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幼稚園の頃。

昔、団地に住んでいた。

団地の中には公園があった。

団地なので同じ建物、同じ廊下、同じ扉である。


昔は今よりも治安が良かったので幼稚園生がお使いに行ったり近くの公園に1人で遊びに行くことは普通だった。そこまで大きな団地ではないため団地内のこどもは全員知り合いだったし、公園に行けば誰かしら子供がいて遊んだのだ。


ある休みの日、私はは母に公園に行くことを伝えて家のドアからでた。私の家の階段を降りて左を向けば少し先に道路が見えるはずだ。


ドアからでて階段をおりて公園へと向かう。そのはずだった。階段からおりて公園へ向かうため景色を見渡すとずっと遠くまで見渡す限り団地が続いていた。右を見ても左を見ても道路はない。車もない。ただ、同じ建物が密集して並んでいる。空は雲ひとつない晴天だった。


私はすぐに異変に気づき降りた階段を登って家の前に行く。だがドアを開ける勇気が出なかった。

私の家のドアは青かったはずなのに真っ赤になっている。何よりなんとなくこれじゃない感がしてドアを開けることができなかった。


私は色んな建物を行ったり来たりした。建物1つが5階まであったので1階から5階まで順番に登りドアを見て、耳を当てて物音を聞いた。


色んなドアから私の母の声、兄弟の声が聞こえた。だがどれもドアの色が違うし開けてはいけない気がした。

赤、青、黄色、緑色々な色のドアがあった。

耳をすませれば家族の声、知らない人の声、食器音、誰かの笑い声、無音と色々な音が聞こえた。

これだと思ったドアを見つけても確信が持てなくてまた何度も角を曲がって別の建物に移った。


どれくらい時間が経ったのかわからない。ただ空の青さは変わらず。ドアの中以外に周囲の音は聞こえなかった。


私は泣いた。本気で永遠にこの団地に囚われ続けるのだと思った。それでも、なんとなく道を行ったり来たり、登ったり下ったりした。


そして、遂に私の家だと思える青いドアを見つけた。正確には緑か赤色のドアだった気がする。扉に体と頭をベッタリとつけて耳を澄ます。音は何も聞こえない。だけどなんとなくこの扉の気がした。


私は緊張しながらドアを開ける。すると、ドアからなんの音も聞こえなかったのが不思議なくらいの騒音が聞こえた。兄弟が喧嘩して泣いる声だ。私はドアを振り返る。ドアは青色だ。


玄関に入りリビングに行く。そこには喧嘩して泣いている兄弟と怒ってる母親。家族の姿を見て安心して私も泣いた。


後から聞いた話だが私はドアから出ていった数秒後にドアを開けて戻ってきたのだと。


私は正しいドアを開けたと信じている。正しくないドアを開けたらどうなっていたのだろうか。

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