Wednesday
小さい頃ってさ、男の子も、女の子も、関係なく遊んだりしたよね?
特に田舎に住んでいた私の地元なんかがいい例。夕暮れて、道すらみえないくらい真っ暗になるまであぜ道を走り回ったり。林で、虫を取ったり、川で泳いだり。
特に私は、そんな中で出会う生き物達が大好きだった。蝶は一羽一羽模様が違って。鱗粉が艶めく様は綺麗だし羽ばたく動きも優雅、木の虚を出入りする働き者な蟻たちにちょこっとおやつあげたりしたし、フナを釣って飼ったりしてたし...............
だから、こっちに越してきてびっくりした。
女の子は女の子としか、男の子は男の子としか遊んでいなかったから。
でも、私が一番慣れなかったのは..................「偏見」だ。
「何か言ったらどうなのよ、ゴキブリ女」
「気持ち悪いんだけど!近づかないでくれない!?」
「うわ!きったね、──菌がうつるぜ!」
「──さん、どうしてこんな事をしたの。先生が嫌いなのは分かるけど...............」
皆、生き物が嫌いだった。鳩やフナですら「気持ち悪い」「怖い」と囃すし、虫に至っては見ただけで叫んで逃げ出し、挙げ句の果てに殺してしまう。
そんな疎まれた生き物たちを見るのが、たまらなく辛かった。
成長して、私は高校生になった。
そこは、私にとって地獄だった。
勉強、勉強と学歴を押しつけてくる学校。「いいじゃない」なんて無責任な父母。そして、「生き物嫌いな人間達」。
「ね、ふーちゃん。君は全く悪くないのにねぇ?」
「みゃあ?」
ネズミの形の鈴入りマスコットをちりちりと鳴らしてやると、気だるげながらも一応、腕をひょいひょいと伸ばして答えてくれる。
私の唯一の話し相手が、このふーちゃん............もとい、雑種のトラ猫である。茶色い毛に黒のしましま、綺麗な黄色い目。
学校の裏に捨てられていたのを引き取ったのだ。
「あ、こーら。おやつはさっき食べたでしょ」
不服そうに膝の上からじっとこちらを見るので、ピクニックバスケットにふーちゃんをひょいと放り込んでしまう。
ぼすっ、ぼすっ、と暴れるけど、飽きたのか、ずしっと籠が重くなった。寝ちゃったのかな。
公園から出て、大通りの人間達の合間をすり抜けて。スクランブル交差点の赤信号を、ぼーっと待つ。
はず、だったのに。
ふぃ、とバスケットが軽くなる。目の前を、何やら虫が過ぎった。
「ふーちゃん、危な.....................っ」
それは、今までで聞いたことの無い音だった。
例えるならそう、トタン壁にドッジボールがぶつかってしまったような音。ドスン、と。
けたたましい音のデコトラに、弾き飛ばされる、茶色毛の猫。
世界から、色が消えた。
音が、消えた。
温度が消えた。
すると明暗だけになった世界の中、光が、背中から焚かれた。一、二、それはもう、絶え間なく。
フラッシュバックしたのは、あの頃の、光溢れる素敵なあぜ道だった。ふーちゃんが、その光の向こうで、尻尾を楽しげに揺らしている。
「ふーちゃん、待っ