11話「コロシアム、始まります」
それから更に数日が経過した
そして気付けば一週間という時間はあっという間に過ぎ去っていた
「もう、一週間経ってる気がする」
「そうだな、今日で丁度一週間だ」
「え?これまじで戦うん?」
「そうだろうな」
朝食のバイキングを食べながらブルーピゴミンと女子代表は話し合っていた
「今日が命日かも・・・」
今まで人ならざる者達を見てきた女子代表は酷く憂鬱状態と言った状態だ
そして更に追い打ちを掛けるかのように施設内部全体に放送が入った
『あーあーテステス、コホン!勇敢なるチャレンジャー達よ!時は来た!これから抽選を行うので皆ロビーに来るように!このバニー・ラ・ビットちゃんを待たせてはいけないぞぉ~?今から30分後に行うので必ず!かならぁ~ず来るように!』
「30分後!ロビー!これが死刑宣告!」
女子代表は放送を聞き更に頭を抱え嘆き始める
「まあ落ち着け、今日戦うと決まったわけではない」
そんな女子代表をなだめるようにブルーピゴミンは言う
「今から抽選を始めるのだ、今日中に全員が戦うとは限らないだろう」
「はぁ・・・行こっか・・・」
だがブルーピゴミンの言葉も虚しく女子代表はまさに死刑台に向かうかのように立ち上がるとロビーへ向かう
ブルーピゴミンはそんな女子代表の後を黙って付いていく
ロビーへ向かっている最中にレッドピゴミンが駆けつけそして気付けばイエローピゴミンも付いてきていた
既にロビーには様々な種族が入り乱れていた
屈強な肉体をした猛獣のような者や全身を黒いローブで隠している者
そして見知った顔が何人かいた
「まさか本当にいるとはな」
「ひ、ひえ・・・」
突然声を掛けられた女子代表はその場で飛び上がる
そして声を掛けてきた主は恐らく一番会いたくない人物
「お前は!」
レッドピゴミンが女子代表とその者の間に割って入る
「久しいな赤いの、そして青いのも一緒か」
「名前は忘れたがエビっぽいなんか!!!」
レッドピゴミンのその言葉を聞きその者は一歩踏み出す
「エビルマリア落ち着け、ここで暴れては色々と面倒だ」
「チッ・・・」
エビルマリアの背後から出てきたのは女子代表達を捕まえようと襲ってきたリリエル隊の二人
エビルマリアとチェレアリアだ
「何故お前らがここにいる」
ブルーピゴミンの問いにチェレアリアは応える
「お前らと同じ不法入国者や凶悪犯罪者がこの中には紛れている、そういった者を倒し連れ戻すのが我々の役目だ」
「なるほどな、お前らと当たれば俺たちは一発でアウトってわけか」
「言ってくれるな、私達の追跡から軽々逃げておいてな」
「まあまあ皆さん落ち着いてくださいなー」
チェレアリアとレッドピゴミンの間に突然何者かが割って入る
「何者だ」
チェレアリアとレッドピゴミンは咄嗟に構える
「まあまあそんな怖い顔しないでくださいって」
「私はバニー・ラ・ビットちゃんです!」
そう言い不思議なポーズを取るバニー
「やっぱこういう因縁だかなんだか持ってる人たちって集まるんですよねぇ~」
「それでそれで戦い始まる前に喧嘩し始めたりとか良くあるんですよぉ~」
「でもやっぱそういうのって今から戦うわけですし?そこで決着つければいいじゃないですかぁ~」
「確かにそうだな」
ブルーピゴミンはバニーの言葉に頷く
「まあ私とてここで戦うつもりは無い、ただ知った顔を見たから挨拶に来ただけだ」
そう言いチェレアリアは近くにあった椅子に座る
「まあ私達と当たらない事を祈るんだな」
エビルマリアもそう言うとチェレアリアの元へ向かう
「す、既に一回死んだ気がする・・・」
あまりの空気の悪さに女子代表は既に顔を真っ青にしている
「それでは珍しい人間の方々ももう少しで抽選が開始するのでお静かにお待ち下さいな!」
そう言いバニーは去っていく
既に瀕死状態の女子代表の背を押しながらブルーピゴミンは隅の方へ移動する
「完全に放心しているな」
「面接前のような空気だしな!」
「あ、それわかる、すごいつらい」
女子代表はチラチラレッドピゴミンとブルーピゴミンの会話に反応しながらその時を待った
