄の門番




バルドは床に散らばったゼリー飲料を悔しそうに踏み潰すと再び壁を突き破り消えていった・・・






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