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第百三十五章 佳子、一命を取りとめる

病院に向かって飛行中、操縦桿を握っているマリは佳子の事を心配していた為に、霧島外科医がマリを安心させようとして、東城外科医の事を説明しました。

霧島外科医は、「彼女は大日本医療大学医学部第一外科の助教授で、先日、エスベック病の手術に成功したと雑誌にも載っていた、超一流外科医ですので安心して下さい。」と腕の良い外科医だと説明して安心させようとしました。

マリは、「彼女?女性の外科医ですか?珍しいですね。きっと小さい頃から英才教育を受けていたのでしょうね。」と感心していました。

霧島外科医は、「女性の外科医も珍しいですが、女性のパイロットも珍しいのではないですか?芹沢さん。彼女は何故か昔の事を話さないので、英才教育を受けていたかどうかは不明ですが、先日彼女が高校生だった頃に住んでいた家の前を通りましたが、門は二重鉄格子の凄い家でしたので、その可能性はあると思います。」と説明しました。

マリは、まさかとは思いながら、「先程エスベック病の手術に成功したと言っていましたが、その東城という外科医の名前は陽子で近々に刑事さんと結婚するって言っていませんでしたか?」と確認しました。

霧島外科医は、「何故知っているのですか?名前は雑誌に載っていたかもしれませんが、刑事との結婚の事まで載っていましたか?」と何故マリがそんな事を知っているのか不思議そうでした。

マリは、「矢っ張りそうか。世間は狭いものですね。佳子は私の親友ですけれども、その佳子の弟の婚約者が、その東城陽子先生よ。佳子も遠慮せずに弟の婚約者に最初から電話すれば、こんな回り諄いことをしなくても済んだのにね。変な意地を張っているから。」と本当に頑固なんだからと呆れていました。

霧島外科医は、「そうですね。何故、直接弟の婚約者に電話しなかったのでしょうね。その変な意地?に関係あるのですか?何ですか?その変な意地というのは。」と命懸けの意地に興味がありました。

マリは、「それは、色々と聞いていますが、プライバシーに関する事ですので、本人に直接聞いて下さい。佳子にとっては、大問題らしいですよ。」と佳子の大問題についてマリの口から言えないと思いました。

霧島外科医は、「弟が世界的な名医と結婚するのですから、何も問題ないと思いますが、大問題だなんて言うと、気になるじゃないですか。病院で直接東城先生に聞いてみます。」等と雑談している間に空港に到着して、そこからマリが手配したヘリで大日本医療大学医学部付属病院のヘリポートへ直行しました。

陽子が手術を終えて、手術室から出ると、マリと霧島外科医は既に病院に到着していて、佳子の容態について心配そうに陽子に聞きました。

陽子は驚き、「あれ?霧島先生、確か世界出張医師団の仕事をしていて、戦場で捕虜になったと聞いていましたが、こんな可愛い彼女とイチャイチャしていただなんて、心配して損しました。」と冷やかしました。

霧島外科医は、「昨日まで捕虜でした。今朝、彼女がアメリカ軍兵士として、自動小銃片手に飛び込んで来て、銃撃戦の末に私は助けられました。それに、先程、基地内の喫茶店から電話で話をしたでしょう?彼女は私の命の恩人であって、恋人ではありません。決してイチャイチャなんかしていません。それに彼女は東城先生の婚約者である修さんのお姉さまの親友ですよ。マリさんに失礼でしょう!」と真剣に説明しました。

陽子は、「ふ~ん、自動小銃片手にスカート姿で助けに来てくれたのね。それもミニスカートでね。説得力のある説明ね。」と笑いました。

霧島外科医は、「違うって着替えたのだよ。マリさんも、何とか言って下さいよ。」とマリに助けを求めました。

マリは、「私は紅茶でコーヒーは駄目ですが、霧島外科医はコーヒーなのですね。それもブラックなのですね。」と基地内の喫茶店での事を説明しました。

陽子は、「矢っ張り、二人でどこかにしけ込んでいたのね。霧島外科医の前で着替えるだなんて普通の仲ではないと思いましたが、そういう事ですか。」と霧島外科医を横目でチラッと見ました。

霧島外科医は、「違うって、マリさん変な事を言わないで下さいよ。基地内の喫茶店から電話したって言ったじゃないですか。着替えは基地内の更衣室ですよ。」と説明しました。

マリは、「“何とか言って下さい。“と言ったので、喫茶店での話をしただけですよ。二人一緒にいた事は、先程の電話でご存知だと思いましたので、その場所は間違いなく喫茶店だと説明したつもりですけれどもね。」と説明しました。

陽子は、「解りました。霧島先生が焦って説明するので信頼性がなかったのですよ。マリさんのように落ち着いて説明すれば問題ないですよ。しかし、それにしても、えらく早く着いたのね。」と聞きました。

