表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/31

第百四十九章 マリ、結婚する

記者会見も終わり、マリ芹沢パイロットと霧島外科医が会見場を去った事を確認すると、学者の息子はマイクを取り、「皆さん、目出度い事ですが、マリ芹沢パイロットと霧島外科医は、僕が日本語を理解できるとも知らずに、上空でプロポーズしていました。返事は今晩マリ芹沢パイロットが霧島外科医のマンションを訪ねて、返事するらしいです。」と記者会見の時に予告した、めでたい事を説明しました。

マスコミ各社は、自社に連絡し、マリは、マスコミが張り込んでいるとも知らずに、霧島外科医のマンションを訪ねて、返事しました。

“プロポーズを受けます。”と返事しました。

その後マリが、「何故急いだの?理由は今夜説明して頂けるのですよね?」と急いだ理由が気になるようでした。

霧島外科医は、「毒蛇に噛まれた後遺症ですが、血清を注射するのが少し遅れた事が問題です。ただ毒は吸出して、遅れたとはいえ血清は注射しましたので、酷い症状は出ないと思いますが、症状が出るとすれば今晩なので、君の傍にいたい。」とマリを呼んだ理由を説明しました。

それを聞いたマリは、「嘘でしょう?基地に帰還して私を診察して、“問題はないので安心して下さい。”と言っていたではないですか?」と不安そうに質問しました。

霧島外科医は、「“今の所は“と言った筈ですが?それに、マリさんの脈が少し早かった為に、毒が早く体に回った可能性もあります。」と説明しました。

その説明を聞くとマリは気分が悪くなり、「症状ってこれですか?」と苦しそうにしました。

霧島外科医は、「いや、違う。これは心理的なものだ。だって、私が今晩、症状が出るかもしれないと説明した途端に気分が悪くなったでしょう?気をしっかり持てば大丈夫ですよ。プロポーズの返事を急いだ理由ですが、マリさんの症状が出る前、すなわち正常な精神状態の時に堂々と返事を聞きたかったのです。ドラマなどでよく、女性が心理的に苦しんでいる時に、“君は僕が守るから結婚して下さい。”なんてセリフがよくありますが、その時の心理的な弱みに付け込んでいるみたいで、卑怯な気がして私には、とてもできません。」と説明しました。

マリは、「少し落ち着いて来ました。霧島さんは、真面目な方なのですね。」と感心していました。

霧島外科医は、「それは、持って生まれた私の性分です。しかし、マリさんがこんなに暗示に掛り易いとは思いませんでした。」と鬼教官の裏の顔を覗いたような気がしました。

マリは、「上官から、私の唯一の弱点だと指摘されています。」と説明しました。

霧島外科医は、「そうですか。上官は部下の事を良く見ているのですね。私は全く気付きませんでしたし、普通は気付かないですよ。恐らく、マリさんが勤務している会社では、誰も知らないのではないですか?」とマリの上官は色んな事に気配りする優秀な上官だと感じました。

マリは、「その通りです。会社だけではなく、空軍でも、誰もが私を天下無敵のパイロットだと思っています。航空機の事で私の欠点を見抜き、指示してくれるのは上官だけです。上官には隠し事が通用せず、今回も記者会見が終了すると携帯に着信があり、毒蛇に噛まれたのは利き腕ではないので、何か隠し事をしているのかと問い詰められました。まさか霧島さんにプロポーズされたので、心理的な事で操縦が乱れたとも言えずに誤魔化しましたが、上官にはバレていたかもしれません。」と返答しました。

霧島外科医は、「矢張り、そうですか。空軍では良い上官に巡り合いましたね。いつも頼りにしているのではないですか?」と恐らくそうだと思い確認しました。

マリは、「そこまで、お見通しですか。仰る通りです。」と返答しました。

その夜は霧島外科医が一緒なので安心した事もあり、マリは心配された後遺症も特にありませんでしたが、霧島外科医と一夜を共にするのは始めてでしたので、興奮して眠れませんでした。

マスコミが部屋の近くで、マリが部屋に入ったあと、泊まらずに出てくれば、結婚しない。泊まれば結婚する事だと思い、張り込んでいました。そうとも知らず、マリが早朝、霧島外科医の部屋から出て来ると、突然、「ご婚約おめでとう御座います。今の心境は?」と聞かれました。

マリも霧島外科医も何がなんだか解らずに、「突然何ですか?」と何故マスコミがここにいるのか不思議そうでした。

学者の息子の説明からマスコミが張り込んでいた事を説明して、「プロポーズを断れば、泊まらないですよね?プロポーズを受けたから、一夜を共にされたのですよね?」と確認しました。

