10@種族特性
千秋の「ここだと、誰かに聞かれている可能性もあるから場所変えましょう」の一言で、酒場を出てボク達はボクとシーナが泊まっている宿に行くことになった。
現在、部屋の外にシーナが待機し、ボクと千秋は部屋内にある椅子に座っていた。
「わざわざシーナちゃんを外で待機してもらった理由は、ユーリに確認しておきたいことがあったから、そしてシーナちゃんにというかこの世界の人にまだ知られたくないことだから」
「うん」
「シーナちゃんにはどこまで話したの?」
千秋の言うどこまでというのは、あの事を言っているのだろう。
「まだ、なにも話してないないよ。いつかは話せる部分は話していこうと思ってるよ」
「それに、いつかは他の人が話したりするだろうしね。いつまでもすべてを隠しておくことはできないよ」
そう、いつまでもすべてを隠していることはできない。
千秋は一旦話を区切り再度話し始める。
「私は一部を除けば話してもいいと思ってるの。その一部というのは、私達プレイヤーの容姿や種族などについて。それ以外なら話しても問題はないと私は判断してる」
確かに、容姿や種族のことは言っても信じてもらえないだろうし、もし信じてもらえたとしても実験体とかにされて研究されたりするかもしれない。
なにしろ、容姿を自由に変えることができ、本来なら生まれてから死ぬまで変えることのできない種族を変えれるというのは皆ほしがるだろう。
容姿は言うまでもなく、種族が自由に変えられるという事は、冒険者ならば、自分の役割によって選んだりなどもできる。
危険を減らすためにも言わないほうがいいだろう。
「それ以外なら話しても問題はないと思う。元々この世界には勇者召喚なんていうのもあったのだから、他の世界が存在することについては偉い人達は知っているだろうし、他の世界からこの世界を救いに来たと言っても問題ないだろうしね」
そう考えると、ボク達は全員この世界をすくいに来た勇者だね。あ、そういえば千秋は今現役勇者なんだっけ……。
「ユーリがまだなにも言ってないなら、ユーリが不調の理由だけをいうのはちょっと不自然ね……となると、いろいろ方法はあるけど一番いいのはシーナちゃんに他の世界から来たことを説明するのがいいだろうけど、そしたらこの世界の常識とかも知らない理由にもなるしね。どうする?」
「千秋、どうして不調の理由だけをいうのは不自然なの?」
「それは、ユーリの不調の理由が種族特性にあるからよ。自分の種族特性を知らないっていうのは不自然だからね。まぁ、私に任せておいてって、うまく納得させてみせるから」
「わかった、じゃあシーナを呼ぶよ?」
「うん」
シーナを呼ぶとすぐに返事が聞こえ、部屋に入ってくる。
この部屋には椅子が2個しかないので、ボクは自分のベッドに腰掛けシーナに椅子を譲る。
そして、シーナが椅子に着くと千秋は話し始めた。
「まず―――――」
千秋はボクの不調の理由は種族特性にあるといった。
一応可能性として考えてはいたし、そのために毎日性欲を発散させるために一人でしてたんだけど……。まぁそれは建前みたいな感じになっていたけどね。
サキュバスという種族の特性が原因ということは、即ちあっち系だろうし、ボクの考えはあたっているのかもしれない。
だけど、毎日発散していたというのに良くなっていくどころか、より不調になっていく始末。
あたっているかもわからない事を考えたりしなくても、今から千秋が話してくれるのだから待っておこう。
「―――――ということかな。だからユーリはこの世界の常識とか知らないの」
「そう言われてみればそうですね。誰でも知ってる奴隷のことも知らなかったのもそれが理由だったんですね」
「次は、本題のユーリの不調の理由について、ね。シーナちゃんはユーリの種族を知ってるかしら?」
シーナには言った覚えがないので知らないはず。
シーナがボクの種族知ったら驚きそうだなぁ……。
