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2011年・2012年

唾液のうた

一人物語の中で僕は腐っていく。

叶わない夢を飴玉のように舐めながら。

それはいつまで経っても飲み込めない。

合理的な社会という菩提樹の下で、

僕はいつまでも奈落に転落している。

もう一人の僕が影になって語りかけてくる。

「やあ、やあ、はやく死ねば?」

それは地獄だ。美しい。美しい!

並行次元における莫大な数式のようだ。

強靭な閉鎖の中で僕は君を探し続けている。

……どうして君は死んでしまったのか。

と陳腐な問いかけは虚無に反響する。

今でも忘れてはいない。煙突の煙。

黒々とした君の名残。君の残滓。

天への階段を駆け上がるが如し。君の魂。

純潔、純白のまま死んでしまった君の魂。

それ以後、僕の住処はない。旅をしている。

目的も目標もない無意味な旅。まるで君に捧げているかのように。

君の蜃気楼がいくつも見える。

――君は死んだんだ!これは幻想だ幻想だ!

周りを見れば影法師。増殖している。

残像がそこにもある。あそこにもある。

正義の裏返しは犠牲であることは昔から知っていた。

けれど!けれど、君まで死ぬことはなかっただろう。

脳にさざ波が押し寄せてくる。僕の海馬を浸食するように。

削り取られる記憶の中に君の思い出が現れる。

「やあ、やあ、はやく死ねば?」

それは地獄だ。美しい。美しい!

君の墓標に書かれた弔辞は僕が書いたものなんだぜ?

どうだ、醜く短小だろう?気持ち悪いだろう?

ありったけの思いを詰め込んだ。けれど、

君は蘇ることはない。無理数のように不可解だ。

僕はいまだに濡れているよ。弱虫で下賤な僕は。

世界はまるで膣の中のようだ、と君は言っていた。

異物が侵襲していく感覚。セックスと同じ感覚。

毒の羽根を破り捨てれば綺麗な恋の歌を奏でよう。

けれど、それももうできない。プラスチックの嵐が起こる。

グルリグルリと電子音がする。人工物の自然の中で、

僕は悩み続けなければならない。詩を書けないままで。

僕の顔をした影法師が大量に水平線の向こうからやってきた!

気がつけば君の墓標の前で泣いていた。奇妙な夢の中で。

爪を立てた猫はまるで君の亡き骸だ。死んでもまだ僕を攻撃する。

抉れた翼は未だに修復していない。修復できない。

爆音を奏でるギターはもう売ってしまったよ。古本屋で。

思い出がヘドロのように湧いてくる。気持ち悪いほど湧いてくる。

犯される気分で空を眺める。君は戻らない。君はもう……。

さあ、僕はまだ固執されたまま。一生、鎖で繋がれよう。

これだけが僕のダンス。最初で最後の合理主義。処刑方法さ。

夢を壊して、いざ、回ろう。ぐるりぐるりと踊りましょう。

醜い数を数えれば、僕のミイラが出来上がる、そういう恋愛さ。

綺麗だろう?一緒に唾を吐いて一緒に涙を拭こうじゃないか!


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