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女神様へのお願い

「へぇ。そうなんですか?」

私は今、ミりス王女と他愛のない雑談をしつつ彼女の王宮へ馬車に乗って移動している。これがまた、高級そうな贅沢な作りで、下手に動くと、とんでもない事になってしまい大変な弁償がと思うあまり、身動き出来ずにカチコチである。


「じゃあ。別にバレス王子の母だからバレス・ローラであってローラが

 固有名詞ってことなのね」

私は2日目には馬車の移動にも慣れ王女と雑談交じりに名前について聞いていた。


「そうです。最後は貴族または王族の識別の様なものです」

王女は、相変わらず幼馴染が気になるのかチラチラ天井に漂うのを見ながら答えた。


「ん?」

あれ?それだと・・・同じになるよね。


「なにか?」

私の方に向き直って、王女は聞いた。


「それだと女性を産んだ場合。母親と子が同じにならない?」


私の疑問に「ああ」と言う顔をして答える。


「子が女性だった時は、名は変わりません。

 男の子の場合でも長男の名が付きます。

 私は、その・・・ちょっと特殊でして」


と視線を泳がす先にいた騎士団長が代わりに答える。


「姫右は神子であらせられるので、誰の子か判るようになっております」


「その方式って民間人も使うの?」


と言う私の声に首を傾げる王女。可愛らしいポーズで「なんのこと?」て顔をしている。

「・・・?」


やはり、横から騎士団長が答える


「使いません。多くの場合1つ名です。

 しかし、世襲制を持つ剣豪などは祖たる方の名を引き継ぎます。

 誰かが王になられますと巫女様以外は、母君の名は取り除かれます」


「なるほどね」


私は代り映えのない、窓の外を眺めてから


(ちょっと帰るから、用事があったらペンダントを握って呼んで)


戻る旅のなか、これと言ったこともなく無事に王宮に着いた私は早速重い話が待っていた。あれから3日、美香は憑依することなく過ぎている。

私はいつもの様に起きると、王女の部屋に赴いて、部屋をノックする。


コンコン。


「はい。どうぞ」


中に入ると、王女がテープルの奥に座っている。

新しいコップを用意してメイドが紅茶を入れて去っていく。

座っているのに気品を感じる物腰が、また彼女の優美さを称えていた。

こうして見るとあどけない少女にも見える。

ブロンドの髪は良く見かけるカールではなくストレート。

肩よりやや長め、瞳はブルー。肌は白く美しいと言うよりは可愛らしいが、それはまだ幼いだけで後数年もすれば美しい分類に確実に入るであろう容姿に見つめられる。


「今日は是非、巫女様から女神様の御姿について、要望があります」


きりっと口を窄めて、正面を向いた彼女はいつになく真剣な趣きで話し始めた。


「女神?」


ん?何のことだろう。女神様と言うのは


「はい。

 女神様におかれましては、この宮廷ないにおいては、

 多少目を瞑ってきましたが、やはり殿方もいらっしゃいますし」


女神様って私が巫女だよね。


「女神とは何のことですか?」


王女は下を向き、横を向き、口元に手を置いてづづっと近づいてきた。


「あのご存知ないのでしょうか?

 巫女様の後ろに、時より現れる。

 その・・・一糸纏わぬ全裸の女神様が見えるのを」


えええええーーーーーー


み、見えてたの私の姿。


「えっとですね。そ、それは王女様だけ?」


ちょっと淡い期待を抱きつつ聞いてみる。


「いえ。

 わたしくだけならまだ、よろしいのですが

 兵や宮廷内の者には風紀上ちょっと。

 できれば巫女様より女神様になんとか進言できませんか?」


ぐすっ み、見えてたんだ やっぱり

零体って普通見えないと勘違いしてたけど、異世界だし魔法あるから

見えちゃってるのかな。


「えっと。そ、それは半透明な感じですか?」


まっまじかぁー そ、そう言えば。零体で宮廷内を彷徨く時になんか兵士達の視線があれって見ないようにしてくれてたのか。ひぇーん。な、なくぞごらぁ~。

もっと早く言ってよぉぉぉぉ


「そうですね。最初はビードロ細工の様な向こうが透ける感じでした」


「ん?でした?」


「はい。

 ですので、あのお美しい身体にも、まだ、その、なんと言いますか。アレで

 最近は少しづつ。肌色になって来ておりますので

 できれば女神様には、隠す様に願いたく」


「・・・」


「いえ。

 まだクッキリとは行きませんが、最初から考えると

 時間の問題かと、思いまして

 わたくし共から直に申し上げ難いので

 何卒、巫女様から魔法的何か使って頂く様にですね」


女神効果で謎光とか、湯煙とかで隠せと!

ああ、はずい。許されるなら、転げまわりたいくらいだわ。


そりゃ、そうよね。全裸の女がフヨフヨ浮かんで通り過ぎたら、風紀問題だわ


女神じゃなくて、それも私なんだけどね。


「い、いつ頃からなのかしら?」


「昨日からだと・・・」


せ、セーフ。まだ宮廷内は、そんなに多くない。・・・筈。

村からだったら全裸女がと言うか、皆の前でボーとしたから。丸見えすぎて

と、とりあえず、セーフよ。


「・・・わ、分かりました。私から彼女には伝えておきます」


「よろしく、お願い致します」


私の部屋とされた場所に帰りながら、行き過ぎる人を確認しながら歩くと男性には会うことなく部屋に着いた。

部屋に着くと美香を呼びたし、零体のまま服が着れるか試そうとして驚いた。


(も、持てた)


数日前まで、確かにすり抜けていた筈の洋服が持てるようになっている。

それを見ていた美香が興味深そうにしながら


「ねぇ。実体化してきてない?

 そういえば、魔法が使える様になったとか言ってなかった」


(うん、こう思った物が出る感じだけど)


「じゃあさ。

 自分が洋服を着てるイメージすれば服が出来るんじゃないの?」


(え、そっか、そうだよね)


目を瞑る。洋服を着てるイメージ・・・イメージ


「んー。どんなイメージしたの。それ」


目を開けた。

モヤモヤした何かが、体に巻き付いている感じになってた。


ああああああ。失敗。


あっ、でも形はともかく、ある意味成功だよね。


「もっとハッキリ、イメージしてみさいよ。

 絵画とか見たことないの。

 女神が着ている様な白い布ドレスとか」


言われるまま、首なしの羽が生えた女神像しか思い浮かばないので、とりあえずニケだったかの「あの服」と心の中で唱える様にイメージした。


目を開ける。


(やった!なんか白い布で出来たワンピース着てるぅ~)


思わずガッツポーズをかましてどうだと、美香の方に振り向くと驚いている。


(どうしたの?)


「えっ。

 まあ。

 良いんだけど。

 羽も生えてるよ」


えええええ、私は振り返ると自分の背中からニケ像の様な白い羽が2つ生えていた。


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