それから数分すると更に出場者は増えそして運命の時は来た
突然ロビーの証明が消え女子代表は飛び上がりそうになる
しかしブルーピゴミンが肩を押さえ落ち着かせる
そしてロビー正面がライトアップされる
「さあー!お待ちかね!抽選の時間がやってまいりました!」
「司会進行役はこの私!バニー・ラ・ビットがさせていただきます!」
「私がこの箱の中から皆様の部屋番号の書かれた紙を2枚取り出します!」
「そしてそれが運命の対戦相手となるのです!」
「更にご安心を!不正などはが無いようこの箱には完全魔力遮断の結界が張ってありますので!」
「完全なる運によって抽選されます!」
「既に死亡されてる方の部屋番号は破棄してあるのでご安心を!」
「そしてそして一回戦のみが抽選となりそこからは対戦順に横に並べに第二回戦を開催しトーナメント形式で進めさせていただきます!」
「さあー!めんどうな説明はこれくらいにしてちゃちゃっと引いてしまいましょう!」
そう言うとバニーは勢い良く箱に手を突っ込むと一枚目を取り出す
「さあて番号は!」
そう叫ぶと番号を見始めるバニー
「ええーっと、400!!!」
その言葉に女子代表が飛び上がりそうになる
「20!」
更に追撃の番号に女子代表の魂が抜けそうになる
「8番!428番の方前へどうぞ!!!」
番号が違うことがわかり女子代表は心底安心し始める
「そして次はー・・・・」
「200!50!3!」
「253番の方前へどうぞー!」
番号の主と思われる二人の人物がバニーのいるロビー正面へと到着しライトアップされる
「今回一番手となるチャレンジャーのお二人!」
「428番は赤コーナーへ!253番は青コーナーへどうぞ!」
バニーの案内に従い二人は移動を開始する
「それでは10分後に第一回戦を開始するので他のチャレンジャーさんは客席に移動しましょう!」
バニーの言葉を聞き各々が移動を開始する
「私達も行くか」
ブルーピゴミンに背を押されながら女子代表は移動を開始する
そしてコロシアム会場の特別席へと案内される
どの客席よりも最前列に特別席は設置され対戦中の相手を良く観察出来るようになっている
出場者のみが入ることを許される特別席
戦闘が行われるコロシアムのフィールドの広さは縦横400メートル程の正方形で形成されている
地面に凹凸は無く土のみで出来ている
「めちゃめちゃ広いやん・・・」
「空を飛ぶ種族や足の速い種族がしっかりとその力を活かせるように広く作られているのだろうな」
「あとは結界が張ってあるとは言え客席からは遠い方がいいだろう」
「な、なるほど」
そんな会話をしていると赤の門青の門が開かれる
『さあー!時は来た!皆の者待たせたな!これより全種族無差別!乱入でも何でもかかってこい!何でもありのフリーダムコロシアムの開始だぁ!』
「なにそれ・・・」
「乱入までもありとは驚きだな」
バニーの放送を聞き女子代表は既について行けてない様子だ
『司会は毎度の事私!バニー・ラ・ビットがやらせてもらうぜぇ!』
『そして解説役の方は今回はなんと!ファントムの天才児と呼ばれる魔人キニエリアだぁ!』
バニーの言葉を聞き客席の者が歓声を上げる
「魔人キニエリアって人すごいの?」
「噂を聞いたことはあるな、最年少でファントムの最高権力者の地位まで上り詰めた天才と言われている、その実力も素晴らしいものだと聞く」
「へ、へぇ・・・」
『さあそれでは第一回戦最初のチャレンジャーの入場です!』
『赤の門!一体貴様は何者だ!?あのローブが今年も戦わずに勝ちに来たか!?フードMの入場だぁ!』
バニーの言葉と共に赤の門から全身をローブに包みフードを深く被り正体の全くわからぬ者が入場してきた
『そして青の門!その巨体は全てを潰すと言われている最強の蛮族!フィースから来た破壊王悪鬼!!!』
『さすがは鬼族の破壊王悪鬼!嘗て暴れ回り勇者によって牢屋にぶち込まれたが脱獄しなんとこんな所に隠れていた!赤の門のフードMとは圧倒的体格差!これを活かして一瞬で勝負を付けてしまうか!?』
