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【完結保証】蓮池に霄(そら)は揺蕩う〜ツッコミ少女はポンコツ仙人をどつきたい〜  作者: サキハナ月子


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6.違和感

凌霄は采蓮によって夕餉まで正座の刑に処された。


長時間の正座で足を痺れさせた凌霄を、采蓮は容赦なくつついて悶絶させた。


「反省しろ」

「あうっ……だめ、いまそこだめなのだ……!」


多少は溜飲の下がった采蓮が夕餉を用意してやれば、凌霄は現金にもすっかり元気を取り戻したのだった。

もはや穢云々と言うことすらなくなり、バクバクと勢いよく食らっている。


「よく食べますね……」


呆れた采蓮の声に米粒を口の端につけた凌霄が顔を上げた。


「うまいからな。霞は味がせぬのだ」


彼が嬉しそうに微笑むと、その周りに花が咲き乱れたように場が華やぐ。


「それに、誰かとともに食事をするなど仙人となってからはなかった。これはよいものだ」


“誰かとともにする食事”

采蓮の瞳が虚をつかれたように見開かれた。

3年前に父が天に召されたあと、采蓮もまたずっと一人だった。一人が当たり前で、寂しいとも思わなかった。


なのに、このポンコツな自称仙人の言葉が、なぜだか妙に心に刺さったのだ。


「よいもの、ですか」

「ああ、よいものだ」


采蓮の心の動揺に気づいた様子もなく、またもぐもぐと美味そうに食べる凌霄。


しばらく彼の食べる様をじっと眺めていた采蓮は、ふっと体から力を抜いた。


「飯粒がついてますよ」

「お、そうか? すまんな」


彼の口元に手を伸ばし、米粒をとってやった。


そうして指先の米粒に視線を落とす。


(よいもの、か……)


「尻のくせに」

「!? なぜ急に罵られなければならんのだ!?」

「なんでもありません」


澄ました顔で椀に口をつける采蓮の口元は、僅かに緩んでいた。


****************


食事を終えた凌霄が椀を下げて戻ってくる。

戸口のそばにある水場は寒かったのだろう、ぷるっと震えて布団に潜った。


「おお……これよ、これ。ぬくいぞ」


すっかり布団の虜のようだ。


(こいつ力を取り戻す気あるのか……)


呆れた顔で采蓮もまた布団に入った。

生ぐさ仙人から背を向けて目を閉じる。


いつものように瞼の裏でゆっくりと光の筋が流れていく。


パチッ


光の筋がぶつかりあった。

さらに、


ゆらっ


普段流れ星のような軌道を描く光の筋が、蛍のように軌道を変えてゆらめいた。


(まただ。気のせいじゃなかった)


パチっと目を開いて布団から起き上がる。


采蓮が起き上がった気配に気づいたのか、凌霄がこちらを向いている。


「どうした、娘よ。私を意識して眠れぬか。そなたも年頃だものな。

ふふ、可愛いところもあるではないか」


ニヤけた顔がうざい。

采蓮の顔がスン……と無になり、全てがバカバカしくなった。


「うるさいヒモ」

「ヒモ!? 尻の次はヒモだと!?」


背中越しに聞こえる憤慨した声に無視を決め込み、布団を被り直す。

今度は光に意識を向けることなく、采蓮はまどろみの中へと沈んでいった。


――その寝息が、やがて一定のリズムを刻み始める。


采蓮の規則正しい寝息が響き始めると、凌霄はその背中に優しい笑みを向けた。

そして、視線を落としてぼんやりと自らの手のひらを見つめる。

黒曜石のような瞳には、戸惑うような憂いの色が浮かんでいる。


(只人に戻ったかのようだ……)


こうして違和感はすこしずつ、小さな波紋を広げていく――


2/23改稿しました。

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