小さな妖精の国 6 ≪美香の考察≫
ミリス王女の優しい笑顔が、全員を出迎えた。
レオンはミリス王女に向かって、今回の獣人誘拐事件からエルフ族への迷惑と
その共通の原因がドワーフ族であった事、そこから帰路についたものの森を
抜けると見知らぬ土地と種族だった事や、それが妖精の国だったので妖精の女王に
挨拶する為に城に向かったらインキュバスと戦いになり、道案内のウィルが窮地に
追い込まれて美香が現れてうまく行って帰ってきたと告げた。
「なるほど、それはご苦労様でした。
お疲れでしょうから、今日はこの辺で、ゆっくりとお休み下さい」
「「「はい」」」
ミリス王女は、『薔薇の妖精事件』の時にウィルに与えた部屋とは別に
アルヴィの為の部屋を用意しようとすると、彼女に断られた。
ウィルは困った顔はしたものの、彼女の言い分に、ため息交じりに承諾した。
つまるところ、現在ウィルとアルヴィは同じ部屋に入った。
「あたいは寝るわ」
マユ姉はレナに肩を掴まれて「お風呂です」と言われて「ああ、はいはい」と
背中を押されて行く。
「それも良いですね。皆で入りましょう」
ミリス王女に誘われて、私と美香、それにアルヴィを連れてミリス宮殿内の
大浴場へと向かって歩いた。
その後ろでルークの首にレオンの両手剣とパシェロの槍が交差していた。
「「どこへ行く気だ」」
二人の声が聞こえた。
「な、なんのことでしょう」
ルークは殺気を感じて振り返ると、ガナシュが斧を振りかぶっていた。
「ちょっ、それ洒落にならないっす」
ルークはレオン、パシェロに両腕をがっしりと抑えられて連行されて行った。
「まだ、何もしてないのに、む、無実だぁ~」
隠密を得意とするルークは、何時までも無実を主張しミリス宮殿の外へと
消えて行った。
大浴場内では、サイズ的に幼女に分類されるアルヴィを、これまたサイズ的に
幼女に分類される美香が体を洗っていた。
お姉さんに任せなさい的な感じでいるのだが、傍目からは幼女2人泡だらけで
戯れている姿にしか見えない。
ん?、美香達の方に大人の女性の裸体が2人見えた気がして私は目をこする。
さらに見直すと、やはり幼女2人だけだった。
「大きいですね」
「そうですか?」
「うらやましいですぅ~」
彼女に言われてマユ姉が困っていた。
なんか時々私の知っているレナさんじゃない気がする。
「あたいより、おまえの方が大きいだろ」
「何の話ですか?」
「むねだむね」
「そんなのは、どうでもいいですぅ~、身長が欲しい」
「そういえば、レナは獣人にしては小さいですね」
「そうなんです。今回、実感しちゃいました」
そう言えば、助けた獣人ってやけにがっちりしてて背も高かったなと
ドワーフ事件の時の事を思い出した。
そこに美香達が入ってきた。
「うらやまです」
レナに美香が賛成した。「ねぇー」と横のアルヴィにも振る。
「わ、私はもっと小さい方が・・・」
肌黒の彼女の顔がさらに黒くなる。
彼女にニヤニヤ顔の美香が『ははぁーん』的な素振りで
「あなた、もっと成長すると背は、どれくらいになるの」
「えっ、平均的にはちょっとだけ伸びます」
「どれくらい」
「あと2、3センチくらい」
ミリスまで何やら意味深な顔つきになった。
「それは乙女としては気になりますね」
そこへレナが「なになに何の話なの」と突っ込みを入れてくる。
わいわいとした会話が続き、そろそろとマユ姉が出ると皆も出る事にした。
そして私は美香と2人で部屋に戻ると、ベットへとダイブした。
「疲れたぁ~」
そういう、私に美香はニコッと笑う。
「今回、おもしろい事がわかったわ」
「えっ、なになに」
「アルヴィって子いたでしょ」
「ええ」
「あの子の血液は黒いのよ」
「ん?」
「しかも、薄くのばしても赤みは無くて加熱すると白くなるの」
「ふーん。それって別の種族って事?」
「ダークエルフって事らしいけど、エルフは銅族に分類されるから別物ね」
「黒か、なんだろうね」
「酸化した状態が黒。加熱すると白と言えば、たぶん銀でしょうね」
「銀の種族って事」
「銀族、銅族、鉄族がいるって事よ」
「じゃあ金の種族もいるのかな」
あっ、ものすごーい、馬鹿にした顔してるぅ~。どうせ馬鹿ですよ。
「あんたね、金が簡単に酸化するとでも思っているの?」
「しないの?」
「しないわよ。条件が揃わないと・・・あっでも、そうね」
「するの?」
「酸素とは言い難いけど、オゾンと紫外線が大量に在れば酸化金になるかも。
もしくは地球の千倍の重力とかで高気圧の環境なら・・・ああでも、それだと」
何か、美香は布団に包るように転げまわりながら、ブツブツ・・・と考え始めた。
ガバッ
「生物として無理ね」
「わっ!びっくりした。何の話?」
「銀を元にしてるからヘモクロニンだったりして」
「なにそれ」
「血中の黒血球の名前がヘモクロニンとかねって事よ」
