1話「訳も分からず迷い込む」
「俺の名はバーニングレッドピゴミン!!!」
「見よ!この燃えるような美しき筋肉!」
「そして私はハイドロブルーピゴミン!」
「筋肉馬鹿?ふふっ・・・バカを言わないでくれ・・・筋肉天才だ!!!」
テレビに映る下らないコマーシャル
その映像をソファに座りながら見る女の子
「なにこれキモッ・・・」
テレビには全身赤色と青色の筋肉の塊が踊っている
「筋肉!モリモリ!俺のバーニング!」
「筋肉!モリモリ!私はハイドロ!」
ついには歌い出す始末だ
「最近のゲームってこんなキモいん・・・?」
女の子は映る映像が余りにも耐え難いのかテレビのリモコンを手に取る
「俺たちの筋肉に魅了された君たち!是非プレイして筋肉モリモリに」
赤色の筋肉の塊が喋っている途中でテレビの電源が切れた
「そういえばテレビなんて見てる場合じゃなかった!障害物競走の練習しなきゃ!」
そう言い立ち上がる女の子
「あ・・・れ・・・?」
立ち上がると同時に視界が突然回り出す
そのままソファに再び尻餅を付いてしまう
そして女の子の意識はそのまま途切れた
・・・・
「早く逃げて!ここももう危ないわ!」
道なき森を駆ける獣人の女の子
「ユクメ!急いで!あいつらがすぐに追いついてくるわ!」
「そ、そんなこと言ったってこれ以上速く走れないよぉ!」
「喋ってる暇があるなら急いで!殺されちゃうのよ!?」
「さ、サダメちゃん速いよぉー!」
サダメと呼ばれる狐のような耳の生えた少女がユクメと呼ばれた狸のような耳の生えた少女の手を引きながら森を走る
「ユクメ!サダメ!こっちだ!」
しばらく走っていると他の仲間の少女だろうか
熊の手のような少女が二人に叫ぶ
「シニメちゃん!」
「この先に他の村がある!そこまで一気に逃げるぞ!」
「うん!」
三人は森を駆ける
後ろから追ってくる何者かから必死に逃げるように
「ちょ、ちょっと待って!」
走っている最中ユクメが突然足を止める
「何!?止まってる暇なんて無いわよ!」
「そうだ、速く森を抜けなければ・・・」
「人!人間の匂いがする!」
「そんな!こんな森に人間がいるわけないでしょ!?」
「でも確かに知らない匂いが向こうの方からするの!」
そう言いながらユクメは指差した方に走っていく
「こ、こら!勝手なことして・・・もう!どうなっても知らないわよ!」
ユクメの後を追い走る二人
彼女たちは人間ではない
この世界で獣人と呼ばれる種族
その種類は様々で彼女たちはそれぞれ狐、狸、熊の獣人だ
獣人は鼻が良く遠くの匂いまで感じる事が出来る
ユクメは特に鼻が良く他の二人よりも広範囲の匂いを嗅ぎ分ける事が出来る
そしてユクメの辿り着いた先には・・・
「ほ、本当に人間がいた・・・」
「女の子?どうする?助けるのか?」
「放っておけないよ!」
「とにかく早く起こさなきゃ!」
そう言いサダメが倒れている女の子の肩を揺する
「起きて!こんなとこいたら死んじゃうよ!」
「んん~・・・ムニャムニャ・・・」
シニメが女の子に近寄り身体を軽く調べ始める
「傷は無いようだ、なんでこんなところにいるんだ・・・?」
「わからないけど助けなきゃ!」
「ほら!起きて!死にたいの!?」
「んん・・・?ん?んんん!?」
散々揺さぶられやっと目を覚ます女の子
「起きた!ほら!早く逃げるよ!」
「逃げ?ん?なにここ?てかその耳何?コスプレ?」
「こ、コス?」
「寝起きで混乱しているんだろう、とにかく早く逃げるぞ」
「もう近くまで来てるよぉー!」
そう言い寝ていた女の子を立ち上がらせると四人は走りだす
だが運命とは無慈悲なるものだった
「グハハハハハ!!!見つけたどガキ共ぉ!!!」
「な!先回りされてた!?」
走り出すと同時に目の前から体長3メートル近くある獣人が現れた
「散々走らされたお礼をしてやらなきゃいけねぇなぁ!」
「う、うわなにこれなんかの撮影?」