「ユーリはね、サキュバスなの。ユーリが不調な理由はそのサキュバスの種族特性にあるんだけど、私達がいた世界ではちょっとした事情があってユーリに種族特性を教えてくれるひとがいなかったの。だからユーリが知らないのもそのせいね」
声には出ていないけれど、シーナが驚いているのが表情からわかる。
そして、ボクの方へ振り向くシーナ。
「私が聞いた中ではサキュバスの種族特性は6個あるの。まず一つ目は人間よりも性欲が強いこと。これはサキュバスを知っている人なら誰でも知っていることね」
「その性欲が高い理由はサキュバスは人を誘惑して精を奪うからと聞いたことがあります。そして、精を奪うやすくするために襲う相手の理想の容姿で現れるとも」
千秋が一旦区切ったあとに、シーナが自身の知っていることを話す。
種族がサキュバスの時点で、この男の時よりも遥かに強い性欲の理由は予想していた。
「シーナちゃんが言ったのを少し補足するわね。サキュバスは精を奪うと同時に相手の魔力を奪って自分のものにするらしいの。これが二つ目の特性。わかりやすく言うと性行為で魔力を消費するって感じかしら。だから奪うと言っても一日経てば奪われた人も魔力は回復するから大丈夫よ」
「それってものすごく強くなれるのでは……?」
シーナも気になったのか千秋に聞いていた。
イメージとしては最大MPは減らないけど、現在のMPは減るって感じかな。
「そうね、私はサキュバスの人に直接聞いたのだけど、その人はロンドア王国騎士団の副団長をしているわ」
つまり、ボクも性行為すればするほど強くなるってことになる。
「シーナが言った精を奪いやすくするため相手の理想像で現れるというのはほぼ当たってるわね。サキュバスは見た目を自由に変化させる種族魔法が使えるらしいの。これが3つ目の特性ね」
「でも、ボクはそんなの使えないよ? ギルドカードのステータスにも載ってなかったよ」
一応確認の為に今ギルドカードを確認してみたけれど、そんなものは載ってなかった。
「それは多分、ユーリが種族魔法を習ってないからね。普通は家族から教わるみたいだしね。もし使いたいなら紹介するよ」
「うーん、今は別にいいかなぁ」
ボクは今の容姿で満足してるしね。
「えっと、4つ目はその性欲が発散されずに溜まっていくと不調になるということ。これは精を搾り取れっていう体からの合図みたいなものらしいわ。性欲は自慰でも発散できるみたいだけど、自慰で発散される性欲よりも溜まっていく性欲の方が多いらしいから不調にならないようにするには性行為が必須らしいわ。」
さっきからチラチラとこっちを見てくるシーナ。
も、もしかして一人でしてたのバレてた……!?
「これがユーリの不調の原因ね。5つ目は露出面積が多いと気持ちいいらしいわ。聞いた相手が言うには露出面積が多い程調子が良くなるらしいの。でも逆に一定以上露出がないと落ち着かないそうよ。それで気になって副団長のエレナさんに聞いてみたんだけど、サキュバスは恥ずかしさや抵抗が人と比べて薄いらしいの」
ボクがブラのまま街を出歩けていたのも、元男だったからとかではなくて、恥ずかしさや露出に対する抵抗が種族特性で薄くなっただけだったんだね。
「そして、6つ目はサキュバスの本来の姿に関係してくるの。シーナちゃんはユーリが人と全く変わらない見た目だったからサキュバスって気がつかなかったのよね?」
「はい、シア様の言うとおりです」
「サキュバスには覚醒って言って本来の力を発揮する方法があるらしいの。その覚醒時にはサキュバスの象徴である黒い羽が生えるそうよ。それでその羽が生える背中が露出されていないと少しずつ不調になるらしいの。エレナさんもよくわかってないらしいけれど、背中は覚醒時に羽が生える場所で、そこが服で覆われていると覚醒できないらしくて、それを防ぐためにそう本能が訴えてるとかなんとか」
か、覚醒とかもあるんだ……、サキュバスってデメリットも大きいけど、メリットも大きいね……。
この6個がサキュバスの種族特性……。
そしてボクの不調を治すには―――――
「ユーリの不調を治すには性行為が必要なのよ」