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第8話 夏の本番。向上していく日々の生活に密着

 

 妖精国のエレイン女王様から加護を授かってから1ヶ月たった8月。


 今年の夏全盛期を迎えてギンギラギンギンと暑い大陽がこのセイフライド領地にも射し込み始めたよ。


 僕の生活は相変わらずでオーフェンさんとの剣術修行では1時間に6回は瀕死の重傷を負わされて生き残る為の必死の回復ヒールをかけまくるんだ。


 それがもう当たり前の日常になっているのか。最近はアレクシアやレイラちゃんも僕を心配しなくなってきたんだけど。これって僕が絶対に死なないって信頼されているって事で良いんだよね?


「2人共~良い感じっすよ~、それなら魔法学園の入学試験も首席と次席で入学してもらえれば。ライチ先生学園復帰計画が成就じょうじゅするっすね~」


 あの駄目人間そんな計画立ててんの? 魔法学園から懲戒免職喰らってるくせに社会復帰する気なのかい? 


 駄目だよ。ライチ師匠にはアレクシアとレイラちゃんがアリス学園入学後。アリス魔法学園の入学試験にわざと落ちる僕の元で専属家庭教師になってもらう計画なんだからね。


 そして、変人《ライチ師匠》が僕との魔法の修行中に誤って僕に向かって上位魔法を放ち重傷の怪我を負わせ逃亡。


 僕は帰らぬ人となり。埋葬されこの世から存在を消滅させたと見せかけての辺境の地で新たな人生のスローライフを謳歌する────その人柱になってもらわなくちゃいけないんだからさ。


 狂人《ライチ師匠》の企み。僕は全力で阻止しないと駄目じゃないか。貴女は僕のセカンドライフの大切な人柱。アリス魔法学園の教師復帰なんて絶対にさせないんだからね。


「ヤアァァ!! 泥棒黒猫メイドっ!」

「シャアア!! 付き纏い腹黒淑女っ!」


「そうすっ! そうすっ! 私が教えた通りの言葉を使ってお互いにののしり合うっすよ~、いや~1人の男を取り合う醜い幼女達の姿……たまらんすな~! 後はあの悪童クソガキがどれだけクソガキなのかを純粋無垢なレイラちゃん辺りに教え込んでクソガキを幻滅させて。その壊れたクソガキへの乙女おとめ心をおアレクシア辺りに向けさせれば……歪んだ三角関係の完成すっよ~!」


 おいおいおいおいーーっ!! あの2人になんて汚い言葉を教えてるんだ? それに何であの2人が僕を取り合うのさ。意味が分からないんだせど?

 

 いや。それよりも駄目人間《ライチ師匠》の最後らへんの台詞せりふ……レイラちゃんの乙女心をアレクシアに向けさせるとかさ言ってたよね?


 ────あれ? 最初はライチ師匠の行動を邪魔しようと考えていんだけど。これ放っておいた方が僕にとっては都合が良いんじゃないかい? 

 

 酒狂い《ライチ師匠》の魔法学園の復帰は全力で阻止するけどさ。アレクシアとレイラちゃんが仲良くなるのは僕にとっては物凄く都合が良い。


 それによって2人はアリス魔法学園入学前からお互いの好感度メーターが振りきれた状態で学園生活がスタート。


 僕が首チョンパされる前に2人は慈しみラブ合いながらハッピーエンドを迎える。


「………悪くないね。うんっ! 悪くないルートだよ……ね?」


ドスッ……ミシミシ……ドゴオオオンン!!


「これが天牙というわざです……隙ありですぞ。シン様」


 ぐっ! 考え事に夢中でオーフェンさんの攻撃を避けきれなかった。


「……オ、全回復オールヒール全回復オールヒール全回復オールヒール


 死にたくないので全力で全回復を己に掛けまくる……どっかの小説のタイトルでありそうだね。ハハハ……いや。そんな冗談は置いといてさ。


 1ヶ月前よりもオーフェンさんの剣の威力が上がってるのはどういう事なんだい? これじゃあ回復が何重掛けの全回復オールヒールでも回復が追い付かないよ。



ガキンッ!!!


「駄目なの。シン君は私が必要のよ。それに両方欲しいだなんて。レイラちゃんは欲張りさん過ぎると思うの」

「欲張りなのは分かってます。私は御二人共大切な方達なるんですっ……ですからアレクシア様。シン様は私達が……」


「そこまでっすっ! いや~、御二人共。なかなか迫真の演技だったっすよ~!」


「ふぅ~……ライチ先生。私レイラちゃんと喧嘩したくないよ。レイラちゃんは大切な人だもん。酷い事言いたくないの」

「ですです。それからシン様の事もです。ライチ先生」


「あ~、駄目っす。駄目っすっ! そんなんじゃあ強い魔法使いにはなれないんすっよっ! 激しい感情は魔法の力をより引き出し。潜在能力を高めおアレクシア達を更なる憎悪へ……ゲフンゲフン…更なる高みへといざない。最後にはその功績で私をアリス魔法学園の教師の地位へと戻すんっすからかね。(このままおアレクシア達の悪童クソガキへの感情を上手く利用するっす。私をめ腐ってる才能の塊の悪童クソガキにぶつけて3人で泥沼どろぬまの恋愛劇を繰り広げさせるっすよ。小さい頃からこんな可愛い幼女達に慕われやがってっす~、天誅を喰らえっすよ~、マセガキ)」


