遅すぎた時間
extra/horologium
late side
あなたは現実に満足しているだろうか?
俺は満足している。
いや満足しすぎていることにむしろ不満を覚えるくらいだ。
別にリア充という訳ではない。
てか彼女とかいないし、
「おーい、つばさー、お前英語の予習してるか?もししてたら見せて欲しいんたが」
おいおいやめてくれよ。
人がせっかくカッコよーく自己紹介をしようとしてるところで名前を呼ぶなんて。
こいつの名前は田中 誠 苗字も名前も平凡で中身平凡で容姿ちょい下な悪友である。別に覚えなくていいよ。
さて、
「やってるけど見せねえぞ!
授業までまだ時間あんだから自分
でやれ!」
努力は皆均等に味わうべき神の御恵みだ。
「まだ時間あるってもう1分しか無いんだが?」
頭の上にハテナマークを浮かべる誠
「もう1分て思うなら俺に構わず取り組め!俺は今から精神統一に入るから忙しいんだ」
めんどいからテキトーなことを言って逃れる。
「それこそ1分したところで何にもならな••••••」
キーン コーン カーン コーン
俺の精神統一の終了と
そして誠の終焉を示す刻限のチャイムが無慈悲に響き渡る。
〜1時間後〜
「すみません。次から絶対やってくるんで。いえ本当もう」
授業が終わり誠が先生に叱られていた。
あ、ここでひとつ説明しておく
英語の先生 春日野 桜(24)は若いだけでなく校内随一の美人教師として評判が高い。
そして、ドSである。
「誠さん、私の授業では予習をして
くるように言ってあるはずです
が?」
現在進行形で誠を虐めていた。
「その頭には鶏の脳みそでも入ってるんですかぁ?」
しかし別に教育委員会に訴えられるようなことは無い。
何故なら、
「おい誠のやつ言葉責めされてる ぜ」
「たく羨ましいぜ」
「俺も次は予習しても答えねえよう にしようかな?」
とクラスの男子どもがまんざらでもないから。
かくいう誠も
(ヤベェたまらねえぜ!この罵倒)
「あ、教頭先生だ」
教室に入ってくる教頭先生
「こらこら春日野先生、生徒にそんな強く言わなくても•••••」
なだめる教頭
「あ、教頭先生!加齢臭が酷いのでそれ以上近づかないで下さい!あと茶色のスーツて私無いと思います」
教頭にも罵倒浴びせる春日野女王様
間違った、春日野先生!
「ハアハア、春日野先生!もっともっと」
てか教頭先生のやつ生徒の前で発情しだしたぞ!
ったくいい年したおっさんが。
ふと時計に目をやる。
休み時間が始まってからまだ1分ちょいしか経っていない。
皆もこんなに時間が長く感じるのだろうか?
遅れたが俺のフルの自己紹介をしよう。
俺の名前は遅咲つばさ。
ごく一般の高校二年生だ。
遅咲なんて苗字だし恋愛の花が咲くのも遅いのだろうか?
つまり非リア充だ。
特徴というか体質というか何故か体感したはずの時間が現実には反映されていないことだろうか?
例えば俺が時速10キロで自転車を漕いだとする。
実際10キロの地点まで行った時に普通なら1時間という時間が経過するはずだ。
しかし何故か20分しか経ってない場合がある。
もちろん漕ぐ速度は変えていない。
とまあ自分でもよくわからん体質?
能力?みたいのがある。
ぶっちゃけ迷惑している。
まるで自分だけ違う時間で生きている感じがすきじゃない。
しかもこの体質、まわりにまで影響を与えることもあるから困りものだ。
さてここまで心の中で語ったところで再び時計を見てみよう。
案の定1分どころか30秒も経っていなかった。
俺は一生こんな感じなのかな?
「全くあなた達にはプライドとかないんですか?気持ち悪いです!」
先生の罵倒が聞こえてくる。
なかなか心地良さそうだ。
うん。
決めた。
「先生実は俺も予習してなかったんですー!」
本当はしているが虐められるためにウソをついてみた。
「このゴミ虫どもめーーー!」
響き渡る先生の叫び声•••••••
〜放課後〜
本日も大変長い1日だった。
全ての授業がどれだけ充実していても短く感じることができない。
別に生活に支障などないが、精神的には支障があると言っても過言ではない。
何より退屈で長く感じる授業などは地獄だと言っても間違いないだろう。
「じゃあな、つばさまた明日!」
走って帰って行くクラスメイト
何か急ぐ用でもあるのだろうか?
