散歩をしに来ただけなのに
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なんとか町の中に入ることには成功したが、とても話しにくい雰囲気である。カリナ様を知っているどころかちゃん付けで呼んでいるようだし親しい人物であるようだ。おまけになぜか自分のことを認知しているような素振りであったため警戒せざるを得ない。相手としてもこちらが警戒しているのには当然気が付いていたようだ。
「そちらのメイドちゃんが私のことを気にかけてくれているみたいだし、私が町中にいるとみんなの注目を集めてしまうものね。とりあえず城の中まで行きましょうか」
と言って城の中まで有無を言わせぬ様子で進むことになった。行く途中途中で「アメリア様がいらっしゃるぞ」「アメリア様だわ!」みたいに人々から持て囃されているようでやはり身分の高い人間で間違いないようだ。そうこうしているうちにあっさりと城に着いた。城と言ってもそこまで豪華さがあるわけではないが、迫力はひしひしと感じるようなそんな建物である。
「ここなら大丈夫でしょう、ネイラ?部屋まで送ってちょうだい」
「は、かしこまりました。ではお二方もどちらかの手を握ってもらってもよろしいでしょうか」
と建物の中に入ると、相手方でそのようなやり取りがあったので、カリナ様の手をとりあえず握る。カリナ様はアメリアと呼ばれる女性の手を握るとまた景色が変わった。景色が変わったと言っても同じ建物の中のようだ。部屋が変わったっぽい。如何にもな部屋の入り口の前に立っていたところアメリアと呼ばれる女性が入り、ついてきてと言わんばかりに手招きする。言われたとおりに部屋に入るとこれまた質素だがお金がないという感じではなく、大人しいという感じの部屋であった。置かれている物は上級そうなものばかりである。
「いきなりだけどあなた、ヒラシア王国から来た勇者ちゃんでしょ?」
???。どうしてばれているのか。いや、そもそも出会った時から何だか知ってそうな雰囲気を醸し出していたが。もしかしたら彼女は国王から討伐するように言われた魔王なのだろうか。想像していた魔王と違っていかにも普通の人間と変わらない感じはする。
「急にこんなこと言われても困るわよね、カリナちゃんは知っていると思うけど勇者ちゃんのために自己紹介しておくわ。私はアストレア国の女王アメリアよ、どうせあのおじいさんのことだから私のことを魔王だ何だと言って貴方をけしかけてきたのでしょう?無駄なことなのだし、私何もしていなんだけどねぇ」
「はぁ、国王様から言われた魔王というのはあなただったんですね。想像していた魔王とはかけ離れていてわかりませんでした。そして、かなり早い段階で気付かれていたんですね。一応結構すぐに旅立ったんですが」
「私もすぐには気が付かなかったんだけど私の可愛いネリアちゃんが隣国で勇者がどうだの言っているようだから視察しに行ってくれてね。その時に、カリナちゃんへの挨拶のついでで向かったネイラちゃんによって勇者ちゃんの動向は知っちゃったのよねぇ」
「そこについては一応説明を。私がアメリア様に頼まれてカリナ様へ連絡を伝えに行こうとしたところ、あなたとカリナ様が交戦されているのを確認し、カリナ様に今回の用件を伝えたところたまたまステータスを知ったのであなたが恐らく勇者であるのだろうということは推測していました。まさか女性になっていたとは思いませんでしたが・・・」
なんでこうなったのかについてはこっちのセリフである。もう過ぎてしまったことであるので冷静になれるが一応討伐目標を前にして戦う気にはなれなかった。そもそも攻撃力をカリナ様によって大幅に下げられているし相当強そうな感じがする。それよりも王国に対する不信感の方が強いため、もう魔王討伐なんて気にならないことはないがどうでもいいことのようになりつつあった。
「えへへ~、リナちゃんは私が自信をもって弄ったからね!ちょっと戦えなくはなっちゃったけどもし私が何かあったら手伝ってほしいな。私に何かあることはそうそうないと思うけど念のためにね。アメリアちゃんほど強ければ私ほどではないけどまあ大概の生物には勝つでしょ?」