「「……?!……(何言ってるかわからない。です。)」」


 アレクシアとレイラちゃんが口をポカーンと開けてライチ師匠を見つめてフリーズしている。


 そんな難しい単語で言われたら理解出来ないじゃん。それにどうせ自分の全ての魔法を速攻でマスターされた僕に対して何かする気なんだろうけどさ……こっちはライチ師匠が闇金から借りた借金を一本化させて肩代わりしてるんだ。僕名義でね。


 駄目人間《ライチ師匠》の生殺与奪は僕が握っている。本人は知らないけどさ。もしもライチ師匠が良からぬ事をし始めたらレッド君の巣にでも放り込んでレッド君達のペットにでもなってもらわないとね。


《セイフライド家 書庫》


「アレクシア様。レイラさん一問外れですね。もう一度解いてみましょう」


「うぅ~! お勉強難しいの~」

「日に日に難しくなってます~」

「……これ。大卒レベルの問題じゃん」


「駄目ですよ。アレクシア様はいずれはシンお坊っちゃまと……ゴホゴホ。何でもありません。さぁ、もう一度解いてみて下さい」


 午後からは魔法学や雑学のお勉強。最近はなんとお母様の推薦でやって来た各分野の専属家庭教師が住み込みで僕達3人に勉強を教えてくれるんだ。


 なんでも最近僕とアレクシアの仲が良くなった事を聞いたお母様とこの国の王様の手配したとかなんとか……何でこの国の王様が僕達の為に国御抱えの凄腕の家庭教師を派遣するのか少し疑問なんだけどね。


 まぁ、でも。アリス魔法学園に入る前からアレクシアとレイラちゃんが高度な教育を受けられるから良いか。


 僕? 僕は生前の記憶を保持してるから大抵の事は直ぐに理解して覚えられるんだ。それもこれも このシン・セイフライドがとても優秀だからだろうね。


 本を1度でも読めばほとんどの内容は理解出来るし。アレクシア達と受ける授業もだいたい1度説明されればバッチリさ。


 まぁ、そこで怠惰たいだになったら終わりだからね。授業はサクッと終わらせて違う分野の勉強を日々楽しく覚えているよ。


 それにしてアレクシアとレイラちゃんは本当に才能の塊だね。数ヶ月という短期間の鍛練で剣術、魔法、雑学の基本を高水準に取得しちゃってるんだからさ。


 流石、この世界の主人公とヒロイン。格が違うね。将来が楽しみな娘達だけどさ。僕はどこかの辺境の地でスローライフを送ってる予定だから2人の今後の成長を見れないのが少し残念だね。



 夕方から日が沈んだ夜の間は3人で野山でマブダチ《モンスター》達と遊ぶのも相変わらずでさ。

 

 アレクシアとレイラちゃんは花畑で愛を育み。僕はゴーブ君やスラちゃん達と共にモンスター達を狩る……新しいマブダチになる為に駆け回っているよ。


闇火炎ダークボール


「ギャアアアア!!」「ギィヤアア!!」「イャヤアア!!」


「さあ。これで君達も僕達の傘下……マブダチになってくれるね」


「ゴブゴブ!!」「ニュルルン!!」


「「「ギャウウクウンン!!」」」


 なりますなりますって言ってるね。うんうん。素直な子は扱い易くて大好きだよ。僕はさ。これでまた辺境に行った時の労働力が確保出来たね。


 これからもどんどんマブダチを増やして。僕の将来のスローライフの為に頑張らないとね。


 あっ! そうそう。妖精国に繋がるあの木の樹洞はさ。昆虫種のカブ君にお願いして樹液のコーティングを何重にもほどこしたんだ。


 これで向こう側から誰か来ようとしてもこっちの世界に入って来れないんだ。


「何これ? 行き止まり? 固すぎてびくともしないんだけどぉ?!!」


 近くの妖精国に通じる樹洞じゅどうから叫び声が一瞬聴こえたと思ったけど気のせいだよね?