急ぐという行為が羨ましくもあるが
ここは
「おう、明日こそは春日野先生に虐めてもらえるように予習もほどほどにな」
他愛ない言葉をかける
彼は振り返りながら
「わかってるって、だから今からムチのバーゲンセールに行くために急いでんだよ!」
そんなバーゲンセールがあるのかこの世界は?
先生に叩いてもらうためにムチを買うのだろうか?
なんか羨ましがったのがバカバカしくも思えたきたが気のせいだろう。
俺はこの後どうしようか?
1 帰る
2 寄り道をする
3 闇の世界の住人となる
自分の頭の中にギャルゲの選択肢のようなものを作ってこの後の予定を立ててみる。
ま、どれを選んでもおそらく時間を持て余すだろう。
いや待て!
四つ目の選択肢を考えることで時間を稼ごう。
それだ。
うーん。
うーーーん。
!!
そうだ!
俺もムチのバーゲンに行こう。
今日初めて先生に虐めてもらったが
中々に癖になりそうだからな。
マイムチを持っておくのも紳士の嗜みかもしれない。
ってムチのバーゲンセールなんてどこでやってるんだ?
イ◯ン?
そんなところでやる訳ないよな?
誰か知ってそうな奴はいないかな?
と、教頭が校舎の見回りをしてるのを見つけた。
「•••聞いてみるか」
知ってるかもしれないし。
「すいませーん、ちょっとお尋ねしたいことが」
すると
「何かね?私はあまり暇ではないのだが?」
めんどくさそうだ。
「いえ、ムチのバーゲンセールてどこでやってるか知ってますか?て知ってる訳ないですよね。すいません」
俺、何を聞いてんだろ?
「ムチのバーゲンセール?
それはまさかM向けグッズ専門店の
M BOYSで一カ月に一回開催される
イベントのことか?まさか今日だったとは、こうしちゃおれん。
わ、私はこれで失礼する!」
走り去って行く教頭。
店の名前教えてくれて有難いけど
ちょっと幻滅した。
でも店の名前がわかれば後はスマホで検索すりゃ大丈夫でしょ。
そうして俺はムチのバーゲンセールに参加し無事に悪魔の尻尾型のムチと特典のボンテージを手に入れることになった。
ぶっちゃけ恥ずかしくてボンテージはもってけないな。
バーゲンにも参加したし今日は結構時間が経っただろうか?
スマホを取り出して時間を見る
時刻は夕方の6時半を回ったところだった。
普通今から何かをするには微妙な時間である。
大抵の人は夕食をとり、入浴を済ませ、趣味か何かをして睡眠に入るだろう。
俺の場合はいつ何を始めても遅すぎるということは無いと思うが。
今日は疲れたから家帰って、ご飯食べて、お風呂入って寝るか。
7時に寝て6時くらいに起きれたら幸せだな。
結果を言うと、0時に目が覚めた。
「暇だ」
おまけに目が冴えてやがる。
これ以上は寝れないぞ。
ランニングでもして体力を消費してきたら眠くなるかな?
いや待て!
経験時間と消費時間が釣り合わないこの体にランニングは辛すぎる。
ウォーキングに変えよう。
季節は春が過ぎたくらいだ。
寒くもなく暑くもなく丁度いい。
ふらふらして1時間くらい時を消費した。
これが結構辛かった。
ふと右のほうに目をやると
うちの学校の制服をきたやつが塀を登ろうとしていた。
あまりに怪しいから思わず声を出して尋ねた。
「おいあんた何してんだ?」
そいつが振り返って言った。
「なんだ凡人か」
と。
いや、まあ確かに一般的な高校生だけど一応変な特殊能力あるから凡人じゃないんじゃないかなーと。
ってよく見ると、振り返ったのは女の子だった。
まあ女子の制服着てたしね。
でも女子が塀を越えようとはしないかなと思ってたのだけど、やっぱ
女子だったね。
しかもすんごい美少女だ。
黒くて長い髪がとてもよく似合っていた。
next cross