「んんん!?人間までいやがるじゃねえか!こいつぁ高く売れるぜ!!!」
「速く逃げて!ここは私が引き受ける!!!」
「シニメちゃん!でも!」
「いいから速く!!!」
「ご、ごめんね!!!」
「ガッハッハッハッ!!!熊のガキぃ・・・このウェアウルフの俺様に勝てると思ってるのかぁ!?」
シニメを置いて3人は走る
「勝てないのはわかってる・・・けど二人を助けるためなら少しでも時間を稼ぐくらいは出来る・・・!」
圧倒的体格差
熊の獣人とは言え彼女は戦闘種族ではない
非戦闘種族として生まれ平和そのものの村で育ってきた
体力と力が少しあるだけで人間とさほど変わりは無い
そして相手は戦闘種族のウェアウルフ
更にその中でもより戦闘に特化した盗賊だ
敗北は必然だ
それでも二人を助ける為に必死だった
「かかってこい!ウェアウルフなんて怖くない!!!」
「ガッハッハッハッ!!!威勢の良いガキは嫌いじゃないぜぇ!」
「おら行くぞぉ!!!」
シニメはウェアウルフの咆哮に怯むこと無く正面から突進する
「突っ込んでくるだけじゃ勝てねぇぞぉ!?」
シニメ目掛けウェアウルフの巨大な拳が振り下ろされる
「ぐぅう!?」
だがその拳を真正面から受けてもシニメは耐えて見せた
「面白ぇ!これで潰れねえとは大したガキだ!」
「だけどそんなもんかぁ!?こんなんじゃ足止めも出来ねぇぞぉ!?」
再び振り下ろされる拳
シニメはそれを避けウェアウルフの股下を抜け背後に回りこむ
「あぁー?」
ウェアウルフが振り向くとシニメの唯一の武器その腕に付いた熊の爪が振り下ろされていた
「これでもくらえ!!!」
だがその爪がウェアウルフに届くことはない
簡単に腕を捕まれ止められてしまう
「つまんねぇガキだ」
片腕を捕まれ完全に宙に浮いているシニメ
必死に暴れ抵抗するが全く効いている素振りはない
ウェアウルフは更にもう片方の腕も掴む
「おめぇと遊んでる時間はねぇ、とっととくたばれや」
ウェアウルフは掴んだ両腕を勢い良く引っ張った
「がっ!?」
「なんだ綺麗に半分真っ二つにはならねぇな!」
「ああああああ!!!腕が!私の・・・!!!」
シニメの右腕は引き千切られ完全に身体から分離していた
「きゃんきゃん吠えてんじゃねぇぞぉ!!!」
そう言いウェアウルフはシニメの頭を掴みそのまま勢い良く地面に叩き付ける
シニメの頭は完全に潰れ身体はありえない方向へと曲がりそのまま動くことは無かった
「おめぇの仲間もすぐ同じ姿にしてやるから待ってろよ」
そう言いウェアウルフは残りの3人を追い始める
・・・・
「臭い、血の臭いがする・・・」
「ユクメ!変なこと言わないで!」
「素足でジャングル走るとかめっちゃヤバイんすけどこれどうにかならない?」
「我慢して!今は逃げ切らなきゃ!」
「血の臭いどんどん近づいてくる!!!」
「おらおらちんたら走ってんじゃねえぞぉ!!」
後ろから地面が揺れるような音を出しながら凄まじい速度で走ってくるウェアウルフ
「うそ!?もう追い付いてきた!?」
「シニメちゃんは!?どうなったの!?」
「うわ、あれポリンピック優勝出来るっしょ」
ウェアウルフが勢い良くジャンプする
地面が抉れその姿が消える
「うわ!すげ!空飛んでるじゃん!」
そんな呑気な事を言っている女の子
後ろで走っていたはずのウェアウルフが突如目の前に降ってくる
着地と同時に地面が揺れ3人はバランスを崩し倒れてしまう
「そ、そんな・・・シニメちゃんは・・・」
「あぁー?シニメってのはこの血のことかぁ?」
そう言いウェアウルフは手のひらを見せる
その手のひらには血がべっとりと付いていた
「シニメちゃんが・・・うそ・・・」
「ユクメ!しっかりして!私達まで死んじゃうわ!」
「これもしかしてノンフィクション?」
未だに状況が読めていない女の子
「グオオオオオオオオオ!!!!」
そんなことをお構いなしにウェアウルフがその場で凄まじい咆哮をする
