表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

第四話「荒波f(フォルテ)」

朝の教室に入ると、俺はすぐに気づいた。

自分の席の近くで、二人の女子が楽しそうに話している。


「あっ、シマ!おはよう!」

天野美月の明るい声が響く。


「おはよう」

俺も返事をする。


「おっ、おはよう」

そして、その横にいるのは黒髪のロングヘアの少女、中野詩織だった。


昨日の軽音部での出来事を思い出しながら、俺は少し戸惑った。

まさか、今日こんな風に声をかけられるとは思っていなかった。


美月は楽しそうに言った。

「詩織がね、もしよかったら軽音部に入ってほしいんだって。」


「そっ、そんなこと言ってない……」

少し慌てたように、詩織は否定する。


「だから、一緒に今日も部室いかない?」

美月は俺の手を引くようにして誘った。


「だから、そっ、そんなこと言ってない……」

詩織の声はどこか困惑していた。


結局、俺たちは三人で軽音部の部室に向かうことになった。


旧校舎の階段を登る足音が、少しだけ緊張感を含んでいた。

いつもとは違う何かが動き出していることを感じていた。


部室の扉を開けると、昨日とは違いギターの音は聞こえなかった。

代わりに低く唸るようなベースの音が部屋を満たしていた。


部屋の奥、黒いベースを抱えていたのは見たことのない少女だった。

肩までの銀髪をツインテールに結び、制服のスカートは規定より少し短めだった。


彼女の細い指がベースの弦をつま弾くたびに、鋭く光る瞳が俺たちを見つめた。


「……あんた、誰?」


その声に俺は一歩たじろいだ。


「えっと……桐島智也。詩織さんのクラスメイトで……クラスメイトの付き添い、みたいな」


「ふーん、つまり“ただの人”ってことね」


その言葉には鋭い棘があったが、敵意ではなく警戒心が込められていることはわかった。


「すみません!今日も見学できたんですけど!」

美月が割って入り、にこやかに言った。


銀髪の少女は少し視線を逸らした。


「あっそ。……で、二人ともギター弾けるわけ?」


「「いや、全然」」

俺と美月は顔を見合わせながら答える。


「じゃあ歌?」


「「いや、歌も……」」


「じゃあなんでいるの?軽音部って、遊びじゃないんだけど」


強い口調に部室の空気が少し緊張した。


その時、近くにいた別の部員が静かに注意した。

「乃愛さん、そんな言い方しなくても!」


「だって……詩織だって、本気で音楽やってるのに」


隅の方で静かに弦の調律をしていた詩織が、小さな声で言った。

「……乃愛。やめて」


「でも……」


「わたしが、ここにいてもいいって思った。だから、いいの」


詩織の言葉を聞いて、銀髪の少女は目を伏せ、短くため息をついた。


「……詩織がそう言うなら、別にいいけど」


そして俺を見て、少しふてくされたように呟いた。


「……ま、まだ認めたわけじゃないから」


「は、はあ……」


何がどうなっているのか、まだよくわからなかった。


でも、確かにまた新しい輪が広がったことは感じていた。


その日、部室は少し騒がしかった。


美月がギターを手に取り、弾いてみたいとお願いすると、詩織はすかさずコードの持ち方を指摘した。


乃愛さんは無言で調律を続けている。


俺はそのやり取りを少し離れた場所から眺めていた。


喧嘩のようで、でもどこか楽しそうな会話。


バラバラだった音が、一つの曲になろうとしているようだった。


帰り道、美月はいつものように笑顔だった。


「ねぇシマ、軽音部ってさ、ちょっといいよね!」


「……うん。にぎやかで」


「詩織と乃愛って、昔からあんな感じなんだって。真逆だけど、仲いいの」


「そうなんだ」


「……あたしさ、もっとたくさん、楽しいことしたいな。シマと一緒に」


「……えっ」


突然の言葉に、俺は足を止めた。


喉の奥に何かが詰まったようで、うまく返せなかった。


だが、そんな沈黙さえも悪くはなかった。


春風が頬を優しくなでていく。


俺の心に、音楽がゆっくりと鳴り始めていた。


第四話です。最近小説を書くのにはまりすぎてゲームできてないです。あなたの心に届けばいいなと思います。まだにわかなので、面白くないところとかあるかもしれませんが大目に見てください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