歩くだけで地響きがなりそうな巨体の鬼が青の門から入場してきた
その体格差は圧倒的で5メートル近くはあるのではないかという大きさ
対するフードMは普通の人間と同じサイズ
いや、それよりも小さいのだろうか150センチ程といったところか
悪鬼の拳だけで潰されてしまいそうな圧倒的体格差
「運が悪いな、この悪鬼と戦うことになるとは」
「手加減はしねえ、全力で潰してやる」
悪鬼はフードMを指差し言うがフードMは何も言わずただ立っているだけだった
「チッ・・・つまらねえ」
『それでは互いに位置につきましたね!?それでは第一回戦・・・レディー・・・ファイト!!!』
バニーのその言葉と同時に悪鬼が動いた
その巨体からはありえないであろう速度でフードMに真正面から突っ込む
『あぁーっと!初手でその巨体を活かした突進を繰り出したぁー!あんな巨体があんな速度でぶち当たれば結界があろうと一溜まりも無いのではないかぁー!?』
「オオオオォォォォォ!!!」
雄叫びを上げ突っ込む悪鬼に対しフードMは一歩も動かない
そしてフードMに触れる直後悪鬼の動きが止まった
会場に凄まじい衝撃音が響き渡る
『あぁーっと!どういうことか!?悪鬼の動きが止まった!?これは一体どういうことだぁー!?』
『普通に結界でしょ』
黙っていた解説のキニエリアが言う
『だけどあの全魔力を乗せた全力の突進を真正面から結界で受け止めるのは只者では無い証』
『なるほどぉー!フードM!只者では無い様子だぁ!』
「ぐおおおお!!!」
悪鬼は結界を叩き割ろうと何度も殴るが結界はびくともしない
そしてフードMはそんな悪鬼を見てとんでもない行動に出る
『な、な!なななななんとフードM!!!椅子を取り出し座った!これはなんだぁー!?』
『勝負にならない、と言ったところでしょ』
その行動に悪鬼は怒り狂い結界をがむしゃらにその巨体で潰すように殴り続ける
「てめえ舐めた真似しやがってぶっ殺してやる!!!」
更にはフードMは懐から本を取り出し読み始める始末
『あぁー!なんとも哀れな破壊王悪鬼!破壊王の呼び名が無残にも崩れて行くー!』
絶えず破壊王は殴り蹴りを繰り返すが結界は揺らぐことはない
更に破壊王は攻撃を繰り返す
だが結果は変わらなかった
戦闘から10分程が経過してフードMに動きがあった
読んでいた本を閉じると立ち上がると出した時同様どこから出し何処へ消したのか椅子をしまう
『おおっと!?フードMが読書をやめた!?』
「はぁ・・・はぁ・・・ふざけやがってぇ!!!」
フードMは手を開くと悪鬼へと向ける
突然の行動に悪鬼は後ろへ飛び距離を取る
だがその行動も虚しく着地するよりも早く
何かが悪鬼に直撃した
「ごあ!?」
何かに凄まじい勢いで吹き飛ばされた悪鬼は弾丸の如く飛び青の門を破壊し退場
完全に意識を失い沈黙していた
『な、な!なにが起きたと言うのかぁー!?』
『結界を直接相手にぶつけて吹き飛ばした、防御は最大の攻撃みたいな?』
『な、なるほどぉー!結界にそんな使い道が!』
そんな解説や司会を無視しフードMは赤の門を潜り退場
『え、あ!しょ、勝者赤の門!!!フードM!!!』
『いやぁー!初戦から圧倒的力の差を見せつけていく!一体何者なんでしょうねぇ!』
『相当な手慣れだと思う、正体を隠すほど有名な犯罪者かなにかかも?』
『嘗てこれほど恐ろしく強い犯罪者はいましたか!?』
『国相手に戦った者は皆死んだか封印されてるはず・・・』
『いやぁー!ますます正体が分からないですねぇ!』
『気になるところですが!次の抽選があるので30分後に再び皆さんお会いしましょう!』
『それでは一度休憩タイムとなるので客席の皆さんはごゆっくり休憩していてくださいね!』
そう言いバニーは裏へと引っ込んで行く
「あれと当たったら間違いなく死ぬ」
「だろうな」
「だろうなじゃないでしょ!?」
先程の戦闘を見て女子代表は既に戦意喪失し震え上がっている
「運が良い事を祈るしかなかろう」
「もうおしまいだぁー!」
「さあ、次の抽選があるから戻ろう」