霧島外科医は、「マリさんは元アメリカ空軍パイロットで自家用機も持っています。彼女の自家用機で空港まで来て、そこから彼女の手配したヘリで、直接この病院のヘリポートまで来ました。」と説明しました。

陽子は、「マリさんをどこかで拝見したような気がしていましたが、今の説明で思い出しました。確か雑誌で見覚えがあります。何でも伝説の名パイロットと呼ばれているらしいですね。佳子さんは凄い人と知合いなのですね。」と納得していました。

マリは、「伝説などと言うと、大昔の話のようで、私はヨボヨボの婆さんみたいなので、その呼び方はあまり好きではないのです。」と伝説だなんて止めてほしいわと思っていました。

陽子は、「それでは、鬼教官のほうが良かったのかしら?」と可愛い顔をしているので鬼は似合わないと思うけどなと思っていました。

マリは、「それも、地獄の一丁目から来たみたいで、あまり好きではないのです。」と不満そうで、“大空の女神様というのもあったのに、何故その呼び方をしてくれないのだろう。”と思っていました。

霧島外科医は、「呼び方なんて、そんなものですよ。」と助言しました。

陽子は、「そうかもしれませんね。マリさん、呼び方の事は諦めた方が良いと思いますよ。所で、アメリカ空軍パイロットのマリさんと刑事の佳子さんが何故知合いなのですか?」とどこで知り合ったのか興味がありました。

マリは、「今回のように、慌てて戦場から日本に戻る事もあり、うっかり銃を日本国内に持ち込んでしまう事が何度かありました。そこを刑事の佳子さんに見付かり、銃刀法違反の現行犯で逮捕されてパトカーで連行されました。それ以来付き合っています。」と説明しました。

陽子は、「ぶっそうな話ですね。今回も慌てたという事は、ひょっとして今も銃を持っているのですか?」と念の為に確認しました。

マリは、懐を確認して笑いながら、「持って来ちゃいました。佳子さんに見付かると五月蝿いので内緒にしてね。そんな事より、佳子さんは大丈夫なのですか?死亡する可能性があると聞きましたが。」と佳子の事を心配していました。

陽子は、「都合が悪くなったので、上手く話題を変えましたね。大丈夫ですよ。なんとか間に合いました。後一時間遅かったら助からなかったかもしれませんでした。内臓は異常ありませんでした。内出血は止血しておきました。直ぐに治ると思いますが、足の骨折は少し時間が掛かります。数ヶ月で退院できると思います。」と説明しました。

その後、霧島外科医は少し間を置いて、陽子に、「しかし、佳子さんは何故、東城先生に直接電話しなかったのですか?何かあるの?マリさんは何か知っているみたいだけれども、プライバシーの問題だからと言って、説明してくれないのだよ。何があったのだ?彼女と。」と二人の間に何があったのか気になっていました。

陽子は、「色々とあったわよ。大変だったんだから。」と返答しました。

霧島外科医は、「何だ?君も奥歯に物が挟まったような言い方をするのか?」と不機嫌そうでした。

陽子は、「解ったわよ、少しだけ説明するわよ。私が看護師を助ける為に違法ルートで内臓を用意した事を覚えているでしょう?その後、色々とあったのよ。修ちゃんも佳子さんも刑事ですので、問い詰められると言うより、取り調べという感じで、丸で犯罪者扱いでした。それで、修ちゃんと私との結婚には猛反対で、私に助けられるのが嫌で、連絡して来なかったのよ。所が、佳子さんの部屋に行った外科医が私でしたので、霧島先生も御存じのように、病院に連れて来るのに苦労しました。」と説明しました。

霧島外科医は、「そうですか。佳子さんは自分が死亡する可能性があるのに、何故病院に行く事を嫌がっているのか理解に苦しみましたが、そうでしたか。」と納得していました。

マリは、「佳子さんは丸東組の次期組長がどうだこうだと言っていたような気がするけどな。」と呟きました。

霧島外科医は驚いて、「えっ?丸東組って凄く怖いやくざでしょう?東城先生、何か関係あるのですか?まさか内臓の違法ルートは、その丸東組の関係なのですか?」と驚いていました。

陽子は、「まあまあ、話せば長くなるから、細かい事はどうでも良いじゃないの。」と誤魔化しました。

しかし、霧島外科医は、「東城先生、丸東組とは縁を切った方が良いですよ。先日重体で運ばれてきた刑事は、丸東組次期組長の噂のある姉さんに、素手でやられたと言っていました。刑事数人がかりでも歯が立たなかった怖い姉さんらしいので、あんな女に目をつけられると大変な事になりますよ。」と縁を切るように説得しました。

陽子は、“あんな女で悪かったわね。どうやって自分と縁を切るのよ。”と思っていました。


次回投稿予定日は、10月12日です。

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