第1話 転生したらエロい百合ゲー世界だった件
〖シン・セイフライド。君の極悪非道な行いはもう見過ごせない。ここで果ててもらうよ〗
【ま、待てっ! 俺は、俺はただお前に見ていてほしかった……】
〖問答無用っ! シャイニングッ!〗
【ギャアアア!! この俺が何故お前なんかにに……】
〖アレク様~! 怖かったです~〗
〖レイラッ! 無事で良かった〗
〖愛しています〗
〖ボクもだよレイラ〗
────《FIN》
……この主人公の宿敵。どのルートでもやられてるな~、可哀想に。
僕の名前は上木真はエロゲーをこよなく愛するエロゲーマニアだ。
しかし本当に名作だね。
《乙女達は男装乙女に恋をします》は。数々のエロい百合ゲーをやり尽きた僕がベストワンに数える程の名作だよ。
エロいゲームといっても多種多様にある。泣きゲー、鬱ゲー、乙女ゲー、アクション等々。
エロいゲームにもジャンルが豊富に存在するんだ。そして、取り分け僕が大好きなジャンルは百合ゲーだ。
始まりは妹から借りたこのオープンワールド型エロい乙女ゲー《乙女達は男装乙女に恋をします》という男装した美少女が数多の乙女達と百合百合し合いやがて恋に堕ち。最後はニャンニャンする名作。
戦闘あり。恋愛あり。冒険あり。何でもありありで最後には必ず主人公(♀)とヒロイン達がやはりニャンニャンしてエンディングを迎える。
このゲームをプレイするまで僕は色々なジャンルのエロいゲームをやってきたけどこれに勝るエロいゲームは見たことはないね。
それ程までにこのゲームは優れているんだ。キャラクター、多種多様なシナリオルート、世界観全てが僕にマッチし。隠しルートを含む全てのルートをクリアし。このゲームを10週位やり込んだ程にね。
そして、たった今11週目が5日程徹夜して終わった所なんだ。
「…………ヤバい。5日も飲まず食わずで《乙女男装》をプレイしてたから疲労困憊だ……いやいや仕方じゃないか。魅力的な百合百合したヒロイン達があんなにいたらさ……でも一番可愛いのは主人公(♀)のアレクシアちゃんなんだよな~……あれ?視界が歪む?……」ドサッ!
それが僕の最後だった。上木真享年20歳。
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「───うっ! 頭がズキズキする。僕はいったい?……それにここはどこなんだ?」
僕は頭を抑えながら周囲の状況を確認するために見渡し始めた。
【ギヒヒ!!】
「い、いやぁ……シン君助けて……」
そして、見渡した直ぐ近くには小さいゴブリン?見たいな生き物と……銀髪の小さい女の子?
しかしこの女の子どこかで見た事ある様な。いや。ていうかさっき見たばかりの様な?
【ギヒヒヒ!】
「嫌、嫌あぁ!! こ、来ないでぇ!」
小さいゴブリンは下劣な笑みを浮かべると銀髪の女の子の服を破き始めた。
「なっ! お前っ! 何してんだっ!」
【ギギキィ?!】
「へ?……シン君。さっきゴブリンさんに頭を叩かれて倒れちゃったんじゃ?」
………このシーン覚えている。確か主人公(♀)のアレクシアとまだ仲違いになっていなかったシン・セイフライド小さい頃の回想イベントだ。
アレクシアとシンは幼少の頃はよく2人で遊んでいた。そして、両親達には内緒で森へと出掛けて一匹のゴブリンと遭遇。
ずる賢いシンはゴブリンに軽く叩かれてヤられたフリをし。ゴブリンに襲われている主人公(♀)のアレクシアを囮に逃亡。
それをアレクシアは男に幻滅し。男性不信に結果、女の子を深く愛する娘へ成長していくんだ。
そんな事件があった後なもんで主人公とシン・セイフライドはお互いを嫌いになっていき最終的にはどのルートでも険悪になり殺し合う宿敵同士になっていくんだけど………
何でこの回想シーンに僕が居るわけ?
さっきまで僕は隠し攻略キャラのレイラルートを攻略していた筈なのに。
も、もう一度。今の自分の姿を確かめよう……背丈は小さい。肌は艶々《つやつや》声は───
「あーあーあーあーあ~♪」
【ギギギ?!】
「ヒィィ?! シン君。何でいきなりお歌なんて……」
うん。綺麗なソプラノだね……この子《僕》。
その後もペチペチと自分の今の骨格も触ったり。服の中に自分を反射する物がないか探したら時計があったからそれに自分自身を映すと────
その反射させてた姿は幼少期の悪役令息だった。
そしてこの状況は多分────
「《乙女達は男装乙女に恋をします》のゲーム世界に悪役令息として転生したって事?!……ん? いや。それしてはなんかに引っ掛かるな。記憶が混濁してるというか……いや。なんだい? この奇妙な状況はあぁぁ?!」
【ギギキィ!】
あまりにも意味不明な状況だったせいで叫んじゃったよ。
それに反応して何の武器も持っていないゴブリンが僕に狙いを定めて襲い掛かって来た。
「シン君。逃げてぇ! 殺されちゃうっ!!」
「………うんうん。そういう君の可憐な所を見えるのが僕は大好きなんだよね。宿敵なんだけどさ」
僕よりも慌てていたアレクシアが居たお陰で少し冷静さを取り戻せた。
それにしても。あのゴブリンが小さくて何の武器も持っていなくて良かった。これなら軽く投げ飛ばせる。
オタクと思って侮るなかれ。僕はこれでも武道派なのさ……
「じつは生前の僕の家系は格闘家でね。これでも小さい頃から色々な武術を家族全員から叩き込まれたんだよね。ゴブリン君っ! はっ!」
【ギギ?!】グギッ!
「……へ?」
【ギギ……ギィ……】
「意外にやるだろう? これでも柔術は日本一を取った事が……うわっ! 頭から行ったね。脳震盪でも起こしたかな?」
「……嘘? あの性格が悪くていつも逃げるシン君がゴブリンを倒しちゃった?」
うわ~! 小さい主人公(♀)のアレクシアにあのとか言わせちゃってるよ。
シンって小さい頃から性格が悪い奴だったんだな。
おっとっ! そんな事よりも。アレクシアを起こして上げないとね。
僕はアレクシアの前に立つとそのまま彼女に向かって手を差し伸べた。
「立てるかい。アレクシア……君が無事で良かった……です」
おっと敬語敬語と。僕が考えるに。シン・セイフライドはどのルートでもアレクシアに殺されるキャラクター。
そして、僕がこの先生き残っていくにはアレクシアには変わらず、逆らわず、適切な距離を取りつつ自身をモブ化させて細く長く生きていくこと。
だからアレクシアのご機嫌取りは必須になっていく事間違いなし。これからはなるべくアレクシアに優しく接して嫌われない様にしないとね。
「え? え?……えっと。ありがとう。シン……助けてくれて」
「はい。君が無事で良かったです。アレクシア」
この物語はアホな死に方をした僕が2度目の人生は死亡フラグたっぷりの悪役令息として生きる羽目になった物語。
一番の宿敵に溺愛されていく物語さ────