「さらっと言い切ってくれますわね。まあ私もあなた以外だったら大概負けるつもりもありませんわ。例えそれが勇者と名乗るような人物だったとしてもね。そしてカリナちゃんの頼みだしかわいい子だから何かあったときには守ってあげるわ」
「一度敵対しようとしていた私に何かしなくて大丈夫なのですか?」
「うん?何かお仕置きしてほしいのかしら?」
「いえ、そういうことではなく!」
「なに~、リナちゃん私以外に浮気?」
「話をややこしくしないでください!!」
「まあまあ、そもそも恐らくだけど元のあなたでも私には勝てなかったと思うわよ?カリナちゃんステータス表示頼めるかしら」
「ほいほい、いいですよ~」
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アメリア アストレア 職業 国王
Lv 97 (EXP 312/961)
HP 932/932 MP 467/467
ATK 231 DEF 498
RES 630 SPD 270
適正魔法系統 水 雷 風
所持スキル カリスマ 魔法耐性
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人目見ただけで確かに勇者だった時の自分よりも遥かに強そうだ。そもそもレベルも相手の方が高い。もしかしたらこれは本格的に命拾いしていたのかもしれない。・・・いや、一度殺されかけたような気がするが。あなたでは勝てないと言っていたのは本当であったようだ。
「本当にお強いんですね。私は知らない内に命が助かっていたのですね」
「そうね、まあある程度あなたは能力はあったようだから念の為にカリナちゃんの方に向かってごちゃごちゃしてくれればそれでいいと思ってたのだけど、監視に行っていたネイラの知らない内に合流していたみたいだからね」
「私としましても、カリナ様の家に行けと言われていたのですが、完璧に位置を知っていた訳ではなかったので、勇者がカリナ様とたまたまとはいえ合流されていたのはカリナ様への説明がしやすかったので非常に助かりました」
話を聞いている感じどちらにせよカリナ様へと合流する話になっていたようだ。恐らく、カリナ様の悲鳴を無視してすぐに道を進まなかった限りは避けられなかった結末なのだろう。
「私としてはカリナちゃんに勇者をペットにしてもいいわということをネイラに伝えさせに行ったのだけどまさか女の子になってここに来るとは思わなかったわ」
「本当です・・・」
それは自分が一番思っている。とにかくカリナ様の用事も終わったようなのでこれ以上ここにいてもすることがないかもしれないし、もともとの用事がある。そちらを優先してもいいかもしれない。
「ところでカリナ様、昼食の買い出しにそろそろ行きませんか?」
「あら?あなたたちご飯を食べていないの?せっかくなら一緒に食べないかしら」
「え~、いっしょに食べましょう!アメリアちゃんとはゆっくりお話ししたかったんですよねぇ」
買い出しはどこにいったのか。しばらくしてネイラさんが食事を用意してくれた。非常においしかったし、この町でおすすめの食材とかを紹介してくれた。ネイラさんも少々アメリアさんに振り回されている節があるのか自分に優しくしてくれる。カリナ様もアメリアさんと楽しく談笑が出来てご満悦のようだ。ちなみに会話中に自分の容姿や尻尾の触り心地を力説していた。全力で止めようとしたが自分がカリナ様にかなうはずもなく逆に受け止められてナデナデされてしまった。二人とも非常に微笑ましいものを見るように見ていたので恥ずかしいことこの上なかった。というわけで恥ずかしすぎるのでそそくさと帰る。
「あ、ありがとうございました!今日のあの姿は忘れてくださぃ・・・」
「えへへ~、ね?リナちゃん可愛いでしょ?またお話に来るね~」
「とにかく!早く食材買って帰りましょう!」
「えへへ、じゃあね~」
