魔法使いの剣 (0時魔法シリーズ1.7)
魔法使いが絶大な力を持つ世界。
剣を学ぶ者はいるが特殊な技術を磨かねば剣に於いても魔法使いには勝てない。
「私が剣を振るうと皆がこぞってズルいと非難します。そんなものは魔法ではないのかと。」
後の世では魔法使いは王でも御しきれない存在となるが、まだ魔法使いが絶対的な強者でなく、圧倒的な強者と勘違いされていた時代だ。
「そなたに、この国最高の剣士と立ち会っていただきたい。魔法使いには剣を使うものは少ないが剣士を圧倒的に超えると聞く」
魔法使いの地位向上の為の組織である魔術師協会は王と対等かそれ以上の組織であり、例え一国の王でも魔術師の意図に反して命令を下すことは出来なくなりつつあった。それでも後の世では魔法使いの機嫌取りをする王が珍しくない事を考えるとまだまだ魔法使いの本当の強さは知れ渡っていないのである。
「私の剣術は見せますがこれは決して魔法ではありません。」
そういって魔法使いは対決を了承した。
互いに向かい合い魔法使いは剣士に一礼する。
開始の合図とともに魔法使いは間合いの外から剣を振るだけで剣士は倒れた。
起き上がり剣士は礼をするが何が起こったかはわかっていない。
「斬撃を飛ばしたのか?」
王はそう尋ねた。それが一番説明がつく。
理屈はわからないがまだ因果関係だけは感じられる。
それでも剣士からすればたまったものではない。
見えない斬撃を相手にせねばならないのだ。
しかし魔法使いは首を横に振った。
「鍵のついた箱に兜を入れてください。できればそれを10個程度用意していただけると幸いです。」
王は部下に命じ用意させる。
魔法使いがゆっくりと、剣士であればよほどの名刀でなければ斬れないはやさで剣を振ると箱はそのままになかの兜後が斬り裂かれる。何が飛んだのなら箱ごと斬れるはずだった。
「今のは、どういう・・・」
王の理解を超えた現象。なにも質問の為の予測を出せない。
魔法使いは後ろを向き同じようにゆっくりと1度剣を振る。箱をみてもいない。やはり中の兜だけ斬り裂かれる。
「残りの8個はどこかに隠して下さい。魔法使いなら探知できますがそれはしません。」
王の心は既に恐怖に変わっている。
王は8人の部下に箱を隠しに行かせた。
魔法使いがその気なら気休めにすぎないが魔法使いは目隠しをしている。
目隠しをしたまま魔法使いは1度だけ剣を振った。
場所は王自身も知らないが箱の鍵は王が持っている。
箱を取りに行き中を開ける。
魔法使いは確かに1度しか剣を振らなかったが8つの兜は斬り裂かれている。またもや箱には傷一つついていない。
「これが剣術だというのか」
剣士は怒鳴りつける。けれど魔法使いと目が合うと目をそらすしかなかった。
「では最後の技を見せましょう。」
魔法使いが剣を振るう。
王は思いだす。幼き頃犬に教われた時の事、その時は何もない所で犬が急に怪我をし逃げて行ったのだ。
そしてそんな記憶は今のいままでなかった。
自分は犬に噛まれ大きな傷があったはずだ。
魔法使いは笑っている。
王は傷のあった場所に手をやるがそこにはなにもなかった。
魔法使いの使う剣は常人からは魔法にしか見えない。
斬撃は本当に8が限界かもわからない。
魔法使いの剣が城の中までしか届かないかもわからない。
一振りで国中の人間を切り裂けるかもしれない。
「時間や空間は魔法使いには関係ないのです。」
そもそも剣は斬れるような速さでふっていない。
硬さも関係はないのだろう。
そしてそれが剣術だという。
王でも嗜みとしていくらかは使える。
けれど王の知るそれとは大きく違っていた。
剣士は二度と剣を握らなかった。
けれど王は使命から逃げられない。
仕事とは役割を全うすること。
王には目をそらさない役割があるのだ。
それが王の太古からつづく役割だった。




