ハンバーグと私
「ん~」
私は生卵の10個パックが山積みになったスーパーで値段を見比べていた。
すぐ使うのはS2個だけなんだけど、L1個でもいいかもしれない。
Sだと10個パックが108円。L6個で210円。M10個が226円
今日の献立は、久しぶりにハンバーグを作ろうと帰りに店に寄ったところ。
「うん」
私は結局、M10個パックの226円にしてカゴに入れた。
バン粉は開けた後にジッブが付いたものにして、肉コーナーに移動した。
2人だから牛豚合い挽き250グラムの280円を選ぶ。
横にあるサービスの牛脂を10個くらいもらってと。
レジで500円と5円と1円を支払って店をでる。
家に帰ると、まず手を洗って
玉ねぎを細かく刻む、牛脂を1つフライパンに乗せて
軽く火を通して飴色になる程度で、ボールに移して
水を40㏄入れて、牛乳を大サジ3杯。
熱が取れたら、ひき肉とパン粉を一握り程度入れて
混ぜて合わせたら、生卵を1つ入れる。
さらに混ぜて軽く粘りが出たところで
牛脂を2つ用意して、手のひらで平たくつぶしてから
ホールのお肉を半分取って牛脂を包むように閉じて丸めて
ハンバーグらしい形を作る。
それを2つ作ったらフライパンに牛脂を4つ入れて弱火で温める
牛脂が溶け出したら、強火にしてハンバーグを2つ並べて
横から見てサイドの色が変わったら中火にして
ハンバーグをひっくり返して色を見てから
弱火にして蓋をして5~6分。
「お父さ~ん。そろそろできるよ」
「おお」
焼きあがったハンバーグに大根降ろしを乗せて
醤油、あとちょっとだけ昆布だしを混ぜて軽く
フライパンであぶったものを大根降ろし上からかけて完成。
サラダとみそ汁。それに、ご飯をお父さんが片づけて
くれたテーブルに、のせていく。
私は、手早く使った包丁を洗うと火であぶってから
戻って来ると、お父さんが待っててくれていた。
「「頂きます」」
「今日は、なんか良いことでもあったのか」
「え・・・べつに」
「そっか」
我が家では食事中もテレビは付けたままにしてある
2人ともテレビを見る事はなくても寂しいから
会話が途切れた時に、2人きりの食卓は
突然訪れた静けさが、なぜか寂しい。
いつしか食事中は必ずテレビを付けておくのが
決まりみたいなものになった。
こうして黙ってしまった時も、人の声が途切れず
流れてくる。
「あのね。今日ね・・・」
私は桜の花がとても綺麗だった事を話した。
「おお、そっかもう、そんな季節なんだな」
父も私も考えている事は同じだと思う。
でも、二人とも、それは口にせずに会話を続けた。
母の命日。もうすぐだね。
言葉にならない、言葉を父と交わして
(私は今日、母に会った気がするんだ)
食事の後片づけを済ませながら、一緒にフライパンに火をかける
固まっていた牛脂が解けていく。
ボウルに、キッチンペイパーを広げて油を流し込む。
食器に洗剤を含ませたスポンジで洗ってから
乾燥台にのせて、フライパンに水を入れてスポンジで軽く
汚れを落として水で流して吊るすと、もう油が固まり始めていた。
キッチンペイパーを丸めて可燃ごみへ捨てる。
私は明日の朝の献立を、冷蔵庫の中身を確認して考えながら
部屋に戻り、お風呂に向かって歩く。
我が家は、私が最初と父が決めてからずっと一番風呂は私。
ちょっと困るときもあるけど、父にそれを言う気になれなくて
気にしない事にしてる。
お風呂場の格子窓から沙依里の家の母屋の明かりが見える
ここから一番手前の明かりがついていない部屋が
沙依里の部屋だった筈が、今は私を預かって泊まりに行った
時の為にある部屋で、中の物はすべて私の物という事になっている。
湯船の中で、手を伸ばして「ん~」と唸って
「でよ」
浴室を出て用意してあったバスタオルを体に巻いて
髪にタオルを巻き付ける様にして包み込むと自分の部屋へと歩き出す
途中、明かりのついた茶の間に向かって
「でたよ」
「おお」
部屋に戻ってから、髪を梳かしながらブローを当て乾かす。
誰も気がつかないが、髪が伸びていた。
けっこう乾かすのに時間がかかる。
乾く前に寝ちゃうと、明日が大変だからね。
いっそ、魔法で
んー、乾かすには火?なんか痛みそう・・・水よねやっぱり
「水の精霊よ。我が濡れた髪を乾かせ」
なんちゃって
その時
私の髪から水玉が飛出して霧となって消えた。
で、できちゃった
「やばいんですけど・・・これ、やばすぎ」
私の脳裏に、にこやかに微笑む今は亡き母の顔が浮かんで消えた。
「えぇ~、それで、ど、どうしろというのぉ~」