マリと霧島外科医は現状を把握しましたが、不意打ちでしたので、二人共、仕事があるからと逃げるように、その場から立ち去りました。

その後、マスコミから、霧島外科医とマリに確認の電話や訪問が何度もあり、昼前に事実関係を確認したようでした。

テレビなどで報道され、大騒ぎになりました。

会社でもマリは、「昼食時にテレビを見ていると、突然テロップが流れて、マリが結婚するって書いていました。今日はマスコミからマリに電話や訪問が多かった為に、てっきり、いつぞやの機械獣が、また現れたのかと思っていましたが、そういう事だったのね。みんな慌てて、チャンネルを変えていると、そのニュースを放送していました。その報道は本当なの?結婚するの?相手は霧島外科医と報道されていたけれども本当なの?どこの病院のお医者様?結婚式はいつ?キスはもうしたの?肉体関係はどうなの?報道によると婚約者と一緒に泊まったって本当?婚約した男女が一緒に泊まって何もないって事は、ないわよね?」などと、色々と冷やかされました。

マリは冷やかされながらも、相変わらずの生活を送っていましたが、アメリカ大統領が任期満了に伴い、次期大統領選があり、新しい大統領が選出されました。

その大統領は、「民間人に空軍の教官を依頼するのは可笑しい。今後、空軍以外の教官は一切認めない。戦地への出撃も同様です。日本の自衛隊も民間人の教官がいる以上、交流は一切しない。」という方針を出した為に、マリは今後教官として指導する事や戦地への出撃がなくなりました。

これを機に、マリは良い奥さんになろうと、会社を結婚退職しました。

新大統領がマリの自家用機の経費をアメリカ空軍が支払っている事までは気付いていないだろうと判断して、アメリカ空軍はマリの操縦技術の足元にも及ばない事を知っていた為に、謎の機械獣の事もあり、緊急事態が発生した時にはマリに依頼できるように、そのまま経費は支払う事にして、マリに、その事を伝えました。勿論、新大統領には内緒で秘密兵器扱いにしました。

しかし新大統領の方が一枚上手でした。新大統領は前大統領からマリの事は聞いていて、最初から全てを知っていました。マリを危険な任務から開放して、結婚させる事が目的でした。

新大統領の思惑通りに二人は結婚しました。結婚式は、アメリカと日本の中間にあるハワイ島で挙げました。移動方法については、アメリカからは、アメリカ空軍の輸送機で、日本からは、花嫁であるマリの自家用機で移動する事にしました。結婚式終了後、マリの自家用機で世界一周の新婚旅行に出発した為に、日本から来た招待客の帰りは、民間機のチケットを用意しました。

マリの結婚式も無事に終わり、日本で結婚生活を始めました。マリは近所付き合いも問題なく、幸せな結婚生活を送っていました。新居は霧島外科医が、患者の不動産屋に依頼して捜してきました。

その時マリは、この住宅街には一度来た覚えがありましたが、佳子の引越しの時に一度来ただけでしたので、いつ何の為に来たのか思い出せませんでした。近所への挨拶の時に佳子に会い、やっと思い出し、二人共驚いていました。

佳子は、「何も、こんな近くに越してこなくても良いでしょう?甘い新婚生活を見せ付ける為に、態々こんな近くにしたの?」と不満そうでした。

マリは、「佳子の引越しの時に一度来ただけで、あの時もジェット戦闘機の事を考えながら引っ越しをしていたので、すっかり忘れていたのよ。」と返答しました。

佳子は、「引越しは、忘れる程の昔ではないでしょう。先日の事でしょう?そんな大昔みたいな言い方をすると、私はヨボヨボの婆さんみたいじゃないの!伝説の名パイロットさん。」と言い返しました。

マリは、「だから伝説は辞めてと言ったでしょう。ヨボヨボの婆さんみたいだから。でも、ヨボヨボの婆さんでなかったら、なんで脚立から落ちたくらいで生死の境をさ迷うのよ。」とマリも負けていませんでした。

一緒に挨拶に来ていた霧島外科医が、「マリ、お前、挨拶に来たのか?喧嘩に来たのか?」と止めました。

佳子は、「そうね。敵を発見したら直ぐに攻撃する、その性格を早く治しなさいね。ここは日本だからね。」と笑っていました。

マリは、「佳子こそ、警察を退職したのだったら、不審人物を見付ければ食らいつくその性格を早く治しなさいね。」と佳子も同じだと忠告しました。

佳子は、「銃をいつも持ち歩いている不審人物に、そんな事を言われるとは思わなかったわ。」と呟きました。

マリが何か言い返そうとしましたが霧島外科医が、「だから、マリ、もう辞めろと言っただろうが。」と止めました。

霧島外科医は、「佳子さん、マリの親友のあなたが、近くに住んでおられて、心強いです。今後とも宜しくお願いします。」とマリの頭を押さえて、お辞儀させて帰りました。


次回投稿予定日は、12月8日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