その咆哮は空気を震わせ衝撃波となり三人を襲った
「うわ!すご!身体が浮いてってこれヤバイやつじゃな・・・い゛!?」
衝撃波に飛ばされ木に背中を打ち付けられ気絶する女の子
「人間ってのはよええなぁ!?こんなんで生きてるって言えんのかぁ!?」
「ユクメ!もう私達だけでも速く!」
「む、無理だよ・・・もう・・・逃げられない・・・」
「諦めないで!」
「ガッハッハッハッ!!!素直に諦めたほうが楽になれるぜぇ?」
「ふざけるな!」
サダメは怒りを露わにし腰に付いていた袋から小さな玉を取り出すとそれをウェアウルフ目掛け投げつける
「あぁー?」
投げつけた玉はウェアウルフの顔の目の前で弾け煙幕を吹き出した
「んお!?臭っ!なんだこら!?」
「速くユクメ行くよ!!!」
「う、うん・・・」
「くだらねえことしてんじゃねえぞぉ!!!」
そう言いウェアウルフが二人目掛け巨大な爪を振るう
だがその爪は二人には届かない
「今なら逃げられ・・・・」
「サダメちゃん・・・?」
目の前にはサダメだったものがバラバラに落ちていた
「うそ・・・だって・・・え・・・?」
「獣人ってだけで魔力が使えねえ出来損ない共にはわからねぇかぁ?」
「俺の爪からは逃げられねえ、斬撃を飛ばす事が出来るんだからな」
非戦闘種族と呼ばれる獣人
彼らは獣としての力はあるが魔力を使うことも感知する事もできない
この世界で魔力が使えない種族は人間と変わりがないと言ってもいい程弱小な種族
「あとはおめえだけだ、命乞いする時間くらいならくれてやるぜぇ?」
「こ、来ないで・・・いやっ・・・!」
「ビビってもう何も出来ねぇか?」
「いやああああああ!!!」
「どいつもこいつもきゃんきゃんうるせぇ・・・」
「いやあ!死にたくない!なんでこんな目に!!!」
「おめぇらがよええからだ、生まれた時点で終わってんだよ」
「あっ・・・」
ウェアウルフはその爪で簡単にユクメの首を跳ねた
「手間取らせやがって」
そう言いながら木の根本で気絶している女の子の元へと歩き出す
「なんで人間がこんなところにいるかは知らねぇが良い収穫だぜ」
「これでしばらく金には困らねぇな」
そう言いながら女の子の目の前に腰を下ろしまじまじと観察する
「こんな最弱種族がなんで売れんだか知らねえが・・・」
「はっ!?」
突然目を見開く女の子
「あぁ?」
目の前にはウェアウルフの大きな顔
「いー!!!やー!!!」
突然起きた女の子は叫ぶとウェアウルフの鼻目掛けその拳を振り上げる
見事直撃する拳
ウェアウルフは雄叫びを上げ鼻を押さえながら怯む
「そんな顔目の前にあったら誰でもビビるわぁ!」
そう言いながら立ち上がり周りを見渡す
「うわ!バラバラじゃん!これガチヤバイやつ!」
「これ逃げたほうがいいやつじゃん!」
そう言い走りだそうとする女の子
「逃すと思ってんのかぁ!?」
ウェアウルフは吠えると地面を思い切り踏みつける
すると地面が軽く揺れた
それに足を取られ女の子は転んでしまう
「ひ、ひえぇー」
ウェアウルフから逃げようと腰を抜かしたまま後ろに下がる
ウェアウルフはゆっくりと女の子に近づく
「よくもやってくれたなぁ!?腕の一本二本覚悟しとけよぉ!?」
「は、話し合いとかしたほうがいいんじゃん?ほら、寝起きだったから!ね!?」
後ろに下がるがすぐに木に背が当たってしまった
「逃げ場はもうどこにもねぇぞぉ!?てめえの事食っちまってもいいんだからなぁ!?」
「これリアル赤ずきんちゃんってやつじゃん!?」
必死に考える
とにかく何でもいいからここから逃げる手段を
何か奇跡的な打開策を必死に頭の中で考える
この絶望的なまでの状態
最初から訳がわからないけど見ず知らずの人が私を助けてくれようとした
がみんなあの狼に殺られてるっぽい
この状況非常にまずい
打開策は・・・・
無い
「こ、これでもくらえー!」
