第11話 隠れアジトでは新しい出会いがいっぱいだね
今日の昼。アレクシア達と共に百合の花園でピクニックをしていたけど。
アレクシアが首にかけていた神器。
主人公専用武器シリーズの1つ───〖女神の金斧〗。
あれの事が頭から離れず気を紛らわす為にゴーブ君達マブダチ達による深夜の狩……お友達増やそう大作戦に参加したんだけど。
昼にアレクシアが泉で出会す筈だった。ドスケベ悩殺金髪エルフの嬢王の幼女時代に遭遇。
そして、さっきの山賊狩……お友達増やそう大作戦では。超絶ドM聖女ララ・エウシュリア・メレクトルクの幼女時代に遭遇して今は隠しアジトに連れてあげてるんだよね。
数日後には僕《悪役令息》の御兄様が婚約者を連れてやって来る。
ここ最近のアレクシア専用ルートの出来事が。アレクシアじゃなくて僕に置き換わって起きているって事は御兄様が帰って来た時も何かしらの一波瀾が起こりそうな予感がするよ。
「御兄様の恋人といえば。たしか悪役令嬢役のあの娘なんだよな……」
「何があの娘何ですか? シン様?」
「ん? いやいや。何でないよ。ララちゃん。それよりも足の具合は大丈夫かい? なんなら快復魔法で完全に治してあげられ……」
「いえ。駄目ですわ。シン様……このままララの事をずっとおぶていて下さいませですわ」
ララちゃんが突然、〖シン様。私。足がいたくなりしましたの。お姫様抱っこで運んで下さいませんか?〗なんて事を言うからおんぶして運んであげているよ。
僕がお姫様抱っこして運んだあげるのはアレクシアだけって決めてるから申し訳ないね。ララちゃん。そして、ララちゃんを背中に背負て運ぶ……ララちゃんランド……これ以上言うのは止めとこう。あまり冗談が過ぎるのも良くないしね。
現在。僕は隠し財宝で手に入れたお金の一部を使って。小さな村規模の僕専用隠しアジトを建設中なんだ。
これはアレクシアやお父様達にも教えていない極秘ミッションでね。将来的にはそんな場所をこの世界中に作って戦争孤児になった子達を受け入れいる孤児院にでもしようかと思ってるんだ。
そして、大人になった僕はその隠しアジトを隠れ蓑に転々として大人になったアレクシアに首チョンパされない様に。静かに大人しい余生を過ごす完璧な計画さ。
最近はアレクシアとレイラちゃんの仲も順調に深まっているしね。事ある事に僕の名前を言い合いながらポジションがどうとか話し合っているんだ。何かのスポーツでも始めるのかな? 僕抜きでさ。
……話が脱線し過ぎたね。現在、僕達が向かっている場所は《古代都市 リンカネーション》と言う場所でね。
リゲイン王国の西の辺境辺りの謎の遺跡の扉を潜って。幾つかの秘密の通路を通ると来れる不思議な不思議な場所なんだ。
アリスフィアの世界にはそういった古代文明の後が色濃く残っている場所が幾つかあるんだ。
そして、今。僕の案内でララちゃん達を連れてきたこの場所《古代都市 リンカネーション》もその一つだね。前世のゲーム知識があるからこういった場所を主人公や悪役君達より先に占拠できるのはありがたいよね。
ギィィ……ガコンッ!
隠し通路の最後の扉を潜るとそこは少し変わった風景の世界。リンカネーションの世界さ。
◇
「「「わぁ~! 綺麗な場所」」」
ラクス皇国から行方不明扱いで居場所を無くした。ラクス皇国の高貴なる血統の子供達は僕の隠しアジトを見て目をキラキラさせているね。
そりゃあそうだよね。辺りを一面雲海に包まれて果てしない草原。のどかな景色。老後はこんな場所でゆっくりとスローライフを過ごせたらどれだけ幸せだろうってなる場所がここ隠しアジト《古代都市 リンカネーション》の景色ってわけさ。
この場所はね。《乙女達は男装乙女に恋をします》の裏ルートやクエストをクリアしたら行って住む事が出来る隠しダンジョンや不思議な場所なんだ。
この世界にはそういった場所が幾つもあってその場所を僕は全て把握して手に入れてある……用意周到でしょう?
