第百二十五章 マリ、佳子と親友になる
マリは会社での仕事も終わり、正式な就職先も決まった為に転職しました。
航空業界ですと、マリの事を知っている可能性が高いと判断して、別の業界に転職しました。
マリが正式に就職したのは総合商社で、そこでOLとして就職しました。
海外との取引も多い為に、アメリカ育ちのマリの英語力が就職の決め手になったようでした。
度々、銃の不法所持で佳子に、「戦争と言っても、お金を貰って人を殺すのは殺し屋と同じよ!銃は私からアメリカ軍に返却しておきます。」と説教されて、銃を没収される事もありましたが、平和に暮らしていました。
同居している次郎は、「どうですか?仕事は順調ですか?」とマリの事を心配していました。
マリは、「今の所、通訳の仕事が殆どで、それも叔父さんの会社みたいに、何とかグラマーというような訳の解らない言葉は出て来ないので順調よ。」と返答しました。
次郎は、「そうか通訳か。アメリカ育ちのマリちゃんにとっては朝飯前だね。今の会社もオフコンを導入しているのだろう?入れ替える予定はないのか?」と新規参入する余地はないのか確認しました。
マリは、「何、それ。私に叔父さんのスパイになれとでもいうの?」と不満そうでした。
次郎は、「何もスパイになって、何かを聞き出せというのでないよ。社内でそんな噂を聞いた事がないかなと思っただけだよ。」とそこまでマリに協力させようとは考えていないようでした。
マリは、「只の通訳専用OLにそんな事は聞こえて来ないわよ。でもパソコンのリース切れって関係あるの?配線が切れて、繋ぐだけの事なの?そんな事は聞いた事あるわよ。」とパソコンの事でよく聞く事を伝えました。
次郎は、「コンピューターは買うのではなく、借りる場合が多いんだよ。その借りる期間がもうすぐ終わるという事なのだよ。だから、そのパソコンを返して、新しいパソコンを借りる可能性があるという事だ。営業マンに行かせるよ。パソコンがリース切れになる部署はどこだ?」と営業に知らせてマリが就職した会社に新規参入しようとして、マリにパソコンがリース切れになる部署を確認していました。
マリは、「それは良いけれども、私がベラベラ喋ったなんて言わないでよ。叔父さんのソフトウエア会社のスパイだと思われるから。リース切れになるのは経理のパソコンだそうよ。」と変な事に巻き込まれないかと心配していました。
次郎は、「マリが私の姪だという事も言わないよ。その事は営業にも連絡しておくから安心しろ。」と今後も情報入手がしたくて、マリとの関係は内密にしておきたかったようでした。
ある日、マリが所属する部署で親睦ハイキングに行く事になりました。今回、銃以外に組み立て式の自動小銃をマリの荷物の中に入れていた事をすっかりと忘れていて、持って来てしまい、それを自宅に置いて行くのは無用心なので、持って行く事にしました。
社員達は、“通常のハイキングコースでは面白くない。”と相談しながら女子社員が反対する中、山奥に入っていくと、やくざが銃などの武器を隠している現場に遭遇してしまい、その件で近くを捜査していた刑事達とやくざに囲まれました。
驚いた事に、その中に、いつもマリに銃の事で説教していた佳子がいました。
刑事二人に銃を持ったやくざが十人前後で、山奥で携帯も繋がらずに困っているようなのでマリが、「お困りのようですね。お手伝いしましょうか?」と遠慮している場合じゃない事を佳子に伝えました。
プライドの高い佳子は、「痩せても枯れても日本警察は殺し屋の手は借りません。」と刑事二人で対応しようとしていました。
マリは、「殺し屋で悪かったわね。それじゃお手並み拝見といきますか。」と同僚の前で殺し屋だなんて表現しなくても良いのにと不満そうでした。
刑事達が、やくざと戦っている間に社員達は、マリが殺し屋だと知っているのだったら、逃げ隠れしてないから放置せずに逮捕する筈だが、今迄逮捕されていないので佳子の言った、“殺し屋”という言葉は本気にせずに、「芹沢カッコ良いな。殺し屋か。俺も死ぬ時には芹沢みたいな美人の殺し屋に殺されて死にたいな。」等と雑談していました。
一人の刑事が撃たれて負傷し一人残った佳子は困りました。
マリ以外にも手伝いを申し出た社員はいましたが、佳子はそれらを断りマリに、「あなた、今、銃は持っている?」と実戦経験のあるマリの助けを借りようとしました。
マリは、「ええ」と懐から銃を取り出すと佳子は、「何ですって!」とマリを睨みました。
マリは、「わっ!梅沢さん、ずるい!」と今はそんな事を考えている場合じゃないだろうと佳子の頭の固さに驚いていました。
佳子は渋い顔をして、「まあ今日の所は大目に見ましょう。」と佳子とマリでやくざ相手に銃撃戦をしていました。
マリは佳子に、「あなたって、銃の扱い下手糞ね!」と実戦経験がないと、初心者マークのドライバーと同じで丸で駄目ねと感じました。
佳子は、「私はあなたと違い、生身の人間を撃った事がないのでね。あなたって生身の人間を撃つ事に慣れているわね。」と動く標的に的確に命中していたので驚いていました。
マリは、「悪かったわね、生身の人間を撃つ事に慣れていて。でも、そのおかげで助かったんじゃないの?」と私がいなければどうなっていた事かと思っていました。
佳子は、「感心しませんけど否定できませんね。」等と雑談していると、遠くからライフルで狙撃している、やくざがいました。