「素朴な質問だけど銀て酸化するの?錆びないって聞いたことあるけど」
「まあ、簡単に言うと銀を酸化&還元するには温度が必要ね」
「ふーん」
「アルヴィってあったかいのよ。おそらく体温が私達より高いのね。
たぶん、気圧の低いところでは生きられないと思う。
あと酸化銀イオンは感光性があるって事よ。
つまり、日に当たるのは、なるべくなら避けないといけない。
これって丁度ぴったりじゃない」
「なにが?」
「・・・」
仮に酸素を運ぶ為に選ばれた金属が鉄な私達は鉄血種と呼ぶことにして
銅だったら、銅血種。銀だったら、銀血種とするじゃない。
銀血種は特性から明るいところが苦手、酸化銀が感光性を持つから。
そして血の色は白~黒の範囲で黒い方が酸化が高い。
銅血種はその性質から銅イオン2つで1酸素を運ぶことが出来る。
つまり同数の酸素を運ぶ為には2倍の銅がいる。
原子量から換算するとざっくり、銀100、銅65、鉄55 となり銅は2倍いるので
銀100、銅130、鉄55 と考えられる。
結論として、同体形同サイズなら銅血種は一番重い。次は銀、鉄は銀の6割程度。
銅血種から見て鉄血種は体重が半分、鉄血種から見たら2倍以上重い事になる。
これは、同量の酸素を必要とした行動をとると想定した場合。
銀血種は体の重さがあり、他の血種より大きく成れずに小型化する。
銅血種は運動をなるべくしない、酸素を必要としない進化をとげる。
ドワーフの様に穴を掘り採掘などするものは酸素を必要とする場合のみ
2倍の銅が必要になる事で、銀血種より重く小型化する。
エルフの様に木の下で酸素が十分にとれる場所なら人と同程度。
そこまで考えると、巨人族は鉄血種の可能性が高い。銀血種からみて6割しかない
巨人族は、4割増しになる。1.8メートルとして2.5メートルになる。
2メートルの人がいるように3メートルの巨人が存在してもおかしくない。
150センチの人から見て、3メートルは十分巨人として認識できる。
「どう、分かった?」
「でも巨人て緑色らしいじゃない」
「鉄血種でも、クロロクルオリン系なら緑でもおかしくないし、
血中にバナジュームを含むと、やはり緑よ」
「それバナジューム血種ってこと?」
「昔はそう思われてたけど、今は鉄血種で別の意味でバナジュームをもつ
と言う感じかな。私達も皮膚や髪に銅を含むしね。でも血の中に一緒に
流れているって事じゃないけどね」
「ふーん」
私達は、そんなことを話しながらいつの間にか眠ってしまった。
次の朝、美香に怒られたのは言うまでもない。
朝食は、レナが運んでくれた紅茶とパン。とろけるチーズとハムが
のっかっている4つ切り程度の厚さ。とレタスのサラダにはマッシュポテト
個人的にはマヨネーズが欲しいところである。
椅子を引きちょこんと座って食べてる美香を見ると、まるで子供だ。
お姉さんになった気分で彼是と世話を焼いていると
「ひとりで出来るから、沙依里も食べなよ」
「うふふ。そうだね」
紅茶がおいしい。なぜか久しぶりな気になる。移動中もけっこうレナが
出してくれていたんだけど、こうしてゆっくり飲むとなんかね。
窓の外を見てふと昨日の言葉を思い出す。
「ねぇ。町に日傘でも買いに行かない」
「そうね。アルヴィちゃんのでしょ」
「うん。まあ気休めかもだけど。プレゼントしようかと思って」
「まさか昼間は部屋の中って訳にもいかないしね」
こうして朝食を終える頃にレナが食器を片づけに来たので誘って
マユ姉も一緒に4人で町に出かけた。
日傘っていうものがあるかレナに聞く。
「そうですね。日差しを遮ると言う意味ならありますよ」
「こっちは日傘とは言わないの?」
「いえ、もしかしたら異世界では別の意味かもしれないので確認です」
「あたいは、そんな上品なもの使った事ないけどね」
「マユ姉は防御高いから紫外線もブロックしちゃうとか」
「あちらにある茶色の屋根の店見えます」
レナが指さした、50メートルくらい先にお店が見えた。
ぞろぞろと目的地へ向かう4人。
「これ可愛い」
「こちも良くない」
「これなんて持ちやすそう」
「これはデザインがちょっとね」
「デカい方が良かないか」
「それは大丈夫、実際は魔法アイテムだから」
「なるほどね」
「これなんてどう」
とりあえず、美香に持たせて雰囲気を確かめる事に彼女が気がついた。
「なんで全部、私に持たせるの?」
「まっいいじゃない巫女っち」
「雰囲気の確認ですよぉ~」
このマジックアイテム、なんと持っているだけで開かなくても99%カット
なんて言うのを見つけた私は皆に聞いてみた。
「これ、すごくないですか。開かなくてもいいそうですよ」
「おお、すごい」
「あれでしょ。お値段も高いんでしょう」
「それがなんと・・・」
「なんとぉ~」
結局、その後も、いろいろ見た結果、機能重視でこの日傘に決定した。




