表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/31

第百五十章 マリの噂、住宅街で広まる

ある日、マリの近所に住んでいる古宅内科医が、女房の反対を押し切り、世界出張医師団に参加する事になりました。

心配した古宅内科医の女房は佳子から、“マリの主人が世界出張医師団に数回参加している。”と聞いていた為に相談に行くと、丁度霧島外科医は不在でしたので、マリが最初に団体の説明をしました。

マリは、「世界出張医師団とは、簡単に説明すると、要請があれば世界各国どこにでも出張診療します。これが団体名の由来です。心配されているように、確かに戦地から要請があれば出張します。しかし、日本の過疎地や無医村から要請があれば、出張する事もあります。只、無料なので、便利に利用される事を避ける為に、都会など、医師が不足してない地域への出張は断る場合もあります。これは団体を運営している財団が決めます。」と説明しました。

古宅内科医の女房は、「断る場合もあるという事は、都会へ出張する場合もあるのですか?」と出張する基準はどうなのか疑問に感じて質問しました。

マリは、「以前お金もなく、保険にも加入してない路上生活者数人から要請があり、東京へ出張した事もありました。要は理由次第ですね。」と説明しました。

古宅内科医の女房は、「期間はどのくらいですか?」と質問しました。

マリは、「悪までも出張で、派遣ではないので、期間は一ヶ月以内と、さほど長くありませんが、数カ所巡回すれば、暫く家を空ける事もあります。勿論ボランティアなので給料は出ませんが、交通費と食費は出ます。要請があっても断る事は可能です。短い期間ですので、医師が勤務している病院でも、休暇を許可して、“当病院は世界出張医師団に協力しています。”とPRすれば、病院の格も上がるようですね。医師も退職しなくても参加可能な為に登録している医師は多いようです。出張にして期間を短くしているのは、そういう理由からです。期間は短い為に交通費は割高になりますが、それだけの価値があると財団は判断したようですね。」と説明しました。

古宅内科医の女房は、「えっ?断る事も可能なのですか?」と確認しました。

マリは、「ええ、可能ですが財団では、広告塔に利用される事を避ける為に、正当な理由もなく断る回数が多いと、登録を抹消されて、その事をインターネットで発表されます。その他インターネットには、登録している医師名と医師が所属している医療機関も発表しています。勿論危険だというのは、断る為の正当な理由になります。私の場合は主人と知り合ったのは、主人が世界出張医師団に参加中のカンボジアで最初に会いました。主人の勤務する大日本医療大学の外科は、脳神経外科や内臓外科などの専門診療科目の他に、第一外科と第二外科があり、第一外科が一般外科と救命救急で、第二外科が世界協力する診療科目でして、主人は第二外科に所属している為に、良く出張に出掛けます。治安の良い地域だと安心ですが、治安の悪い地域や戦地ですと心配です。」と説明しました。

古宅内科医の女房は、「大日本医療大学といえば、確か世界的な名医が在籍していると聞いた事がありますが、テレビなどではあまり拝見した事がないですが、何かあるのですか?マスコミのインタビューを断っているとか。」と聞きました。

マリは、「私も詳しい事は知りませんが、主人の説明によると、マスコミも世界的な名医と聞いて、困難な脳の手術をすれば、脳神経外科の外科医、つまり脳外科医を捜すようです。しかし噂の名医が在籍していないと聞き、ガスネタだと判断して、諦めてしまうようです。その名医は、第一外科の東城先生です。確か今は結婚されて梅沢先生になっている筈です。脳神経外科ですと脳だけですので、第一外科に在籍しているらしいです。脳以外、胸部外科や内臓外科でも手術は不可能だと専門医が診断した患者の手術を成功させる超一流の外科医らしいです。エスベック病患者を救ったのも、その外科医で、マスコミもその時に、世界的名医が専門診療科目の外科医ではなく、第一外科の外科医だと知ったようですので、これからはテレビに出る事も多くなるかもしれませんね。」と説明しました。

古宅内科医の女房は、「そんな凄い外科医がおられるのですか?一度お会いしたいですね。」と驚いていました。

マリは、「古宅さん、先日二軒隣の梅沢さんの所に佳子さんの弟夫婦が来ていたでしょう?覚えていますか?佳子さんの弟、修さんと結婚されたので、苗字が東城から梅沢に変わったのですよ。」と説明しました。

古宅内科医の女房は、「あの方が世界一の名医でしたか。」と案外身近な所にいたので驚いていました。

マリは、「話が逸れてしまいましたが、私が主人と知り合った頃は、私も危険な仕事をしていた為に、危険な仕事をしている者同士、気が合い結婚しました。要は結婚前から、主人が世界出張医師団に参加していた事は知っていました。ここがあなたと大きく異なる為に役に立つかどうか解りませんが、確かに世界出張医師団に参加すると、戦闘に巻き込まれることもあります。主人は戦地で捕虜になった事もあります。」と説明していると、霧島外科医が帰って来ました。

