光のエルフと闇のエルフ 5 ≪クリスタル・ワールド≫
「巫女っち、あたい等には目的がある」
「例え、それが義に反しようとも私も引く訳にはいきません」
悩む巫女に、マユ姉とレナが続く、迫る敵
「そ、それでもわたしは・・・」
「助けたいか?」
レオンは美香の横に立ち、迫るオークを見つめながら聞く。
「は、はい」
「ならば、しかたないか」
剣をくるりと逆手に持ち、刃を背にしてレオンはオークへと走った。
後を追う、パシェロも槍先を後方に変える。
ガナシュも斧を巫女に預けて、後を追う。
「しゃあない。あたいも」
マユ姉は盾を構えるが腰の剣は、そのままに・・・
「作戦が在ります」
美香は私とレナに真剣な眼差しでそう告げた。
「言ってみな。その作戦ての」
「まず、レナさんは、治癒魔法を相手に全力でお願いします」
「彼らは病に掛かっている病人です。
病人なら治療できるかもしれません。
沙依里は、出来たら太陽の光を作れない?」
美香が私の方を向いて告げた言葉に私は硬直してた
えっ、それ私の名前?思い出せなかった
私の中のピースがはまった感じがして
『さよりぃ~、朝ごはんですよ。
いつまで寝てるの。
早く起きて、ちゃんと食べないとダメよ』
忙しそうに、毎朝いつもの様に繰り返された日常が頭の中でリフレーンする。
そっか私ちゃんと名前あったんだ。
「ポーションでもいいのかな?」
マユ姉の言葉に、美香が「それは、取っておいてください」と返事を返している。
レオンが、ルークが、パシェロが、ガナシュが、それぞれオークの気を引きマユ姉が
盾でカバーしつつ、レナが治療魔法をオークへ叩き込む。
私は太陽を作る事を考え、すぐに改めた、こんなとこに太陽なんて作ったら
光だけではなく灼熱地獄になってしまう。
なにか、なにか
ふと、光ならと私は翼を広げて洞窟の天井へと飛ぶ。
天井に手をあてる。
「クリスタルに変われ」
洞窟の天井に私はありったけの思いを込めてそう叫んだ
頭上の洞窟の上の大地毎、私の位置より上にある生物以外のすべてが、
クリスタルへと変わる。
それと共に太陽の光がクリスタルを通って闇の世界、洞窟も暗黒都市さえも
光に包まれるように明るくなった。
暗黒都市の真上は、山であり洞窟も言うなれば鉱山である。その山の中腹に
位置する場所が、形はそのままにクリスタルに変わったのだ。
透明な物質に大地の鉱物がきれいにクリスタルと別れた部分はどうなっているか
すこし考えればお分かりだろう、そう鏡である。
丸く鏡で覆われた筒の様な状態に、クリスタル部分は太陽の光を吸収し鏡は
その光を逃がすことなく下降の暗黒都市や洞窟内部へと届けられた。
そして力尽きた、レオン、マユ姉、レナ、ルーク、パシェロ、ガナシュ
総勢6名の横たわる姿があった。マユ姉は座り込み、レナは魔法詠唱で
声が掠れ出なくなるまで頑張った。
美香もトレントの白幣さえ持つのが辛そうに両腕を下に垂らしたまま
最後のオークだった者へ何かしていた。
オークだった者の姿は、丸太のような腕も足も何一つ、その面影は
残っていなかった。
エルフの男性。そうあの黒っぽい青緑の肌はすでに太陽の光の下で
透き通るような白い肌に見えた。
「これで解毒が済んだわ」
美香は、このオーク達は無理やり連れてこられた後、鉱山での重労働に
体力が衰え、硬皮病になり鉱物の粒子が鉱山病を引き起こした結果だと
思うと言った。そしてこの鉱山はおそらく銅鉱山だとも言った。
硬皮病に関しては、ウイルスではないかという事だった。
元の世界にも似たような症状を起こす寄生虫がいたらしい。
水ぶくれを引き起こし、やがて慢性化すると皮膚が硬質化する。
だから、殺菌の為に太陽光が欲しいと言ったのだそうだ。
どのみち、例え違っていたとしても他の要因として太陽光は良くは
あっても悪く成る事は無いだろうとの判断からだ。
「それにしても、これはどうなんでしょうか」
ガナシュの視線にあるのは背の低いオーク達を治癒した結果だった。
同じように丸太の様に太った体だった代わりに現れたのは、毛むくじゃらの
150センチもない小柄な男性に見えた。
オークだった時、見ればオークの子供だと思っただろう。
しかし、今は明らかにエルフとは別物の様な気がする。
顔が大人の雰囲気を醸し出しているのだ。子供っぽいならエルフの子供かと
思ったりもしたけど、体格を抜けば、成人同士並べても結構似ている。
「これ病気で捨てられたドワーフなんですかね」
パシェロが目を片方だけ釣り上げてポーズ気味に言う。
「とりあえず、眠りの魔法が解ける前に拘束するわよ」
そう言って美香は土魔法で6畳ほどの正方形の土壁に囲まれた箱を作りだす。
ただ前面の部分だけは何もないもの。
そこに、治療がおわったオークだった者を入れてやはり土魔法で棒状のもの
を等間隔に作り出した。
「でもこれ簡単に壊れると思うけど」
と私が言うと
「何言ってるの。仕上げはあなたの仕事よ」
と言われた。
「壁は石にして、この部分は鉄格子ね」
「あっそういうこと」
私は、その壁に触れて「石変換」と唱え、格子に触れて「鉄変換」と唱えた。
「先に急ぎましょう」
美香の言葉で、みんなすでに明るくなった先に人工物らしきものが立ち並ぶ
暗黒とはもう呼べない明るい都市へ向かった。
可愛らしいゴスロリファッションに身を包んだ美香が、当たり前の様に
ガナシュの前に立つと、それを片手で抱え上げた。
「さあ、本番はこれからよ」
まあ、この世界にはМPなんてものは無いし、在ってもそれは実際に
魔法を使う精霊の方に設定されているんだと思うけど、声だすだけと
言えば、それだけの美香に体力的な疲れは無く、殺さずに応戦してた
ガナシュの肩に手を乗せて当然の様に座る後ろ姿を見て
内心『ご苦労様です』と思ったのは私だけだったのだろうか?
既に見通しが良くなった、暗黒世界は輝くクリスタル世界になっていたので
行く先に迷う事無く、私達は目的の場所へと歩を進めていった。




