急ぎ過ぎた時間
本作品をとってくださりありがとうございます。
1人では解決しない悩みの世界にお招きいたしましょう。
extra/horologium
プロローグ/序章
fast side
耳鳴りがする。
物音一つしない部屋の中、頭の中に金属音のようなものが響く。
左手で頭を叩き金属音をかき消す。
「•••••••••••••••••••••」
私/俺は手探りでスマホをとり時間に目をやった。
夕方の6時半を回ったところだ。
頃合いか?
私/俺は一人準備を始める。
普通今から何かをするには微妙な時間である。
大抵の人は夕食をとり、入浴を済ませ、趣味か何かをして睡眠に入るだろう。
だが、私/俺は違う。
別に一般人でない訳でない。
ただ趣味が妙なだけである。
平たく言うと深夜徘徊だ。
うん別に深夜に誰かの家に忍びこんだり、何かと戦ったりする訳じゃない。
警察のお世話になったことも一週間に数える程しかない。
断じて怪しい者ではない!
私/俺は軽い夕食を済ませ自宅を後にする。
いつの間にか時刻は11時を回っていた。
先ほどまで6時代だった気がするが?
何でこんなに時間を消費したのだろう?
まるで一人だけ時間の理の中から外されて生きているようだ。
耳鳴りがする。
まあいい、さあ時間だ。
私/俺は家を出て闇夜の世界へと足を踏み入れる。
とくに目的がある訳ではない。
いやむしろ夜に出歩くこと自体が目的みたいなものだ。
私/俺はこうしてこの暗い世界に足を踏み入れ進んで行くことが好きなのだ。
うん私/俺とてもカッコイイ!
自分に酔いしれながら通りすがりの公園の時計に目をやる。
既に時刻は1時を過ぎている。
やはり私/俺の周りの時間は世界の理と外れているのではなかろうか?
耳鳴りが止まない。
「••••••••••••••••」
私/俺は構わず徘徊を続ける。
夜に出歩いたところで、楽しいことなどほとんどない。
たまに野良猫と会話するくらいだ。
噂をすればなんとやら、丁度一匹の野良猫に出くわした。
私/俺はいつも通りに野良猫に話しかける。
「••••••••••••••••••••」
野良猫は呆れたような表情を浮かべると近くの塀を越えてどこかへ行ってしまった。
むろん普通の猫に表情筋などないことは知っている。
この辺りの猫は突然変異でも起こしているのだろう。
今日初めて誰かと話した気がする。
少し高揚した気分を胸に徘徊を再開する。
おや?
今何か獣の影が見えた気がする。
このへんは田舎ではないが別に都会でもない。
都心部より少し離れた、いわゆるベッドタウンのような場所だ。
近くに森もあるのだから獣の一匹や二匹は存在するだろう。
私/俺は何かわからない獣を追うために知らない人の家の塀に手をかけた
その時だった。
「おいあんた何してんだ?」
不意に後ろから男の声がした。
まさかまた警察?
いやこんな時間に警察が出歩くことはないだろう。
振り返ると学ランを着た容姿は普通の男子学生が立っていた。
思わず口に出した。
「なんだ凡人か」
耳鳴りが激しくなった••••••••••••。
読んでくださり感謝いたします。
次回遅すぎる時間の物語をお届けします。