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20.【Side.張福】凍えない村①
短いので2話投稿します。
秋だというのに、あばら家の隙間から冷気が吹き込んでくる。
家主の老人は、ボロ布に包まって体を縮こまらせた。
彼の名を、張福という。
立派な名前の割には貧相な姿だ。
だがそれを揶揄できるような人間はこの村にいない。
みな、似たりよったりなのだから。
一昨年は三人、去年は――五人。
村で冬を越せなかった数だ。
張福は恐らく、今年の内一人に数えられることになるだろう。
この老いぼれの身がどうなろうと、もういい。
もう十分生きた。
咳き込むたびに骨ばった胸をさすりながら、そう思う。
隣家から、子どもの泣き声が聞こえてくる。
「あの子は、越せるといいなぁ……」
冬という名の絶望が、忍び寄ってくる。
重苦しい空気が漂う中で、一人の若い男がこんな外れの村までやってきた。
「いやぁ、なんや、みなさん随分辛気臭い顔してまんなぁ」
「せや、俺が助けたろ。お代は後でええよ」
道士を称するその男は、
――この村に、"春"を連れてきた。