マリは佳子に、「拳銃では太刀打ちできませんね。」と長細いアタッシュケースを開けると組み立て式の自動小銃が入っていました。
佳子はそれを見て驚き、「何でそんな物を持っているのよ!」とマリに確認しました。
マリは、「佳子さん、もっと現状を把握しないと駄目ですよ。今はそんな事を考えている場合じゃないでしょう。」と自動小銃を組み立てながら忠告して、それを使用して、なんとか切り抜けました。
自動小銃を使用した為に、やくざも只の警察ではないと判断して一歩引いたので、そのスキに携帯の繋がる場所まで移動して、応援を呼び、やくざを一網打尽にしました。
負傷した刑事がマリを連れて行こうとした為に、マリの事を知っている佳子が、「辞めなさい!彼女に手を出すと私達の首だけじゃ済みませんよ!署長の首もすっ飛ぶかも!下手すると警視総監の首も危ないわよ!」と警告して止めました。
マリの所属する部署の社員達は、佳子の言っていた、“殺し屋”という言葉は、最初冗談だと思っていましたが、銃を所持していた事や銃の扱いに慣れている事などから真実味を帯びて来て、佳子達刑事の会話からバックには大物がいるらしい事が解り、マリは何者なのだろうと一歩引きました。
その空気を感じたマリは、その空気を和らげようとして冗談で、「そう言えばあなた、私に殺されたいと言っていましたが、それは本当ですか?本当でしたら、今直ぐにでも殺してあげるわよ。」と銃を構えると、その社員は腰を抜かしました。
佳子は、「悪い冗談は辞めなさいよ。ほら、失禁しちゃったじゃないの!馬鹿。」と忠告しました。
マリは、「まさか、子供みたいに、お漏らしするとは思わなかったのよ。だいたい元を正せば、梅沢さんが私の事を殺し屋だなんて悪い冗談を言うからでしょう。」と反論しました。
佳子は渋々腰を抜かした社員に、「安心して。彼女は殺し屋なんかじゃないわよ。アメリカ空軍の退役軍人よ。優秀な軍人だったので空軍からは、今でも偶にお呼びが掛かっています。今回は、戦地に赴いた帰りでしたので、偶々、銃を持っていただけよ。ですのでバックにいる大物というのはアメリカ大統領です。」と説明しました。
その社員は、「何だ、そうだったのか。驚かすなよ。おかげで、漏らして笑われたじゃないか。」と女子社員に笑われて恥ずかしそうでした。
マリは、「御免ね。悪かったわね。」と謝りました。
別の社員が、「アメリカ空軍って事は、アメリカに住んでいたの?だから英語がベラベラなのか。」と納得していました。
マリは、「履歴書にはアメリカ空軍に所属していた事も記述していたので、人事課の社員は知っていると思うわよ。」と説明しました。
マリの上司は、「アメリカに住んでいた事は人事から聞いていましたが、空軍と言っても事務員だと思っていて実戦経験のある軍人だったとは知らなかったよ。」と驚きを隠せないようでした。
佳子が、「マリさん、空軍パイロットが何故、機関銃を持っているの?」と不思議そうでした。
マリは、「梅沢さん、本当に銃の事は何も知らないのね。これ機関銃ではなくて自動小銃ですよ。今回は空軍パイロットとして、軍用機を操縦して、敵陣に着陸させた後、私も陸軍兵士と自動小銃片手に銃撃戦の中を走り抜けたのでね。」と返答しました。
佳子は、「今後の犯罪捜査の為に聞いておきたいのだけれども、先程、ライフルで狙撃してくるやくざを見て、拳銃では太刀打ちできないと言っていましたが、何故なの?届かない訳じゃないわよね?」と不思議そうでした。
マリは、「命中率の問題よ。拳銃は近距離用で、あの距離ではまず当らないわよ。」とそんな事も知らないのかと呆れていました。
佳子は、「それじゃ、ライフルは長距離用?射程距離はどのくらい?」とこの際、聞いておこうと思いました。
マリは、「ライフルはそうね、二百メートル前後かしら?それ以上遠くても当らないとは限らないわ。“下手な鉄砲数撃ちゃ当る“じゃないけれども、何発も撃っていれば一発ぐらい当るかもしれませんね。」と説明しました。
佳子は、「ライフルは照準に合わせて撃つだけでしょう?何故ライフルには上手下手があるの?」と不思議そうでした。
マリは、「弾丸も風の影響で流されるのよ。その時の風力と標的までの距離を考えて、どれだけ流されるかという事なのよ。だから、雨の日や雪の日は更に難しくなるわね。警察は建物の中で、人形相手にしか射撃訓練をしないから、実戦は丸で駄目ね。」と佳子の手を握り、「まだ震えているの?」と佳子には刃物を持った犯罪者を威嚇する程度しかできないわねと感じました。
佳子は、「日本では実戦経験は必要ありません。私達が実戦のない日本にします。」と馬鹿にされたようで怒りました。
マリは、「実戦のない日本にするのはいいけれども、こんな捜査に刑事二人で来るとは何を考えているのよ。何故機動隊を出動させなかったのよ。」と疑問に感じて問い詰めました。
佳子は、「私もまさかやくざがこんな事をしているとは思わなかったのよ。やくざの目撃証言が相次いだので、何をやっているのか捜査に来ただけよ。この馬鹿がやくざに気付かれたから危機的状況になったのよ。」と隠れて調査していたが、佳子もまさかこんな事をしているとは思っていなかったようで、経験の浅い若い刑事と同行して、やくざに気付かれた為に、予想外の展開になった事を伝えました。
次回投稿予定日は、8月29日です。