露天風呂
ぽちょん。お湯が跳ねる。
自分たちで作った露天風呂に私達は入っていた。
「ねえ。美香」
ぴょこっと、後ろを向いていた幼女の姿の美香『なあに?』という顔で振り向いた。
「ベリーとバナなんとか、解んなかったんだけどさ」
「あなたが言うと果物に聞こえるわね」
残念そうな顔した美香がいう。
「銅に宝石混ぜて溶かすの?」
私は宝石が金属に溶けるイメージが沸かない。
「あれは成分の話よ」
人工露天風呂の中を私の方へ歩いて近づてくる
「オリハルコン精製に必要な材料、そうね設計図のヒントみたいな
ベリリウムっていうのは、金属に混ぜて特定の温度を維持すると
金属結晶を内部に作る性質があってね。
それを均等に配列する様に・・・」
完全についていけてない私の反応に美香は言葉を止める。
「ふぅ~、わかったわ、もっと簡単に言うわね」
ため息しながら、なんか諦めた感じに説明する。
「ベリリウムを混ぜると硬くなるの」
指を1つ立てていう。
「クロムを混ぜると錆び難くなる」
指を2つ立てていう。
「バナジウムを混ぜると硬くなる時に粘り強さを失わないように出来るわ」
指を3つ立てていう。
「金属の強さって、実は大まかに2つあるのよ。
一つは、叩かれても曲がらない硬さ。
強度が増せば、実は脆くなるの。
その金属のもつ強度以上の力を与えれば、あっさり割れる。
逆に曲がり易いものは、その強度以上の力を与えても曲がるだけで
割れたりしないわ」
そして、私の横に座った。
私たちの話を、マユ姉は苦笑気味に聞きながら外を警戒していた。
お湯に浸かりながら、常に傍らに盾と剣を置いて何気ないように
左手はその近くに置いてある。
「もっと言えば、人が厚さ3センチのコンクリートを殴っても
まず、壊せない。
でも鉄球を投げつけたら簡単に壊せるわ。
そして、仮にコンクリートをゴム板に変えたら
人が投げた鉄球では壊せなくなる」
レナが、そこで口を挟んだ。
「コンクリートと言うのは、それも金属の名前ですか」
ん?という感じにレナを見た美香はちょっと首を傾げてから
「人工的に岩や石を作った感じかな。砂を固めたものと言ってもいいわ」
「それってゴムとコンクリを混ぜる感じ」
「んーそうね。性質と言う意味ではそう。
まず、棒状の金属を縦に並べてゴムを周りに流し込む。
そうすると金属の硬さと、ゴムの柔軟性は取り入れられるけど
衝撃を受けた時、そのままだと金属が抜けてしまう。
そこで、網のようなもを張り、金属と癒着させた上でゴムで固める。
みたいな感じかな」
両手を交互に握って見せる。
「厳密には、それには焼き入れと焼き戻しが関係してくるけど
金属によって、最適な温度とかね。
例えばクロムを混ぜると錆び難いと説明したけど
実はクロムは酸化しやすく被膜を作ってくれる。
膜で覆う感じ、だから均等に配置できないと、膜が出来ないところが
あったりすると、そこから錆びが広がってしまう。
けっこう複雑なのよ。合金を作るのってね。
でも、たぶん、この世界は、魔法があるから、その複雑さは
無くなるんしゃないかと思ったのよ」
それぞれ違う性質のものを混ぜるには何度以上にしてはダメだけど
ある一定より低い温度だと成功しないとかいう事らしい。
「材料だけ集めて混ざれって魔法使うだけでインゴット完了みたいな」
「巫女っちて、なんか物知りだよね」
「ふふふ。体は子供、頭は高校生。その名は美香なんちって」
自虐ネタなんだろうけど、それ意味わかる人、たぶん私しかいないよ。
ザザザッ
「古の定めに応じて。我、汝らに問う。
なぜ、その者を連れて我が領地に入ったか」
奥の木々に隠れて、姿は見えないが複数。
私は走っていた。突然の奇襲を受け、着るものもそこらに捨てたまま。
といっても能力で服位出せるのだが、今は止まって能力を使う時間が惜しい。
最初に気がついたのは、マユ姉だった。
行き成り全裸のまま、すぐ横に常に置いてある盾を木々の方に向けながら
ゆっくりと、剣を腰を下ろしてお湯がマユ姉の腰下を隠す。
後ろからでは見えないが、マユ姉からピリピリとした緊張が伝わる。
レナが全身のお湯を身震いで飛ばして服に手を伸ばすと手にナイフを持って引き抜く。
美香は全裸で岩に上り、胸のペンダントに手を添えるとトレントの白幣が現れる。
「我が姿を本来の姿に戻せ」
お湯が彼女の言葉で吸い寄せられるように、周りをまわりだして
体が成長を始める。そして高校生らしい体になるとブレザー服を着た美香になった。
「だれ」
木々の向こうにいる何者かに美香は声をかけた。
それを見届けてレナがメイド服を下着も付けずに羽織る。
彼女にとっての武器庫でもある、それは戦闘服なのである。
私はと言うと咄嗟の事で一番反応が遅れた。
岩場の下の皆に知らせる為に走っているところ、迂回せずに飛べば良かったと
思うのは、着いてからだった。
「レオンさん」
声をかけるとレオンさん達は一斉に横を向く。
「女神殿、出来れば服を・・・」
「て、てき?」
ルークの目が開く、パシェロが岩場に向かっていく、ガナシュが斧を片手に
私が来た道を登っていく。
パシェロがまるで棒高跳びの選手の様に槍尻を地面に付けて飛ぶ
美香の後方へと一気に登っていく様を見て、私も行かなきゃと思った。
矢筒から黒い短剣を引き抜く。わたしの背の翼が大きく羽を広げて
「ちょっと、確認しましょう」
今まで木々に姿を隠していた者達が姿を現す。
彼女らは・・・そう彼女である。
金色の髪、長くとがった耳、すらりと長い脚。
一人を除いて、すべての者が弓に矢をつがいながらも
斜めにして、いったん射出線上を逸らすかたちになる。
中央の一人だけは、白金に輝く髪飾りと鎧を身にまとっていた。
腰には細いレイピア左のガントレットが流水形になっていることから
ガントレットと小盾が一体となっている作りなのだろう。
「奇妙な服の者、翼を持つ者、豹の様な者。それと人族か、変わった者達よ」
「ん?」
白金の髪飾りを付けた者は、様子を伺ってから続ける。
「それを連れて、来る意味は分かっておろうな」
そんな事突然言われても知らないわよ。だいち、それってなによ、それって。
「それ?」
パシェロの疑問の顔を浮かべる。
「やはりな」
すっと彼女の細い指先が、崖下にいるレオンと少年の方を指さす。
「大方その忌々しいドワーフに、騙されてここに来たのであろう。愚か者め」
「あの少年が、ドワーフ?」
「少年?あははは、少年なものか!
あれでドワーフは、とっくに成人を迎えておるわ」
誰か読んでるんだろうか?
もしも読まれている方がいましたら、ありがとうございます。




