4.まじり
7話まで1日2話、正午と18時頃に投稿します。
(今日も綺麗だな。いやになる)
布団の中で目を閉じれば、瞼の裏の暗闇を幾筋もの光が渡っていく。
ゆっくりと尾を引く、流れ星のような光る筋。
これが”気”だとかいうものと知ったのは比較的最近のことだ。
“まじり“
今日久しぶりにその言葉を聞いたせいか、普段意識の外に追いやるようにしていたこの“気”の流れがやけに目について、采蓮の眠りを妨げてくる。
妖が時折人と交わり、子を成すことがある。
血が混ざっているから、”まじり“だ。実に単純明快である。
采蓮の場合は母が妖らしい。会ったこともないのでよく知らない。
父は3年前に流行り病で死んだ。
采蓮の父は、采蓮が”まじり“であることを死の直前まで誰にも、采蓮にすら明かさなかった。
だから、目を閉じると見える光の筋の正体も、その時ようやく知らされた。
知らなくたって、察することはあるものだ。
幼い頃、目を閉じると見えるこの美しい流星群の事を父に話したことがあった。
あの時の父の顔を采蓮は忘れられない。
……それ以来、誰にもその話をしたことはない。
誰にも見えていないものを自分だけが見ているという事実は、幼少期の采蓮に孤独を教えた。
(……ん?)
ふと、違和感を覚えた。
光の筋が、ぱちんとぶつかって弾けた、ように見えた。
確かめようとよく見たが、今度はいつもどおり、光は交わることなく真っ直ぐに尾を引いていく。
(……気のせいか)
一瞬の違和感を振り払う。
きっと疲れているせいだ。あのやかましい尻仙人のせいで余計な気苦労をさせられたから。
采蓮はそれ以上深く考えるのをやめ、意識を暗闇の底へと沈めていった。
翌朝には、床で大の字になって眠る、そのやかましい仙人を濁った眼で見下ろすことになるのだが。
2/23改稿しました。