「レイラちゃん。お花の髪飾りあげる~」

「アレクシア様にもあげますね~」


《シュリディンス家 所有地屋敷》


 そして、夜は屋敷に帰ってアレクシア達と夜食を食べて。アレクシアが住むシュリディンス

家の屋敷まで送ってあげるんだ。


「シン君。わざわざ送ってくれてありがとう……いつも本当にありがとう……お礼のギュ~ッ!」

「あ、ありがとうございます。アレクシア……(最推しの子によるギュウッ! さ、最高っ!)」


 アレクシアは王族に連なる由緒正しき血筋の貴族。影から美少女三姉妹が護衛しているとはいえ何かあったら危ないからね。


 こうして毎日毎日僕が護衛としてアレクシアを送ってあげているんだ。その対価にアレクシア《最推し》からのギュ~っ!


 1日の疲労が吹き飛ぶよ。デュフフ!


 僕? 僕は昔から手が付けられない悪童って事でセイフライド家の一部の人以外。近付こうともしてこないから自由に1人で動き回ってられるのさ。


「それとシン君……浮気したら首チョンパだからね」

「……はい。分かっております。アレクシア」


 日に日にアレクシアには新しい言葉をインストールされている。とくに恋愛用語のインストールが最多なんだ。


 あの駄目人間《ライチ師匠》が原因でね。午前の授業中暇さえあれば純粋無垢なアレクシアとレイラちゃんに自身が通って来た恋愛の心配だんを自慢気に語っててさ。


 それで浮気だの。不倫だの。到底6歳幼女達が知るわけもない単語を覚えてしまったというわけなのさ。


「シン君は私だけの大切な人なんだからね」

「はい。僕もですよ。アレクシア」


 これが別れ際の最後にアレクシアと交わす約束と化しているんだ。


《セイフライド領地 山岳僻地》


 そして、夜は僕のプライベートな時間。夜のゴールデンタイムは爆睡して深夜の2時からはパーリナイさ。


 マブダチ達と野山を駆け回り。ダンジョン攻略。知見を広める為に各領への遠征。盗賊狩りで領地の平和を守ったりと色々な事をして遊んでいるんだけど……最近はあれにハマっていてそれどころじゃないんだ。


『キュララララ!!』


「偉大なる闇の王は我が手中へと来たれりる。恐れ恐れよ。この黒炎たる魔道の印……黒炎弾ダーク・ノヴァ


ドゴオオオンン!!!


 山岳の一部に隕石が落下した時に出来る大きなクレーターと似たようなものが。黒炎弾を放った場所に出来た。


『キュエエエ?!』


「……やっぱり。この魔道書は本物中に本物みたいだね。『妖精祭典』。《乙女達は男装乙女に恋をします》のゲーム内の裏ダンジョンで手に入る『神器じんぎ』の1つ。まさかこの世界リアルだと。エレイン女王様が持っているなんて思わなかったよ」


 空の上から爆煙をジーッと見ていた。


「しかも所有者指定もしてないたかガバガバ過ぎるよ……契約者シン・セイフライド」


 僕が自身の名前を叫ぶと『妖精祭典』から7種類の閃光が放たれて直ぐに消えた。


「これで『妖精祭典』は僕の物になったね。アリスフィアのあらゆる魔法や加護といった全ての力を手にする方法が書かれた祭典チートアイテム。こんなものが誰の所有者指定されずにあるなんて危なかったね……今後、僕が有効活用していあげるよ。エレイン女王様。使わない時は収納魔道具の奥の金庫にでも厳重に保管しておかなくちゃね。それと今の僕のステータスはと……ステータスオープン」


種族・人族 シン・セイフライド レベル59

ジョブ 奏者テイマー 黒騎士ブラックナイト 

魔法 全属性基本魔法使用可能。全回復魔法使用可能。

特技 天狼流 免許皆伝 土下座 寝取術 調教術

加護 『相思相愛の加護』

称号 姫の庇護師 親愛を与える者


 ……やたらと特技の項目が豊富なのは何でだろうね?


『キュラララ?!』


 レッド君が僕を心配そうに見つめている。う~ん。ステータスの確認はまたゆっくり時間がある時にでもしようかな。


「うん。これでアレクシアが住むこの世界リアルに対しての脅威を1つ取り除けたよ。僕はいつかあの娘の前から居なくなるからね。僕が居なくなった後に主人公アレクシアやヒロイン達が幸せにこの世界で暮らせる様になってから居なくならなくちゃさ……僕は嫌なんだよ」


 僕は独り言の様にそう告げると山岳僻地を後にした。


「力も付いてきたし。世界のLOVE&ピースの為に『神器』狩り…ゲフンゲフン。『神器』蒐集しゅうしゅうもしていかないとね~」


《セイフライド家 シンの部屋》


「ただいまっと……もう朝だね~、ゴーブ君達と一緒にオーク狩…マブダチになりに行ってたら帰り遅くなっちゃったけど。たしか3日後にアリス魔法学園に通ってる御兄様サギールが帰って来るんだけど……何も起こらないといいなぁ……スゥースゥー……」


 僕は寝ぼけまなここすりながら自室にあるフカフカベッドへと潜り剣術稽古が始まる時間まで熟睡した……



 

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