といって呑気に腕を振るカリナ様を強引に連れ出す。カリナ様は反抗してこなかったのでなんとか自分が引きずることで外に出ることに成功した。
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おそらくこの町に来た時のようにカリナ様の力を使えばすぐに家に帰れるのかもしれないがまだ買い物があるので町に残る。昼食をアメリアさんのところでご馳走してもらったので日がだいぶ昇って、昼はとっくに過ぎているぐらいであった。そういえばこの世界には時計は無いのだろうか。周りを見たところ見当たらないのでないのかもしれない。日の位置的には恐らく14時から15時ぐらいだろう。周りから見るとワンピースを着た綺麗な女性と謎の犬っ娘メイドというよくわからない組み合わせのせいか少し注目を浴びているようだがカリナ様はいざ知らずという感じで町を歩いていく。
「えへへ~、リナちゃんと散歩出来て嬉しいなぁ。一人で外に出すのは不安だけど私がそばで見れる時なら安心だしねぇ」
と笑顔でこちらを見てくる。純粋な笑顔をこちらに向けてくるのをやめてほしい。こっちまで嬉しくなってしまう。とりあえずネイラさんに言われた通りの店まで向かう。そこそこ大きな露店でお客さんもいて賑わっている店だった。ネイラさんが進めてきたのも納得である。店の店主に声をかけ、元の世界にもあったような感じの食材をいくらか見繕ってから「これをください」と声をかける。
「おう、いいよ!メイドさんってことはそこの女性の付き人かな?えらい別嬪さんだしあんたも可愛いからサービスしとくよ!」
「かっ、かわいいとか言わないでください!」
「そうかい?あんたは自信を持っていい可愛さだけどねぇ。あんたぐらい可愛ければみんなほいほいついてきてくれるさ。はっはっはっ。これこれが商品だよ」
なんかえらく褒めてくる店主さん。うんうんと頷きながら後方で腕を組んでこっちを見てくる神様もいるようだが、ネイラさんから選別でもらったお金をいくらか渡して商品を受け取る。今日の用事はいったんこれで終了だ。帰路に就こう。といっても一瞬で帰りそうだが・・・。
「いや~、あの店主さん分かってますね。私のリナちゃんは世界一可愛いので」
「そんなことはいいから帰りますよ!」
と恥ずかしさから、少し声を大きくして催促する。あまりワープするのは人前に見せられないのかカリナ様が少し道を外れて、「あそこで帰ろっか」という。しかし、脇道に外れたところ注目を浴びた影響か横から男が数人出てきた。なにやら下卑た目線を向けており、自分より体格の良い刃物を持った数人に囲まれた恐怖心と男たちから性的な目で見られている嫌悪感で本能的に嫌な気持ちになる。男の時なら反抗しに行ったのかもしれないが今の体になってサイズが小さくなったこともあり少々メンタルが弱くなっているのかもしれない。・・・ところが、数秒後に目の前の男たちが可哀そうなことになった。
「邪魔だからどいてもらうね」
とカリナ様が一言言った途端に男たちが「がっ!」と言葉にならない悲鳴をあげながら急に喉元を掻き始め苦しそうにする。
「勝手に殺したり、存在を消滅してもいいんですけどやりすぎると上から怒られちゃいますからねぇ~。リナちゃんに手を出そうとしたのに殺されないだけ感謝してくださいね~、次は容赦しないというかあなたたちの存在ごと消し去りますので」
と端的に述べて素通りしていく。カリナ様が何をしたのか分からず、男たちも何が起きたのかわからない様子で頷く暇もなく泡を吹いて倒れていった。わずか10秒にも満たない出来事であった。
「カ、カリナ様。いったい何をなされたんですか?」
「ん~?リナちゃんを変な目で見ようとしてたから、それが出来るのは私だけの役割だからお仕置きしたよ?具体的には彼らの脳に干渉してダメージを与えただけだよ」
なんだか聞いてはいけないことを聞いてしまった気がするが追及するのは違うのでスルーすることにした。なぜかカリナ様にいつものように頭を撫でられていたがそう思った刹那、景色が家の中に変わった。カリナ様の力を使って帰ってきたようだった。