「いやぁー!殺されるぅー!」
ブルーピゴミンは絶望に嘆く女子代表を引きずりロビーへと戻って行った
そしてロビーに戻り数分後バニーが再びロビー正面へ現れる
「さあー!二回目の対戦相手をサクッと抽選してしまいましょー!」
「ちゃあーんと全員いるかなぁー?怖くて逃げちゃった人もいるかもしれないなぁ~?」
バニーはまじまじと周りを見渡すが逃げた者がいようがいなかろうが恐らく把握は出来ていないだろう
「まあいっかー!じゃあ引くよー!」
「193番と855番の人は準備してねー」
最初の引っ張り具合は何処へ消えたのか2枚一気に取り出すと番号を言う
呼ばれた番号の者達は逃げてはおらずバニーの案内に従い控室へと向かう
「じゃあ10分後くらいにまた始まるからみんな移動してねー!」
バニーはそう言うと司会席の方へ消えていく
「私たちは集まる必要あるのか?」
「普通にアナウンスとかで控室に呼べばいいんじゃ・・・」
ブルーピゴミンの言うことに女子代表は頷きながら応える
「まあいい、さあまた客席へ戻るぞ」
そう言いブルーピゴミンは再び女子代表の背中を押し客席の方へ戻っていく
そして先頭の席をキープしていたレッドピゴミンの横に女子代表は座った
「さあ次の戦いが始まるぞ!こんな激しい戦いが間近で見れるのはここくらいだな!」
レッドピゴミン先程の戦闘を見て興奮しているようだ
対する女子代表は完全に干からびた顔をしている
いつ死刑宣告が下されるかわからない状況を楽しんでいるレッドピゴミンの事を理解できていないようだ
『さあー!お待たせしました!第二回!一回戦目を始めたいと思います!』
『観客の皆様はちゃんと戻ってきましたかぁー!?』
バニーの言葉に観客席は皆声を上げる
『よぉーし!それじゃあ赤の門から入場だぁー!』
『赤の門!今は滅び掛けた運命を背負う悲しき種族!カメレ種の若き戦士!カメレオの入場ぅー!』
『カメレ種と言えば隠密!偵察!そして暗殺の種族!しかしここに隠れ場は無い!どうやって戦っていく!?期待させてくれよぉー?』
赤の門を潜り女子代表とほぼ身長の変わらない二足歩行のカメレオンのような種族が現れる
「うわ、キモい」
「数十年前に里を襲撃されカメレ種はほぼ根絶やしにされたようだな」
ブルーピゴミンは現実世界にあった携帯電話のような物をいじりながら言う
「あ、スマホ」
「のような機械だな」
『そしてぇー!そんな滅びゆく種族に対し更に追い打ちをかけるか!?』
『青の門!近頃全国を震え上がらせたペット殺し!!!霊恋娘だぁー!』
『ペットとわかれば容赦無く殺して回る残虐さ!何故ペットをそこまで殺したがるのかは未だ謎!』
『そして数々の勇者の襲撃を物ともせず今もなお殺し続けるキラーマシンの入場ぅー!』
青の門から白く長いツインテールを揺らし可愛らしいドレスを着た少女が現れる
「あ!あれってこの前なんか喋りかけてきた人じゃん!」
「まさかそんな人物だったとはな」
向き合う二人会話は無く沈黙している
だがカメレオが沈黙を破った
「ゲゲッ少し有名だからと侮るなよ、俺っちの暗殺術見せてくれる」
「まあ!それは楽しみですわ!」
その言葉に対し恋娘は両手を合わせ微笑んで見せる
『さあそれでは第二回一回戦!レディー・・・ファイト!!!』
バニーの開始の合図と共にカメレオの姿が消えた
『おおっと!?早速姿が消えた!?見えぬほどの速度かぁ!?』
『普通に透明化しただけでしょ』
『なんと自らの姿を透明化させることが出来るのかカメレオ!さすがは暗殺のプロと呼ばれる種族なだけはあるぅー!』
『対する霊恋娘選手!一歩も動かない!敵を探しているのかぁ!?』
一歩も動かない恋娘
そして姿の見えぬカメレオ
互いの間に静寂が訪れる
『一体何処にいるのかカメレオ!霊恋娘の動きを待っているのか!?それとも既に喉元までその刃が届いているのかぁ!?』
すると恋娘が突如その場で半回転し後ろを向く
『おっと霊恋娘選手ついに動いた!!!』
だが恋娘の背後からカメレオは姿を現しナイフを背中目掛け突き刺そうとする
