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それから僕とアルフレッドさんは牧場を後にした。
約束の3日後迄僕は色々と依頼をこなしながら過ごした。普通の依頼というよりも指名依頼ばっかりだったけど。色々な食材なんかを取って来て欲しいと言うものだった。
こうした依頼の方が僕も助かる、また新しい料理を教えてもらったりも出来たしね。
約束の日にユーグルさんの所に行くと1台の馬車が止まっていた。ユーグルさんに話を聞くと、荷台にギュウ乳と卵が乗っているという事だった。覗いてみると大きな蓋の付いた陶器がいくつも乗っていた、卵は木箱の中に藁と一緒に入っているとの事。
「この量になってしまいましたが本当によろしいんですか?」
確認した僕にユーグルさんが心配そうに聞いてきた。
「えぇ、大丈夫です。」
これぐらいの量なら影にしまっておけるだろう。こういう機会もあまりないだろうから、ここぞとばかりに買い込んでおかないと。
「ギュウ乳が入っている器はお金払うのでそのまま貰っても良いですか?卵の入っている箱も同様に。」
「えぇ、構いません。お代はこれだけ買って頂けたので必要ありません。持って行ってください。」
そう言われたのでありがたく僕は残りの金貨10枚だけ支払った。
「それでこれはどうされるんですか?」
「とりあえず牧場を出るところまで馬車をお借りしてもいいですか?」
「はぁ、それは構いませんが・・・。」
ユーグルさんにお願いして馬車を牧場の端まで走らせてもらう。ユーグルさんも普通に馬車を動かせるみたいだった。、町へ運ぶこともしているんだろう。
牧場の端まで馬車を移動させてもらい、僕は指笛を鳴らす。すると遠くからガルが駆けてきた。
ほとんど音も立てずに僕らの前で止まりお座りするガル。
「おぉ。」
ユーグルさんがガルの姿を見て声を上げる。
「素晴らしい毛並みですね。この子がクロさんのテイムされている魔物なんですね。」
かなり興奮気味のユーグルさん。
「そうですね、ガルって言います。馬車から馬を外して頂けますか?ガルに森まで引いてもらう事にしますから。荷台はまたお返しに来ます。」
「えっ、あぁ、はい。わかりました。」
そう言ってユーグルさんは馬と荷台を繋ぐ留め具なんかを外していく。流石に馬とガルの大きさだと、荷台についている留め具なんかじゃガルの体格には合わない。仕方がないのでカバンから出した風に見せかけ、影から太いロープを荷台に括り、ガルに咥えてもらう。
不格好だけど仕方ないな。
「じゃあちょっと森の方まで行ってきます。そこで荷台の物を置いて、それから荷台を返しに行きますね。」
「森に置いて行くんですか?魔物に盗られたりしませんか?」
「ガルの匂いを付けておけば魔物は寄ってきませんから、大丈夫です。」
「なるほど。」
「では。」
僕はそう言ってガルの背中に乗り、ガルに森に向けて走ってもらう。初めはゆっくり、徐々にスピードを上げてもらう。普通だったらこんなスピードで走ったら荷台の中の器や卵は割れてしまうだろう。しかしもう出発する時点で僕の影の中に取り込んだ。
今は空の荷台をガルは引っ張っているんだ。だからと言って思いっきり走ると荷台の方がぶっ壊れると思うのである程度の速さにしてもらっている。
牧場から離れて森の近くまでやってきた。周りには人も魔物の気配もないしこの辺でいいだろう。少し時間を置いて戻ればいい。
そう言えば犬とか猫とかって牛乳はあんまり飲んじゃいけないんだっけ?消化できない成分があるとかないとか、ガルも飲んだらお腹壊したりするかな?
