28.【Side.秀蘭】眠らない娘④
朝日が部屋に差し込んでくる。
いつの間にか秀蘭は眠ってしまったらしい。
娘が久しぶりに眠ってくれたから、自分もつられたようだ。
まだ娘は眠っている。
安らかな寝顔だ。
いつものように、手を握りしめた。
「……え?」
冷たかった。寧寧の手が氷のように冷たい。
よくよく見れば、血の気が通っているとは思えぬ白い顔。
「そんな、どうして……!? 待って、いっては駄目……!」
彼女の手を握りしめながら叫ぶ秀蘭に対して、娘はただ穏やかに眠り続ける。
『そなたは、その子の顔をよく見ねばならぬ』
安らかに、眠るように目を閉じる、寧寧。
見ているではないか。見ていたから、毎晩寝ずに子守唄を……
その時唐突に、娘の苦悶に見開かれた目の残像が秀蘭の脳を焼いた。
今まで靄のかかった都合のいい視界でしか見なかった母のそばで、ずっと訴えていた、寧寧の声なき叫び。
呆然としながら呟く。
「ねぇ……あなた、眠りたかったの……?」
あの不思議な二人組みはもういない。
夢だったのだろうか。
つう、と秀蘭の頬を涙が伝った。
「ごめん……ごめんね……寧寧……」
冷たい躯を抱きしめながら、秀蘭は再び子守唄を口ずさみ始めた。
――ねんねよ、ねんね
私のかわいい宝もの
扉の向こう 風が吹き
細い梢に 雪積もる
夢をひらけば 蝶が舞い
かがやく羽が ひらひらと
お日様 お顔を出すまでは
ねんねよ、ねんね
おやすみよ――




