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診療村

とある村、診療所とは名ばかりの只の丸ごと農村の1つと言った場所に巫女と呼ばれる少女の姿があった。


「ねぇ。ところで私たちは平気なの?」


(まあ、合併症の風邪の病原菌はあるので風邪ぐらいはうつるかもね)


「ん?それってどういう事」


洗濯物を盥のようなもので洗いながら、幼馴染の美香に聞いてみた。


(ここへ来る前に症状の軽いものに試した結果から言うと、

 ビタミン不足だしね。心配しなくても、うつらないわよ。

 病原菌による病気じゃないし、確かに体か衰弱すれば風邪はひくけどね)


「そっか」


(でも・・・、ここにいる三人の元騎士団の兵士は・・・やばいかも)


「なんで?」


(症状は確かに似ているけど、アレはヒ素とか鉛とか毒物系だと思う)


ビタミンを含むと思われる豚肉や(ヒエ)(アワ)を食事として与えても、それらしい改善が見られない処を見ると違う要因。それも伝染しないとなれば毒の可能性が高くなる。異世界にて美香が確認したのは食事と生活習慣などの違いだった。

異なる世界で、物理法則が掛け離れていてはと思ったが、その知識があるかは別として意図する結果は同じであると思われたのだ。


美香は洗濯物を干している幼馴染にだけ聞こえる念波のようなもので話し始めた。

王女の推薦を受けた知恵者との会話から、この世界にビタミンという概念は存在しないけれどもどの食べ物と、どの食べ物だけを食べつづけると病気になると言ったものはあったらしい。まだ調査中で結論すら出ていないが、知りえる者もいるかもしれないと。

そしてその何者かはビタミン不足に似た症状になる毒を使う事で目的の相手を毒殺しても流行り病と思わせようとしたのではないか?


ある意味王女は知らずに、その何者かの策略にハマったとも言える。

彼女は頑張って貧困層にも食事が回るようにした。それまで稗や粟を食べていた彼らは、そもそもこの病気になる筈はなかったからだ。食事の改善がビタミン不足を引き起こすとしても貴族を含む裕福な者達は、配給以外の食事をする。

しかし、貧困層は配給でおなかがいっぱいになれば、わざわざ他の不味い食事をする必要性を感じない。それが「脚気」と呼ばれる病気が流行り出した理由であるらしい。


「それって陰謀とか?」


(でしょうね)


「その中毒って事よね。治せるの?」


(正直わからないわ。本来なら亜鉛とかで少しづつ中和するのでしょうけど)


「駄目なの?」


(魔法があるのよ。この世界にはね)


つまり、化学反応より魔法的要素が優先される可能性があるから魔法的ヒ素とか鉛だった時に、魔法的亜鉛でなくては治せないかもしれないと言う事だった。


「私には難しい事は分からないけれど。試せば良いんじゃないの?」


(・・・そうね。亜鉛で試して次は硫黄と解毒してみて様子を見ましょう)


あらかた洗濯物を干し終わって振り返ると、ちらほらと村の中を元気に駆け回る子供達の数が増え始めている事に気がついた。

結構子供達に混じって大人も増え始めている。まだ活気あふれるとは行かないが、それでも最初の村の状態からは明らかに変わって来ている。


「巫女姉ぇ。マユ姉ぇが食事の用意ができたからって呼んで来いってさ」


「はい。今行くね。ところでギュイはもう平気なの?」


「うん」


少年は鼻に人差し指を乗せて笑い顔を見せて村の中央へと走り出した。

村の中央に位置する広間では、動けるようになった者達が食事の用意をしてる。

特にマユと言う豪快な笑い声が印象的な若いお姉さんタイプの元冒険者が数人に指図して村人達全員の食事を作っている。元と言っても冒険者としては新人でこれからと言う時に病気になって悪化して村に放り込まれた。見た時はショック状態で息も絶え絶えだった彼女は流石に助かったのは奇跡に近かった。「やっぱ贅沢は敵だね」自分が稗や粟を食べなくなったから、この病気になった事を知ると、そう呟いて礼を言われた。しばらくして、冒険者だったからか他の人よりもメキメキ回復して今では村で一番の健康人と言っても良いかもしれない。病気が治った後も村を出て行かずに巫女の手伝いをすると残ってくれた。ちょっとガサツだけど気のいい人である。


「ちゃんとしっかり食いな。これは治療薬でもあるんだからね」


子供たちのお椀におかゆをお玉で入れながら言うと、子供達はいつもの様に不味いとでも言いたげな顔はするものの早く元気になる為と頬張った。


「なあ、あんた」


マユさんから声をかけられ、振り返ると厳めしい顔の彼女が大きめの木で作らりた手作り感満載のおたまを肩に担いで立っていた。


「なにか?」


「巫女ってぇのは、魔法とかは使えないのかい」


「・・・はい。使えないというか知りません」


「覚える気あるかい。まあ、とわ言ってもあたいが教えられるのは護身程度だけどね」


(おもしろそうですね)


美香がやる気を出したおかげで、肉体の持ち主である私は半ば無理やり付き合わされる事となり、零体になった私は講義と練習の間、二人の近くで漂っていた。

この世界の魔法とは、精霊や女神などに助力を求め助けてもらう事らしい。

『何が憑依は体に悪いだ』最初の言葉なぞ、どこ吹く風の様に私の体を独占し魔法の練習を何時間もして楽しげてある。


(ああ、あっ。ひまだなぁ)


私はボーと眺める先にライオンの様な羽を生やしたものがいるのに気がついた。


(もしかして、あれが魔物って奴かな?)


なんか可愛い感じのちっちゃいのを襲っている感じなので、その気もなく弓をイメージして矢を放つふりをした。


(ドピュン。なんちって)


と舌をだして冗談感覚でいると、ピュンと手元から光の矢が飛び出すように魔物の顔に吸い込まれるように飛びだした。


(えっ)


あわや、ちっちゃい何かが襲われ絶対絶命的な時、突如飛来した光の矢が魔物の顔を吹き飛ばした。そう跡形もなく。

突然、顔がなくなった魔物は力なく横たわって絶命していた。


え~とっ、ま、魔法ってやつかな?


でも呪文とか私は唱えてないし、ふわふわ飛んでいる自分の下ではマユさんに呪文を教えてもらいながら美香が呪文を唱えているのを確認する限り・・・。

あっちが魔法だよね。たぶんだけど。だとすると、今のは?

まあ、試しにと、同じように弓をイメージして、今度は遠くに見える岩に向かって放つ。と言っても放つ気になるが正しいのだが・・・ピュンと手元から光の矢が飛び出す。

しばらくすると岩の真ん中に穴がぽっかりと開いて向こう側が見えた。


まっ まじかぁ~


下で必死に魔法呪文を唱えるも成功してない美香を高い位置から見下ろして、ごめんなんか珍しく美香より先に覚えちゃったかも。

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