一度少量試してもらおう。
ギュウ乳の入った器を1つ取り出してガルに舐めてもらう。味の感想を聞くと悪くないと言っていた。そんなに好きではないのか。
今度は蜂蜜を入れてかき混ぜ試してもらうと今度は気に入ったみたいだ。やっぱり甘味か。
そして折角だからそのまま別の事も試してみる。
「氷遁・白柩」
術を唱えると蜂蜜を入れたギュウ乳を入れた器の周りが氷に覆われる。氷で対象を封じ込める遁術として作った。術を解かない限り氷は解けたりしない。
「シャドウサーヴァント」
少し手が大きめの姿をした、影の人形が現れる。
「とりあえずそれを持って振っておいて。」
シャドウサーヴァントに命令をする。命令を受けた影の人形は氷に覆われた器を掴み、上下にブンブンと振りだした。これでアイスっぽいものが出来るはず。
シェイクしている影を放置して荷台を返しに行く。途中までガルに引っ張ってもらい、牧場の敷地近くから僕が引くことにする。レベルも上がって力も付いているから、馬が引いていた荷台を引く位は問題ない。
牧場に荷台を返してからガルの元に帰る。帰るとガルが寝転んでいる横で影の人形は変わらず氷の塊を振っていた。
もうそろそろいいんだろうか?影に一旦氷を置いてもらい術を解除する。蓋を開けて中を見てみると、中身は全て固まっていた。おぉっと少し感動する。
スプーンを出し削って口に入れてみるとミルクアイスだった。元の世界のと比べてどうとは久し振り過ぎて何とも言えないが、ちゃんとミルクアイスと言えるものだった。
ガルも期待を込めた目をして尻尾を振っていたので、大きなヘラをだして中身を削り皿に取り出し、ガルの前に置いた。
ガルは舌を少しだけ出してアイスを舐めてから驚いた顔をした。そして勢い良く皿のアイスを舐めだした。普通に生きていたら一生口にすることないだろうしね。
果物を細かく切ったり潰したりして混ぜたらいろんな味のアイスが作れるかな。果物と汁をこうして冷やしたらシャーベットとかも出来るのかもしれない。
また色々とやってみたいことが増えてきた。楽しみながら旅が出来るって最高だな。
いや、でもそんなキラキラした目で見られてももう駄目だぞガル。これ以上は食べ過ぎだ。こんな一気に食べていたらすぐにギュウ乳もなくなってしまう。
う~ん、やっぱりマジックバックが欲しいな。というかマジックバックを持ってる、と思われても問題ない様になりたい。そうしたらこんなに手間かからず簡単に食材とか手に入れられるのに。
冒険者ランクをを上げるぐらいしかないのかな。スキルで持ってると思われると厄介事になりそうだし。
それにしてもこの国でランク上げ過ぎるのもなんか嫌なんだよね。何となくって感じがするからだけど、この世界に来てからの僕の勘って言うのは間違いがないというか、危険回避力が上がっているというか。
もうこの町でもやることは無くなったから国外目指し進むことにしようかな。そんなことを考えながらその日も過ぎていった。
翌日ガルは特にお腹を壊したりはしていなかった。元の世界とは違うってことなんだろう、まぁ魔物最強みたいなガルがギュウ乳飲んでお腹壊しましたって言うのも想像つかないというか。
竜とかも悪いもの食べてお腹痛くなってうんうん唸ってる所なんて想像できないしね。胃腸が強いんだろう。
僕は町の冒険者ギルドに行って、この町から離れる事を伝えた。すると物凄く残念がられた、主にマヤさんにだけど、というか泣きながら引き留められた。予想はしていたけど。そのマヤさんの事を羽交い締めにしてセスさんが止めていた。後は任せました。
それからアルフレッドさんの所にも寄った。こちらも残念がっていたが仕方がないと笑って見送ってくれた。
そこまで居心地の悪い町でもなかったけど、やっぱりここじゃない感は強くあった。
町から東に向けて出発する。ここから他の国に行くまでに通る町で大きいのは1つだけ。後は小さな町や村しかないらしい。
そんなことは僕等には関係ないけどね。どうせあまり町や村に寄るつもりもないし。
全部すっ飛ばしてその町へ行ってもいいけど、一応足跡ぐらいは残しておいた方が良いかな。
僕を背に乗せガルが東に向かって駆けだした。
久々の更新になりました。
短いですが、一端区切りの為です