良いよね? 主人公がこのままレイラちゃんと愛し合って。
アレクシアの前から僕が居なくなった後はとある1つの場所以外はアレクシアに譲る計画だし……こんな場所があればアレクシアも色々と今後、起きるであろう出来事にも簡単に対象できる様になるしね。
その為に主人公に協力してくれるお嫁候補さん達もしっかりと成長させてあげなくちゃいけないかな………アレクシアがちゃんと将来幸せに笑っていてくれる様にさ。
僕が頑張って準備をしてあげなくちゃね。アレクシアはなんたって《乙女達は男装乙女に恋をします》での最推しの娘なんだから。
◇
《シンの隠れアジト 古代都市 リンカネーション》
「シン様は……私達に奇跡を見せたかったのですね。ここはなんて神々しい場所なんでしょうか」
ララちゃんは眼を輝かせながらリンカネーションの周りをボーッと見上げている。
……神々しいだなんて難しい言葉をよく知っているよね。生前の記憶を持つ僕やリゲイン王国から派遣された最先端の学びを得ているアレクシアやレイラちゃんが知っている言葉なら分かるよ。
だけどね。ララちゃんはまだ。僕《悪役令息》と同じ6歳なんだ。
ラクス皇国は人道的な英才教育をするというゲーム感での設定があったけどさ……随分と何に関しても盲目的になる様に洗脳《教育》していたものだね。ラクス皇国はさ。本当に腹が立つね。
「ララちゃん。いや。皆、これからはここで自由に暮らすと良いよ。常に僕のマブダチ達が増築して施設も充実してるし。警備もしてくれる。物資は勿論好きな物も盗賊さん達から奪っ…貰って来るからね」
「こんな素敵な場所でシン様と一生添い遂げられるのですか?」
「いや。ある程度。大人になったら好きな場所で住まなよ。将来ここは僕のスローライフの舞台になるんだからね」
……この娘は眼を輝かせながら何を言っているんだい? それに何でゲーム中に主人公に向けていた態度で僕に接して来るのかな。
さっきまでのツンツン喧しいララちゃんはどこに行ったんだい?
「シン様と一生一緒に?」「シン君とずっと一緒」「シン君にずっと付いて行くよ。僕達」「シン君」「シン君」「シン君」
「いや。ちょっと……皆。自分の将来は自分で決めないといけないよ」
ラクス皇国から見放されて絶望していた子供達が眼を輝かせて。シン君シン君連呼しながら僕を囲み始めた。
そして、ララちゃんが子供達1人1人の眼を見て何かを確認していく。
「……シン様。私達。決めましたわ」
「決めた? ああ、ここに住む事かい? そんな遠慮しなくても良いのに。ララちゃん達が別の国や遠くに行ける様になったら。セイフライド家の権力でラクス皇国に戻してあげるしさ」
「いいえ。あんなクソ皇国なんてもうどうでも良いですわ!」
「「「どうでも良いですわ!!!」」」
「ブホッ……何でそこで皆でハモるんだい。ちゃっと面白くて吹き出しちゃったじゃないか」
「私達はここから新たに始めます。1からいいえ……」
う~ん。皆。一斉に話すから五月蝿すぎて何を言っているのか上手く聞き取れないけど……これあれだ。
ララちゃんが僕に向かって両手を広げて微笑んでいる。空からは暖かな日射しが差し。ララちゃんを神々しく引き立ているね。あ~、これ昔何かのアニメで見た名シーンにそっくりだね。それにしても妹ちゃんは水色髪だったけど。ララちゃんは桃色だからお姉ちゃんよりの髪色だね。
「「「……から!!!」」」
……君達もハモるんかい。名シーンが台無しだよ。もう。
リンゴ~ン! リンゴ~ン! リンゴ~ン!
どこからともなくいきなり鐘の音なり始め。ララちゃんが一滴の涙を浮かべた。最近拾ったメリュちゃん辺りが悪戯してるのかな?
しかし……どこに感動する要素があったのかな? 僕の大好きな名シーンが台無しだよ。脳が震えちゃうよぉーっ!
「シン様……」
「はい?」
「私達は貴方を教祖とした新たな信仰宗教を始めます。名前はジン教ですわ。そして、私はシン様の専用の聖女になるのですわ」
「いや。普通に嫌なんですけど。それに……ジン教? 何それ? 美味しいの?」
ここに麦畑と酒蔵でも作って酒造でも始める気なのかな? 未成年なのに将来設計が随分としっかりした子達だね。ラクス皇国の子供達ってさぁ。
「美味しくはありませんがシン様が私達に教え解いていただいた教えを……誰に対しても平等に接し。最後まで育むという教えを今後広めていきますわ」
「「「いきますわ~!」」」
いや。僕。ララちゃん達に何にも教え解いて無いんですけど? 勘違い怖いんですけど。その爛々《らんらん》と輝いてる眼も怖いよ。ララちゃん。助けてアレクシア~! 僕の唯一の癒し枠~!