そう言いたまたま手に触れた地面に落ちていた棒のような物体を掴み投げつけようとした
「最後のあがきがそれって・・・がぁ!?」
「諦めるな!!!」
「な、なに!?」
「よくぞ俺を引き抜いた!!!」
何が起きたかわからない
ただウェアウルフが目の前でひっくり返っている
そして女の子とウェアウルフの間に全身赤い筋肉の塊が立っていた
「俺の名はバーニングレッドピゴミン!!!」
「悪は許さん!!!」
「あぁ!テレビに映ってた赤い筋肉ダルマ!!!」
その筋肉ダルマの頭には緑色の茎のようなものが生えている
「えっ?あれ・・・私それ引っ張ったん?」
「そうだ!君は俺を引き抜いたのだ!!!」
「さあ行くぞ!!!今のうちに逃げるのだ!」
「戦わないで結局逃げるの!?」
「そうだ!今のうちに逃げるのだ!!!」
「ここ正義の味方的なノリで戦って倒すんじゃないの!?」
「私にだって限界はある!!!」
そう言いバーニングレッドピゴミンと名乗る筋肉ダルマは女の子をお姫様抱っこし走りだす
「私の初めてのお姫様抱っこがこんな筋肉ダルマにっ!!!めっちゃショックなんですけど!」
「初めて女子高生をお姫様抱っこしたぞ!!!最高だぁー!!!」
「もうわけわからないんですけどぉ!」
そう言い凄まじい速度で走り出すレッドピゴミン
「うわ!めっちゃ速い!」
「はっ!?この気配は兄弟!?」
「えっ!?増えるのお前ら!?」
「いたぞ!ここだ!」
そこには無残にも引き千切られ潰された女の子の死体があった
「なんつー場所に戻ってきてんだ!」
「そんなことよりこれを見てくれ!」
地面から緑色の茎が生えている
「うわ、これさっきのと同じですやん・・・」
「さあ勢い良く引っこ抜いてくれ!」
「え、これ私やらなきゃいけないの?」
「そうだ!私は一族の掟で抜く事が出来ない!」
「めっちゃめんどくさいやんそれ・・・」
遠くの方から何かが走る音が聞こえる
地響きを起こすほどだ
「さっきの奴が再び来るぞ!急げ!」
「もうどうにでもなーれー!」
そう言い緑の茎を掴み引っ張る女の子
「うわ!結構ぬるっと抜ける!キモい!」
そして現れたのは全身青い筋肉ダルマだった
「私を引き抜いたのは・・・ふふっ・・・それどころではないようだな」
「見つけたぞ人間!!!」
「誰を前にしていると思っている!止まりたまえ!」
青い筋肉ダルマがウェアウルフにそう言う
するとウェアウルフがピタリと止まり走っていた勢いを殺しきれずその場で顔面から地面に倒れた
「グオオオオオオオオオ!!!」
ウェアウルフの足が凍りつき地面に固定されている
その姿を満足気に見下ろす青い筋肉ダルマ
「この御方を誰だと思っている!」
「そうだ!この御方を誰だと思っている!!!」
「てめえら調子に乗りやがってぇ!」
「黙れ!私はハイドロブルーピゴミン!!!」
「そして俺はバーニングレッドピゴミン!!!」
「「そしてこの御方こそ!近隣住民女子代表だ!!!」」
「え、た、確かに近隣住民女子代表って選ばれたけどそうじゃなくない!?」
「そもそもなんで知って・・・」
「女子代表だぁ!?ふざけやがってぇ!!!」
「私達二人が相手だ!さあかかってこい!!!」
「あ、戦うの?」
「俺たちのコンビネーションを見せる時が来たな!!!」
ノリノリで筋肉ダルマ二人がウェアウルフの前に立ちはだかる
ウェアウルフは未だに足が凍りつき固定され動ける状態ではない
「あれ?」
筋肉ダルマ二人がウェアウルフに何かを言っている
しかし見つけてはいけないものをみつけてしまった近隣住民女子代表
それと視線を合わせてしまった
地面から半分くらい顔が出ている頭に二本の緑の茎の生えた物体を
目だけこちらを見ている
他の二人とは明らかに違うそれ
動けないウェアウルフを取り囲み訳の分からないセリフを叫びまくる二人を置いてゆっくりとそれに近づく
それはしっかりと私の事を見ている
