小さな妖精の国 5 ≪ミリス宮殿への帰還≫
深刻な顔で今後の対策を考えている最中、突然、美香が現れた。
「はぁ~い。元気してた?」
なぜ、ここに美香がって思っていると心を読んだのか
「沙依里を迎えに来たんだけど、なんか宮殿に居なかったから
ミリスに聞いたら今行方が、分からないっ言うので
こまったなと思ってたら、薔薇の妖精事件が起こってさ。
このウィルに話を聞いたら、あんた達と一緒だったらしいし
お迎えついでに、そっちも片づけて来たのよ」
と左右にいるウィルと、少女の肩にそれぞれ腕を乗せて
わらう幼女の美香が自慢げに話した。
体長50センチくらいのウィルと少女だけに、まあお姉さんと言えなくもない
身長差はあるけど・・・。
「こちらの方は?」
女王ターニアが、美香達を指さしてレオンに聞いている。
ウィルは知っているから、たぶん美香と少女の事だろうけど。
「えっと・・・失礼」
そう言って、女王に頭を下げて美香にレオンは向き直った。
「美香殿、失礼ですが、そちらの方は?」
レオンの視線に少女は自ら前にでる。
「わたしは、『南の闇の森』スバルト族のアルヴィです」
それから、簡素な自己紹介後、美香は事情をみんなに説明しだした。
魔物に生贄にされ村の外の小屋で死を待つ、アルヴィを助ける為にウィルは
零体になっている状態で天界に行き、巨人が住む人界へ行く事になり
薔薇園に突然現れた彼を薔薇の妖精だと信じた、園内の世話係の話が広まり
『薔薇の妖精事件』で知り合った美香が、ウィルの願いを聞き、その少女を
救いに来た。その時、当然、ウィルはレオン達や女王ターニアの事を美香に
話していたので、見捨てておけないし、私の迎えに行くついでに助けたら
命の恩人として、少女がウィルに付いてきたらしい。
「まあ、と言う訳で、ウィルを何とかするから手伝って」
「う・・・うん。それはいいけど。どうするの?」
「まず、彼の周り毎、時間を止める」
「うん。それで」
「そこで、あなたの出番」
「え、わたし?」
「呪いだけを、この壺に転送して」
と、どこかで見たことがある。壺を手渡された。
「こっからレナちゃんの出番ね」
「はい。私は何をすればいいのでしょうか?」
「時間を止めていられるのは10秒くらいなので、切れるタイミングで
ウィル本体の心臓へ全力で回復呪文をかましてほしいの」
「了解しました」
「そしたら、ウィル」
「ん、俺?」
「そこで体に戻って」
「ああ」
「たぶん、心臓停止してるから、指示したらマユ姉。人工呼吸お願い」
「えっあたいは、そんなのした事ないよ」
「私はレナちゃんの呪文のタイミングに合せて少し遅れて
電撃魔法をかけるわ」
「ああ、アレか」
私は、お医者さんが、バイタルがどうのこうので心拍停止したときの
ドラマでよく見る。電気ショックを思い出していた。
それから、床に寝かせたウィル本体を中心に1メートルくらいの
半球型のドームが出来上がる。
「急いで、沙依里」
私は壺を握り、意識を集中させて「転送」と唱えた。
それを見ていた女王がびっくりした顔になった。
「よし成功ね。時間停止解除まで4秒」
「3秒」
「2秒」
「1秒」
「いま」
レナの「治癒大」の声が響き渡る。
緊張しているのか、かなりの大声だった。
「彼の者の鼓動を再び呼び起せ、体外式除細動」
その呪文に追随する様に美香が唱えた。
マユ姉は、指示も待たずにウィルの心臓に耳を当てる。
「ダメだ」
「はなれて、彼の者の鼓動を再び呼び起せ、体外式除細動」
再びウィルの心臓に耳を当て、今度は胸に手を当てて押す放すを繰り返す。
「ぐはっ」
ウィルの声があがる。
「そんなに強く押された、つぶれて死んじゃいますよ」
「おどろきです。蘇生魔法をかけてから助けるとは・・・」
女王ターニアは、普通、治療魔法で、助からなければ、それで終わりだと
死が訪れるまでの時間で何かする事で蘇生すら可能だとは信じられないと
美香を見て言った。それに私を見て、呪いを移動できるのも異常だと続けた。
まあ・・・現代医療の考え方を真似た魔法というのは、魔法だけに頼った
世界では、ある意味。私達が見る魔法みたいなものかもしれない。
あっでもタネがあるから、マジックの方かな?
「御生還おめでとう御座います。マイ・マスター」
無事生還したウィルにアルヴィが歩み寄りよる。
「えっ、それ俺の事?」
「はい。マイ・マスター」
二人並ぶと、少しウィルの方が背が低いので姉と弟の様にも見える。
零体の時は、同じ位だったのに実態になるとウィルは妖精サイズだった。
「じゃ。そろそろ帰るから異間門を開くね」
美香は何事も無いように、私達に声をかけて来た。
「我が帰還の扉を開け、異間門召喚」
人が1人通れる様な小型の凱旋門の様なものが現れた。
見慣れたあの異間門とは、ちょっとだけ違っているのは気のせいかもしれない。
「女王様。では、私達は此れで失礼させていただきます」
レオンが女王に一礼してから、門へと向かう。
「じゃねぇ」
マユ姉はウィル達の方に手を振った。
帰れる。この時、みんな思いは1つになっていたと思う。
レオンの後に続く皆。抜けると門は何時もの場所ではなく、薔薇園の中央に
私達を運んでいた。
「ここに出るんだ」
私がそういうと皆、口々に「ああ、久しぶり~」「風呂に入りたいですぅ」と
銘銘に声をあげて帰還を喜んだ。
「ああ、ここですか。思い出すねぇ~」
「私は、初めてです」
と、私の後方。正確には下から声が聞こえて来た。思わず振り向く。
「え、えぇぇぇぇぇ」
「どうした?」
私の声に全員振り向いた。そこには、ウィルとアルヴィが当然の様に私の左右に
並んで立っていた。
「連れてきちゃったの?」
美香があきれ顔で、私に問いかける。
わ、わたしぃ~、これって私のせいなの。違うわよね。皆違うわよ。
そんな目で見ないで、私だって驚いてたでしよう。
「いやいや、俺が勝手についてきただけだよ」
「マスターの行く所が、私の行く所ですので」
「まずは、ミリス殿に報告が先かな」
レオンの一言で一同は、ミリス宮殿へと向かった。