「そ、そうなんだ。でもあんまり無理しないでね。ララちゃん達。君達はもう自由なんだしね。これからの人生は楽しく……」
「はいっ! シン様の為に刃向かう方々は粛清しますわっ!」
「「「粛清しますわっ!!!」」」
「うん……程々にね」
「はいっ! 私のシン様っ!」
ララちゃんの眼は妄信狂者の様に輝きを放っていたよ。
8月の暑い真夏の深夜。ジン教とか言うよく分からない信仰宗教がララちゃん達により立ち上げられた。
◇
《シンの館》
「とういうわけでこの子達の当分のお世話を宜しくね。メリュちゃんと……突然、アレクシアの護衛の任務を放棄した挙げ句に行方不明になってシュリディンス家から解雇されて。僕に拾われたアカちゃん。アオちゃん。キイちゃん」
「「「宜しくお願いします。お姉さん達」」」
うん。流石、ラクス皇国の貴族階級にいた子達だね。礼儀作法がちゃんとなってるよ。
「……どっから連れてきたの? こんな人数の子供達。軽く数千人は居るよね?」
「「「ふ、ふざけんなーっ! 私達をここから出せーっ! この悪童」」」
メリュちゃんは妖精国と通じる樹洞にお尻をつっかえさせてある場面で運命的な出会いを果たしたんだ。
その後。祭典を返せだの因縁をつけられたから。お仕置きして気を失わせたんだ。それでなかなか起きないからね。不思議な茸で作った不思議な薬を大量に飲ませてあげて。マブダチ化したんだ~! 行く宛もないから拉致…じゃなくて僕個人のポンコツ専属メイドとして雇用してあげたんだ。僕って凄い親切だよね?
それでさっきから騒いでる美少女三姉妹は火竜の巣……つまり僕の財産を奪おうとしていたからさ。
分からせてあげたんだ。あー、因みにエロゲーみたいな。くッ殺せていのは一切してないよ。
僕はリアルとゲームはちゃんと切り分けられる悪童令息だからね。ちょっと五月蝿かったから。この娘達が着ていたメイド服を奪ってお尻ペンペンしてあげたんだ。山の天辺辺りでね。
3日後位にマブダチ達と交代でお仕置きしたら。目がレイ○目みたいになり始めたから止めてあげたんだ。その後不思議な薬を飲んでもらって最近の記憶が飛ぶくらい元気になったんだよ。僕って優しいよね?
それからはアレクシアに美少女三姉妹について聞いたら。連絡も無いしどこにも居ないから解雇されたんだって。可哀想にね僕悲しいよ。
それで今はその三姉妹の代わりに王都の実家からユラとサラってアレクシアの元々の専属メイドさん達が来てアレクシアのお世話をしてくれてるんだって。
良かったねアレクシア。有能な人達が来てさ。
……それじゃあ。その解雇された美少女三姉妹は僕が再雇用してあげようとリンカネーションに拉…いや。再就職先に連れてきてあげたんだ。僕って優しいよね?
「隠しアジトもだんだん人が増えてきたし。素の状態でいられる人間関係も構築出来て僕は大満足だよ。これからも宜しくね。皆~!」
「はいっ! シン様ッ!」
「「「はいっ! シン様ッ!」」」
ララちゃんを中心に僕に祈りを捧げ始めるラクス皇国の子供達。
「ご主人様。メリュに妖精国の祭典を返してほしいの」
メイド服を着て眼をウルウルさせている。ポンコツ専属メイドのメリュちゃん。
「「「ここから出せ~! 悪童ーッ!」」」
まだまだ反骨精神が残るアレクシアの元メイド美少女三姉妹達。これからじっくりと時間をかけて僕色に染めていってあげようね。
こっちの世界で味方も増えてきたね。運命力とか金の斧とかの心配はあるけど暗くしていてもつまないし。
「これからもアレクシアに優しく接して首チョンパされないように。明るく元気に修行と日常を楽しんでいこうっと……」
……後はアリス魔法学園の約5ヶ月後に控える強制入学イベント。入学試験がどうなるかも気になるね。
セイフライド家の人間は入学試験をパス出来るけど。それは本人の意思次第。勿論僕はアリス魔法学園への入学は断るから……起こりうる出来事はというと。
「主人公との本当意味での決裂イベントだね……それが始まる前に異世界転生の定番。鑑定と転移魔法の力を手に入れなくちゃいけないね」
僕はそう独り呟き。鑑定を所持する猫と。転移魔法を取得出来るとある建物について思いを馳せ始めていた。