「こ、これ抜かなきゃダメな奴・・・?」
二本の緑の茎の下は黄色の顔が半分出ている
「テレビで映ってなかった気がするけど・・・」
「そんなことどうでもいいか・・・」
その物体はしっかりとこちらを見続けている
目の前まで来て腰を下ろす
「これ抜いたほうがいいやつ?」
そう喋りかけてみる
だがその物体は喋らない
ただ近隣住民女子代表を見続けている
「顔半分埋まってるし喋れないのは当たり前だよね・・・」
一度周囲を見回す
動けないウェアウルフを取り囲み主題歌らしきものを歌い踊り回る二人の筋肉ダルマ
再びその物体に目を向けると視線が合う
「これ現実であったらめっちゃホラーですやん・・・」
「抜いてみよ・・・」
そう言い頭に付いた二つの茎を両手で掴む
するとその物体は目を見開く
「うわ!きも!」
思わず手を話してしまう女子代表
だがその物体は必死に何かを訴えかけるような視線で女子代表を見続ける
「わ、わかったよ・・・抜けばいいんでしょ・・・」
そう言い再び二つの茎を両手で掴む
「いっせーの・・・せっ!」
そしてついに解き放たれた
第三のピゴミンが・・・
「ピッゴォ!!!」
「う、うわ!きもい!」
他のピゴミンと違い目だけしか無い
鼻も口も耳も何も無い
そしてよく見ると筋肉ダルマでもない
全身タイツの至って普通の体型の男らしき何かだ
「ピッゴォ!」
そして謎の鳴き声を出す
「おぉ!!!イナズマイエローピゴミンじゃないか!!!」
「待っていたぞ!俺の愛犬!」
「ピッゴォ!!!」
「え!?これ犬なの!?」
「私達とずっと共に歩んできたペットだ!!!」
「兄弟じゃないんだ・・・」
「てめえら・・・いい加減にしろぉおおぉぉぉぉぉ!!!」
ついにキレたウェアウルフが凄まじい咆哮を上げる
その衝撃波が再び4人を襲った
「筋肉シールド!!!」
そう言いレッドピゴミンが女子代表の目の前に立ち衝撃波を受け止めた
「大丈夫か!!!」
「そ、そんなこと出来るんだ」
「速く逃げるぞ!兄弟!」
「ピッゴォ!」
「結局逃げるんかい!」
「逃すと思うかぁ!!?」
ウェアウルフが怒り狂い突っ込んでくる
それを見たイエローピゴミンが音もなくまるでスライドするようにぬるりと動く
「うわ、キモい」
イエローピゴミンは突っ込んでくるウェアウルフの真横まで行くと片足を前に少し出す
その足に引っかかりウェアウルフはバランスを崩し木に画面からツッコミ動かなくなった
「でかしたぞ!我々の勝利だ!」
「あれ気絶してるだけじゃないの?」
「祝砲を放て!さあ宴の始まりだ!」
「ピッゴォ!」
「いやちょっと人の話を・・・」
そう言い勝手に歩き出す3人
「あれ・・・?」
3人の背を見ていると違和感に気づく
「ファスナー?」
そう、イナズマイエローピゴミンにだけ頭から尻にかけてファスナーがあるのだ
「え?中身なんかいるのあれ!?」
後ろからバレないようにゆっくりと近づく女子代表
そしてファスナーのピンにそっと触れる
その瞬間
「それ下ろすと僕と結婚することになりますよ」
二人の時が凍りついた
レッドピゴミンとブルーピゴミンはのんきに肩を組み歩いている
女子代表とイエローピゴミンの時が止まる
何が起きたかわからない
突然イエローピゴミンが喋ったかのように感じた
いや、喋ったのだろう
「え!?今喋った!?」
思わずファスナーから手を離し一歩下がる女子代表
そしてゆっくりと振り向くイエローピゴミン
その表情はわからない
ただ無表情の眼差しがこちらを見ている
どれくらいの時が経ったのだろうか
そう錯覚してしまう程の間
恐らく3秒くらいなのだろうが体感1分くらいには感じた
突如握りこぶしを天に掲げるイエローピゴミン
そして
「ピッゴォ!」
そう言い二人を追いかけている
「気のせい・・・だった・・・!?」
何も無かったかのように歩いて行くイエローピゴミン
「もうわけわからない・・・・」