『読みが外れたか!?がら空きの背中を狙われてしまったぁー!』
だがそのナイフは届かない
両腕を使い全力で突き刺しに行ったナイフはたった2本の指で受け止められていた
だがカメレオの攻撃はそれだけでは終わらない
いつの間にか口から伸びた長い舌先に付いたナイフが恋娘の首を狙い正面から襲う
だがそのナイフももう片方の腕でたった2本の指で受け止められてしまう
「ゲゲッ!!!」
「遅い、そして殺気がダダ漏れ、透明化の魔力の痕跡もまるで足跡のように残ってる」
「暗殺ってこの程度ですの?」
恋娘はナイフを離すとカメレオは大きく後ろに跳んだ
「ゲゲッ・・・俺っちの暗殺術をあんな簡単に・・・」
「良い?暗殺って言うのはこうやるの、しっかり覚えておいてくださる?」
喋り終わった直後恋娘の姿が消えた
「ゲゲッ!?ど、何処に消えた!?」
『あぁーっと!カメレオ選手を嘲笑うかのように同じく姿を消した恋娘選手!一体どうなっているー!?』
「良い?まず透明化の魔力が足跡のように残ってしまうのならばそれがわからないほど濃い魔力をフィールド全体に展開させなさい、今回は魔力が見えるようにしてあげる」
恋娘がそう言うとカメレオを中心に白く薄い霧が広がる
『突然霧が出てきたぞぉ!すごい魔力の濃度だぁー!?』
「そして殺すのに姿を表すなんてバカ正直過ぎて笑えませんわ」
カメレオを包み込む魔力の霧は恋娘の魔力を探させる事を許さない
完全に魔力の霧に紛れ恋娘はゆっくりと歩き始める
対するカメレオはいつ襲いかかるかわからぬ恐怖に必死に周りを見回し恋娘の姿を探す
「はい、おしまいですわ」
正面からゆっくりと歩いてきた恋娘はカメレオの首を掴むと持ち上げる
『あぁーっと!カメレオ選手無抵抗に捕まってしまったぁー!』
「じゃあこれで私の勝ちですわね」
そう言うと恋娘は首輪の付いたロープを取り出すとカメレオの首に無理矢理取り付ける
「グゲェ!」
恋娘はカメレオから手を離し放り投げる
「こ、この!馬鹿にしやがって!」
カメレオは恋娘の余りにも舐めた行動に激怒しなりふり構わずナイフを恋娘目掛け振るう
だがその動きが止まった
「ご主人様に歯向かうなんて出来の悪いペットですのね?」
「グゲェ!?か、身体がうごかな・・・」
「ご主人様の命令は絶対ですわ、おすわり」
その言葉にカメレオはヘナヘナとその場に尻餅を付いてしまう
「か、身体が勝手に・・・!?」
「勝手にじゃないわ、貴方は望んで命令に従ってるんですの」
そう言い恋娘はロープを思い切り引っ張りカメレオを地面にうつ伏せに寝かせる
「ゲェ!?」
そして頭を踏みつけ言う
「これが恐怖による支配ですわ、抵抗すれば死ぬのはもうわかっているのでしょう?」
「ゲゲ・・・」
「さあ爬虫類らしく四足歩行で勝者の私と帰るのよ」
そう言うと恋娘はカメレオの背に座る
カメレオは恋娘の言葉に従い四足歩行で青の門へと向かって行く
『なんという恐ろしきサディスティック!!!ドSの頂点かぁ!?勝者霊恋娘選手ぅー!』
「な、なんで諦めちゃったの?」
女子代表は目の前の戦闘を見てブルーピゴミンに問う
「当たり前の結果だろうな、姿を最初に消せた時点でカメレオは察していたのかもしれないな」
「そ、そうなの?」
「恋娘という魔人はカメレオに対して同じ戦法を使った時以外魔力を使っていなかった」
「魔力も無しに素手でナイフを止めたんだ」
「ゆ、指折れちゃう・・・」
「ボスなら掴むどころか真っ二つだろうな」
女子代表はその言葉を聞き震え上がる
「あれほど無防備に待たれ準備する時間も与えられ最大の一撃を加えたにも関わらず素手で止められ説教までされたのだ、戦意喪失するのも頷ける」
「完全に舐めプって奴だね・・・」
女子代表はため息を付くと言う
「あんなのがいっぱいいるのになんでこんな所いるんだろ・・・」
「逃げ道がここしか無かったからな」
そう言うとブルーピゴミンは立ち上がり女子代表の背中を押し再びロビーへ向かう
女子代表はもはやされるがままの状態でブルーピゴミンに押されロビーへと向かった・・・