霧島外科医は、「そこへ、自動小銃片手に飛び込んで来たアメリカ軍兵士に銃撃戦の末に助けられましたが、その兵士が女房です。私の女房は見たとおり、ぶりっ子していますが、当時は実戦経験のある兵士でした。私の家系は、昔から人命を大切にする性格でして、戦地へは進んで参加しています。父に聞いた話では、私の先祖は童話になるほど有名な刑事だったらしいです。話の腰を折ってしまいましたが、私はまた出掛けるので、どうぞゆっくりしていって下さい。」と説明しました。

古宅内科医の女房は、「えっ!?童話って、まさか霧島刑事といえば、銃も通用しない怪物を味方にした宝石強盗と闘う時に、女神様の娘が助けてくれたという、あの童話ですか?」と驚きながら聞きました。

霧島外科医は、「そうですが、あれは悪までも童話ですので真実ではないと思います。多分、宝石強盗団の中に強敵がいたので、腕の良い女探偵か何かが助けてくれたのだと思います。それが美人だったので、女神様の娘だという事になったのではないですかね?」と補足説明して出掛けて行きました。

古宅内科医の女房は霧島外科医が出掛けた後に、「ちょっと凄いじゃないの。主人もあなたも。ご主人との馴初めを聞かしてよ!」と迫られました。

マリは渋々、戦場ではお互いに日本人だとは気付かずに英語で会話していた事や、お互いに日本人だと気付いたのは携帯電話の一件である事等を詳しく説明しました。

古宅内科医の女房は、「という事は、佳子さんが、お二人の愛のキューピットになる訳ですね。佳子さんから電話がなければ、お互い日本人だとは気付かなかった訳ですから。」と納得していました。

古宅内科医の女房は、主人が世界出張医師団に参加する事で相談に来ていた事をすっかり忘れて、満足そうに帰って行きました。そしてその噂は直ぐに広まりました。

次の日の朝、マリが玄関先を掃除していると、登校途中の中学生が、代休で休みの佳子には、「お姉ちゃん今度、世界一の名医を紹介してね。」と頼んでいましたが、マリには、「小母ちゃん、今度自動小銃の使い方を教えてよ。」等と冷やかされました。

マリは掃除しながら、同じく玄関先を掃除している佳子に、「何で佳子がお姉ちゃんで、私が小母ちゃんなのよ!」と不満で、この様子だと、近所中に広まっているみたいだわ。と思いながら、家の掃除をしていると、掃除を終わらせた佳子が来ました。

佳子は、「変な噂が広まっているようなので、困れば親友としていつでも相談に乗るわよ、何かあれば連絡してね、小母ちゃん。」と小母ちゃんを強調しました。

マリは、「小母ちゃん言うな、引越しで、ばたばたしていて、今迄あまり話をしていなかったけれども、最初引っ越して来た時に挨拶に行って表札を見て、“あれっ?”と思ったけれども、公務員ではなく、企業戦士だと聞いていたので、“人違いかな?“と思っていました。すると佳子が出て来たので、引っ越しの事を思い出しました。警察は退職したのですか?」と聞きました。

佳子は、「引っ越しの時に手伝ってくれたんじゃないの?ここに来た事も忘れていたの?私を見て思い出しただなんて、冷たいわね。警察は、あなたのいうように変な意地を張り過ぎて、警察官一人を私のミスで死なせてしまい、どうしても警察官を続ける気持ちになれなくて、弟と一緒に母の会社を手伝っています。」と説明しました。

マリは、「ああ、その会社でしたら聞いた事があります。凄いじゃないの、突然大富豪になって。お金に困った時には、頼りになりそうね。警察を退職したのでしたら、もう銃刀法違反で逮捕される事はないのね。」と安心していました。

佳子は、「お金だけ?何か金の切れ目は縁の切れ目みたいで嫌ですね。マリとは、お金以外の付き合いがしたいですね。それと警察を退職したのは私だけで、修はまだ現役の刑事なので、“銃を持っている人がいる“と修に通報できるのよ。」と指摘しました。

マリは、「金の切れ目だなんて別にそういう意味ではないですよ。人を疑うのは刑事の悪い癖ね。早く直した方が良いわよ。それに誰が銃を持っていても気にしないようにしないといけませんね。」と警察を退職した事を自覚するように促しました。

佳子は、「それはどういう事?また銃を持って来たの?」とマリを睨みました。

マリは、「刑事でもない人に答える必要はないわよね。」等と二人で雑談していると、次郎が訪ねて来ました。


次回投稿予定日は、12月11日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